少女は歩く。
首にはヘッドホンをかけ、だが音楽を聴いてるわけではない。
肩ぐらいにまでかかった長い髪が揺れ動く。
少女の名は『中野 三玖』。
そんな少女を、私は少し離れた物陰からじっくりと見つめていた。
FPSなどだったら即発見されそうなガバガバな隠れ方だけど、そもそもここも非現実の世界、漫画の中の世界。
だからこそ、この世界の住人じゃない私は悪戯を行うことが出来る。
あの少女には、私のスカートめくりのターゲットになってもらうわ。
「おっはよー」
私にとっての現実世界。
近くの高校に通う、一般的にいうところの、どこにでもいるような高校生だ。
そこで少し長いスカートを履いた、黒いショートカットの少女が私に話しかけてくる。
「おはよ、冨和子」
私もあいさつを交わすと、冨和子ははぁとため息をつく。
「今日、英語の小テストよね。ちゃんと勉強した?」
「もちろんよ」
学生の本業は遊び。
だけどその遊びを満足に行うには学校から出される課題をクリアして、何の憂いもなくさなければいけない。
「ほんと、よく集中力続くよね。どうしてそんなに集中力が続くの?」
「それはもちろん……」
私は一息つき、きっぱりと告げる。
「好きな漫画を読み、後腐れなくしてから物事に取り掛かるからよ」
「なるほどー」
「でも冨和子は漫画に限らず、物語を見るとまた最初から見なおすタイプじゃない。それだと勉強に取り掛かる時間が無くなるからおすすめ出来ないわね」
「うぅ……だって最初はこういう関係だった子たちが色々な物語を経て関係性などが成長していく様子を見ないと満足できないもん」
確かに言いたいことは分からないでもないので、一応は頷く。
「ま、それはいいとして」
「いや良くないよ?」
冨和子が唇を尖らせる。
正直私よりもかわいさのランクが1段階ほど上の彼女がそういう顔をしてもやはりかわいらしいという感想が来るのはずるいと思う。
「冨和子、今日日直でしょ? 私なんかとのんびりおしゃべりしてていいの?」
「わ、そうだった。じゃ、先に行くね」
冨和子は慌てて駆け出していく。
「うっかり転んでパンツ丸見えにならないようにねー」
「そんなことしないよっ!」
私がからかい半分で忠告すると冨和子は少しばかり顔を赤くしながらぷんすかしながらも、すぐに前を見直し走っていった。
「……まぁ、私の場合漫画を読むのには別の目的があるけどね」
そんな冨和子の後姿を見送りながら私はぽつりと呟く。
その呟きは誰に聞こえることもなく、風の中へと消えていった。
「ただいま」
学校を終え、私はそう言いながら玄関で靴を脱ぐ。
そしてそのまま家へと入り込むとき、私は家に帰ってきたのだと実感する。
「おかえり」
台所にいる母さんに対して聞こえるようにもう一度だけ「ただいま」とだけ言う。
台所から漂ってくる香り的に、父親の晩酌用、そして私たちの夕食用の魚をさばいているのだろう。
焼き魚、もしくはフライになるのが夕食用、そして晩酌用は刺身になるだろう。
そんなことを考え夕食に思いを馳せつつ自分の部屋へと入る。
「よいしょっと」
さて、夕食まであと1時間近く。
母さんは魚を捌いてるから部屋に来ることはないだろう。
私はとある漫画の一ページをぺらりとめくる。
それは、読むためじゃない。
誰に言っても信じてもらえない能力。
それはーー
その漫画へと吸い込まれるように、私の体は消えていく。
「さてと……」
気が付くと、私は道路に立っていた。
恰好は赤色のパーカーにスリーラインの黒ジャージ。
女の子としてお洒落を捨ててると言われても納得せざるを得ないが、動きやすさは天下一品だ。
私だけが持つ能力。
それは、漫画の世界へと入り込む能力。
好きな漫画の世界へと入り込み、その世界の中の住人としてふるまえる力。
だけど今どきテンプレになるぐらい流行してる異世界でチート能力を持って無双しましたって、それは私の趣味じゃない。
私の趣味は。
目の前に歩いている三玖という少女は、この世界の中では重要なキーパーソンの1人である。
キーパーソンは6人。
この6人を取り巻く中でこの世界は回っている。
