ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

34 / 68
たくさんのミスを指摘してくださった皆様へ作者からお詫びの砂糖です。
今回も爆速で書いたんで誤字が多いと思います。いつも誤字報告してくださる皆様、ありがとうございます。

警告

非推奨:電車やバスなどの公衆の目がある場所での閲覧
これを読んでいる人は多分シロナさんとカイムがひたすらイチャつくのを見ているのが好きな人物と推定。よって見る場合は周囲の目がない場所で読むことを推奨。



警告はしましたよ。
これが欲しかったんやろ?


閑話 ミオシティ

「来週の予定?」

 

仕事をしている最中、シロナはカイムに問われた質問をそのまま言った。

 

「ああ、来週の休日の予定ってどうなってる?」

「その日は…一日中オフよ」

 

一応二人は互いのスケジュールを共有しているため、オフであることは把握しているはずだ。しかしカイムもそれはわかっているため、聞いてくるということは何か意図があるはずだと考えたシロナは素直にオフであることを答えた。

 

「まあ、だよな」

「貴方も把握しているわよね。わざわざ聞いてくるなんてどうしたの?」

 

シロナがそう聞くと、カイムはどこか苦い顔をする。なんだろう、とシロナが首を傾げると、カイムは意を決して口を開いた。

 

「…その日、空けておいてほしい」

「言われなくても空いてるけど…どうしたの?」

「……出かけたい。二人で」

 

カイムの言葉にシロナは一瞬ぽかんとするが、すぐに笑った。

 

「あら、デートのお誘い?」

「……端的に言えばそうなる」

「嬉しいわ。じゃあその日は空けておくわね」

「頼んだ」

 

それだけ言ってカイムはブラッキーを伴って去っていった。

シロナは早速手帳を開き、上機嫌で来週の休日に予定を書き込む。普段は二人とも忙しいため、あまりデートらしいデートもできていない。故にこういう空いてる日にデートができることはとても嬉しかった。加えて今回はカイムから誘ってくれているという事実がより嬉しく感じられた。

 

「あ…」

 

シロナは手帳に予定を書いた日付を見て思わず声を出す。その日は誰もが知っているイベントのある日だった。

 

「そっか…クリスマス」

 

デートの予定が入った日は12月24日…所謂クリスマスイブだった。忙しすぎて失念していたが、休日とクリスマスがちょうど被っていたらしい。クリスマスが休日だったのは本当に偶然だったが、それに合わせてカイムが予定を立ててくれているとは考えていなかった。

クリスマスは恋人としては外せない日である。今までの付き合う前は普通にちょっとしたパーティー的なものをやって終わりだった。だが今回はデートをしていく。久しぶりの休日、クリスマス、カイムからのお誘いという三拍子が揃ったシロナはとても上機嫌になり、目の前の仕事を爆速で片付けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

翌週

 

「♪」

 

シロナは鼻歌を歌いながら身支度を整えていた。

今日は待ちに待ったデートの日。お互い忙しい立場故にあまりこういった恋人らしいことができないシロナはこういう数少ない機会を全力で楽しむことにしている。加えて今回はシロナからではなく、カイムからのお誘い。こういう提案はシロナからすることが多いため、誘ってくれたことがとても嬉しかった。

楽しそうに化粧をするシロナを傍にいるロズレイドが不思議そうに見ている。シロナが不機嫌になることはほぼない(拗ねることはある)が、ここまで上機嫌なのもポケモン達の目から見ても珍しいものだった。

そんなロズレイドに気づいたシロナはロズレイドの頭を優しく撫でる。

 

「今日はね、カイムとデートなの」

 

その言葉を聞いてロズレイドは納得する。カイムのことが大好きで、普段あまりデートなどできないシロナがデートをできる。それだけで上機嫌になる理由には十分だった。

 

ロズレイドから見てもカイムという人物が信頼に足る人間であることはわかる。ぶっきらぼうな部分もあるが、ポケモン達を相手にする時は必ず同じ目線に立ち、真摯に接しようとするのがよくわかるからだ。

自分の主人であるシロナがカイムを好きになる気持ちもわかる。ロズレイドはシロナのことを主人と認め、そしてシロナのポケモンでいられることを誇りに思っている。だが仮にカイムのポケモンだったとしても幸せだっただろうと思える。そう考えられるほどカイムのポケモン達はカイムに信頼を寄せているのがわかる。

そんなカイムがシロナとデートをする。上機嫌にならないはずもない。

 

着ていく服を選び始めたシロナが心底楽しそうな笑みを浮かべていることがとても嬉しく、ロズレイドも服選びに加わるのだった。

 

 

 

 

 

 

一方、カイムは落ち着かない様子で部屋にいた。

 

「………」

 

ブラッキーは落ち着かない様子のカイムを不思議そうに見ながらカイムの膝の上にいた。ブラッキーの様子に気がついたカイムは苦笑しながらブラッキーの頭を撫でる。

カイムの服装は白いシャツに薄い青色のセーター、紺色のジャケット、そして黒のスキニーというかなり整った服装だった。普段機能性を重視する服装を好むカイムにしては珍しく、見た目を重視した服装になっている。

 

「……おかしく、ねえよな」

 

鏡で自分の服装を確認する。髪の毛もセットし、それなりにいい服を選んだ。わざわざガラル地方にいる姉に頼んでカタログからカイムに似合う服を選んでもらい、それを取り寄せた。スタイリストである姉の目に狂いはないだろうが、オンラインでのスタイリングだったためおかしな場所があってもおかしくない。加えて姉の好みとシロナの好みは恐らく違う。シロナにとって『良い』と思えるかどうか。最低限の身嗜みしか身につけてこなかったカイムは一朝一夕でファッションセンスをどうこうできず、結局それを生業としている姉を頼った。

 

『まっかせない!シロナちゃんが結婚したくなるような男にしてあげるよ!』

 

イキイキとした様子をする姉の様子を見てげんなりしていたのも遠い昔に思える。

 

「なんで普通に喜ぶじゃなくて結婚なんだよ…」

 

正直、カイムも『それ』について意識している。年齢的にもそう考えていてもおかしくはない。先日カンナギタウンに行った時にそれを余計意識させられたため、その意思が強くなった事実は否めない。

姉に対して内心で毒を吐いていると、扉がノックされる。

 

「カイム?準備できたわ」

「ああ」

 

カイムが扉を開くと、そこには綺麗に着飾ったシロナがいた。シロナはグレーのホルターネックインナーにオフショルダーの黒いトップス、黒いスキニーというシロナのイメージカラーである黒で統一された服装だった。オフショルダーなのが少し寒そうにも思えるが、手に持ったコートを外では着るため防寒対策はしているらしい。

 

「どう?デートだからちょっと気合い入れてみたんだけど」

「…ああ、よく似合う」

「ふふ、ありがと。カイムも似合うわよ。カッコいいわ」

「どーも」

 

どうやらシロナのお気に召したらしいことを理解したカイムは内心でほっと胸を撫で下ろした。多少懸念があったとはいえ、さすがはスタイリストを生業とする姉の目に狂いはなかったらしい。

 

「それにしても、こんな服持ってたんだ」

「…買ったんだよ」

「いつの間に…」

 

四六時中というわけではないが、同じ拠点にいる以上、一緒にいる時間は長い。いつかのアラモスタウンのようなことがない限り二人の拠点が離れることはほぼない。だというのにシロナが知らぬ間にこんな服を用意していたとは思わなかった。

 

「シロナがいない時間を見計らって姉貴に相談した」

「イサナさんに?」

「生憎、俺はこういうの疎い。なら専門家に頼んだ方がいいだろ」

 

