神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
輝夜四年生の時間軸。ジン太7歳、雨10歳です。
「お三方。くれぐれも迷子にならないように」
テッサイさんの言葉に、僕と雨、ジン太の三人は頷いた。
今日はショッピングモールに来ている。右を見ても店店店、左を見ても店店店。14階まであるようだから、テッサイさんが言うように迷子になったら大変だ。
ここに来たのは洋服を買うため。半分引きこもりの僕には必要ないと思っていたが、少し前に話すようになった黒崎姉妹に言われてしまったのだ。
『なんでそんなおじいちゃんみたいな色の服着てるの?』
『つーか、いつも同じ服着てるよな。ちゃんと服持ってる?』
今ある服といえば、深緑のパーカーとジーパン、ちょっと柄が違うTシャツだけ。それぞれ同じものが何十着もあるから、一応毎日違う服着てるよ。
ドヤ顔でそう言うと、おしゃれさんな遊子と夏梨にたいそう怒られた。親が選んでるなら別の人に選んでもらえ。いやいっそのこと自分で選べ。二倍の勢いに僕ははいとしか言えなかった。
というわけで、ここにいるのはセンスは不明だが頼りになる保護者のテッサイさんと、女の子だからきっとセンスもいいはずの雨、勝手についてきたジン太、今回の主役の僕だけだ。両親はいない。仕事があって行けないとお父さんが半泣きで言っていた。僕の服はお父さんが選んでいるため、仕事がなくても連れて行くことはないが。
お母さんもなにやら用事があるようだったが、用事がなくとも長時間人間の姿でいなければならないとなれば行かないだろう。服を着たくないと公言するのはいいが、外でうっかり公然わいせつ罪で捕まらないようにしてほしい。
「最初はどこに行くの?」
「オレあそこ行きてえ」
「ふむ、靴屋ですか」
では参りましょう、と言ってテッサイさんは奥に消えてしまった。他の用事も効率よく済ますため行く順番はきっちり決めてあっただろうに、ジン太の適当な一言でまるっきり変わってしまった。
「靴屋なんて行く予定じゃなかったじゃん」
「オレが行きたくなったからしょうがねえだろ」
「しょうがなくない。そういうのは事前に言わないと」
「あの……早く行かなきゃ、はぐれちゃう……」
雨に袖をひかれて思い出す。こんなところで言い合いをしている場合じゃない。僕たちは慌ててテッサイさんを追いかけた。
なんとか追いつき、ジン太は軽くて速く走れるという謳い文句の靴を買ってもらった。速く走りたいという気持ちが僕には理解できないが、ジン太も雨もたまに虚退治をしているらしいと聞けば納得はできる。しかし、二人とも力が強いのは知っているがこんな子供に虚退治させなければならないなんて。あの世の人たちは何をしているんだ。
「つ、次は……どうするんですか……?」
「ええと、服屋にはいかなくちゃいけないから……」
ぐう。
お腹が鳴ってしまった。
「腹減ってんのかよ。じゃあ昼メシ食おーぜ」
「で、でも僕の目的は服を買うことで、」
「そこにフードコートがあるようです。参りますぞ」
僕の(お腹の)せいで、予定が変わってしまった。僕のほうがしかたなさは遥かに上だが、これではジン太と似たようなものだ。ちら、とテッサイさんを見上げると、いつもの無表情で前を向いていた。怒っては、ない、みたい? というか、逆に嬉しそうな気もする。嬉しい要素はなかったはずなので、気のせいだろうけど。
「お、ラーメンあんじゃん!」
「たこ焼きも……!」
……まあ、二人が嬉しそうだから良しとしよう。
黒崎姉妹に他意はありません。買ってるのは(人間年齢にすれば)おじいちゃん(どころか仙人、もはや人外)だから間違ってないしね。
今回は子供たちにクローズアップしてみました。二話以降まだ書けてないですが、既にプロットからズレにズレまくっています。浦原さんが出る予定だったところから違うので。プロット、初めて書いたのに……。