神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
知上村に行った。
「ねえ、遊ぶって言っても何するの?」
一面芝生の庭に来たが、遊べるものはどこにも見えない。こんなことならゲームでも持ってくれば良かった。どう見ても田舎だし、この子にゲームを見せたら未来人扱いされそうだ。
「これです!」
にこにこしながら手にしたのは、その辺のボール。嘘でしょ、外で遊ぶなんていつぶりだよ。吸血鬼だからか、日光を浴びると少し具合が悪くなるのだ。だから僕は小学校の体育くらいでしか外にいない。
そういえば、彼女の持っているのは小学校で見るボールじゃない。和風の柄のような。も、もしかして……
「鞠つくのが好きなんです」
鞠だった。
「まあいいけど……。ええと、あれ? 名前聞いてなかったよね」
「そうでした!」
そう言って口に手を当てる。全ての動作が大きくて、見ているぶんには飽きないけどやってて疲れないのかな。
「僕は浦原輝夜。君は?」
「あたしは32代目血神『
川獺、かわうそ。可愛くて元気なこの子にぴったりだ。
しかし、僕の存在が書類上で無かったことにされている可能性も考えていたが、32代目ということはちゃんと僕も数えられていたのか。川獺は僕のことを知らないようだったけど、歴代血神に興味がないと先代なんか知らないだろうし。
「輝夜さん、あたしにそっくりですよね!」
「そうだね。目元はちょっと違うけど」
「はい! お母様に似てるんです」
ああ、誰かに似ていると思ったら野兎に似ているんだ。あの人のおっとりした雰囲気とは全然違うから気づかなかった。
「野兎さんは元気にしてる?」
「えっと、最近はちょっと具合が悪いみたいで……でも大丈夫って言ってました!」
「そうなんだ。あの人、昔から病気がちだったからどうなのかなと思ってたけど……そこまで悪くなさそうでよかった」
僕の覚えている限り、野兎は元気なときのほうが少ないほど身体が悪いらしかった。既に亡くなっているかもしれなかったが、ちょっと具合が悪い程度なら安心だ。
「あれ? なんで輝夜さんがお母様のことを知ってるんですか!?」
「僕も昔血神だったんだよ。31代目血神『白蛇』って名前でね」
「そうだったんですか! てことは、あたしのお兄様!?」
「そう、なるかな? 色々あって違う名前になったけど」
そうなんだ! と目をキラキラさせてこちらを見る。気恥ずかしいというか、申し訳ないというか。本当に兄弟ができるなんてと喜んでいるところに『僕は昔君のお父さんに殺されかけたんだよ』とは言えず、色々、と濁さざるを得なかった。
「じゃあ、お兄様って呼んでいいですか?」
「いいよ。妹だもんね」
僕の妹。ふふ、妹か。うちにも年下はいるけど、ジン太は弟というよりは近所の生意気なガキのイメージだから、なんというか新鮮だ。
「ねえ、川獺って今何歳なの?」
「あたしですか?」
背丈は変わらないから一個下かな。そう思って見ていると、川獺が右手をぱーに、左手をちょきにした。薬指まで伸ばしているから、厳密にはちょきではないが。
この村の流行りのポーズなのか? それともじゃんけんがしたいという合図?
「ふた月前に、8歳になりました!」