サイズに関してもイサナがカイムの体格に合うものを送ってくれた。しかもお代も出してくれるという献身っぷりを発揮してくれた。金は払うと言ったのだが、奢りだと言って聞かずに金を受け取ろうとはせず結局カイムが折れることとなった。

 

「ふふ、イサナさんには後でお礼言っておくわね」

「いやいいよ。俺がもう言ったし」

「かっこいいカイムを見せてくれたお礼よ」

「…………」

「あ、照れてる」

「……やかましい。準備できたなら行くぞ」

 

車の鍵をポケットに突っ込み、カイムはシロナの手を取って歩き始める。その耳が赤くなっていることを知っているのは、シロナと足元にいるブラッキーだけだった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

二人が訪れたのはミオシティのショッピングモールだった。

立体駐車場に車を停めてモール内に入ると、中はクリスマスということもあり煌びやかに装飾された店内は家族や恋人達、学生集団などで大いに賑わっていた。ポケモンと共にモール内を歩く人の姿も多く見られる。

 

「休日にクリスマス。混む理由としては十分すぎるか」

「そうね。考えることはみんな同じよ」

「人酔いしそうだ」

「そんなヤワじゃないでしょ?」

「まあな」

 

カイムはシロナの手を取る。

シロナはカイムが手を繋いできたことに気がつくと、小さく笑い指を絡めて手の繋ぎ方を変えた。俗に言う恋人繋ぎである。

 

「!」

「私たちの関係ならこっちの方が相応しいでしょ?」

「…そうだな」

 

楽しそうなシロナを見てそれ以上言うことはせずにその手を握った。

 

「それでどこ行くの?」

 

今日のデートはカイムから誘ってきた。つまりプラン…というほどのものではないかもしれないが、何かしらの計画を立てているのだろうとシロナは考えた。

 

「雑貨屋に行こう。道中なんか見たいものがあればそこに寄る。そんな感じ」

「雑貨屋?」

「この前、酒用のグラスが欲しいとか言ってたろ。新しいの買うって話してたから」

「あら、覚えててくれたのね」

 

シロナとカイムは時々酒を飲む。その際に今までは普通のグラスを使っていたが、酒を飲むためのグラスがあってもいいみたいな話をしていた。そのグラスを買いに行こうとカイムは言った。

 

「いいものがあるといいけど」

「どうだかな。さすがに雑貨屋のラインナップまでは確認してねえからなんとも」

「ふふ、じゃあ一緒に見ながら買うもの決めましょ」

「ああ」

 

二人は手を繋いだままその雑貨屋に向けて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

雑貨屋へ向かう道中、シロナとカイムは服屋へと立ち寄った。女性ものだけでなく男性ものも扱っている服屋であり、落ち着いた配色とデザインが人気のブランドのようだ。

 

「ここ、ちょっと寄っていい?」

「ああ」

 

シロナに連れられて服屋に入る。比較的静かではあるが、元々モールの客の絶対数が多いため客の数は多い。

 

「久しぶりにちょっと冬物を新調したくてね。最近あんまり新調してなかったし、少し買おうかなって思ってたの」

「そうか」

「一緒に選んでくれる?」

「…センスは期待するな」

 

今着てる服も結局は姉であるイサナに選んでもらったものだ。似合う似合わない程度はわかるだろうが、自分が選ぶとなると話は別だ。さすがにセンスを問われるものとなると、カイムは自信がなかった。

 

「いいのよ。カイムが私に似合いそうと思うものを選んで」

「…わかった」

 

そう言われてはカイムも断ることはできない。シロナと共に店内を散策していき、わからないなりに物色をしてみる。

 

(………わからん)

 

だがやはり経験がほとんど無い故か、どれが似合うのかがわからない。というよりも、『シロナならどれでも似合うだろう』という考えがカイムの中ではあるためカイムにとっては『どの服がよりシロナの魅力を際立たせるか』という条件で服を選んでいた。

 

(…どれでも似合うだろ。どうしろってんだ)

 

頭を悩ませながらシロナと共に服を見ていくが、カイムの脳内では全て似合っているように見える。結局のところカイムはセンス云々以前にただただどれでも似合うという盲目的な前提条件がどれを選ばせるか悩ませていた。

 

「一通り見たけど、どう?」

「…ぶっちゃけわからん」

「ふふ、そうかもね。でもちゃんと選んでもらうわよ」

「…わかってるよ」

 

シロナは楽しそうにそう言い、カイムは眉間の皺を深くさせながら答えた。だがシロナとしてもいきなり選んでもらうのは少しハードルが高いかもしれないと考え、先に自分で選んだものをいくつか手に取った。

 

「これとかどうかしら」

 

シロナが手に取ったのは白いブラウスに黒いセーター、そして濃紺のジーンズだった。シンプルなデザインではあるが、色合いがシロナのイメージによく合っている組み合わせとなっている。

鏡を前に自分に服を当てて見る。確かに悪くはない。だがどうも代わり映えがしないというか、無難という印象をシロナは自分で感じた。

 

「うーん、無難すぎるかしら」

「似合うと思うぞ」

「他にも何かないの?」

 

いくらファッションに無頓着…とまでは言わずとも、得意ではないカイムでももっと何かしらあるだろうとシロナは思った。カイムはそういう人物だから仕方ない部分もあるが、せっかく二人で来たのだし何かしら意見が欲しかった。

それをシロナの口調からなんとなく察したカイムは少しだけ考えると、口を開いた。

 

「似合うってのは本当だ。まあだが、シロナが言う通り無難というか…あんま代わり映えしないとも言えるかもしれん」

「そうよね。奇抜なのがいいわけじゃないけど、もうちょっと代わり映えがあった方がいいわよね」

「ふむ…」

 

カイムは店内を見渡す。見渡した視界の端に一体のマネキンが目に入った。そのマネキンは白いハイネックのインナーにベージュのカーディガン、そして茶色のロングスカートという組み合わせで飾られている。

 

「…あれとかどうだ」

「ん?どれ?」

「あの店の奥にあるマネキンの組み合わせ」

「ああ、あれね。ちょっと見てみましょ」

 

二人は件のマネキンの前まで移動してマネキンの組み合わせを物色する。色は明るめだが落ち着いた配色となっていてどこか温かみがある。シロナの黒のイメージとは真逆の配色ではあるが、先程の代わり映えが無いというシロナ自身の指摘を満たしたものではあるだろう。

 

「あら、いいわね」

「マネキンのやつだからテンプレみたいな感じかもしれんが、これは代わり映えしないって指摘を満たしてるだろ」

「そうね。普段の私の持ってる服と比べたら、かなり異色なものだわ。でもいいわね。落ち着いた色だし素材の手触りもいい。デザインもシンプルで私好みよ」

「お気に召したのなら良かったよ」

「でもこのデザインだと私よりカトレアが似合いそうね」

 

どことなくふわっとした配色とデザインであるため、シロナよりもカトレアのイメージの方が強いデザインではある。

 

「ふーん。カイムはこういうのが好きなんだ」

「は?別にそうは言ってねえだろ」

「カイムはカトレアと仲良しだものね?メタグロスの育成も私じゃなくてカトレアに色々とアドバイスもらったりしてたじゃない」

 

カイムはメタグロスの育成をするにあたり、実際にメタグロスをチームに入れているカトレアとダイゴに話を聞いていた。メタグロス限定でいえば、カイムはシロナよりもカトレアとダイゴを頼っていたというのも事実である。そのため反論ができずに苦い顔をしながら押し黙ってしまう。

 

「………それは、そうだが」

 

気に障ったのかと思ったカイムはどうにか話を逸らそうと考えるが、なにも思いつかない。どうするかと頭を悩ませいると、シロナはイタズラが成功した子供みたいな顔をして笑った。

