神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
輝夜は昔、血神『白蛇』だった。
僕は飛び起きた。寝汗はびっしょりなのに暑いどころか凍えそうだ。
夢の中での出来事は全て覚えている。
何が『あの子は僕が助ける』だ、そもそもあの子は昔の僕なんだから無理に決まってるのに。
まだ動悸がおさまらない。胃から何かがせり上がってくるし、過呼吸でくらくらしてきた。寝起きは間違いなく人生で一番悪い。
そうだ、狂犬は? たしかお父さんの部屋に刀があったのを見たことがある。浦原輝夜になってからずっと会話してないのに、それより前を思い出してからは狂犬と話したくてしかたない。あのころは狂犬だけが唯一の拠りどころだったのだ。
今は深夜でお父さんを起こすのは忍びないが、狂犬と喋るだけで呼吸が落ち着きそうなんだ。それに、お父さんはまだ起きてるかもしれないし。
こうしてても苦しいだけだ、とにかく部屋に行ってみよう。
そうして、ベッドから足を下ろしたときだった。バンッと扉が乱暴に開かれる音が響く。
「輝夜! 大丈夫っスか!?」
「お、お父さん?」
部屋に駆け込んできたのは、お父さんだった。お母さんも続いて入ってくる。二人とも血相を抱えてどうしたんだ。何かあったのか?
「何かされたりしとらんか!? 外傷はないようじゃが……」
「えっと、いや、何もないんだけど……強いて言うなら、夢を見たくらいで」
よかった、と二人が胸を撫で下ろす。
下で何か起きたとすれば物音もするはずだが、聞き逃した? わからないことは多いが、それを聞いてもいいものか。
待っていてもこれ以上言うつもりはないようだし、聞かないでおこう。はぐらかされるのも聞いたことを後悔するのも苦手だ。
起きてすぐから比べると頭がスッキリしてきた。僕も夢の件で動揺していたが、この人たちの動揺ぶりを見て落ち着いてしまったようだ。
余裕が出てくると、今度は疑問が湧いてくる。お父さんとお母さんは、実の子供でもない僕をどうして育ててくれたんだろう。どこで出会ったのかすらわからない。そもそも、あそこまで細切れにされて、生きていたのか? 生きていたとして、なんで幼くなっちゃったんだ。浦原輝夜としての記憶で一番古いのは3歳くらいのものだから、身体が若返っているか、死んで生まれ変わったか、のどちらかなのか。
悩む前に、この二人には過去のことを言った方がいいだろう。何か知っているかもしれないし、なにより、僕のことを知っていてもらいたいと思った。
「……ねえ、話したいことがあるんだけど」
「夢の話、ですか」
「うん、そんな感じ。……いい?」
「悪いわけがなかろう。輝夜の話じゃったらなんでも聞く」
きっとこんなふうに言ったらどんな重大な話をされるのかと構えてしまうのに、お母さんはなんでもないみたいに即答してくれるんだな。なんだかそんな些細なことが嬉しくて、僕は意味もなくベッドに座り直した。
白蛇って名前は回復能力の高さからつけた名前だったんですが、スンスンさんが白蛇モチーフだったことを思い出して頭を抱えました。なんにも関係ないし、破面の皆さんが出る予定もありません……。
でも今更名前を変えるのも……というか、良い名前を思いつきません。不死身イメージの生物、フェニックス? 強そう(小並感)。
説明回にはなりませんでした。しかもなんだか輝夜の情緒がターン制でぐりんぐりん変わっていって大変です。ごめんね輝夜。
二人が血相を抱えて部屋に来たのは、輝夜の霊圧がかなり不安定で、何か不審者的な存在が危害を加えたんじゃないかと思ったからです。いつヨン様が一人息子とかいう浦原喜助の弱点をついてくるかわからないので。書くかどうか微妙なのでここで言っちゃいます。
次回、ようやく血神とは何か、輝夜は何者なのかが明らかになると思いますので、よろしくお願いします。