神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
前回までのあらすじ
父、息子に酷いこと言ってショックを受ける。
僕は今、真子さんやひよ里さんたちの住む家にいる。お父さんに『忙しくなるから平子サンのところにお泊まりに行ってきてくれる?』と言われたのだ。
それは、足手まといと言い放った数時間後のことだ。普通の顔をしてるようだったが、よく見るとちょっとやつれていた。僕に気を使っているのがバレバレである。どうせ『可愛い輝夜に痛い思いをさせたくないけどおねだりされたら絶対許してしまう……。いっそ厳しいことを言って諦めてもらうしかない!』みたいな思考だったんだろう。言葉も視線も怖かったからあのときは気づかなかっただけで、結構わかりやすいのだ、あの人は。
……間違えてたら恥ずかしいから『わかってるよ』みたいな態度は取らないけど。
「なんや、そんなこと言われたんか?」
「しばいたるわあいつ……!」
「い、いやいやいや、大丈夫だから」
どうしてここにと聞かれたからさっきあったことを話したら、ひよ里さんがものすごい形相で指をコキコキ鳴らし始めた。慌てて止めたが、真子さんや白さんは笑ってるし他のみんなも止めてくれない。ど、どうして……。
「あいつ、子供できてから急に不器用になったな」
「ええなそれ、なんか卑猥で」
「輝夜くんの前でそう言うのやめなよ……」
急に生えてきたリサさんをローズさんが嗜める。
実のところ、既にリサさんの下ネタには慣れてしまったので、そうやって常識人的な指摘を見ると何も感じなくなった自分に気づかされて恥ずかしくなる。
「あ、そうだ。頼みごとがあるんだった」
「頼みごとォ?」
ラブさんが僕の言葉を聞いて瞬時に面倒オーラを纏った。どうしようもなさすぎる。しかし『なに嫌そうな顔してんのや! 輝夜からのお願いなんやぞ!?』とひよ里さんが一発入れてくれたのでよしとしよう。よしとして良いのか?
気を取り直して、本題に戻るために軽く息を吸う。
「あのね、実は──」
「特訓してくれ、だァ?」
「う、うん……」
さっきのラブさんと似たような語尾の上げ方だったが、拳西さんが言うとすごまれたようで少し怖い。こめかみに血管が浮き出るなんて現実にあるんだ。
「やめときや。あいつはただ心配しとるだけなんやから真に受けんでもええんやって」
「あ、それはわかってる。あのあと落ち込んでたもん」
「喜助……」
いつの間に胡散臭いヘラヘラしたやつから内面ダダ漏れ野郎になっとるんや、と真子さんが頭を抱えた。一護さんにお父さんの話を聞くたびに『あれ? お父さんってそんな人だっけ』と思っていたのだが、やはり他人から見たら胡散臭いというイメージなのか。
僕の前で見せる表情が本当に本心かというと、そうとは断定できないけど。
「特訓はさておき、あんま危ない橋は渡んじゃねえぞ」
「ワタシもそう思いマス……。それで怪我でもしたら大変デス」
普通の子ならそうかもしれないが、あいにく僕は普通じゃない。今は定期的に血をもらっているから僕なら怪我してもすぐに治ってしまうのだ。みんな忘れているのか? でも、そもそもお父さんがどのくらいまで伝えているのかわからないから迂闊なことは言えない。
しかし、みんなの反対を押し切ってまで特訓がしたいわけではない。そこまで言うのなら、と素直に諦めて、ここにいる間は普通に遊ぶことにした。
「ふわ……」
寝て二時間程度で起きてしまった。暑くて寝苦しいというほどではないけど一度起きるともう一回寝るの難しいんだよな……。まあ、今は夏休みだし、少しくらい遅く起きても許されるだろう。
あれ?
台所に電気が付いている。まだ日付を跨いで何時間も経っていない時刻だから、不自然ではないのだが……。
なにせ声も聞こえるのだ。こんな夜中に何を喋っているんだ。僕がいたらできない話、ということか?
こっそり近づいてドアに耳を寄せる。
「うーん、聞こえづらいな……」
『……輝夜は…………』
お、少し聞こえたぞ。僕の名前? なんだなんだと耳を押し当てる。
しかし、僕は後悔することになる。なぜなら、僕がいない場所でしかできない話なんて、死神など僕が関わったら危ない目にあうかもしれない話と──
『あの吸血鬼『狂犬』の血を継いだ輝夜が、もし俺らの敵になったとき、誰が止められるんや。なッさけない話やけど俺は無理やで』
「……え?」
──僕の
知ってた話、知ってしまった話。
輝夜のセコムになりがちなのは、死神のあれこれや藍染さんとのあれこれに巻き込みそうだからです。輝夜は『なんかされたら言えよ!』と口酸っぱく言われています。ほうれんそうは大事……。
さて、アホなのでアホな話を書きたくて別の連載も始めてみました。「十一番隊書記の日常」ってやつです。
ひとまず「神と呼ばれた〜」は尸魂界に行っていろいろするまでで本編終わり、あとは番外編とかで思いついたときにのんびり書いていこうかなと思っています。
なんて、どうなるかはまだ未定なんですけどね。
ということで、どちらもよろしくお願いします。