 

「ふふふ、ごめんごめん。ちょっと意地悪しすぎたわね」

「…まあ事実メタグロスに関してはダイゴとカトレアに頼ってたからな」

 

せっかくのデートなのに機嫌を損ねてしまったかと一瞬焦ったが、どうやらただの悪ふざけだったらしく内心でカイムは安堵した。

そんなカイムの思いはカケラも知らないシロナは楽しそうにマネキンの着ているセットを自分の身長に合ったものを手に取った。

 

「どうかしら」

「ああ、いいじゃん」

 

鏡の前で服を自分の身体にあててカイムの感想をシロナは求めた。カイムは淡白ではあるが、実際似合っていると思いそう答えた。本心でそう答えたのだろうと感じたシロナは服を持って試着室へと向かう。

 

「ちょっと試着してみるわ」

「ん、いってら」

 

シロナはそのまま試着室のカーテンを閉めて着替える。

少しの間の後、カーテンが開く。黒のイメージが強いシロナとは打って変わり、白を基調とした服装は新鮮なものだった。カトレアと並べば姉妹に間違えられそうだな、と思ったりしたがそれは口にはしなかった。

 

「どう?」

「白いのは新鮮だな。よく似合う」

 

もしかしたらシロナが白い服を着ているのはサザナミタウンで見せた白い水着くらいかもしれない(水着を服装として捉えるかどうかは不明ではあるが)。

シロナは自身の姿を鏡に映して見てみるが、シロナ本人としてもあまり違和感がない。どことなくカトレアを思わせるような服装ではあるが、これはこれで悪くないという風に考えられた。

 

「うん、いいわね。これを買うわ」

「即決かよ」

「ええ。私自身気に入ったし、貴方が選んでくれたものだもん。これがいいの」

「そうかい」

 

シロナは試着室のカーテンを閉めて着替えると、選んだ服を畳んで(カイムに畳んでもらって)会計を済ませてきた。本当はカイムが払うと言ったのだが、シロナが自分で買うと言って聞かなかったためカイムが折れた。

 

「お待たせ」

「ん」

 

カイムはスマートフォンをポケットにしまい会計を終えたシロナに手を差し出した。

シロナはカイムの意図がわからず首を傾げる。

 

「え?」

「え、じゃねえよ。袋貸せ。持ってやるから」

「ああ、なるほど。はい」

 

シロナはカイムに袋を渡す。カイムはそれを受け取ると、空いた方の手でシロナの手を取った。シロナは何も言わず微笑むと手を握り返し、並んで歩き始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いて目的地である雑貨屋にたどり着いた。クリスマスの煌びやかな装飾が店内にも施されており、店内も人とポケモンで賑わっている。

 

「人多いな」

「クリスマスだもの。家族や恋人、大切な友達と一緒に過ごしたいのよ。端的に言えば浮かれてるのかもね」

「…そうか」

 

自分もその浮かれている人間の一人であるため、カイムは微妙な顔をする。今日のために色々と準備をしていた時点で浮かれていることは否めない。

だがカイム以上にシロナは浮かれていた。恋人としてはじめてのクリスマスを共に過ごせるだけでなく、こうしてデートができていることに嬉しさしかなかったからだ。

 

「ま、浮かれてるのは私達も同じかもね」

「そうだな。間違いない」

「ふふ。今日くらいいいわよね」

「…ああ」

「いきましょ」

 

シロナはカイムの手を引いて雑貨屋へと入っていく。

楽しそうに店内を見て回るシロナを横目に、カイムも店内をぐるっと見渡す。

 

「…色々あるな」

 

文房具から調理器具まで幅広く品揃えがある。近頃の雑貨屋…というか雑貨の守備範囲は広いんだなとカイムは内心で感心していた。

 

「あ、カイム!これ見て」

 

そう言ってシロナが手に取ったのは、ムクホークイメージのデザインが施されたクッションだった。

 

「おお、ムクホークのクッションか」

「あの子お昼寝好きでしょ?ぴったりだと思わない?」

 

カイムのムクホークは良く寝る。とても居心地のいい場所を見つけてその場で寝るのだが、ムクホークが見つける場所は本当に居心地が良い。そのためムクホークが寝てる場所にポケモン達が集まって眠っている場面に出くわすこともよくある。

 

「あいつ専用のクッションか。それもいいな」

 

カイムはクッションを手に取る。すべすべした肌触りはとても心地よく、柔らかさも丁度良い。

 

「……………」

 

ふかふかのクッションをカイムは無心で触り続ける。触れば触るほど癖になるような感触か心地良い。無表情、無心でクッションを触り続けるカイムの様子がおかしくてシロナは思わず笑ってしまう。

 

「そんなに気に入ったの?」

「いやお前、これいいぞ。触ってみ?」

「どれどれ…あ、本当だ。気持ちいい」

「買うわ。俺用とムクホーク用に二つ」

「いいわね。私も一個買おうかしら」

 

カイムは二つ、シロナは一つクッションを抱えて店内を巡る。

その中でシロナは文房具コーナーで足を止めた。

 

「あ、そうだ。資料整理のためのファイルが欲しかったのよね」

「整理すんの俺なんだが?」

「だから、貴方が整理しやすいようによ」

 

自分で整理する気はないのかよ、と言いたくなるがすぐに『無いんだろうな』と内心で苦笑した。そもそも彼女に任せていたら整理どころか事態はさらに悪化する。カイムがやる以外の選択肢など最初から存在しなかった。

 

「ならわざわざここでなくともいいんじゃねえか?資料の保存だけなら百均の方がコスパもいい」

「んー、それもそうかしらね」

 

二人は正直な話、この程度の値段を気にするほど稼ぎは少なくない。なんならカイムだけの稼ぎでも普通に生きていくだけなら問題なく生活できる。そこにカイムよりもさらに稼ぎのあるシロナの貯蓄が加われば、この程度の値段を気にする必要などない。

しかし感覚が完全に庶民のそれであるカイムと、その感覚とほぼ変わらない環境で育ってきたシロナは庶民感覚が抜けない。故に無駄遣いを嫌い、時と場合を考慮した状況でないとあまりお金を使わない。

 

「じゃああとで百均行ってファイル買いましょ」

「ああ」

 

シロナは手に取ったファイルを戻すと食器コーナーへと足を向けた。カイムもそれに続き食器コーナーへと足を踏み入れる。

その中でもある商品に目が止まった。

 

「お、これは…」

「ん?どうしたの?」

 

カイムが手に取っていたのは保温性の高い弁当箱だった。

 

「お弁当箱?」

「ああ。これ、なかなか性能が良いみたいでよ。結構売れてるらしい」

 

見たところステンレス製だろうか。シロナにはよくわからないが、カイムには魅力的に映るらしい。

 

「これからミオジムで世話になるわけだし、ジムの人達にメシでも持っていってやれるかなって」

「本当に世話焼きねえ。もう趣味でしょ」

「んだよ。別にいいだろ」

 

ミオシティはかなり寒い街だ。キッサキシティのように雪こそあまり降らないが、海風がとても強く吹き付けるため体感温度はかなり低い。そのため温かい食べ物や飲み物が欲しくなるのではないか、とカイムは考えた。

 

「これ使えば、味噌汁とかも温かいまま運べるだろ」

「そうね。ミオシティ…というかシンオウ地方全体が冬になるとすごい寒くなるし、温かいものがあるのはありがたいわね」

 

ミオシティのジムがどうかはわからないが、温かいものがあるのはきっとありがたい。それだけはシロナ自身も理解している。

 

「それに、昼飯の作り置きしておくこともできんだろ」

「ああ、それはいいわね」

 

