ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

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ジムリーダー承認試験


カイムメインだけど砂糖も入れました。


4/18 日間ランキング22位、ありがとうございます。



29話です。


29話 スズラン島

真冬と比べて暖かくはなってきたが、北国であるシンオウ地方はまだまだ寒く吐く息が未だに白い。

そんな中、庭でバシャーモと組み手を繰り返すカイムに、シロナは声をかけた。

 

「カイム。そろそろ切り上げたら?」

「時間か?」

「いいえ。ただやりすぎると行く前に疲れちゃうわよ」

「…それもそう、か」

 

最後にバシャーモの正拳突きを見切り、身体をずらして回避しバシャーモと距離を取る。そして互いに礼をして、バシャーモをボールに戻した。

汗をかくほど動いてはいないが、動きを止めるとやはり寒い。

 

「落ち着かない?」

「少し。気が紛れん」

「大丈夫よ。さ、準備しましょ」

「…ああ」

 

シロナに続いてカイムは屋内に戻る。

 

これから二人が行く場所は、スズラン島。ポケモンリーグが行われる場所であり、シンオウ地方のポケモンリーグ運営委員がある島だ。

今回行われるのはポケモンリーグではなく、ジムリーダー承認試験。トウガンの後釜としてポケモンリーグに正式にジムリーダーとして認めてもらうための試験を受けにいく。

カイムにとって今のところ最高の挑戦。故に、大いに緊張している。スモモやデンジ、スズナやトウガンに色々と話を聞いて対策はしてきたが、それでも不安を拭いきれないのはカイムの性格故か。

 

昨日の間に準備しておいたスーツケースなどの荷物を玄関に置く。そして車のキーを手に取ると、カイムは一言言った。

 

「行こう」

「ええ」

 

普段シロナが前を歩くが、今はカイムが前を歩いていく。

 

 

カイムにとって人生最大の挑戦、ジムリーダー承認試験が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ナギサシティから船に乗り換え、しばらく。

昨年の夏に訪れた島、スズラン島に二人は降り立った。

 

「ポケモンリーグ以外の用事で来るとはな」

「しかも今回は私じゃなくて貴方の用だものね」

 

スズラン島はポケモンリーグが開催されるたびに訪れている。だがカイムがこの島に来た経験は少ない。前回のリーグではサポーターとして、前々回はシロナに招待されて来ただけ。まだ慣れるほどこの光景を見慣れてはいない。

 

「それで、どうするの?」

「リーグが宿泊先を用意してくれている。もう夕方だし、とりあえずそこに行こう。明日は朝に筆記試験、昼前に面接で最後に実技試験がある」

「ハードスケジュールね」

「試験はそんなもんだろ」

 

一応厳しい大学入試をくぐり抜けてきたカイムからすれば、スケジュール的にはそこまでかつかつだとは思っていない。元々マメなカイムはスケジュール管理も得意であるため、このくらいのスケジュールは管理しなくともこなせる。

 

「行こう。チェックインだけ済ませて、リーグの方に顔出すように言われてんだ」

「そう。なら行きましょうか」

 

バッグを背負い直し、カイムとシロナはスーツケースを引いて宿泊先へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

荷物を宿泊先に預け、二人はポケモンリーグ会場へと向かう。会場の事務室で受付を済ませると、会議室へと通された。

 

「おっ!来たねー!」

「おう来たか!」

 

会議室には何故かナタネとマキシがいた。

 

「ナタネ、マキシさん。どうも」

「久しぶり〜。前のリーグ以来だね!」

「時間通りだな!マキシマムな心掛けだ!」

「シロナさんもお久しぶりです!」

「久しぶり、ナタネちゃん」

 

明るく声をかけてくる二人に対して、カイムは少しテンションが低い。元々低いのもあるが、緊張しているのがナタネとマキシにも伝わってきた。

 

「あ、もしかして緊張してる?大丈夫大丈夫!カイム君ならどーにかなるって!」

「どーも。それより、なんで二人がいるんだ?」

 

今回はポケモンリーグがあるわけでもなく、カイムのジムリーダー承認試験があるだけ。故にナタネとマキシがこの場にいる必要は特にないはずだった。

 

「うむ!今回の試験、我々も立ち会うことになった!簡単に言えば、試験監督だな!」

「ああ、なるほど。同じジムリーダーがやるんすね」

「そうなの。まあ手が空いてる人ってことが多いけどね。別にジムリーダーじゃなきゃいけないってわけじゃないの。あたしの時はキクノさんが監督だったしね」

 

ジムリーダーや四天王の承認試験は、リーグに認められて称号を与えられるトレーナーが必ず立ち会うことになっている。不正を防ぐため、ということもあるが、監督役を作ることで受験者の腕をより正確に評価するということが一番の理由だった。

 

「ちなみにチャンピオンはどうなんだ?」

「チャンピオンに承認試験はないわよ。その年のポケモンリーグ優勝者がチャンピオンになるの。四天王はリーグや大会の実績を考慮したうえで試験があるわ。今の四天王と入れ替わりバトルをすることもあったわね」

 

虫タイプを使うリョウはカイムが大学を卒業する少し前に四天王になっていた。その時チャンピオンであるシロナが監督役の一人としてそこに立ち会っていたらしい。

 

「だから今回の監督はリーグ運営とあたしとマキシさんってこと」

「お手柔らかにお願いします」

「はっはっは!お前さんの実力は聞いている!大丈夫だろう!」

 

そこでマキシは『さてと!』と話を切ると、カイムとシロナに椅子に座るように促した。

 

「今回の試験について今一度確認するぞ!」

 

マキシの言葉と共にナタネがカイムにプリントを渡す。そこには試験の概要について書かれていた。

 

「明日の試験は筆記、面接、実技の三つだ!筆記は9時からで制限時間は2時間!筆記が終わり11時半から面接だ!昼食後、実技試験になるのだが…この実技では3回バトルを行なってもらう!」

「3回?」

「そうなの。四天王と違ってジムリーダーって幅広いレベル層を相手にするじゃない?その度にジム所属のポケモンで戦うと思うんだけど、どんなレベルの相手やポケモンでも上手く戦えるかを見るの。ただ強いだけじゃジムリーダーは務まらないのは、カイム君ならもう実感してるよね?」

 

数ヶ月前、カイムは代理とはいえジムリーダーを務めた。そのため相手によって自身のバトルの腕を調節する腕も求められた。初めは少し上手くいかないこともあったが、最終的にはうまくできたためこれに関しては問題ないだろう。

 

「3回全部そういう感じなのか?」

「ううん。2回はそういう感じだけど、最後は全力バトルだよ。相当強い人(・・・・・)が相手になってくれて、その人とのバトルで全力を見るの」

「勝敗の結果は試験結果に直結しない。バトル内容で決まってくるが、直結しないからといって手を抜くようなことはしないことだ」

 

マキシは『そんなことするはずはないがな』と付け加えて豪快に笑う。

 

「その強い人って、誰だ?」

「ふっふっふ…それはその時のお楽しみ〜」

 

ナタネの意味深な笑みに首を傾げるカイムだが、知らされない以上気にするだけ無駄かと結論付け、考えることをやめる。

 

