グラップルデュエル-忘却されし街の機士- 作:EXIA00Qt
それから数日後ーステイブルタウン内のラボと通称される研究施設の中には10機分のデュエロイドの基礎フレームの姿があった。
デュエロイドとは?グラップルデュエルに用いられる18メートル級ロボットの総称であり、定義としては上述のフレームが用いられていることが挙げられる。
この研究施設はかつての大戦中に数々の超兵器を生み出した。この施設の所有が「機関」の前身となった組織と敵対する勢力のものであったがために「機関」による再利用がなされないまま廃棄されていたところを、リョーヤらが活動拠点兼研究所として使用している。
そう、FORGOTTEN CITYが「機関」の管理から離脱した人々の居住地になっている理由の一つに、かつて大戦中に上述の組織と敵対した勢力の支配区域であったことも挙げられるのである。
今はコンクリートフォレストの技術部が方針決定のための会議中である。
「さて…再度確認するが、大まかな方針はFC粒子を使用した"恒星機関"の採用と、汎用性の重視ということだったな」
リョーヤ率いる技術者陣が研究所の一室でデュエロイドの設計思想の確認及び設計方針を検討していた。
「あれほどの大きさのモノを俊敏に動かすには現時点での"恒星機関"一基では出力が不足するんじゃないか?」
技術者の1人が言った。
「そこに関しては、複数個の"恒星機関"を全身の各部位に搭載することで一基当たりの負担を軽減させればいいんじゃ?」
「大きさの問題は周辺機器の改良でなんとかするにしても、共鳴に関してはまだよくわかってないんだ、それに機体が耐えられないなんてことになったら目も当てられんぞ」
「縁起にもないことを言うな。共鳴に関しては、敢えて全部の"恒星機関"を共鳴状態で固定することで低出力でも常に実用に足る出力を出せるからより小型化できると考えられるけどどうする?」
数分後ー
「…わかった、幸いフレーム自体は割と数があるから、まずハイエンド試作機を作った後に量産型の開発をすることにするか?」
「「「異議なし(だ)」」」
こうして無事に方針が決定した。そして件のハイエンド試作機というのが、後のヴォルター系列である。
ところ変わってリョーヤの自室、ここは実質コノハたちの溜まり場になっていて今も彼らが溜まっていたのだがー
「なあリョーヤさん、恒星機関?ってなんなんだ?」
「…ようやく興味を持ったか、お前はユウリと共にパイロット候補筆頭なんだからもっと早くそうなってもよかったんだぞ…?まあそれはともかくとして。恒星機関についてか。」そう言って彼はパソコンを操作し、一つのファイルを展開した。
「これは…なになに、FC粒子?ってのを利用した…半恒久機関!?」コノハは素っ頓狂な声を上げた。
「そうだ。FC粒子というのはFatal Colloidal Particleの略で、これが実用化された当時、文字通り"決定的な"変革を世界にもたらしたであろうことから便宜上名付けられた。というのも、これは一定の条件下で噴射させると大きな斥力を発生させるんだ。大きさがコロイド粒子と同程度だから一応コロイドとついているが、性質は根本的に異なる」
「なるほど、なんとなくわかった…けど、それって推進剤としての役目しか果たせてないよな?電力供給手段にするには発電所的タービン構造使った電力変換器がいる気がするんだけど」
コノハはリョーヤの少々難解な説明をなんら支障なく理解していた。
「その通りだ、しかしそれはFC粒子のもう一つの性質で解決されてる。それは、特殊な素材を介すると、FC粒子はそのまま電子の流れに変換されるってものだ。ここから、構造がある程度電子と近い何かである事までは推定できる」
「なるほどな…じゃあ半恒久機関ってのはどうやって?」
「それは俺たち技術者にもよくわかってない。確実に言えるのは、ここの近くから発掘された大量の結晶体、それの中からFC粒子が発生するってことくらいだ。そしてまた特異なのが、どんな刺激を与えてもエネルギーを一気に放出するような、つまり爆発するってことはない」
「なんだそりゃ、ただの便利物質じゃないかそれ」
「どうやらそうらしいな、つくづく大戦時代の技術は恐ろしい」
疑問に思っただろう。なぜ彼らは正体不明の物質を平然と動力炉の心臓部に使っているのか?と。
その理由は、単純に彼らが大戦時代の正体不明の遺物を使い慣れすぎているが故に、ちょっとやそっとの得体の知れなさは気にも留めないからである。
「だがひとつだけ問題がある。この間二基を同調させた状態で稼働させてわかったんだが、発せられる電力が大幅に強化されていて、単体稼働時の2倍じゃ到底足りない程…おおよそ4倍程度なんだ。これから三基より多く同調させてやってみるつもりだが、どれほど莫大な電力を発生するかはもはやわからん。どういうことかというとー予測不能だし、出力が今のところ制御不能だ」
リョーヤは何故か目を輝かせてそう言った。
「なあ、あんたがめちゃくちゃワクワクしてるように見えるのはいいとして…それって2の二乗だよな?もしかしてなんだけど2を同調させた機関の数で累乗した数字分出力が上昇するとかじゃないか?」
コノハは突然そんなことをを言い出した。というか4を2の二倍でなく二乗というあたりちょっと変である。
「流石にそれはないだろ、小型高効率にも程がある…と言いたいところだが実験しないことにはなんとも、だな。まあ仮説の一つとして扱っておくよ」
そう言って彼はパソコンを手に取り凄まじい速度でその仮説を文字に起こした。その間なんと5秒、神がかった速さのタイピングである。
ちなみに。大戦時代の遺物を利用しているのは確かだが、その正体不明の物質を実用可能なレベルの動力機関へと仕立て上げたのは間違いなくリョーヤら技術者たちだ。それは彼らの能力が非常に秀逸であったためであり、故に「機関」の管理下で開発しているだけのナンバーズが真似できるかと言うと微妙なところである。
そして、同調させる"恒星機関"の数を増やして実験を繰り返した結果。
ーなんとコノハの仮説は正しかった。
それはつまり、一個一個は自家用車のモーターほどの大きさと出力ながら同調させ出力上昇をかけることで「デュエロイドをも動かす超高出力を発揮させるという半ば詐欺のような真似」をすることが可能になったということである。
このFCで独自再現された常識破りも甚しい動力機関がやがて訪れる世界の危機を打開する切り札になることは、この時の彼らには知る由もなかった…
次回は短い戦闘シーンが入ります。
あと、恒星機関の元ネタはもちろんのこと某太陽炉です。
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