シロナは基本的に調理を(一人の時は)禁じられている。故に何かをコンロで温め直すこともできない。許されているのは電子レンジで温めることくらいだ。

 

「まあ今すぐ必要ってほどの物じゃないのも確かだな」

「こういうものがここにあるって知れただけいいんじゃない?」

「そうだな」

 

カイムは手に取った商品を戻す。

そのまま二人はグラスが置いてある場所に移動した。

 

「今回買うのは…どんなグラスだ?」

「ビールグラスみたいなのがいいかなって。見た目次第では普段の食事でも水やお茶飲むのにも使えるでしょう」

「なるほどな」

 

少々厳しいようにも聞こえるが、ずらりと並ぶグラスを探せば条件に合うものも探せばあるだろう。

 

「さて、どれがいいかね」

「うーん。普通のものを買っても面白味というか、わざわざ買う必要もないものね。どうせならわかりやすいというか、いいものを買いたいわ」

 

シロナとしては、せっかくクリスマスに二人で来ることができたのだし、今日の記憶を思い出せるものとなれるような物にしたい、と考えていた。

そうなると、奇抜ではないにしろわかりやすいものとなる。

 

「結構ポケモンモチーフの模様があるグラスとかあるんだな」

 

カイムは一つのグラスを手に取る。そのグラスは紺色の色をうまく使ったグラスであり、ドンカラスがモチーフとなっていることがわかった。

 

「あら、こういうの結構あるのね」

「俺らの手持ちがモチーフのグラスとかもあるかもしれんぞ」

「探してみましょ」

 

色々と棚を見ていくと、ゴウカザルモチーフやエンペルトモチーフなどポケモンモチーフのグラスは多い。

その中でもシロナは一つのグラスに目が止まった。

 

「あ、これ…」

「ん?ああ、ロズレイドモチーフのグラスか」

 

そのグラスは緑を基調とした色合いの中に赤と青のラインが綺麗に入っていた。

 

「綺麗ね。ロズレイドの色合いがうまく使われているわ」

「いいじゃん。ビールグラスじゃなくて普通のグラスだが、こういうのもあっていいだろう」

「そうね。きっとロズレイドも喜んでくれるわ」

 

そう言ってシロナは同じものが入っている箱を手に取りカゴに入れた。

 

「カイムも手持ちのモチーフのを探してみたら?」

「ん…そうだな。ただやっぱここはシンオウ地方だし、シンオウ地方のポケモンモチーフが多いな」

 

ざっと見た中だとシンオウ地方に主に生息するポケモンがモチーフとなった物が多い。シンオウ地方であることを考えれば当たり前のことではあるだろうが、カイムの手持ちの中で最も付き合いの長いブラッキーとバシャーモのものはなかった。

 

「俺の手持ちでシンオウ地方のポケモンは…ルカリオ、ムクホーク、トリトドンだな」

 

トリトドンは出会った場所はイッシュ地方であるが、主な生息地はシンオウ地方。探せばあるのではないか、と視線を巡らせると予想通りトリトドンモチーフのグラスが置いてあった。

 

「お、あるな」

「西と東…どちらの姿もあるわね」

 

トリトドンは西と東で色が違う。シロナの手持ちにいるトリトドンはピンク色が主な色であり、カイムの手持ちのトリトドンは水色が主な色だ。

 

「この色…いいな。トリトドンの色だ」

「いいわね。私もこっち買おうかな」

「いいんじゃね?グラス、今普通のしかないし多少増えても問題ないだろ」

「久しぶりのお買い物だから買いすぎちゃうわね」

 

シロナは苦笑しながらそう言った。経済的に余裕があるとはいえ、あまり物を増やすタイプではないシロナはほんの少しだけ抵抗を覚える。無論これらは買うと決めた以上買うし買ったことも後悔しないが、あまり自分らしくないという思いもあった。

 

「お互いあまり物を増やすタイプじゃないしな。それにシロナは片付けができんし」

「むう。一言多いわよ」

「事実だろ?それに、シロナが物を増やさないようになったのは自分が片付けられないって自覚があるからだろうが」

「それはそうね。でも今はカイムがいるし、いっか」

「片付けさせる前提かよ」

 

多少マシになったとはいえ、シロナの家事レベルは未だに最低レベル。シロナがやる前にカイムがどんどん片付けてしまうというのもあるが、それ以上にシロナに任せておくと事態が悪化するというのが大きい。

 

「…そうだな。年末、大掃除するからその時に掃除も少し叩き込むか」

「えっ?初耳よ」

「そりゃそうだ。初めて言ったんだし」

 

料理はほんの少しだけ上達したが、他はまだまだ。今後、シロナとの関係が続き『恋人よりも先』まで関係が進むことを考慮した場合、今のままでは良くないだろうという風にカイムは考えた。

 

「やるのは構わないけど…大掃除するほど汚れてる?」

 

シロナとしても教えられること自体は構わないが、カイムがこまめに掃除をしているためシロナ宅はかなり清潔に保たれている。そのため大掃除をする必要性などないようにもシロナには思えた。

 

「ま、大掃除つっても特別なことするわけじゃねえ。普通の掃除をするだけだ」

「ふーん。わかったわ」

「ん、なんだよ。意外と素直じゃん」

 

シロナも苦手である自覚はあるため多少ゴネるかと思っていたが、案外すんなり受け入れたことがカイムは意外だった。

シロナはそんなカイムに応えた。

 

「だって、カイムが教えてくれるんでしょ?ならいいわよ。貴方とできるならなんでもやるわ」

「…そうか」

 

確かにシロナは片付けに対して苦手意識がある。忌避するほどではないが、苦手意識がある以上一人でやるのは抵抗があった。しかしカイムが教えてくれる、というのであれば抵抗は相当減る。

 

「整理するコツとかもあれば教えてほしいわね」

「整理するのにコツっているのか…?」

 

カイムにとって整理整頓は特に意識することなくできることであるためコツと言えるほどのものはない。しかしできないシロナからすれば何かしらあるように思えるのかもしれない、と考えたカイムは当日までに考えておこうと考えた。

 

「よろしくね、先生」

「…善処する」

 

思ったより大変な年末になるかもしれないと考えながらカイムはグラスをカゴに入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雑貨屋を出て本屋やスポーツショップなどに立ち寄った後、二人は昼食を済ませてモール内をぶらついていた。

 

「カイム、他に行きたい場所とかある?」

「いや、もうないな」

 

カイムが目的としていたものは買えた。そのためもうシロナの買い物に付き合うくらいしかできない。

 

「私ももう無いのよね。じゃあちょっとぶらつきましょうか」

「ああ」

 

特に目的もなくショッピングモール内を歩いていると、少し人が多く集まっているショップがあるのを見つけた。

 

「…あのショップなんか人多いな」

「そうね。あそこは…ボールショップね」

 

モンスターボール専門店であるボールショップ。そこに比較的多くの人が集まっていた。ボールショップは需要があるため、閑古鳥が鳴くようなことはない。しかし今は普段以上に人が多く集まっていた。元々のショッピングモールの人の多さを考慮したとしても、それよりもはるかに多かった。

 

「なんかあんのか」

「えーと…『ガンテツボール販売』?」

「ガンテツボールって確か…ジョウト地方の」

「そうね。ジョウト地方のモンスターボール職人が作る特殊なモンスターボールよ。ぼんぐりっていう特殊なきのみを素材にしてできるものね」

「きのみが素材になるからあんまり数が無いんだったな」

「そうよ。見た目が少し特殊で珍しいボールだからみんな欲しがるのかもしれないわね」

 

ガンテツボールそのものは特殊な仕様であるため正直普段使いするのには向いていない。しかし見た目は個性的で人気があるボールである。

 