「それで実技について続きだけど、2回目までのバトルはこっちで用意したレンタルポケモンを使ってもらうよ。相手のポケモンに合わせたレベルのポケモンを用意するから、いい感じに戦ってね」

「ああ」

 

普通のトレーナーならこの『いい感じ』というのがわからないだろうが、数ヶ月の間ジムリーダーとして活動してきたカイムにはわかる。どう動くかを上手くこなすことで、カイムの思う『ジムリーダー』としてのバトルができる。

 

「よし!あとは細かい日程だが…これは紙に書いてある通りだ!何か質問はあるか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうか!なら、あとは全力を出すだけだ!明日、頑張ってこいよ!」

「はい。失礼します」

 

それだけ言ってカイムは会議室から出て行った。

シロナはカイムに先に出ているよう伝えると、ナタネとマキシに向き直った。

 

「ありがとう二人とも。カイムのために試験監督を受けてくれて」

「いいですよそんなの。そんなわざわざお礼言われるほどのことじゃないです」

「その通り!こういうことも、我々ジムリーダーとしての責務!後輩の育成にも協力しますぞ!」

「言うまでもないとは思うけど、ちゃんと公正な立場で見てほしいわ。生半可な鍛え方はしてないし、してないからこそ厳しくしてほしいの」

「甘く見て、じゃなくて厳しく見てとは…さすがシロナさんですな」

 

豪快に笑うマキシにシロナは小さく笑う。師匠としてカイムのことは相当厳しく育ててきたし、カイムもそれに着いてきた。余程強い相手でない限り、今のカイムならいいバトルをすることができるだろう。

だからこそ、この試験を経てさらに成長してもらうためにシロナは敢えて厳しくすることを頼んだ。バトルにおいてシロナが指導できることはほとんど指導し終わっている。無論手助けできる部分はまだまだあるが、これから先はカイムとポケモン達が自分で気づき、盗んでいく必要がある。つまり、己の気づきと他者からの指摘がなによりも大切となるのだ。散々見てきたシロナでは気づかないことも中にはある。あまり見ていない二人だから指摘できることがあるだろう。それは更なるカイムの成長に繋がる。

 

「ちゃーんと厳しく見ますよ。安心してください」

「ありがとう。じゃあ明日、カイムをよろしくお願いします」

「任せてください!」

「我々がしっかり見ておく!」

 

それだけ言ってシロナも会議室を後にした。

少し歩いたところで、カイムが待っていた。

 

「お待たせ」

「ああ」

「行きましょ」

 

カイムはシロナと並んで歩き始める。

暫し沈黙が流れるが、シロナが口を開いた。

 

「何も聞かないの?さっき二人と何を話していたか」

「別にいいさ」

「もしかしたら、甘く見てほしいとか言ってたかもしれないわよ?それこそ……えっと…賄賂とか?」

「そんな下劣なことはしないだろ。大方、厳しくしてほしいとか言ってきたんじゃねえの?知らんけど」

「甘く見て、じゃなくて?」

 

普通に考えれば、甘く見てほしいと頼むことが一般的にも思える。そう返すことは普通にも思えるが、カイムにとっては違うものだった。

 

「お前は数年かけて育てた弟子にそんな甘えたことをする奴じゃないだろ。むしろ更なる試練を与えてより成長を促すくらいはさせそうだ」

「そんなに厳しいイメージあるの?」

「ある。どんだけ厳しくされたと思ったんだ」

 

できるまでやらされたあの修行の日々。それを考えれば甘くされることの方が想像つかない。

 

「ふふ、その通りね。指導するときは全力で指導してたから」

「心折れなかった俺を褒めたい」

 

ややげんなりしながらカイムは答えた。

二人はそのまま宿泊先へと戻っていった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

明日の調整を終え、食事を済ませた二人はホテルの部屋でゆっくりしていた。

 

「いよいよ明日ね」

 

シロナの言葉にブラッキーとバシャーモを撫でながらカイムは頷く。

 

「ああ。ここまでくると寧ろ落ち着いてくる」

「いいことよ」

 

直前になったらまた変わるのかもしれないが、少なくとも今は落ち着けている。前日ともなればできることはほとんどない。そのことが返ってカイムの精神を落ち着かせ、冷静にさせていた。

 

「明日の実技…最後の全力バトルは自分のポケモン使うの?」

 

明日の実技試験では三回のバトルがあると説明があった。二回目までのバトルでは相手のレベルに合わせたレンタルポケモンでバトルするが、最後の相手は自身の全力をみるために自分で育成したポケモンを使うことになっている。

この全力バトルにおいてメンバーの選出は重要だ。例え勝敗そのものが試験の結果に繋がらないとしても、『どのような形で乗り越えたか』というのは自己評価の低いカイムにとっては今後に響きかねないとシロナは考えていた。

 

「…相手によるかな。ナタネ曰くかなり強い人みたいだし、最低でもタイプアドバンテージは取られたくない」

 

仮に相手がスモモだとしたら、自身のエースであるにしてもブラッキーは出せない。ブラッキーのメインウェポンは『バークアウト』『あくのはどう』『ふいうち』『しっぺがえし』などの悪タイプ技。サブウェポンとして『サイコキネシス』や『シャドーボール』などもあるが、耐久力に力を入れているブラッキーではそこまで火力が出ない。

 

「相手次第…そうよね。戦う相手によってメンバーを変えるのは当たり前だもの」

「そうだな。まあ、誰が相手かはなんとなく予想つくけど」

 

カイムの予想外の言葉にシロナは思わず目が点になる。シロナとしても最後の相手が誰なのかわからないのに、まさか試験を受ける本人が予想しているとは思わなかった。

 

「え?そうなの?誰?」

「これで間違えてたら恥ずいから言わね」

「もう、いじわる」

 

シロナは唇を尖らせ、カイムの膝にいたブラッキーを抱き上げて自分の膝に乗せた。ブラッキーは特に抵抗することなく、シロナに身体を預けてまったりしている。

 

「そろそろ寝る。明日も早い」

 

気づけば11時を回っている。普段ならもう少し起きていても問題ないが、朝の調節などを考慮すると早めに寝ておくに限る。

 

「あら、もうこんな時間。じゃあ寝ましょうか」

「ああ」

 

カイムが布団に潜り込むとそこにシロナとブラッキーも潜り込んでくる。しかしカイムは何も言わない。もはや一緒に寝ることが普通になっていることに対してカイムは違和感を感じなくなっているし、何よりシロナとブラッキーがご機嫌だから特別気にならない。

 

「おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

二人はそう言って目を閉じる。

だがシロナはそのまますぐに眠ることはなかった。穏やかな寝息を立て始めたカイムの顔を優しく撫でる。

 

「貴方なら大丈夫。自分とポケモン達を信じて」

 

そう小さく言うとカイムの頭を優しく抱きしめた。距離が近くなったことで間に挟まれるブラッキーがより密着することになったが、ブラッキーは嫌がる素振りを見せずカイムの顔に自分の顔を擦り付ける。

 

「おやすみ」

 

穏やかに眠るカイムとブラッキーを愛おしく見つめると、シロナも目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

