神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
輝夜と白蛇が危ない!
若干のグロ描写があります。苦手な人はこの回の後書きまで飛ばしてください。
「……どうして、ですか」
「君は人を惑わす力を持っている。君が神社から出て村民と出くわすと危ないだろう。もちろん村民が、だ。わけもわからず狂わされるのは、しんどい」
白蛇は、僕と同じなんだ。赤い目は、人を惹きつける。呪いにも似た力は僕たちには強すぎる。
「神社にいたら、大丈夫です」
「僕が大丈夫じゃない。野兎はなんともないらしいが、僕に君の存在は毒だ」
「そう、ですか……」
自分の存在が毒だなんて、実の父親から言われたらショックに違いない。きっと白蛇はうっすらわかっていたのだろうが、何もそこまで言わなくても……いや、殺すしかないところまで来てしまったのだから、配慮なんてものを求めるのは無理か。
ちなみに『野兎』とは、白蛇のお母さんだ。今まで一、二回しか見たことがないけど、穏やかで優しそうだった。
今日のことはお母さんには伝えたのだろうか。こんなこと、言えないか。白蛇のお母さんは、お父さんと違って正気のままなんだから。
「すまない。さようなら」
白蛇のお父さんは、眉間にしわを寄せたまま言った。
男たちの中の一人が白蛇の胸をひと突きしたのを皮切りに、残りの三人が飛びかかる。白蛇は諦めたように目を閉じたきり、自発的には動かなくなった。
目の前で人殺しが行われているという非日常に、目を瞑るのを忘れてじっと見た。見るだけで白蛇が斬られたところが痛むようだったが、信じられないことに斬られたそばから回復して、次の攻撃が来る前に五体満足元通りになっている。
彼女に何が起こっているんだ? 普通、腕を切り落とされたら二度と復活しないだろう。腕どころか小指すら切り落とされた経験がないのでわからないが、しかしそのくらい経験がなくとも常識なはずだ。
──彼女は、本当に人間なのか?
そのとき、頭を殴られたような衝撃が走った。
僕は何かを忘れている。重大なことだ。昔、何かがあった、何かがあったはずだ。
目の前では、脅威の回復能力をしても回復しきれなかった傷を抱える白蛇が這いつくばっている。
男たちは、何がそこまで駆り立てるのか、狂気に満ちた目で刃物を振り下ろしていた。ちょうど、僕をここまで連れて来たお父様と同じように。
こうしている内にも白蛇は弱っていく。既に右腕を再生できなくなり、男の一人が右腕だったものを熱心に輪切りにし始めた。次は左脚、右脚。
やめてくれ。僕はゲームが好きだがホラーゲームなんてしたことない。テレビでホラー映画が始まっても、いつもお父さんが消してくれる。
まして、こんなリアルな情景。目を瞑りたくても身体が言うことを聞いてくれない。白蛇とリンクしているみたいに、腕や脚の感覚がなくなる。全身が痛い。昔かかったインフルエンザなんて目じゃないくらい。
涙が出る。僕は滅多なことじゃ泣かないのに。歯がガチガチと鳴る。寒いんじゃない、恐怖と混乱で。
この夢はいつ終わるんだ。誰か起こしてよ、お願い、無精ひげの頬ずりも我慢する、朝ごはんなんてなくていい、だから。
違う、誰かになんとかしてもらうんじゃない。これはきっと、僕が思い出せない何かを思い出さなくちゃ終わらないんだ。
だから思い出せ、早く。身体の感覚が全部なくならない内に。
いつのことだ? 物心つく前、いや、それよりもっと前。
僕が、
僕が、血神『白蛇』だった頃のことを。
足元では、
今回のあらすじ
夢に出てくる少女、血神『白蛇』の正体は、浦原輝夜だった。白蛇は、浦原輝夜が浦原輝夜になる前の姿ということです。本編読んでもわかりにくいかもしれません。そして、白蛇はお父さんたちによって殺されちゃいました。正確には死にかけですが。
あ、白蛇は女物の着物を着ていますが男の子です。これについては次回お話しできるかな。
さて、やっと輝夜が神と呼ばれていたころを書けました。こんなにグロくなるつもりはなかったのですが、どうにも文字数が足りず……。途中で、冒頭を増やせばいいんだと思いましたがせっかく書いたのを消すのもなと思い、まるまる載せちゃいました。
なんだか説明不足なところがたくさんありますが、これも次回なんとかします。頑張るぞ。