1人は男の子で、もう5人は女の子。
だけどもその5人はみんな同い年、つまり5つ子である。
双子ですら珍しいのに5人にもなると、さすがは漫画の世界だと度肝を抜かれてしまう。
そして三玖ちゃんは5つ子の中で一番内気な性格の女の子。
だけど胸は主張がすごく……私だってなくはないもん。
おっと、そんなことを考えている場合ではない。
私はスマホを取り出し、録画モードを起動する。
そして前を歩いている三玖ちゃんに近づいていき、腕を伸ばし彼女のミニスカートの下にスマホを潜り込ませーー
(おぉ……これはなかなか)
普通、スマホカメラに映してる画像は私に見えることはない。
だが、私がこの漫画の世界の中に入り込んで出来ること。
それは、スマホの録画してる画像を私の視界として映すことが出来る。
無論、ちゃんと歩いている私の視界も映るから、スマホのカメラはあくまで脳裏に映る映像ってことね。
そして、途中で立ち止まったりなんてしたら盗撮がばれてしまう。
なので歩き続きながらスマホをしまう。
だが、録画モードは続けたままだ。
そして前を歩く三玖ちゃんを抜かしそうな早歩きを行い、彼女に近づいた瞬間、私は呟く。
「……サテンの水色」
「……ふぇっ!?」
何事かを察したように三玖ちゃんは振り返り。
「そーれっ!」
バッ!
振り返り無防備になってる三玖ちゃんのスカートを前から両手で掴み、思いっきりめくりあげる。
スカートはあっさりとめくりあがり、先ほど私が呟いたようにサテンの水色パンツが私の目の前に晒される。
ストッキング越しではあるが、それでも水色だと分かるぐらいに主張している。
そしてスマホ越しではパンツ越しでも分かる立派なお尻の形だったが、前から見た場合はフロントにリボンがついており、サテンパンツの少し背伸びした中に紛れ込む可愛らしさが見事に表現されている。
「なっ、なな何を……!?」
パンツの色を言われたあげくスカートをめくられ、三玖ちゃんはミニスカートを抑えつつ顔を真っ赤にし怒りと困惑半分の顔で私を見てる。
もしこれが男だったら怒りの感情の方が支配するのだろうが、私は女の子。
だからセクハラされても困惑の方があるのだろう。
「スカートめくり。三玖ちゃん可愛いけど内気なところあるし、こういうことされるということを忠告しておこうと思って」
「だからっていきなりスカートめくりなんて……」
「あのね、三玖ちゃん。もし好きな男の子が出来て関係が進展したら、スカートめくりどころか、そのパンツもストッキングも脱がされて、あられもないところを見られちゃうんだよ?」
そんなことを言うと、三玖ちゃんは顔をぼんっという擬音が流れそうな勢いで顔を赤くし、スカートを強く握りしめる。
「というわけだから実践行為に及びながら警告。じゃあねー」
「あ、ちょ、ちょっと待って……」
彼女が逃げる私を追いかけようとしたが、私はさっさとその場から逃げ出していく。
「あ、あれ……?」
スカートをめくってきた女の子が曲がった路地裏。
そこにはすでに誰もいなかった。
だが彼女が曲がって三玖が追い付いてほんの数秒。
その数秒で視界から消えるなんてありえない。
もしかしたら夢?
だけどもこの顔の火照りは間違いなく現実……あ、あれ……?
三玖はスカートめくりされ過激な発言を聞いて顔を真っ赤にし、今起きた状況と合わさって完全に混乱状態に陥っていた。
「ふーっ、良い映像が撮れたわ」
私は現実世界に戻り、スマホに録画していた光景を眺めていた。
可愛い女の子のスカートをめくり、そのパンツ丸見え状態をばっちり録画する。
可愛い女の子がスカートをめくられ辱められ、慌ててる様子を撮影する。
それが私の趣味。
もしこれが見られたとしても、ネットで流れていたエロ動画をこっそりダウンロードしたと言い訳も聞く。
この能力の存在をもしエロい男とかが聞いたら、血涙を流す勢いで羨ましがるかもしれない。
まぁ私自身このスマホに残ってる動画データが無かったら嘘っぱちだと否定するだろう。
まぁこんな現実離れした能力、他に誰も持ってないか。
そんなことを思いながら、恥ずかしがる三玖ちゃんの表情とパンツを見て楽しむのであった。