カイムはワイシャツを着込み、ボールホルダーをベルトにセットすると鏡で身だしなみを確認した。

 

「いよいよね」

 

普段のコートを見に纏ったシロナがカイムにそう言う。

カイムは首を回しながら頷いた。

 

「ああ。そうだな」

「緊張してる…わね」

「まあな。ただそれで、ポケモン達にカッコつかねえ結果にはしねえよ」

 

腕時計をつけ、自身のIDと受験票をジャケットの内ポケットにいれてネクタイを手に取る。

シロナはそのネクタイをカイムの手からネクタイを奪うように取った。何事かとカイムは視線をシロナに向けるが、シロナは優しく微笑む。

 

「つけてあげる。襟立てて」

「あ、ああ」

 

驚きながらもカイムはシャツの襟を立てる。シロナはネクタイをカイムの首にかけ、ネクタイを結んでいく。

 

「これから頑張る貴方にちょっとだけお手伝い」

「…そりゃどーも」

 

シロナとカイムの身長はあまり差がない。故にネクタイを締めるシロナとカイムの顔は必然的に近くなった。今更顔が近い程度でどうこういうような関係ではないのだが、このシチュエーションが何となくその先の関係のように思えてしまい、どことなく気恥ずかしいものがあった。

 

「はい、できた」

 

しっかりと結ばれたネクタイを鏡を見て確認すると、カイムは頷いた。

 

「ん、サンキュ」

「うん。じゃあ、いってらっしゃい!」

 

シロナはカイム背中を少し強めに叩く。

叩かれたカイムは軽く息を吐くと、自分の頬を軽く叩き気合を入れ直す。

 

「行ってくる」

 

決意を固めた声と覇気を感じ、シロナは優しい微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

筆記の試験会場は会議室だった。中にはぽつんと一つだけ机があるだけで殺風景だが、試験はこんなものだろうと考える。受験者がカイム一人であることを考えればこれほど殺風景なのも致し方ない。

 

「お座りください」

 

リーグ運営委員の男性に促され、カイムは席につく。

机には試験問題と鉛筆などの筆記用具が一式あるだけ。

 

「制限時間は2時間です。時間はこちらの時計で管理いたします」

「はい」

 

カイムは腕時計を机に置くと、鉛筆を手に取った。

 

「それでは、始めてください」

 

試験監督の言葉と同時にカイムは問題を開いた。

 

 

 

 

 

 

筆記試験、面接を終えて出てきたカイムをシロナは出迎えた。

 

「お疲れ様。どうだった?」

「ああ、正直めっちゃ簡単だった」

 

シロナに手渡された缶コーヒーを受け取りながらカイムはそうぼやいた。

 

「あら、そうだったの?」

「面接はまあともかく、筆記は半分も時間いらなかった」

「どんな問題が出たの?」

 

ネクタイを軽く緩めながらカイムは缶コーヒーのプルタブを開き、コーヒーを飲む。一息つくと缶を軽く揺らしながら答えた。

 

「スクールの内容頭に入っていれば七割は取れる。その他の問題も正直大したことねえ。ハイスクール一年レベルだ」

「貴方の学歴を考えればスクールレベルの問題じゃ物足りないわよね」

 

カイムは(忘れられがちだが)ハイレベルなタマムシ大学の卒業。スクール程度の問題ではつまらないだろう。

 

「残り時間ずっと見直ししてたが、問題ない。ほぼ満点だ」

「ふふ、安心した。それで面接はどうだった?」

 

先ほどと変わってカイムはすぐに答えない。

どうしたのだろうと思ったシロナは首をかしげる。

 

「できなかったの?」

「いや、普通に答えられた。ただいくつか気になるというかなんというか…」

「気になる質問でもされたのかしら?」

 

シロナの問いにカイムは頷いた。

 

「最後にさ、『貴方にとってジムリーダーはどういう存在ですか?』って聞かれたんだ」

「ジムリーダーはどういう存在、か…確かに難しい質問ね。それをどう答えたの?」

 

缶コーヒーを飲み干し、空き缶をゴミ箱に突っ込みながらカイムは応える。

 

「トレーナーにとって壁となる存在。それと同時にバトルの楽しさと、そいつの良さをバトルを通して伝える存在…ってとこだな」

 

ジムリーダーはポケモンリーグ公認のバッジを新人のトレーナーに与える。しかし当然、ジムリーダーに勝たねばそのジムバッジは与えられない。まさにポケモントレーナーとして最初の『壁』。その『壁』として自分はちゃんと在りたいと考えていた。

 

「…俺は、何回もジムリーダーに負けてきた。何度も挑んで、何度も負けた。だから俺もどんなに見込みがなくても、挑んでくる限りはちゃんと相手にする。そのバトルの中で、そいつ自身の強みとバトルの楽しさを伝えられたらって思うんだ」

 

ジムバッジを集め終えるまでに相当な時間を費やしたカイムは、その過程で何度も同じジムリーダーに挑むこともあった。だから今度は自分がちゃんと相手にしたいと考えた。

また、バトルの楽しさと自身の強みを伝える。これはシロナから教わったことだ。楽しさを知らなければ続けられない。自分の強みを理解しなければレベルは上がらない。それをよくわかっているカイムだから、そんなジムリーダーになりたいと考えていた。

 

「ふふ、貴方らしいわね」

「他の人がどうかはしらんが、俺はこういうのが一番しっくりくる」

「きっとそのジムリーダー像に正解はない。貴方がどう在りたいかを聞くものだからね」

「…俺の答えが的外れでないことを願うよ」

「それで?まだあるんじゃない?」

 

シロナの指摘にカイムは頷いた。

 

「さっき俺が筆記の問題が簡単だったって言ったろ?なんであの程度のレベルなのかを聞かれたんだ」

「どう答えたの?」

「ジムリーダー承認試験は、スクールを卒業、または在籍していれば『誰でも』ジムリーダーになれる試験だ。誰でもなれるという名目である以上、一定以上の問題レベルにはできない。それこそフウとランみたいにスクール在籍中くらいの年齢でもなれるようにしてんなら、問題のレベルは上げられん。それに結局ジムリーダーに必要なのは強さの幅だ。知識は無論必要だが、強さがなきゃお話にならん。だからその程度だって答えた」

 

ジムリーダー承認試験は『誰でも』ジムリーダーになれる試験。試験を受ける者は当然年齢に差があり、学力にも差ができてしまう。

その差が試験の結果を左右しないようにするためにスクール程度の知識で合格点レベルまで取れるような試験にしたのだろうとカイムは考えた。

 

「なるほどね。確かにそうかもしれないわ」

「それに対する返答はなかったし、正解かどうかはわからんがな」

「あとカイムのこの考え方なら、面接の時に筆記試験のレベルについて聞くことも意図に含まれているかもしれないわね」

 

ただ漫然と受けるのではなく、『何故このレベルなのか』ということも考えて試験を受けているか。そこまで考えたうえの筆記試験だったのかもしれない。

 

「…なるほど、そいつは盲点だった」

「実際はどうかわからないけどね。それでまだあった?」

「ああいや…あったっちゃあったけど…」

 

