神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
狂犬の刀は死神の刀だった。
「私が起きたのは、つい最近。目が覚めたら身体は刀になってるし500年も経ってるしで驚いたわ」
「最近って、」
「ええ。──
ずっと、彼女は刀に血を吸わせてから今まで途切れず狂犬としてあり続けたのだと思っていた。しかし実際は、500年間意識のないただの刀だった、と?
そうなると話は変わってくる。20年前。およそ輝夜が産まれたころだ。死神を父親に持ち、今はほとんど人間ではあるものの吸血鬼の血を引く者を母親に持つ、輝夜が。
あの子の誕生によって狂犬が目覚めたということは、つまり。
「
「……私は、そう考えているわ。私だって最近までこの血だけで動いていたと思っていたけれど、そんなのありえないもの」
つまりは、浅打が輝夜の斬魄刀になった。それが本当だったなら、大変なことになる。最強と言われる吸血鬼の血を引いた半不死身の輝夜が、どんな能力かもわからない斬魄刀を持つだって?
それだけでも危険で大問題と言えるが、問題はまだある。
自分や夜一サンが近くにいるから、あるいは吸血鬼の血が限界まで薄まっているから気付かれなかった輝夜の存在が、斬魄刀によって明るみに出る可能性が高くなるのだ。死神に見つかったら即座に捕まってしまう。そんな事態になったらもちろん全力で阻止するつもりではあるが、護廷十三隊が総力を挙げて向かってくると考えられる。一人二人ならまだしも、片手どころではない隊長格を相手にしては流石に守りきれない。
「刀をぶっ壊したらなんとかならないかしら」
「アタシも思いましたけど、狂犬サンがどうなるかわかりませんよ」
「いいわよ。本来死ぬはずだった私となんの罪もないあの子、どちらを取るのが賢明かなんて火を見るよりも明らかでしょ」
「……まあ、持ち主が生きていたら斬魄刀がどうなろうと元に戻っちゃうんスけどね」
「早く言いなさいよ」
怒られた。
それはさておき。兎にも角にも、斬魄刀をなんとかしなければならない。話している間に知り合いのほとんどに連絡したので、本格的な話し合いは彼らが集まってからになりそうだ。
と、そこでノックの音が聞こえた。
「はいはい〜ちょっと待ってくださいね」
霊圧からして輝夜だったために、一旦思考をストップしてドアを開ける。聞かれていなかったかだけが気がかりだったが、大人しく扉の前で待っていた輝夜の表情が重くなかったのを見てひとまずほっとした。
「どうしたの? あ、まさか一人で寝られなくて……」
「違うんだ。ちょっとお願いがあって」
珍しくマジレスされてしまった。いつもは元気にツッコんでくれる輝夜だが、こちらのほうがダメージが大きいのをわかってのマジレスだろうか。すっかり大人になってしまったようで少し寂しくなるからやめてほしいのだが。
……お願い? ショックで脳の処理が遅れてしまった。あの輝夜がお願いを? それも目を合わせて可愛くおねだりなんて。なんでも聞いてあげちゃうが、どんな無理難題を吹っかけようとしているんだ。
「あのね、
「ああこれ? はい、どうぞ」
「ありがとう。じゃあね」
指された先のものを取って渡すと、満足そうに笑って部屋を出ていった。それにしても、夜にわざわざ取りに来るとは。なにかの宿題に使うのか?
「馬鹿!」
「え?」
手に持ったままの扇子が突然怒り始めた。いや、怒るなどという甘いものではない。正しく『怒鳴る』だ。意味がわからずきょとんとしていると、彼女は一つため息をついた。
「何をしたかわかってないの? さっき渡したのは何か言ってみなさい」
「それは、そこにあった刀でしょう? 貴方の身体だった」
あれ?
それって、さっきまで危険だなんだと言っていた斬魄刀では? なんで疑問も持たずに、それも一番渡してはいけない持ち主に渡してしまったのだろう。まるで身体が勝手にそうしたような。
そんなの、一つしかないじゃないか。
「魅了、ね。全く、厄介なことになったわね」
「はい。……すみません。アタシが気を抜かなければこんなことにはならなかったのに」
「過ぎたことを言ってもどうにもならないわ」
とにかく追いましょう。そう言われて初めて、輝夜が家の外に出たことに気付いた。早くしないと本当に取り返しがつかなくなる。急いで再び連絡し、家を飛び出した。
変にサブタイトルに縛りをつけたせいで、すでにネタ切れです。最初はタイトルつけるの苦手だから縛りがあるほうが楽かも! と思っていたのですが……。ということで、あとで一新するかもしれません。『○は△か』で縛るかフリースタイルにするかはまだ決まってないです。
追記:タイトル変えました。
不穏な空気が立ち込めてきましたね。それにしてもやばい。面白そうな方向へ流れてしまって脳内プロットからどんどん遠ざかっていくものだから、まだどう片付けるかを考えていません。とにかくなんとか丸く収まるように頑張ります。