神と呼ばれた少年は平穏な日常を夢見るか 作:さとう
お父さんとお母さんに昔の話をすることになった。
白蛇が女の子の格好をしていたことへの説明を付け加えました。3.25.2021
僕は昔、
血神の主な仕事は、村民に血を授けること。週に一度ほど、村民が捧げた湯呑み一杯の血を飲み干し、その湯呑みに半分程度自分の血を注いで元の場所に置く、というのがならわしだ。そういう決まりごとの一つに、10歳まで女物の着物を着るというのもあった。女性である初代を模して力を強めるとか、自分の身体を依代にして初代を降ろすとかの理由があるとされている。これが、夢で見た子が女の子だと勘違いした原因だった。
血神の血には回復能力があり、それを飲んだり浴びたりすると怪我や病気がみるみるうちに治る。だから村民は、授けられた血神の血液を患部にかけるなどして恩恵を得ていた。
しかし、2代目、5代目、10代目と、狂犬の血が薄くなっていくにつれて力も弱まっていった。
赤い目は血神の力の象徴とされている。実際血神の歴史書には、赤い目を持つ血神はその親や子より力が強く、特別にさまざまなことができたと記されていた。例えば、目を合わせるだけで人を惹きつけ、言うことを聞かせることができる。姿かたちを変えられる。赤目でなくても人間離れした生存能力や肉体能力を持つ者は多かったが、赤目は格が違うのだ。
しかし、ここ200年あまり赤目が産まれることはなかった。これは狂犬が言っていた話だが、初代は種族特有の赤い目を持っていたのが、世代を追うごとに赤目が産まれることが減っていったらしい。
そんな折に産まれたのが31代目血神『白蛇』、僕だった。僕は何世代かぶりに産まれた赤目で、しかもとりわけ力を持っていた。中でも回復能力が高く、再生の象徴である『蛇』が名前に入るほどであった。
人を惹きつける能力は赤目にしては弱かったが、制御の方法を教える者もおらず人と接する機会もなかったために暴走気味になってしまっていた。これは浦原輝夜になっても変わらず、幼少期には相手を無条件に惹きつけた。無理やり惹きつけられた人々は、自分の感情に頭がついていかず混乱し、しばしば暴力という形で処理しようとする。幼稚園で受けた理不尽な暴力は、つまりそういうことだったのだ。
最もこの力の餌食になったのは、僕の血の繋がった父親だろう。父は僕が産まれてすぐ、僕に人を狂わせる能力があることを悟っていた。だから僕を部屋に隔離して、村人にまで被害が及ぶのを防いだのだ。
これで万事解決かと思われたが、血神にだって食事は必要だ。そして、食事を僕の部屋まで運ぶ係として、父親は毎日僕に会いにきた。父は暴走したままの赤目にじわじわと侵されて、最後には実の息子を殺さなければならないという思考に至った。
そうやって部屋の外で僕を殺す計画を立てているのを、僕は扉越しに聞いてしまったのだった。
父は僕のことをまだ小さな子供だと思っていた。実際、当時も今と同じ9歳で父から見れば幼いだろうが、暇な時間のほとんどを読書に費やしていた僕の頭は大人の使う難しい言葉を理解できるようになっていたのだ。
それでも、僕は聞き間違いだと信じて過ごしていたのだが。
結局あの日、父に殺された。
それが10年前の今日の話。
僕の、本当の誕生日だ。
白蛇時代のお父さんも正しいことをしたといえばそうなんですよね。閉じ込めておかなければ村民が狂って全滅もあり得たことなので。だけど殺すのはやりすぎだぜ、旦那。彼もまた狂っていたからしかたのないことではありますが。
誰も目を見ると危ないということを知らないのが一番の敗因と言えるでしょう。200年も赤目が産まれていなかったのですから、そもそも誰も知り得ないんですよね。白蛇だけが狂犬から伝えられていましたが、閉じ込められていたため誰にも言えないという不運。
ちなみに、第五話で嬉々として白蛇を滅多刺しにしていた男たちも、白蛇の目を見てしまったゆえのオーバーキルでした。
これで輝夜から語れるほとんどのことを明かしました。次回からは視点を変えたり戻ったり、ついに狂犬が喋ったりします。次回かどうかはわかりませんが、とにかく頑張ります。