カイムの言葉はどこか煮え切らない。どうしたのだろうとシロナが首を傾げると、カイムは小さく言った。

 

「……試験監督として、面接にナタネとマキシさんがいたんだが…二人とも普段の格好で俺だけスーツで…恥ずかった」

 

それを聞いたシロナは思わず吹き出す。まさか面接そのものではなく服装についてだとは思いもしなかったし、なによりそれを気にしていたカイムが可愛らしく思えた。

 

「うふふ、そういうことね」

「いや恥ずいだろ…マキシさんなんていつも通り上裸だぞ?それを前に俺スーツ。恥ずいって」

「ふふ、お疲れ様」

 

僅かに顔を赤くしながらカイムはがしがしと頭をかく。そんなカイムの手をシロナは引いた。

 

「さ、ごはんにいきましょ。実技試験に備えなきゃ」

「……ああ」

 

シロナに連れられてカイムは食堂へと足を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

実技試験会場

ポケモンリーグスタジアム

 

スーツ姿のカイムがモンスターボールを二つ手に持って立っていた。

目の前のスタジアムには相対するのは、エリートトレーナー。そして審判の場所にはリーグ運営委員。

 

「それではこれより、ジムリーダー承認試験の実技試験を始めます」

 

その言葉を聞いたカイムとエリートトレーナーはモンスターボールを構える。実技試験の最初二回のバトルはレンタルポケモン二体ずつでバトルし、最後のバトルだけ自分のポケモン三体で戦うことになっている。

 

「使用ポケモンはレンタルポケモンの二体!持ち物以外の道具の使用は禁止!それでは、始めてください!」

「いけ!ポッタイシ!」

「頼んだ、ルクシオ」

 

エリートトレーナーはポッタイシ、カイムはルクシオを出した。

今二人が使っているポケモンはレンタルポケモン。共にレベルは20と同じレベルになっている。

 

「ポッタイシ!バブルこうせん!」

「ルクシオ、スパーク」

 

ルクシオは『スパーク』を纏ってポッタイシの『バブルこうせん』を突き破り、突撃していく。

その瞬間、ポッタイシは横に飛び直撃を回避するが、纏った電撃の余波を受けてしまう。

 

(…思ったより向こうもこっちも動けるな。指示のタイミングを調整するか)

 

今回の試験はジムリーダーとして強さの幅を出せるかどうかを見る試験。故にただ全力でバトルすればいいのではなく、相手に合わせ、実力を引き出した上でいいバトルをすることが目的となっている。

相手のエリートトレーナーもジムトレーナーくらいの実力はあるが、あえて育成途中のポケモンを使うことで、ポケモンに経験を積ませると同時に自身の実力をうまく制限している。

 

(このバトルの目的は勝つことではなくいいバトルをすること。いいバトルをして、相手のポケモンのいいところを引き出す。あのポッタイシの潜在能力を俺が引き出すつもりでやらにゃならん)

 

ただ倒すのではなく、相手の動きを見極め、『どう動かすか』を考える。これがカイムの中で最も難しいポイントだった。

 

「ポッタイシ!アクアジェット!」

 

突撃してくるポッタイシに対したカイムは反応できたが、あえて指示は出さない。直撃を受けた上で、ダメージとポッタイシの動き方を探る方向でバトルを見る。

 

(やれるだけやるさ)

 

そう意志を固め、カイムはルクシオに指示を出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴウカザル!フレアドライブ!」

「ドータクン、ジャイロボール」

 

ゴウカザルが炎を纏って突撃してくるが、ドータクンは回転しながらゴウカザルとぶつかる。ぶつかったドータクンは跳ね飛ばされるが、空中で体勢を立て直した。

 

「しねんのずつき!」

 

ドータクンは重力の力を利用し、エスパータイプの力を纏った頭をゴウカザルにぶつけた。効果抜群の攻撃を受けたゴウカザルはそのまま地面に倒れた。

 

「ゴウカザル戦闘不能。ドータクンの勝ち!」

「ふう」

 

レンタルしたドータクンをボールに戻すとカイムは息を吐き出す。

これで二回目のバトルが終了した。結果は一分一勝となっており、カイムなりにいいバトルができたのではないかと思っている。

 

二回のバトルで少々暑くなり、ジャケットを脱ぐ。スタッフにジャケットを預かってもらうと、カイムはシャツの袖を捲った。

 

「このまま続けますか?それとも一度休憩を挟みますか?」

 

審判の問いにカイムは淡々と答える。

 

「このまま続けます」

 

多少消耗したのは確かだが、それ以上に今は調子が上がっている。この上がっている調子を落とすのは勿体無いと考えたカイムはそのまま続行することを選択した。

 

「承知しました。では、実技試験最後のバトルです」

 

そう審判が言うと、カイムの向かいにある扉がゆっくりと開いてくる。最後のバトルは自分のポケモンで戦う全力のバトル。そしてナタネが言っていた強い人に、カイムは心当たりがあった。

 

扉から歩いてきたのは、作業着にマントのようなものを羽織った男性だった。

 

「…やっぱそうかよ」

 

カイムは男性…トウガンの顔を見て苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

一方、観客席で見ていたシロナ、ナタネ、マキシはカイムのバトルを評価していた。

 

「へえ〜。数ヶ月しかやってなかったのにかなりいい動きできるじゃん」

「うむ。これほどとは思っていなかったな」

 

ジムリーダー経験者である二人の目から見てもカイムの動きはかなりいいものだった。彼の動きはジムリーダーとして十分に動けるものであり、それを認めるには十分なバトルだった。

 

「それでどう?二人の目から見て、今のカイムのバトルはどうだった?」

「率直に言っていいんですよね?」

「もちろんよ。そうじゃなきゃ意味ないわ」

 

一応カイムはシロナの弟子。あまり厳しいことを言いすぎるのはどうだろうとナタネは思ったが、むしろボコボコにしろと言わんばかりのシロナの言葉に安心して口を開いた。

 

「さっきも言いましたけど、かなりいい動きしてました。正直このままジムリーダーにしても多分普通にジム運営できますよ。数ヶ月とはいえジムリーダー経験してたのが大きいですね」

 

ナタネの言葉にマキシは同意するように頷く。

 

「ああ。あの青年がここまでになるとはな」

 

だがマキシはそこで一度言葉を切ると、表情を険しくしながら腕を組んだ。

 

「ただ、やや攻め手に欠ける。受け身になることがかなり多い。自分から攻めにいく姿勢に欠けては押し負けてしまう」

「そうですね…さっきのドータクンとゴウカザルの対面でも、わざわざ受けなくていい場面もあったし。まあこの対面だと素早さ的に上を取られることだろうけど、あれだけ動けるなら避けられる場面もあったしね」

「うむ。それに、どことなく動きも固い。緊張…だけでは無さそうだ。メンタル的な要因か」

「さすがにいい場所を突いてくるわね」

 

実際今のバトルではカイムは受けに回ってバトルを進めることが多かった。無論受けが得意なポケモンもいるが、ルクシオのように攻撃型のポケモンもいる。そのようなポケモンで受け戦法を使うのは適切とは言えない。

 

