神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか   作:さとう

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前回までのあらすじ
月夜烏と鬼ごっこをすることになった。



第三十二話:ようい、どん

「儂が出よう」

「いいねえ、早そう。楽しそうだ」

夜一サンが一歩前に出る。表情は好戦的な笑みを浮かべていて、自分の息子相手にも負けるつもりは毛頭ないようだ。なんとも大人気ない。

「制限時間は5分。それまでに君が僕を捕まえられたら君の勝ち、できなければ僕の勝ち。これでいいでしょ」

「儂が勝ったら、精神の主導権を輝夜に渡してもらえるんじゃろうな」

「いいよ。ま、できたらの話だけどね」

「ほう……? あとで泣くなよ小僧」

完全に向こうのペースに乗せられている。瞬神の名は伊達じゃない、普通にやったら誰にも負けるはずはないのだが、こうしてカッとなってしまうとわからないのだ。手元にある短気仲間の狂犬サンもその乗せられやすさに流石に引いている。

そうこうしている間にも、月夜烏は鬼ごっこの準備を進めている。とは言っても靴紐を結び直すとか屈伸するとか、大層なことをしているわけではないが。

「それじゃあ──」

ようい、どん。彼はその気の抜けた声で言った。

こちらが10秒待つ前に、月夜烏は盛大に砂煙をたてる。数秒で煙は消えるが、すでにそこに彼の姿はなかった。

しかし手がかりがなくなったのではない。相手は霊圧を隠そうとしていないのだ。隠し方を知らないのかわざとか。どちらにしても、自分の信条は有利な手はなんだって使う、だ。

それは夜一サンも同じだろう。全神経を集中させて霊圧のある場所を詳細まで探索している。

「じゅう」

そして、カウントを終えた瞬間に一時の方向に飛んだ。

 

舐めた口をきくあの小僧を絶対に捕まえなければならない。儂の脳内はそれに埋め尽くされていた。やつは儂を揶揄うように霊圧をそのままにしていて、それがまた儂の神経を逆撫でさせた。

あんなに軽口を叩いていたわりに、思ったよりも早く姿が見えてくる。雑魚が。

「5分もいらないようじゃな……ッ!」

こちらに気づいてない様子の後ろ姿に近づいて肩を叩こうとしたが、直前に能力を使ったのだろう。衝撃ののちに儂はさっきよりも後ろに、やつはうんと前にいた。

それから、近くに来てもすぐに離されるのを何度か繰り返した頃。我々に残された時間はあと2分を切っていた。能力の制御もさることながら、反応速度が半端ではないのだ。これでは埒があかない、もっと頭を使わなければ。ようやく頭の血が若干降りてきて、作戦を立てねばと思い立った。

しかし、まだ頭に血が行き渡らない状態で立てた作戦など紙屑のようなもの。行き止まりに追い込んで袋の鼠にしようとしても上に逃げられ、回り込んで正面から突進しても下に逃げられ、失敗ばかりだ。もう1分しか残っていないのに。

やつの厄介なところは、霊圧を固めた足場を用意せずとも爆発をうまく利用して空中に逃げられるところ。……ということは、前と左右に上下を足した五面を塞ぐ何かがあるか、はたまた地上のみで戦わなければならなくなるか、どちらかさえクリアできれば勝てるということでもある、のか?

それなら打つ手はある。さっきまで忘れていたが、これはただの鬼ごっこではないのだ。斬魄刀の能力あり、瞬歩あり。ならば鬼道もありになってしかるべきだろう。

 

何? さっきまで忘れていたのかよこの間抜け……だと?

猫と夜道に気をつけろよ、小僧。





夜一さん、瞬神の名に誇りを持っていてそれを貶められるの嫌いなのかなあと思っています。それに、いつもからかってるのでからかわれるのも。月夜烏とは相性が悪いんじゃないかなあ。煽り耐性は普段ならもっと高そうなんですけどね。


もう少しで尸魂界編になるのでネタを考えているのですが、うっかり五話程度でいろいろすっ飛ばして藍染さんがお縄になりそうです。本当は藍染さんと輝夜の組み合わせを書いてみたいけど物理的に無理ですね……。普通に危険人物ですし。あ、でもそういうのは番外編でやっちゃえばいいんですよね。
では、まだいつかわかりませんが次回もよろしくお願いします。

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