「へえ…そういや実物見るのは初めてだな」

「特に目的地もないし、見ていかない?それにしばらくボールのメンテもしてないし、交換用のボール買うのもいいんじゃない?」

「確かに…」

 

モンスターボールも機械であるため定期的なメンテナンスや交換が必要となる。カイムはここしばらくボールのメンテナンスをしていなかったため、ボールに傷が増えボタンの反応も遅くなってきていた。交換のためのボールを買うのもいいかもしれないと考えた。

 

「じゃあ、ちと寄ってみていいか?」

「ええ。いきましょ」

 

二人は人が多いショップに足を踏み入れる。ショップ内は人が多いが、移動するのはあまり苦労しない程度だった。

 

「これがガンテツボールか」

 

名前は知っていたが、カイムは実物を見るのは初めてだった。そのためどんなものなのかいまいち知らず、目の前に並ぶ色とりどりのモンスターボールを興味深そうにまじまじと眺めた。

 

「結構種類あるんだな」

「シンオウ地方では珍しいわよね。ダイブボールはホウエン地方では一般的だけど、シンオウ地方じゃ売られてないし」

「性能…というか、ボールとしての機能はかなり尖っているな。普通に捕獲するためのボールというよりは、予備や交換用のボールって感じか?」

「あとは見た目に拘るタイプの人ね。人によっては結構ボールの見た目に拘る人もいるから」

「シロナは…確かハイパーボールで統一してたよな」

 

シロナの手持ちのポケモンは全てハイパーボールで統一している。マスターボールを除けば最も性能のいいボールであるため、トップトレーナーの多くはハイパーボールを使っているトレーナーが多い。

 

「ええ。私がチャンピオンになった時に全員ハイパーボールで統一させたわ。私はあまり見た目には拘らないけど、単純に性能がよくて長持ちするからね」

「値段が張るだけのことはあるわな」

 

ちなみにカイムは全員モンスターボールで統一している。理由は特に無く、あまりボールに拘ってこなかった結果だ。

 

「ボール交換は…ブラッキー、バシャーモ、ムクホーク、ルカリオの四体かな」

 

カイムの手持ちの中でも比較的古株であるポケモン達のボールがそろそろ替え時になっていた。メタグロスは加入した時にボールの交換もしたためまだかなり新しい。トリトドンは交換していないが、Nがカイムに託すことを考慮して予め交換してくれていたのだが、それをカイムが知ることはない。

 

「調査、トレーニング、仕事で忙しかったしな。纏めて替えておくか」

「どのボールにする?せっかくだし、ガンテツボールにしてみたら?」

 

カイムはショーケースの中に収まるガンテツボールをざっと眺め、シロナもカイムの隣でガンテツボールを見渡す。珍しいボールなだけあり、少々値段はするが、それでもハイパーボールと同じ値段であるため購入自体は必要経費程度に収まる。

 

「ふーむ。色々あるからどれがいいかわからんな」

「このルアーボール…ミロカロスに合いそうな色してるわね」

「青が基調になって赤い模様だからな。ミロカロスの色合いと似てる。お、こっちのヘビーボールはメタグロスに合いそうだ」

「灰色に青い模様ね。確かにメタグロスの色合いと合うわ。買っておいて保管して、後でメタグロスの予備ボールにしたら?」

「それもいいかもな」

 

二人でボールの見た目や手持ちとの相性を楽しげに話していると、カイムの腰についたボールの一つが勝手に開き、中からブラッキーが出てきた。

 

「うお。どしたブラッキー。珍しいな自分から出てくるなんて」

 

カイムは突然出てきたブラッキーに驚きながらも頭を撫でる。他の客の中にもポケモンと共にボールを見ている者は数多くいるため、ブラッキーが出てきたところで問題は特に無い。しかしわざわざ出てくるのは珍しいとカイムは思った。

 

「もしかして、何か気になるボールでもあったのか?」

 

カイムがそうブラッキーに聞くと、ブラッキーは耳をぴこぴこ動かしながら頷いた。

 

「お、そうか。どれだ?それにしてやるよ」

 

カイムはブラッキーを抱き抱えてショーケースが一望できるようにする。ブラッキーはショーケースの中にある一つのボールに視線を向けてカイムに気になるボールがどれかを示した。

 

「これは…」

「ムーンボールね。月の石で進化するポケモンが捕まえやすくなるボールよ」

 

ブラッキーが示したのは水色と黒で彩られた上半分に三日月が描かれたムーンボールだった。

 

「ムーンボールか。ブラッキーは月を象徴するポケモンだし、よく合うな」

「わざわざ出てきてまで伝えるってことは、よほど気になったのね」

 

カイムに抱き抱えられたブラッキーを撫でながらシロナはそう言う。撫でられたブラッキーは気持ちよさそうにしながらカイムに視線を向けた。カイムはその視線に気がつくと小さく笑う。

 

「いいぜ。ムーンボールにしてみるか」

「よかったわね、ブラッキー」

 

シロナにそう言われてブラッキーは嬉しそうに笑った。

 

「さて、ブラッキーはムーンボールでいいとして…他のやつらはどうするかな」

「実際に見て決めてもらったら?ブラッキーもそうしたわけなんだし、みんな気に入ったものにしてもらうのがいいんじゃない?」

「それもそうだな。んじゃ、まずはバシャーモな」

 

そう言ってカイムはバシャーモをその場に出す。

 

「話は聞いてたよな?なんか気になるボールはあるか?次のボール、それにしてやる」

 

カイムにそう言われてバシャーモはショーケースをざっと見渡す。ガンテツボール以外にも通常のモンスターボールやスーパーボールなども含めて見た結果、バシャーモはハイパーボールを選んだ。

 

「ハイパーボールか。シロナと同じだな」

 

バシャーモはカイムの言葉に頷く。バシャーモがハイパーボールを選んだ理由は、よく修行に付き合ってくれるルカリオやガブリアスと同じボールにしたかったという理由だった。尊敬するシロナのポケモン達と同じ種類のボールにしたい。そんな思いがバシャーモにはあったのだ。

 

「へえ。尊敬するシロナのポケモン達と同じボールにしたいって感じか。いいね」

 

そう言われてバシャーモは少し恥ずかしそうに頬をかく。だがカイムはそのバシャーモの思いがわかるため、揶揄ったりすることはしなかった。尊敬する人や愛する人と同じものを共有したい、という思いはベクトルは違えど根源は同じものだ。

 

「よし。じゃあお前はハイパーボールにしてやるよ」

 

バシャーモは頷くとボールに戻った。

その後、ルカリオとムクホークにも同じように好みのボールを聞いたところ、ルカリオはバシャーモと同じハイパーボール、ムクホークはタイマーボールを選んだ。ついでにトリトドン用にダイブボール、メタグロス用にヘビーボールを購入して、ボール交換を済ませた二人はボールショップを後にする。

 

「やっぱムクホークはちょっと変わったもの選ぶ傾向があんな」

「不思議ちゃんなところあるからね。可愛いじゃない」

「それはそうだがな」

 

相変わらずポケモンに対してはやたら甘く素直な感想にシロナは小さく笑う。

 

(…最近はよく笑うようになったわね)

 

他人から見たらとても笑っているようには思われないだろうが、出会った当初と比べたらかなり感情表現が豊かになったように思える。その要因の一つに自分がいる、ということがシロナは少し嬉しかった。どんな形でもカイムという存在に影響を与え、今の彼を形作る要因としてあれることが嬉しい。そう感じていた。

 

「ふふ」

「ん?どうした」

「いや、なんでもないわ」

 