「それについては、カイムの性格とか得意なやり方のも関係してるわ。ただ、それにも理由があるの」

「理由?」

「ええ。確かにカイムは受ける戦法が得意だわ。でも、今は『敢えて』そういう受け戦法を使っているの」

「どういった理由で?」

「一言で言えば、今後のため」

 

ナタネとマキシはその理由はわからず首を傾げた。

 

「メンタル的なことは…そうね。多分、今日どうにかなると思うわ」

 

動きの硬さは緊張もあるが、やはり根幹にあるメンタル的なことが起因していた。自身のバトルにおける実績の無さ。それがカイムの動きを若干硬くしていた。

だがそれも、このあとのバトルで解決する。そうシロナは考えていた。

 

「それに、次の相手ならカイムの硬さもなくなると思うわ」

「ふむ…なら、見せてもらうとしましょう。マキシムなバトルを!」

 

シロナ達はフィールドに視線を戻す。

丁度その瞬間、カイムと相対する扉から一人の男性が歩いてきているのが見えた。

 

「頑張って」

 

シロナは小さくそう呟きながら右手の薬指につけられた赤いリングを撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

カイムはフィールドで対戦相手…トウガンと向き合うと目を細める。

 

「やっぱトウガンさんだったんすね」

 

カイムの言葉にトウガンはニヤリと口元を歪めた。

 

「ほう?私が来るとわかっていたような口ぶりだな」

「なんとなくですけどね。そんな気がしたんです」

「ふふ、君の直感はなかなか鋭いな」

 

トウガンがここに来る素振りは一切なかった。しかしカイムは三回目の全力バトルがあると聞いた瞬間、相手にトウガンが来るのではないかとなんとなく予測した。それこそ理由はない。ただの直感だ。

 

「ようやく、本気の君と闘える。今まで何度かジムでバトルしてきたが、本当の意味で全力を出していたわけではないだろう?」

「…そう思う根拠は?」

「何、簡単だ。まず、覇気が弱い。留学以前とはいえ、全力のスモモに勝てるトレーナーの覇気があの程度なはずない。加えて、私も本当の意味で全力ではなかったからな。負け越しているとはいえ、ヒョウタに黒星をつけるトレーナーが多少加減した私程度に負けることは考えづらい」

「バレてましたか」

 

無論カイムとて悪意があって加減をしたわけではない。ポケモンの体調や調子、トレーニング状況を考えたうえでのバトルであったため、あえて加減した。そしてそれ自体はお互い様であるため、責めるようなことはしない。

 

「まあトレーニング後のバトルだ。あのくらいにしておいた方がいいというのを考えた上だろう」

「ええ」

「だが今は気にすることはない」

 

トウガンは不敵な笑みを浮かべるとモンスターボールをこちらに向けて構えた。鍛え上げられた覇気がトウガンから発せられる。

 

「見せてくれ。君の本気を」

「はい。全霊をかけて」

 

カイムもボールを手に取り、トウガンに向けて構えた。

 

「バトル開始!」

 

そして審判の掛け声とともにポケモンを繰り出す。

 

「ゆけ!ハガネール!」

「頼んだ、ルカリオ」

 

トウガンはハガネール、カイムはルカリオを繰り出す。ハガネールは鋼・地面タイプでルカリオは鋼・格闘タイプ。互いに弱点を突ける対面だが、物理型で育てられたルカリオが不利になる。ハガネールは攻撃力はあまり高くないが、物理防御については全てのポケモンの中でトップクラス。ルカリオの攻撃力でどこまでハガネールにダメージを与えられるかが鍵になる。

 

「ハガネール、じしん!」

「でんこうせっか!」

 

ハガネールが『じしん』の衝撃波を放つ前にルカリオは高速で動き『じしん』を回避した。

 

「むう!やるな!ならばてっぺきだ!」

「させんな。インファイト」

 

ハガネールが『てっぺき』で防御力を上げようとした瞬間、ルカリオは『でんこうせっか』の速度でハガネールに肉薄すると連撃を放った。高威力・効果抜群の技を受けたはずなのだが、ハガネールの体力はそれほど減っていない。

 

「かった!マジかよ」

「ハガネールの防御力を舐めるな!アイアンテール!」

「でんこうせっか!」

 

ハガネールの『アイアンテール』がルカリオに向けられるが、ルカリオは『でんこうせっか』の速度で即座に離脱、回避した。

 

(まるでシロナさんのルカリオだな)

 

シロナのルカリオは『しんそく』の速度を機動力として扱うことができる。本来ならあまりの速度にポケモンが制御することができず、連撃を加えることが精一杯なのだが、シロナのルカリオは絶え間ない鍛錬の末にその速度を完全に制御することを可能とした。

しかしカイムのルカリオはまだその領域に至ってはいない。多少制御はできるようになったが、まだ実戦で使えるレベルではない。だから速度は劣るが、制御が比較的容易な『でんこうせっか』で対応することとした。

 

(ゼロから最高速度に到達するまでの速さ…なるほど、これはハガネールでは捉えきれんな)

 

ハガネールの速度はルカリオに大きく劣る。この速度ではルカリオを捉えることなど、到底できない。

だがいくら速度があってもスタミナに限界はあるし何度も回避することはできない。攻撃がほとんど通らない以上、ルカリオは時間を重ねるほど不利になる。

 

「だがどこまで避け切れるかな?じしん!」

「でんこうせっか!」

 

再び『じしん』を『でんこうせっか』で回避するが、確かにこのままではジリ貧。少々部の悪い賭けではあるが、今のルカリオでできる最善策をカイムは瞬時に導き出す。

 

「ルカリオ、あれやるぞ」

 

カイムの言葉にルカリオは頷く。

なにかくる、と身構えたトウガンだが、ルカリオは先程と同様に高速で動きハガネールの背後を取る。

 

「つるぎのまい!」

 

『つるぎのまい』によってルカリオは攻撃力を上昇させる。攻撃力が上がればハガネールの防御力を持ってしてもダメージは上がる。これが秘策というのであれば、あまりにも安直だ。

 

「ならばこうしよう。ハガネール、てっぺき!」

 

ハガネールも防御力を上昇させる。これで『つるぎのまい』による攻撃力上昇は無意味になった。『インファイト』ほどの大技ですらダメージをロクに与えられないのであれば、ルカリオにハガネールは倒せないに等しくなる。

 

「大技であっても、物理でハガネールは簡単には倒せんぞ」

「まだまだ。インファイト」

「もう一度てっぺきだ」

 

ルカリオの連撃がハガネールに直撃するが、それと同時にハガネールは防御力をさらに上昇させる。ここまで防御力があっては、ルカリオの『インファイト』でもダメージは少ない。

 

「アイアンテール!」

「でんこうせっか」

 

ハガネールは硬化させた尾をルカリオに叩きつけてくるが、ルカリオは流水の如き腕捌きでハガネールの尾をノーダメージで受け流す。そして『でんこうせっか』で体当たりするが、ダメージはほぼない。

 

「じしん!」

「下がれ!」

 

ルカリオは『じしん』の衝撃をバックステップで範囲外に逃れる。だが広範囲の攻撃を回避したため、着地体勢が悪い。『じしん』によって崩れた足場に足を取られ、膝を突いた。

