神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
前回までのあらすじ
コンがいいお兄さんムーブをかましてきた。
後日談。
僕は後日談という言葉のことを、物語だけで見る現実では使われていない言葉だと思っていた。現実の生活は常に続いており、前日も当日も、まして後日など存在しないだろう、と。
しかし、今回はまさに後日談としか言いようのない出来事があった。
黒崎家にお泊まりした初日から一週間、真子さんたちのアジト(?)に戻って2日目の昼のことである。
コンに言われた言葉を
だって、もしかしたら真子さんが僕と仲良くしてくれるのはお父さんに言われたからなのかもしれないし。あのときはたしかに、と膝を打ったけど、世の中良い人たちじゃない。……世の中を語るには、僕は子供すぎるけど。
ということで、僕は真子さんをはじめとしたみんなを気づかれない程度に避けていたのだが。
「そ、尸魂界に顔見せに行く!?」
「おー、ゴタゴタ片したらやけどな」
いつものようにご飯を食べたらさりげなく自分に割り当てられた部屋に戻ろうとしたとき、真子さんに呼び止められたのだ。それで聞かされたのがさっきの話。
初耳ですが!?
ちなみに、尸魂界についてはめんどいから教えたるわ、としばらく前に真子さんに教えてもらった。お父さんやお母さんの言うところの『あの世』のことらしい。
「えっと、それはもしかして、僕が危険因子だから何かあったときのために……みたいなこと!?」
「なんやそれ、自分危険因子やったんか」
「ち、違うけど……」
違うと、僕はそう思っているが。
まさに今そこにいる貴方が言ったんでしょうに。
しかし、当の本人は早めの厨二病かと怪訝な顔だ。まあ話だけ聞けばそうかもしれないけどさ……。
「いやほら、この前の夜に言ってたじゃん!」
「え? ……あー! あれ聞いとったんか」
「き、聞いとったんかって……」
あれ? 軽くない? 僕はそれで一週間弱も悩んでたっていうのに。
てっきり、もっとこう……『聞いてしもうたんやな。……そうや、輝夜の力はもう俺らじゃ抑えられんほどになっとる。隠しとってすまんかったな』みたいな、シリアスな空気になるものだと思っていたんだけど。
「そんなんちゃうわ。あれは『自分の身内、しかも子供に酷いことできるやつが誰もおらん』っちゅー話や」
「ど、どういうこと……?」
「まあ待てや。順番に説明したる」
曰く、お父さんは僕と会わせたい人物がいるらしい。正確に言うと、僕を見せたい人物、のようだが。
その人に会わせるために僕を尸魂界に連れて行きたいところだが、二つの問題があった。
一つ目。
今はお母さんたちが大暴れしている件で尸魂界は混乱を極めており、今行くとうっかり斬り殺されかねないこと。真子さんの口ぶりでは、落ち着くまで年単位でかかるかもしれないとの想定のようだ。そりゃそうだ、100年も前の悪事を白日の元に曝そうとしているのだから。
二つ目。
こちらは僕にも関わる問題だ。
大罪人の息子であり、殲滅対象だった吸血鬼の末裔の僕が、果たして手放しで尸魂界に遊びに行けるのかということ。大罪人の息子、というのは一つ目の解決とともになんとかなるとして、吸血鬼の血を引いていることはどうにかできることではない。
どうにかするには、周りが僕にきちんと首輪をつけて無闇に噛み付かないようにするしかないのだが……。肝心の周りの人間が、面倒を見ている子供の僕をどうこうなど考えられないと口を揃えて言うのだった。おいおい、それはどうなんだ……? 拳西さんや白さんあたりは拳で止めてくれそうだけどなあ。
そんなわけで、僕がまた変な力に目覚めると困るので、まだ暴力を使わずに解決できる今の弱い僕のままでいてほしい、と話していたのが先日の夜だった。
「しっかし、喜助のやつがとんでもないもんを作ろうとしててな」
「お父さんが?」
「一時的に斬魄刀の能力を使えなくさせる塗り薬、やったか。あんなんあったら藍染なんか一発やで」
僕のためにそんなすごいもの作ってる暇があるならラスボスを倒すためのものの開発に時間を割きなよ!
危うく叫ぶところだった。親バカすぎないか?
「それに、特殊な眼鏡も作る言うてたしな。あのときの言葉は忘れてええよ」
「え、あの『特訓するのは困る』ってやつ?」
「なんやったら俺らが特訓つけてやってもええで」
「遠慮します……」
ニヤニヤしながら声のトーンを抑えて言わないでほしい。元からものすごい胡散臭いオーラが5割増しになって、無意識にノータイムで断っちゃうから。本当は自衛くらいはできるくらいになりたかったのに……。
なんたって、見た目も精神年齢も10歳そこそこだけど、実年齢はもう20を超えているのだ。いつまでも守られるばかりではいたくない。
……仕方ない、身のこなしくらいは誰かに教えてもらうとしよう。ひよ里さんとか、白さんとかに。間違っても真子さんやラブさんには頼まない。変なこと教えられそうだ、必殺技とか。
ということで、無事仲直りをしたというか誤解が解けたというか、なんとも言えない疑念を払うことができた。
「「行ってきます!」」
「い、行ってきます……!」
「おう! 気をつけてなー!」
そして僕は、新学期を迎えた。
周りの大人たちは、目にさえ気をつければ輝夜なんてちょちょいのちょいなんですよね。なんたって腕力がない。目だって見なければいいだけなので、再生能力がなかったら最弱の名をほしいままにしちゃう系主人公です。狂犬も刀の姿では何もできないから、新入りの斬魄刀・月夜烏だけが頼りとかいう悲しさ……。
次回からは時間が飛び飛びになる予定です。一護さんが藍染さんをなんとかする間、現世では何もすることがないので……。ということで、次回もよろしくお願いします。