神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
前回までのあらすじ
新学期が始まった。
夏休みを終えて新学期が始まる日、僕は黒崎家で目を覚ました。
とは言っても、どこか怪我をして黒崎医院にお世話になったわけではない。僕なら怪我してもすぐ治るしね。
だから、普通に居候である。家事の一部も任されて、もはや客扱いですらない。いや、いいんだけど。むしろ最初の頃は何もしなくていいと言われて申し訳なかったから、仕事があるのは実はありがたい。
2週間前。『しばらく家にいられないかもしれないから』とお父さんに言われたので真子さんのところへ行くのかと思ったら、迎えに来たのは一心さんだった。一心さんがニコニコしながら僕の手を引くのに対して、お父さんはといえば歯を食いしばりながらなんとかにこやかに手を振っていた。
手、震えてますよ……。
そんなこんなでここに来た僕であるが、この生活はいつまで続くのだろうか。黒崎家では血が摂取できない。血がないと困ることもないが、1、2週間に一回血を飲むのはもはや習慣と化しているので少し寂しい。それに、飲まないと少しお腹が空く気がする。去年まで血を飲まなくても空かなかったのは感覚が麻痺していたんだろうなあ。
一心さんに話は通してあるようで無闇に昼連れ出すようなことはしないものの、流石に血はもらってない。そもそも一心さんは僕のことについて教えられているのかを僕は知らなかった。
「ねえ狂犬、どう思う?」
「……まさかしないとは思うけど、人目があるところで私に話しかけないでね。怪しい人だと思われるから」
家に帰り、こっそりリュックに入れて黒崎家に持ってきた狂犬に話しかけた。部屋は僕の提案で一護さんと同じ部屋になったため、そばにはコンもいる。
コンは、『それが話に聞く……』と引き気味にこちらを見ていた。
「ま、聞いてみるしかないんじゃない? それでなくともさりげなく探りを入れてみるとか」
「ぬ、抜き身じゃなくても話できるんだな……」
「何? ジロジロ見ないでほしいんだけど」
「アッすみません」
「な、仲良くしよう……?」
コンがベッドの上で体操座りして泣き出した。怖かったね……。
かわいそうに。虫の居所が悪い狂犬に話しかけるとは、なんてタイミングの悪い……。実は、お父さんをあまり良く思ってない狂犬は、『あの野郎私の大事な子孫を放っておくなんて!』と怒っているのだった。
狂犬、僕の斬魄刀『月夜烏』と話すようになってからどんどん口が悪くなっている気がする。僕に聞こえないように話すこともあるようで、たまにぐったりしているし……。実は苦労人なのかもしれない。
「あ、ごめんなさい一心さん、僕あんまそういうの得意じゃなくて」
毎日の日課の洗濯物を終え、晩御飯を作っている一心さんに言う。今日の献立はラーメンらしいが、なんとなく苦手なのだ。
ちなみに、今日は遊子に楽をしてもらう日だ。毎日小学生の娘にご飯を作ってもらっているのは、父親としてやはり思うものがあるのだろう。それでラーメンというのもどうかとは思うけど。
「そうなのか。すまねえ、じゃあ輝夜ちゃんだけうどんでいいか?」
「あ、うどんなら食べられます。ありがとうございます」
「おう! 他に苦手なものとかあるか?」
「苦手なもの……。そうですね、洋風のパスタとか、焼肉とかかな」
「そりゃまたうまそうなもんばっかを……」
一心さんが微妙な顔をする。お母さんも似たようなことを言っていた。人生半分損しとる! みたいな。
「あ」
「?」
「それって、もしかして吸血鬼的なやつか? ニンニクがダメ、ってことだろ?」
「う、嘘……そういうことだったのか」
たしかに、思い返せば苦手なもののほとんどがニンニクの入ったものだった。味や食感が苦手ってわけでもないからなんなんだろうと思っていたけど、臭いだったのか……。
って、え。
「きゅ、吸血鬼の末裔だって知って……?」
「あれ、言っちゃいかんやつだったか!?」
「あ、いや、大丈夫なんですけど……なんというか、知ってたんですね」
「おう、あいつからな」
思わぬところで気になることが確認できてしまった。やっぱりお父さんから伝えられてたのかよ!
それにしても、『吸血鬼の末裔』というワードの語感の恥ずかしさはなんとかならないものか。言う側も聞く側も少し気まずい。
『……ごめんなさい』
狂犬が僕にだけ聞こえるようにそう言った。
狂犬のせいじゃないよ……。
これから藍染さんを倒すまで、結構長い間黒崎家にお世話になります。
お金とかはちゃんと浦原さんから一心さんに流れてるのでご安心を。人一人養うのも馬鹿にならないお金と労力その他がかかりますからね……。
なんとか空座町に危険が及ばないように浦原さんも夜一さんも頑張っているので、輝夜は薄々今大変なんだろうなと思って迷惑をかけないように動こうとはしています。それがうまくいくかどうかは……どうでしょうか。
今回からどんどん時間が飛んで、半ば番外編のようになる予定です。輝夜の出番はお父さんが許さないぞ! 悲しいなあ……。
ということで、次回も頑張ります。