この体勢では『でんこうせっか』に即座に移れない。その瞬間、トウガンは動いた。

 

「ここだハガネール!ボディプレス!」

 

ハガネールは巨体を跳び上がらせると、ルカリオに向かって落下した。

『ボディプレス』はポケモンの防御力が高いほど威力の増す技。素の防御力が高いだけでなく、『てっぺき』によって防御力をさらに上昇させたハガネールの『ボディプレス』の威力は計り知れない。加えて数回の『インファイト』によって耐久力がガタ落ちしたルカリオでは、この技を耐え切ることは不可能。

 

『ボディプレス』はルカリオに直撃した。ハガネールに大きなダメージはなく、持ち物の『食べ残し』で徐々に体力も回復している。これは大きなアドバンテージになるだろう。

 

だが、ルカリオの目はまだ死んでいなかった。

 

「そんなタマじゃねえよな、ルカリオ」

「っ⁈」

 

ルカリオはまだ倒れていなかった。ハガネールの巨体にのし掛かられてなお、ギリギリで持ち堪えている。

 

「なんだと⁈」

「これなら最大威力だ。カウンター!」

 

ルカリオは全身の波導を拳に集中させると、ハガネールの身体を穿った。

ハガネールの巨体はルカリオの一撃によって吹き飛ばされ、スタジアムの壁に激突した。

 

「ハガネール!」

 

ルカリオ渾身の一撃にハガネールは耐え切れず、地面に崩れ落ちた。

 

「ハガネール戦闘不能!」

「うし、完璧だ」

 

ルカリオは肩で息をしながらもカイムの言葉に頷く。

トウガンはハガネールをボールに戻すと、豪快に笑いながら聞いた。

 

「グハハハ!やられたよ!やるではないか!まさかインファイト以上の大技を仕込んでいたとはな!」

「俺達は別にそれ以上の大技が無いとは言ってませんよ」

「ふふ、言うではないか。ルカリオの持ち物…きあいのタスキだな?」

 

ルカリオは何度も『インファイト』を放った反動で耐久力がガタ落ちしていた。元々耐久力のあるタイプではないため、ハガネールの『ボディプレス』を耐えられるはずがない。それを耐えたということは、持ち物に起因するものとなる。

それは『きあいのタスキ』。ダメージを受けていなければ、どんな攻撃を受けても確実に体力を残してくれる道具だ。

 

「タスキカウンターか…以前は使ってなかったはずだが?」

「ええ。でも隠してたわけじゃないです。ルカリオは防御は得意なんですけど、攻撃は少し苦手でしてね。それに追従してか、しんそくの制御もうまくいかなかったんです。正直、今もまだ間に合っていないんですけど、でんこうせっかの制御は完璧になりました。だから今回、解禁したんです。タスキをキープするには、相手の攻撃を回避しなきゃなりませんから」

 

『きあいのタスキ』は少しでもダメージを受けてしまうと効果を発さなくなる。防御が如何に得意だとしても、ダメージを完全にゼロにすることは難しい。

だから高速移動が可能となる『でんこうせっか』を完全に扱えるようになるまでこの戦法を使わなかった。できることなら『しんそく』を制御できるようにしたかったが、『しんそく』の制御はあまりにも難しく今のルカリオでは完璧に制御することはできなかった。

 

「くくく…グハハハ!いい目になったな!ならば私もさらに行かせてもらおう!ゆけ!エンペルト!」

 

トウガンが次に繰り出したのはエンペルト。水・鋼タイプのポケモンであり、非常に気位の高いポケモンだが、トウガンは完全に手懐けていた。

 

(エンペルト…手懐けているとはな)

 

エンペルト…というか、ポッチャマ自体がかなりプライドが高い。故に手懐けられるトレーナーと限られている。カイムの記憶でもポッチャマを最後まで育て上げられたトレーナーはあまり多くない。

 

(ルカリオは限界…できてあと一撃)

 

ルカリオは文字通り気合のみで立っているに等しい。

だがルカリオの目の闘志は消えていない。ならば限界まで戦う以外選択肢はない。

 

「いくぞルカリオ!でんこうせっか!」

「エンペルト!アクアジェット!」

 

ルカリオとエンペルトが同時に消える。そしてぶつかり合い、衝撃波が広がった。

 

「蹴り上げろ!」

「防げ!」

 

ルカリオは波導を足に集中させると、エンペルトに踵落としを放つ。しかしエンペルトは自身の翼でそれを防いだ。

 

「インファイト!」

「ラスターカノン!」

 

ルカリオの連撃と同時に鋼の力を放った。同時に放たれた攻撃は互いを穿ち、弾き飛ばした。

ルカリオはその衝撃を受けフィールドを転がる。勢いが止まった時には、ルカリオの意識はなかった。

 

「ルカリオ、戦闘不能!」

「…よくやった。ありがとうな」

 

カイムはフィールドに倒れるルカリオに歩み寄り、優しく撫でるとボールに戻した。

 

「初戦にしては、十分すぎる」

 

タスキカウンターの戦法は今回初めて使った。しかし初戦にもかかわらず、ルカリオはハガネールを落とし、そしてエンペルトにダメージを与えた。十分な働きだったといえるだろう。

 

「さあ次だ。頼むぞブラッキー」

 

カイムが繰り出したのは、エースであるブラッキー。トウガンとしてはここでバシャーモが出てくるかと考えていたが、タイプ相性を考えたのだろうと結論付ける。

 

「ブラッキー、あくのはどう」

「エンペルト!ラスターカノンだ!」

 

技がぶつかり合い、相殺される。その瞬間、ブラッキーは走り出してエンペルトに肉薄した。

 

「バークアウト!」

 

ブラッキーの咆哮がエンペルトに直撃する。『バークアウト』の追加効果により、エンペルトの特攻が下がった。

 

「つばめがえし!」

 

特攻が下がるのとほぼ同タイミングでエンペルトの『つばめがえし』がブラッキーに直撃する。タイプ不一致技だが、ブラッキーに確実にダメージを与えてきた。

 

「そのままハイドロポンプ!」

「まもる!」

 

エンペルトは『つばめがえし』の攻撃を終えた瞬間、凄まじい水流でブラッキーに攻撃してくる。

だがそれを読んでいたカイムも『まもる』によって『ハイドロポンプ』を防いだ。

 

「アクアジェット!」

 

だが『まもる』が解除される瞬間をトウガンは見逃さなかった。速攻技である『アクアジェット』でブラッキーにダメージを与えていく。

ブラッキーは非常に固いポケモンであるが、速度が遅い。ブラッキー自身の技量によって直撃は避けられたが、ダメージはある。

 

エンペルトは『アクアジェット』の勢いを使い飛ぶと、空中で鋼の力を溜めて放つ。

 

「ラスターカノン!」

「あくのはどう!」

 

再び技がぶつかり合う。弾けた際に広がった煙に紛れ、ブラッキーは姿を眩ませる。

 

「む…」

 