嬉しさが込み上げて思わず笑ってしまったが、なんでもないと言ってシロナは誤魔化した。カイムはそんなシロナに首を傾げたが、機嫌のいいシロナを見て気にする必要は無さそうだと判断し、シロナの手を取った。手を握られたことに気づいたシロナはその手を握り返してカイムに並んで歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

夕方

日が沈み寒くなってきた時刻に二人は車へと戻ってきた。

 

「あー、いっぱい買っちゃったわね」

 

シロナは後部座席に並ぶ買い物袋を見ながら苦笑した。爆買い、というほどでもない世間的には普通の買い物程度の量ではあるが、普段あまり買い物をしない二人にとってこの量は多く感じられた。

 

「ああ。俺らにしては、珍しい」

「そうね〜。私もカイムもあまり物を増やさないから」

 

お互い忙しいというのが一番大きい理由でもあるが、シロナの家は物が少ない。研究資料やバトル、育成関連の道具は多数あるが、それも今はカイムが整理しているためぱっと見はかなり質素な風貌になっている。特にカイムの自室などはかなり質素で、本棚とベッド、そしてパソコンくらいしか無い。

 

「物が多いのはキッチンくらいか」

「それは全部カイムが揃えてきたものだけどね」

「まあシロナにキッチンは基本触らせないからな」

「少しはできるようになってるわよ」

 

カレーを教えてもらって以来、時折シロナはカイムの監視の下料理の練習を行っている。まだまだ恐ろしい行動をする時はあるが、できることは少しずつ増えてきている。特に成長を感じたのは材料や調味料の量をちゃんと測っていれる所だった。始めた当初は醤油ボトルを一本丸々いれようとしたこともあることを考慮すると、大した進歩だろう。

 

「まだまだ一人ではやらせられんが、それは間違いじゃないな」

「でしょ?私がカイムにご飯やお菓子を作ってあげる日も遠くないかも知れないわね」

「人が食べられるものを作ってくれよ」

「む。絶対美味しいっていつか言わせてあげるんだから」

 

色々とそのためにカイムに隠れて努力もしている。遠くない未来、その想いと言葉を伝えるためにシロナはやるべきことをやっていた。

無論それはカイムには一切悟られていないし、口にも出さない。絶対にカイムをびっくりさせるのだと静かに闘志を燃やしていた。

と、そこでシロナは少し空腹を覚える。時間を見ると、少しだけ早いが夕食にしてもいい時間だった。

 

「少しお腹空いて来たわね」

「ん、ああ。そんな時間か」

「どうする?食べて帰る?それともうちで食べる?」

「店を予約してる。移動時間考えたらちと早いが移動していいだろう」

 

カイムの言葉にシロナは目が点になる。

 

「え?予約?」

「予めしておいた」

「すごい…準備万端ね」

「まあ…な」

 

実は店を決めるのに二週間もの時間をかけ、挙句の果てにはスズナやイサナにまで意見を聞いて決めた店なのだが、それは言わないでおいた。言ったところでカイムの情けなさが露見するだけであるためそれが賢明だろう。

 

「なんてお店?」

「アクアマリンって店。個人経営の店で個室もある」

「個室か。ありがたいわね」

 

シロナはシンオウ地方で相当な有名人。先ほどは人が多くて埋もれていたため(実際は二人がお互いのことしかみていなくてその空気が甘すぎたため声をかけることが憚られたため)声をかけられなかったが、このレストランでもそうとは限らない。店の迷惑になりかねないというカイムの配慮と二人きりの時間を邪魔されたくないという欲望が両立できる個室がある店を選んだ。

 

「用意がいいわね」

「エスコートはちゃんとせにゃならんからな」

「嬉しいわ。ここまでセッティングしてくれてるとは思ってなかったもの」

「ちっとはまともなエスコートしてやらんとな。せっかくのクリスマスデートだから」

 

久々のデートということもあり、カイムの気合の入れ方が今までとは違った。珍しいと思いつつも、シロナは自分のためにここまでしてくれたことが嬉しくて胸が熱くなる思いだった。

 

「すごく嬉しいわ。ありがとう」

「気にすんな。俺がやりたくてやったことだ。感謝されるようなことでもねえ。自己満足だ」

「ふふ。じゃあそういうことにしておいてあげる」

 

頭をかきながらそう言ったカイムにシロナは楽しそうに返した。

カイムは誤魔化しきれていないことを察しつつ、訂正するのも面倒だし揶揄われそうだと考えたカイムは何も言わずに車を発進させるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

シロナが連れてこられたのは、ミオシティの海が一望できるレストラン、アクアマリン。

内装はシンプルだが、お洒落な雰囲気を醸し出していた。

 

「わあ…綺麗なお店」

「ここは主に洋食屋だ。海鮮も肉もある。好きなのを食べるといい」

 

二人がレジの前で待っていると、すぐに店員が来た。

 

「お待たせいたしました。ご予約はされてますか?」

「予約してたカイムです」

「個室でご予約のカイム様ですね。お待ちしておりました。ご案内します」

 

二人は店員に連れられて個室に通された。その後注文の仕方を説明されて店員は戻っていった。

 

「タッチパネルで注文するのね」

 

席に備え付けられていたタブレットを操作して注文を取る仕組みになっている。

個室内は適度な気温に設定されており、窓の外にはミオシティの海が広がっていた。夜の海は真っ暗であり、何があるかはほとんど見えないがぼんやりと水面に月が映っているのが見えた。

 

「いい眺めね」

「昼間なら海が一望できるんだが、夜はさすがにほとんど見えんな」

「月が見えるし、ブラッキーが喜びそうな夜ね」

「…後で、海を見に行くか」

「いいわね。行きましょ」

 

シロナが楽しそうに笑うのを見てカイムも小さく笑う。そして備え付けのタブレットをシロナに手渡した。

 

「メニュー、決めな」

「カイムは決めたの?」

「いや。シロナの後に決めるさ」

「じゃあ一緒に決めましょ。こうすれば二人で見れるわ」

 

そう言ってシロナはカイムの正面から隣に移動した。やろうと思えばテーブルに置くなりして二人で見ることは可能だが、敢えてシロナは隣に移動すれことを選んだ。そしてカイムも別段問題はないし、隣にいてくれることそのものは嬉しいため指摘することはしなかった。

 

「わあ…たくさんメニューがあるのね」

「そこそこ人気店だ。メニューも豊富なんだろう」

「どれにしようかしら…」

 

シロナはタブレットを操作してページを進めていく。写真付きのメニューの中身は全て美味しそうに見えてしまい、シロナはなかなか決められないでいた。

 

「うーん…どれも美味しそう」

「好きなだけ悩むといい」

「あら珍しい。普段なら早く決めろって言いそうなのに」

「別に今日は時間制限ねえからな。俺が立てたプランはここまでだ」

「そう?じゃあ遠慮なく悩ませてもらうわ」

 

シロナはそのままページを進めていく。

その中でもシロナはあるページで手が止まった。そのページに記載されていたメニューはコース料理であり、メインとなる料理が魚と肉の二種が書かれたものだった。

 

「あ…これ美味しそう」

「ん?ああ、コース料理か」

「……これいいわね。これにしようかしら。でもお魚とお肉…どっちも美味しそう」

「じゃあ俺がシロナと違う方注文する。そんでメインの料理を二人で分けよう」

「え?いいの?」

「構わん。コース料理は俺も気になってた」

「じゃあ、そうしようかな」

 

そう言ってシロナはコース料理を二人分注文し、タブレットを所定の位置に戻すとカイムの正面に戻っていった。

そして水を飲むカイムに対して言う。

 

「そうだ。今日のデートプラン、良かったわよ。ありがとう」

 

