神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
狂犬は刀に戻りたい。
たっぷり十秒ためて、彼女が発したのは声ではなく息だった。ふん、と、鼻を鳴らしたのだ。ばつが悪そうに、言いづらそうに。
「死神から……もらったわ」
奪ったの間違いでは? 喉ぎりぎりまで出かかって、なんとか押し留めた。ここで彼女の機嫌を害するわけにはいかない。今は何もできないとはいえ
「死神が私を襲ったのは、一度や二度ではないのよ」
曰く、最初は学生らしき水色の袴を身につけた若者すらいたらしい。二回目からは比較的実力のある者ばかりが来るようになったが、それもまたあっけなく散り、そしてようやく、ある日弱点を突く形で死神たちに倒されたのだと。
「あの刀は、最初に来た若い男の持ち物だった。……はずよ」
「はずって……」
「うるさいわね。何世紀も前の話なのよ? 似たようなこともたくさん起きたのに、覚えているほうがおかしいでしょ」
なんとも老人くさくて疑わしいが、刀の出どころについては予想通りなのでおおかた確定だろう。
しかし、こちらが珍しく真面目に話そうとしているのに定期的にボケてくるのはなんなんだ。無自覚なのだろうが、うっかりこちらがツッコんでしまいそうになるからやめてほしい。ツッコんだらツッコんだで気分を悪くしてやりづらくなるんだから困ったものだ。
「それで? 死神が持ってるのは特別だったりするのかしら。刀に姿を変えた私を見る目がいやらしかったもの、そのくらいの理由がないと許さないわよ」
「いやらしいって……。まあ、そういうところっス。死神は皆、斬魄刀という刀で虚と戦ってるんスよ。所持者の心に呼応して、魂が宿るんです。そして、いろいろな姿に形を変えて主人を守り助ける」
ふうん、とわかったのかわかってないのか判断しづらい反応が返ってくる。さしずめ、早く本題に入りなさいというところだろうか。
「狂犬サンが手に入れたのは、いわば斬魄刀の子供である浅打っス」
浅打。まだ形の定まってないただの刀だ。斬魄刀は持ち主が死んだら勝手に壊れてしまうが、浅打はその限りではない。
戦うことの多かった彼女にとって目の前に落ちている武器を拾わない手はなかったはずだ。そのころすでにいたかどうかわからないが、彼女には子供という守るべきものがあったのだから。
「その、浅打とかいう魂の入っていない空っぽの器に私が入った、と?」
「はい。とは言っても、そのあたりはまだ断定できていませんが」
「そうね。同族が血液だけになっても生きたという話は聞かないし、一理あるように聞こえるわ」
聞こえる、とはどういう意味だ。含みのある、本当はそうではないかのような言い方。この鬼は何を知っている? 何を隠している?
「違うのよ。何も知らないし、何も隠してなんてない。ただ、貴方勘違いしてるんじゃない? そして、それが原因で矛盾が生じている」
「私、
狂犬、ボケが素なのかわざとなのか微妙にわからなくて困りますね。輝夜なら思い切りツッコんでも怒られないのに、浦原さんだと『なんですって』と言われかねない。なんという理不尽……。
どこにも狂犬が自分で年齢を言っている場面無かったですよね? あったらごめんなさい。浅打のくだりもまあまあの捏造です。原作に矛盾する記述あったらどうしよう……。記憶の限り大丈夫だと思い、思いたいです。
最近気づいたんですけど、もしかして二つ三つ事件が並行したり謎があったりしたほうが面白いですか? もともと短編しか書けなくて長編書こうと思ったら一話完結みたいになってしまうんですよね……。同時進行ができない頭の弱さが露見しちゃった。たぶんいつかリメイクします。そのときはよろしくお願いします。