煙はフィールドの一部を覆い、ブラッキーの姿を隠す。ブラッキーの気配は煙の中にあるが、動き回っており場所が定まらない。

煙の中から飛び出してきた黒い影がエンペルトに迫り来る。エンペルトは咄嗟に『つばめがえし』で反撃したが、エンペルトが攻撃したのはブラッキーの『あくのはどう』だった。

 

「何っ⁈」

「バークアウト!」

 

反撃してきた隙を突き、ブラッキーは背後から飛び出し『バークアウト』を直撃させた。

 

(あれは…私のミカルゲの…)

 

たった今カイムが使ったのはシロナがダンデとのバトルで使った戦法と同じものだった。ダンデが煙を利用して攻撃してきたのをさらに応用して使った戦法。それをカイムはブラッキーで行って見せ、見事決めた。

 

「やるじゃない」

 

シロナはそう呟いて小さく笑う。

 

「つばめがえし!」

「飛べ!」

 

再びエンペルトは『つばめがえし』を放つが、ブラッキーはジャンプしてエンペルトの翼に乗った。そのままエンペルトは翼を振り回してブラッキーを叩きつけようとするが、ブラッキーは背後に飛んで着地した。

 

「いい動きだ!」

「素早さはともかく、動きは一番なんでね!バークアウト!」

「ラスターカノン!」

 

ブラッキーの『バークアウト』が直撃する直前に『ラスターカノン』が放たれ、互いに攻撃を受けた。ブラッキーは『ラスターカノン』の追加効果で特防が下がり、エンペルトの特攻もさらに下がる。

 

「エンペルト!アクアジェット!」

「まもる!」

 

エンペルトの攻撃をブラッキーは『まもる』で防ぐ。

そしてエンペルトは追撃を加えようとした瞬間、カイムが動く。

 

「戻れ」

 

カイムはブラッキーをボールに戻した。

 

(ここで戻す判断か…)

 

今までカイムは基本ポケモンを戻すことはほとんどしなかった。ポケモンを戻すと出した瞬間からバトルが開始するため、着地地点が予測されやすい入れ替えはうまく使わなければ致命的な一撃を受ける可能性がある。

 

「よし、いくぞバシャーモ!」

 

カイムは最後の一体、バシャーモを繰り出した。

最後の一体がバシャーモであることを予測していたトウガンは出てきた瞬間のバシャーモに向けて攻撃を指示する。

 

「エンペルト!ハイドロポンプだ!」

 

凄まじい水流がバシャーモに向けて放たれる。炎タイプを持つバシャーモに水タイプの技は効果抜群。バシャーモ自身あまり耐久力は高くない。直撃を受ければ大きなダメージを受けてしまうだろう。

 

「フレアドライブ!」

 

だがバシャーモは敢えて攻撃に突っ込んでいく。全身に炎を纏わせ凄まじい勢いで突撃していき、『ハイドロポンプ』に拳を叩きつけた。炎タイプの『フレアドライブ』では『ハイドロポンプ』に押し負けてしまう。しかしバシャーモは炎で水を蒸発させながら『ハイドロポンプ』を打ち破った。

 

「ほう!」

 

バシャーモ自身の攻撃力もさることながら、やはりブラッキーの『バークアウト』による特攻ダウンが響き打ち破ることができた。そうでなければここまで簡単に破られることなどなかっただろう。

しかしやはり水タイプの高威力技である『ハイドロポンプ』をノーダメージに抑えることはできなかった。二割ほどのダメージを受けたが、直撃を受けるよりははるかにマシだろう。

 

「アクアジェット!」

「ニトロチャージ!」

 

エンペルトの『アクアジェット』をバシャーモは『ニトロチャージ』で受ける。当然ダメージはバシャーモの方が大きいが、バシャーモは炎を纏った状態でエンペルトの身体を掴むと放り投げた。

 

「つるぎのまい!」

「ラスターカノン!」

 

バシャーモは『つるぎのまい』で攻撃力を上昇させ、エンペルトはそれを阻止するために命中安定の『ラスターカノン』を放つ。バシャーモに『ラスターカノン』が直撃するが、『つるぎのまい』を完遂させて攻撃力を上昇させた。

 

「ニトロチャージ!」

「つばめがえし!」

 

バシャーモは炎を纏いエンペルトに向けて蹴りを放つが、エンペルトは飛行タイプの力を宿らせた翼で受ける。

 

「得意の近接格闘だ。存分にやれ」

「速いぞ!気をつけろエンペルト!」

 

バシャーモは『ニトロチャージ』の状態でエンペルトに次々と攻撃をしていく。拳、蹴り、掌底、組み技など自身が持つ攻撃の技術を駆使してエンペルトに攻めかかる。『ニトロチャージ』によって速度が上がっているバシャーモの攻撃は素早く、高速でエンペルトを攻撃していた。

しかしエンペルトも歴戦のトレーナー、トウガンに育成されたポケモン。いくら相手が素早くとも対応することができる。バシャーモの攻撃を翼で防ぎ、いなし、そして反撃していく。

速度は明らかにバシャーモが上回っている。しかしダメージは互いに嵩んでいく。バシャーモは細かいダメージを与え続けているのに対し、エンペルトは時折強めの一撃をバシャーモに与えていた。

 

(クソ…攻めきれねえ)

 

バシャーモの攻撃速度をもってしてもエンペルトの防御をくぐり抜けられない。それはバシャーモよりもエンペルトの技量が遥かに上回っている証拠だった。

 

(バシャーモの調子は上がってきてる。速度もニトロチャージで上がっているのに大きなダメージを与えられていない。それどころかこちらの方がダメージレースに負けてきている。完全に技量で負けてんな)

 

タイプ相性もあるが、攻撃速度でここまで圧倒しているのにダメージが小さい。それはエンペルトの防御技量がバシャーモの攻撃速度を上回っているからだった。

 

(技量はここじゃ上がらん。ならやれるのは、更に速度を上げること。そろそろ上がる頃合いだ)

 

無いものねだりをしたところで何もならない。ならば今できるもので勝負する。そう切り替えてカイムは指示を出す。

 

「一度下がれ!」

 

バシャーモはエンペルトを蹴り空中で一回転すると綺麗に着地する。

 

「フレアドライブ!」

 

そして全身に『ニトロチャージ』以上の炎を纏わせ、エンペルトに向かって突撃していく。『ニトロチャージ』によって上がった速度も利用してくる『フレアドライブ』の威力は、ダメージが等倍のエンペルトにも大きなダメージを与えるだろう。

 

(だがその速度は一度見た)

 

エンペルトは先程の攻防の際、間近でバシャーモの速度を見ている。故に、タイミングを合わせて防御して反撃することなど造作もない。

『アクアジェット』の要領で水を纏うと、バシャーモを受け止める構えを取った。このまま水で『フレアドライブ』を軽減しつつ受け止め、反撃の『ハイドロポンプ』でトドメを刺せる。そう考えた。

 

だが、ここで予想外のことが起きる。

 

「加速しろ」

 

突如、バシャーモの速度が更に上がった。急な速度の伸びを見せたバシャーモにエンペルトは反応が遅れる。

 

