神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか   作:さとう

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前回までのあらすじ
輝夜は昔不思議ちゃんだった。

第二話の続きです。10歳の誕生日の前々日の夜のお話。



第四話:お父様、次は法廷で会おう

その夜、僕はまた夢を見た。

いつもの少女は、今日は珍しく悲しいような顔をしていた。大きくて強気な赤い目が澱んでいるし、自慢だろう腰まである黒髪も心なしかツヤがない。同じくらいだった背丈も猫背気味になっていて、今は僕の方が高く見える。

「お腹空いた……。今日もご飯ないのかな」

彼女はお腹をさすりながら、たしかにそう言った。今日も、ということは何日も食べていないのだろうか。いつもは彼女のお父さんがご飯を運んできてくれるのに、出張とかでいないのか?

かく言う僕も、かなりお腹が空いていた。もっと辛いはずの彼女がいるのに、早く夢から覚めてテッサイさんの朝ごはんを食べたいなと思ってしまった。

空腹だけじゃなくて、胸がざわつく気もする。熱が出たときと似ているから、朝起きたら熱を測らなければ。変な汗も出てきた。あまり風邪をひかないけど今回は重症なのかもしれない。

「どう思う、狂犬。……やっぱり、そうなのかな。僕の聞き間違いじゃなかったのかな」

少女が刀に語りかける。どうやら、この部屋に大事に置かれている刀は狂犬という名前らしい。以前はぬいぐるみに話しかけている感じなのかと思っていたが、僕に聞こえないだけで会話は成り立っているようだ。

「うん、そうだよね。そんなことあり得ないもん、だってお父様だよ」

自分自身に言い聞かすみたいにそう言って、いつもみたいな優しい雰囲気に戻った。

 

白蛇(しろへび)、こちらへ来なさい」

「……はい」

少女が刀と会話してしばらく経つと、少女のお父さんが部屋に入ってきた。呼ばれた少女は、刀を持って立ち上がる。

白蛇とは少女の名前らしい。何度か呼ばれたのを聞いたことがある。

たまに見る少女のお父さんは、目がキリリとしていて利発そうだ。しかし今日は、いつもに増してギラギラとした表情を浮かべ、あまり見たことがない僕でも正気ではないと一目でわかるほどだった。

行っちゃダメだ、とは言えなかった。夢では声が出ない。しかし、わかってはいるが今だけは止めなければならないと本能で理解した。せめて、少女──白蛇に着いていこうと、見失わないように背中を追った。

 

白蛇のお父さんが足を止めたのは、初めて見るところだった。建物の外、裏山の少し開けた場所。

部屋から出てはじめて、今までいたのが神社の本殿のような建物だったと知る。お父さんの服装も神主さんぽいから、ここは白蛇一家の神社だろう。

それなら、白蛇も巫女さんの服を着て外に出た方が良かったのではないだろうか。よく見ればそれらしい女の人が数人、境内を掃除しているようだし、一人で部屋に籠るのは気が滅入るのに。

「おお、やっと来た。遅いっすよ」

「すまない。……これで本当にいいのか、考えていた」

さっきは木々に隠れて見えなかったが、他にも人がいたらしい。身体の大きな男が四人だ。

四人とも、それぞれ刃物を持っていた。もしかして、それで僕を……? いや、早とちりはよそう。どちらにしろここで逃げるという選択肢はない。白蛇がここにいるのだ。

「お父様……? こちらは、」

「白蛇……本当にすまない。しかし私もどうにかなりそうなんだよ。……いや、もうなっているのかもしれない」

頭がガンガンする。やはり今すぐにでも逃げたほうがいいと身体が告げている。この際、白蛇の手を取って神社に降り、巫女さんたちに助けを求めるしかない。

夢だとわかっているはずの僕がこんなに焦っているのに、白蛇は全くと言っていいほど動じていなかった。ただ悲しく目を伏せて、『やっぱり、そうなんですね』と呟く。

「知っていたのか、そうか……。私だって、こんなことしたくはなかったんだ。でも仕方ないんだよ、村のためだ。わかってくれるね」

やめてくれ。なんの話をしているんだ。帰ろう、浦原商店は白蛇みたいな子も歓迎してくれる。僕はまだ君を、現実で見つけられていないんだよ。だから──

 

「血神『白蛇』、君にはここで死んでもらおう」




白蛇のお父さん、台詞を書いてみるとヨン様みたいですね。でも違います。普通にオリジナルキャラクターです。
もしヨン様だったら、浦原さんはお父さんになってるしヨン様もお父さんになってて大変ですね。強キャラたちの弱みを簡単に握れそう。
夢はまだまだ続きます。とは言っても次回までかな? 輝夜起きて超起きて!


あ、輝夜のイメージ絵を描いてみました。あらすじの最後にあるのでよければご覧ください。作者欄から見ると見られるコメントも書いたのですが、誰にも見られそうにないのでここにコピペしておきます。
『「神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか」の主人公を描きました。
黒髪ショートに赤いつり目、服は大抵長袖長ズボンです。お父さんが用意するもんだから、「お父さんと色がお揃いっスよ〜〜!」と深緑を買ってきがち。』
ちなみに夜一さんが買ってくると膝上の半ズボンとか買ってきます。「動きやすいじゃろう」とか言って。色は紫かオレンジです。お揃いじゃ! テッサイさんは一緒に買いに行ってくれそうですね。いい人だ……。
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