シロナはカイムのデートプランが恐らく自分だけで考えたものではないことをなんとなく察していた。元々そういったことに疎いため自分だけで考えたにしてはかなりよくできたプランだった。いくらカイムが頑張って調べたとしても、ここまでうまく構築するのは恐らくかなり難しい。だから誰かの手を借りたのだろうとシロナは考えた。

無論それはシロナにとって大した問題ではない。むしろ他者の手を借りてまで自分を喜ばせようとしてくれたことには感謝しかなかった。

 

「お気に召してくれたならなによりだ。こちらとしても頑張った甲斐がある」

「お世辞にもそういうことは得意じゃないものね」

「その通りだよ。だが、無理しようが誰かの手を借りようが今日はシロナに喜んで欲しかった。それだけだ」

「クリスマスだからって理由以外にもあるのよね?」

 

ここまでしたのもクリスマスデートがしたい、という以外の理由があるのではないかとシロナは考えた。無論それ自体も理由には含まれるのだろうが、それだけでここまでのことをするとは思えなかった。

 

「…そうだな。クリスマスってだけなら、多分ここまでしてねえ」

「じゃあどうして?」

「この前、カンナギタウンに行った時にさ…アイナさんに言われたんだ。『シロナをよろしく頼む』って。シロナは、俺にとって大切な人だ。それと同時にアイナさんやクロナにとっても大切な人でもある。自分の大切な人を任せるのって、きっと簡単じゃない。だから俺、アイナさんにそう言ってもらって嬉しかったんだ。『お前になら任せられる』って、言ってもらえたみたいで」

「お婆ちゃんと、そんなこと話してたのね」

「ああ。だから俺は、大切な人を任せてもらったんだし、その人を喜ばせたい…笑顔にしたいって思った。多分、シロナは特別なことは望まないんだろうけど、俺ができる精一杯をもってシロナが大事であることを伝えたかったんだ。言葉だけじゃなくて、行動に示してな。それで考えついたのが、このデートだ」

 

クリスマスが二人とも休日だったのはたまたまだが、せっかく空いているのだしこの日をシロナのためだけに使いたい。そのためにイサナに色々と協力してもらい、デートプランを考えた。

それも全て、シロナをシロナの家族から託されたことが起因している。大切な家族を託された以上、今までの大きな恩も合わせてシロナが大切である、ということをシロナ本人に伝えたかった。シロナは確実に『気にしないでほしい』とか『今でも十分伝わっている』などと言うだろうとカイムは考えていた。だからシロナに伝えることはせず、秘密裏にデートプランを構築していた。

 

「これだけのことをしてくれたんだもの。貴方の気持ちは十分伝わったわ」

「足りないさ。俺の気持ちはこんなもんじゃない。いっぺんに伝えることはできないから、これからもずっとシロナが一番であることを伝え続ける」

「ふふ、嬉しい。私も、貴方のことが大切。だから私も貴方が一番であることを伝え続けるわ」

 

願わくば、この先の人生においてずっと隣にいてくれることを願いながら二人はそう互いの思いを伝え合った。

そうこうしているうちに料理が届く。前菜と共に飲み物であるノンアルコールのシャンパンがシャンパングラスに注がれて二人の前に置かれた。

 

「いただきましょうか」

「ああ」

 

シロナはグラスを持つと軽くカイムにむけて掲げた。

 

「今日はとっても楽しかったわ。ありがとう」

「喜んでもらえてなによりだ」

「乾杯」

「乾杯」

 

二人はシャンパングラスを軽く合わせた。軽快な音が小さく響き、二人はシャンパンをゆっくりと飲むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後のデザートを食べ終えて、シロナはフォークを置いた。

 

「あ〜、美味しかったわ」

「ああ。そうだな」

 

二人が食べたコース料理は絶品だった。味も見た目も良いもので、メインの料理も二人で別のものを食べたため互いにシェアしてより楽しんで食べることができた。

 

「いいお店見つけたわね。また来たいわ」

「今度はランチの時間に来れるといいな。海がよく見えるだろうよ」

「いいわね。今度、時間を見つけていきましょ」

 

また来ようという約束をし、シロナは水を飲み干すと一息ついた。

 

「さて、ご飯も食べ終わったし海見に行こっか」

「いや、待ってくれ」

 

席を立とうとしたシロナをカイムは引き止める。どうしたのだろうとシロナが視線を向けると、カイムは赤くラッピングされた袋を取り出した。

 

「えっ」

「プレゼントだ」

「ええ⁈どこに隠してたの⁈」

「予め店に預けて、シロナが席を立ったタイミングで持ってきてもらった」

「気づかなかったわ…」

 

向かいに座っているため、カイムの下半身は机で隠れて見ることはできない。だから置いてあったとしても気づくことができないのは仕方ないが、まさかここまでしてくれているとは思いもしなかった。

 

「嬉しいわ…ありがとう」

「今日はとことんもてなす日だからな」

「ふふ、エスコートありがと。ねえ、これ開けてもいい?」

「ああ」

 

シロナは袋の封を開いて中身のものを取り出す。中に入っていたのは、黒地に金色と銀色のラインの模様が入ったマフラーだった。

 

「最近、ファー付きのチョーカーじゃなくてダークストーンチョーカーをつけることが多いだろ?だからマフラーがあった方がいいんじゃないかって思ってな」

「嬉しい…ありがとう!」

 

実際チョーカーを変えた影響で首元が寒いと感じることはあった。そのためカイムのこの気遣いが込められたプレゼントはシロナにとって二重の意味で嬉しいものだった。

 

「本当に嬉しいわ。大切にする」

「大切にしてくれ。じゃ、行こう」

 

カイムは伝票を持って席を立つ。シロナはせめて支払いはしようと考えカイムを止めようとする。

 

「あ、待って。支払いは私が…」

「おいおい。ここまで来たら最後まで花持たせてくれよ。この程度で寒くなるような懐してねえよ。大人しく奢られとけ」

「でも…」

 

もらってばかりなのはシロナは嫌だった。ただでさえ、日常的にカイムに頼ってしまっているのに、ここでもカイムに与えられてしまうのは対等であることを重んじるシロナにはあまりいいものではなかった。

 

「多分、シロナは頼ってばっかなのが嫌だとか言うんだろうけど、シロナが思っているのと同じくらい俺はシロナに頼ってるし、多くのものをもらったと思ってる。このくらいじゃ、俺の感謝は伝えきれん。それに、ここまで来たんだ。彼女の前で最後までカッコつけさせてくれ」 

 

苦笑しながらカイムはそう言った。実際これはカイムの意地というか、わがままに近い。最後までいい格好をさせてほしいというとても小さな意地。

それを感じたシロナは素直に折れる。

 

「…わかったわ。今日は最後までよろしくね」

 

自分がもらいっぱなしも嫌だが、それ以上にここまでやりきったのだから最後までやり通させてほしいというカイムの気持ちもよくわかった。だからシロナは大人しく折れることを選んだ。

 

「でも、今度は私からも何か返すわね。貴方の気持ちがわかるからこそ、私の思いもわかってほしいの」

「ああ。その時を楽しみにしてる」

 

伝票を手でぷらぷらと弄びながらカイムは先に個室を出た。

シロナはその後ろ姿を見て少し困ったように笑いながらカイムの背中を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

波の音が聞こえる中を二人は歩いていた。

レストランを後にしてやってきたのは、ミオシティの海。砂浜を二人で並んで歩いていた。シロナは先程もらったマフラーをつけている。

 

「夜は冷えるわね」

「ああ」

 

二人とも防寒対策はしているが、それでも夜の海は冷える。寒さで二人の頬はわずかに赤く染まっていた。

 

「静かな波の音…落ち着くわ」

「そうだな。俺は生まれ育った街に海があったから、波の音は好きだ」

 

カイムの育ったミナモシティにも海があり、幼い頃から波の音を聞いていたカイムはこの音が好きだった。絶えず聞こえてくる静かな音。聞いているだけで落ち着いてくる。

 

「…もう、三年になるのか」

「ん?」

「いや…俺がシンオウ地方に来てからもうそろそろ三年になるんだなって」

「そうね。私に弟子入りしてから、そろそろ四年ね。早いわ」

「あっという間だったよ」

 

シロナに弟子入りしてからの日々は、とても早く感じられた。日々鍛錬と勉強に励み、少しずつ強く、聡くなれていることが実感できる日々は楽しかった。

そしてそれ以上に、シロナと共に過ごせたことが自分の人生を変えてくれた。シロナがあの時助手に誘ってくれなければ、カイムはここにはいなかった。

 

「四年か。長いようで短いわね」

「今後の時間もあっという間に過ぎていくのかな」

「…そうね。それは否定できないわ」

 

歳を取れば、その人の人生において一年の重みが減っていく。だから早く時が過ぎるように感じるのかもしれないとシロナは考えた。

 

「この世界において、私達の人生なんて瞬きの時間。でもそんな瞬きの時間をどう過ごして、どう生きていくか。これからも考えて、迷いながらも歩いていくのね」

「今後の人生、か」

「不安?」

 

漠然とした未来というのは誰でも不安である。シロナですらそうだ。ずっとチャンピオンとしていられるのか、学者として結果を残していけるのか。不安になることもるある。カイムが不安に思っていても不思議ではない。

 

「…いや、今はもう不安じゃない」

 

だが意外にもカイムは不安ではないと答えた。

 

「今後、俺がどういう時間を生きていくのかはわからない。きっと俺はたくさん間違えるし、失敗もする。でも、まあ…大丈夫だと思う」

「どうしてそう思うの?」

「シロナが、隣にずっといてくれたらきっと俺はどうとでもなる。一緒にシロナが歩いてくれるなら、俺は生きていけるよ」

「…そうね。きっとそう」

 

一人でいることが悪いのではない。ただもう、二人で歩くことの嬉しさや辛さ、そして安心感を知ってしまった以上一人で歩くことはできない。共に歩くことは当然辛いこともある。だがその辛さも含めて、お互いで共有していくことの大切さを二人はもう知っている。だからこそ、二人ならどんな道も歩いていけるということをカイムは言い、そしてシロナもそれに共感した。

 

「私も、この先ずっと貴方がいてくれればなんでもできる気がするわ」

「はは、そいつは頼もしい。支え甲斐がありそうだ」

「貴方も引っ張り甲斐がありそうね」

 

そう言って二人は顔を見合わせて笑った。

一頻り笑うと、シロナはバッグの中から青い袋を取り出してカイムに差し出した。

 

「カイム」

「これ…」

「そう。私からのプレゼントよ」

「マジか…ありがとう」

 

ラッピングされた袋はあまり大きくない。受け取った感触からすると、衣類だろうかとカイムは予想した。

 

「いつ用意したんだ?」

「予め用意してたの。本当はレストランで渡すつもりだったんだけど、嬉しさが込み上げてきて忘れちゃってたの」

 

シロナは恥ずかしそうにそう言った。プレゼントまで用意してくれて、ここまで尽くしてくれたことがシロナにとっては嬉しすぎてつい自分が用意したプレゼントの存在を忘れるという暴挙に思わずカイムは笑ってしまう。

 

「そんなに嬉しかったのかよ」

「もちろんよ。貴方が私のためにここまでしてくれたのが嬉しいのよ」

「ならよかったよ。準備した甲斐がある。なあ、これ開けていいか?」

「いいわよ」

 

カイムは袋を開いて中身を見ると、なんと中に入っていたのはマフラーだった。シロナに贈ったものと似ているが、こちらは黒地に金色の月の模様が入ったものであり、どことなくブラッキーを連想させる。

 

「マフラーか。まさか俺と同じものを選んでくるとはな」

「私もびっくりよ。同じものを選んでくるとは思わなかったもの」

「ブラッキーっぽいデザイン、いいな。気に入った、ありがとうな」

「いいの。こんなにしてもらっちゃったんだし、これくらいは」

「そうかよ」

 

そう応えたカイムに対してシロナは手を差し出した。

 

「貸して。つけてあげる」

 

カイムは素直にシロナにマフラーを手渡す。シロナはそれを受け取ると、カイムにマフラーを巻いてあげた。マフラーは今のカイムの服装にもよく合っており、違和感なくカイムと首を冷気から守った。

 

「似合うわよ」

「どーも。シロナもな」

「ありがとう」

 

二人はどちらからともなく、互いの手を握る。そして互いの指を絡ませ合い、シロナはカイムの左腕に自らの身体を寄せ、互いの体温が感じられるくらい密着した。

二人の息が白く染まる。寒空の下、月が反射する海を二人はしばらくそのまま眺めていた。

 

 

その月に、今後の人生も二人で歩いていけるように願いを込めて。

 

 

 




クリスマス記念(間に合ってない)でした。
若干遅れたけど2話更新したから許してほしい。


Q.互いに実家への挨拶を済ませているのになぜ結婚しないんですか?
A.婚約してないからです。

Q.なんで婚約してないんですか?
A.色々あるんですよ。知らんけど。

Q.モンスターボールの設定ってどこから引用したんですか?
A.作者の想像による設定です。元は私にメッセージを下さった方がモンスターボールの設定について言及していたので、それを元に今回の設定を作りました。

Q.シロナさん有名人なのに声かけられないなんてことありますか?
A.モブの介入する隙を与えないほど二人だけの空間が形成されているんです。ある意味領域展開です。

Q.で、いつ結婚するんですか?
A.いつかします。

Q.結婚式回、やりますよね?
A.これでやらなかったら暴動が起きますよ。なんなら私が起こします。

この二人にはラブラブボールでもプレゼントした方がいいんですかね。はよ結婚しろ。



シロナ
クリスマスデートができてご満悦。結婚願望はあるが、口には出せていない。カイムが結婚についてどう思っているのか気になるが、いつか言うと言われたことを信じて待つ。家事を練習するようになったのも、結婚してからも頼りっぱなしになるのが嫌だからという理由。

カイム
デートプランを考えるのに相当な時間を費やした男。なお、この男は全然うまくプランを立てられなかっただけでなくファッションもあまりうまくいかず結局スタイリストのイサナに頭を下げて色々とアドバイスをもらった。その結果シロナは大喜びしており、内心でイサナに深く感謝していた。今回のことで結婚願望が強くなった。

イサナ
クリスマスデートのきっかけもプランもファッションも監修した人。このデートの立役者であり、最高のデートをシロナとカイムにプレゼントした。カイムにデート監修をしている際はとてもノリノリであり、夫にシロナとカイムの話をご機嫌でしていたらしい。


二人のイチャコラしてる姿を見て『いいぞもっとやれ』と思った人は姉貴(イサナ)に感謝してください。



マジコスシロナさんに三千円課金しました。まだシロナさんお出迎えできていません。年末年始に配られる無料石で出てくれればいいんですが、来なければさらに課金する覚悟を決めました。

アンケートのせてます。よければ投票お願いします。

みなさんの推しタイプは?

  • ノーマル
  • ほのお
  • みず
  • でんき
  • くさ
  • こおり
  • かくとう
  • どく
  • じめん
  • ひこう
  • エスパー
  • むし
  • いわ
  • ゴースト
  • ドラゴン
  • あく
  • はがね
  • フェアリー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。