炎を纏ったバシャーモの一撃がエンペルトを襲う。咄嗟に水と翼でガードしたが、ガードが不十分でエンペルトは弾き飛ばされた。なんとか耐えきりうまく着地したが、一度『つるぎのまい』を積まれた攻撃はなかなか痛いものだった。

 

「エンペルト!まだ行けるか⁈」

 

トウガンの言葉にエンペルトは肯定するように吠える。トウガンは頷くと、カイムのバシャーモに目を向けた。

 

「…特性『加速』か」

「ええ。先日変えました」

 

バシャーモのもう一つの特性『加速』。一定時間ごとに素早さが上がる強力な特性。

カイムは『加速』によって速度が上がる時間を体感で記憶していた。そしてこの特性が発動する瞬間、『フレアドライブ』によって攻撃しエンペルトの不意を突いた。

 

(まさか加速してくるとは…手の内を見せてなかったのはお互い様だったか)

 

トウガンはカイムにエンペルトを見せていなかった。その理由として、エンペルトはプライドが高いため、練習バトルでも本気で相手を叩き潰すつもりでやる性格だからだ。手加減したとしても、敗北することはエンペルトのプライドが許さなかったのだろう。それ故に調整や手合わせに参加できなかった。

 

「まだ速くなるなら、それに対応してみせよう!」

「あげていけよバシャーモ。お前の速度に相手は対応してくるぞ。フレアドライブ!」

 

反動のダメージを受けながらもそれに怯むことなく、再びバシャーモは炎を纏った。

 

「アクアジェット!」

 

エンペルトも水を纏って突撃する。

互いにぶつかり合うが、単純な威力と『つるぎのまい』による攻撃力上昇の効果は大きくエンペルトは弾かれる。

だがその弾かれた勢いを利用し背後に飛ぶと、水の力を口に集めた。

 

「ハイドロポンプ!」

「二歩左!」

 

放たれた激流をバシャーモはカイムの指示通り左に回避行動をとる。しかし想像以上に『ハイドロポンプ』の速度が速く回避しきれなかった。肩に『ハイドロポンプ』が当たり、大きく体力が削られた。

 

「突っ込め!」

「来るぞ!」

 

バシャーモはエンペルトに肉薄し、エンペルトは『つばめがえし』の力を纏ってバシャーモに突っ込む。

その瞬間、再びバシャーモの速度が上がる。単純な速度としては『でんこうせっか』にははるかに劣るが、安定してどんな動きにも対応できる速度であるため、どんな攻撃が来てもおかしくない。それを理解しているトウガンとエンペルトはバシャーモの速度が上がることも計算に入れつつ、反撃の体勢を取る。

 

刹那、バシャーモがエンペルトの眼前に現れる。

 

「つばめがえし!」

 

エンペルトの『つばめがえし』がバシャーモに向けて放たれる。その速度と正確な斬撃は相手の気配を的確に捉える必中技。バシャーモがこれを無傷で回避する術はない。

 

「流せ」

「⁈」

 

だがバシャーモはエンペルトの攻撃を拳で受け流した。

『つばめがえし』は必中技。近接時に無傷で回避することは『まもる』や『みきり』などの防御手段を除いて防ぐ術はない。

だが裏を返せば、『無傷でなければ』防ぐことは可能。バシャーモは拳で『つばめがえし』を流すことでダメージを軽減させた。

 

完全に直撃することを確信していたエンペルトは、手応えの少なさと見切られた衝撃によりほんの一瞬隙ができてしまう。その刹那の瞬間にエンペルトはバシャーモが攻撃体勢に入ったのを見た。

咄嗟に翼で防御体勢に入りダメージを軽減させようとするが、バシャーモが行ったのは技ではなかった。

 

「蹴り上げろ!」

 

バシャーモは技でもなんでもないただの体術でエンペルトの翼を蹴り上げる。想定外の行動に反応が遅れたエンペルトは、自身の翼で視界が塞がれてしまう。

そこにバシャーモはさらに一撃を加え、エンペルトの体勢を崩した。エンペルトが体勢を立て直す前に、バシャーモは背後に回る。

 

「インファイト!」

「アクアジェット!」

 

背後に回ったバシャーモの連撃がエンペルトを貫く。咄嗟にエンペルトは水を纏うが、万全の体勢でないためバシャーモに与えられるダメージは少ない。

効果抜群技がエンペルトを捉え、大きなダメージを与えた。攻撃を受けたエンペルトはフィールドを転がり、止まった時には意識を無くしていた。

 

「エンペルト戦闘不能!」

「よくやったエンペルト」

 

トウガンはエンペルトをボールに戻し、カイムに視線を向ける。

 

「やるではないか。エンペルトは隠し玉だったんだが…まさか破られるとはな」

「ブラッキーのバークアウトがなきゃ無理でした」

 

ブラッキーは交代前にエンペルトの特攻を三回下げている。あの『バークアウト』はダメージを与えるのではなく、特攻ダウンを目的として放った技。故にエンペルトにほとんどダメージを与えていないが、特攻ダウンはしっかりと入っていた。そのためバシャーモは効果抜群の『ハイドロポンプ』を打ち破れたし、ダメージを受けても低いダメージで済ませることができた。

 

だがそれでも効果抜群の技は痛い。バシャーモの体力はすでに三割を切っていた。ポケモンの数はカイムがリードしているが、ブラッキーの体力は半分程度でバシャーモも満身創痍。油断はできない。

 

「そうこなくてはな!ゆけ!トリデプス!」

 

トウガンが最後に繰り出したのはトリデプスだった。鋼・岩タイプであるため、格闘タイプの攻撃が四倍弱点だが、見た目通り防御力は非常に高い。

だが同時に動きは鈍重。『加速』と『ニトロチャージ』で素早さが上がったバシャーモなら動きで翻弄できるとカイムは踏んだ。

 

「バシャーモ!フレアドライブ!」

 

バシャーモは炎を纏って突撃していく。凄まじい速度の一撃は直撃すれば大きなダメージを与えることができるだろう。

だかそのまま突っ込めばカウンターの餌食。そう考えたバシャーモは上がった速度を利用し、トリデプスの背後に回る。そのまま突撃しダメージを与えようとしたが、突如トリデプスの視線がバシャーモを捉えた。

 

(読まれた⁈)

「げんしのちから!」

 

岩石がバシャーモに向けて放たれる。

本来なら直撃するが、読まれることも考慮していたバシャーモは冷静に対処する。炎を纏ったまま岩石を砕いた。

 

「突っ込めトリデプス!」

 

岩石を砕いた隙を突き、トリデプスはその巨体をバシャーモに叩きつける。技として確立した動きではないため、体力の残り少ないバシャーモでも耐えられたが、空中に数瞬間投げ出されて身動きが取れなくなった。

 

「げんしのちから!」

「ニトロチャージ!」

 

バシャーモは咄嗟に炎を纏って『げんしのちから』のダメージを軽減させる。ダメージを抑えることができたためギリギリ体力は残ったが、もう後はない。

 

「最高速度で突っ込め!」

 

バシャーモは更に上がった速度でトリデプスに迫る。その速度は凄まじく、『でんこうせっか』の速度にも届きそうなほど素早いものだった。

 

「受け切れトリデプス!」

 

トリデプスは防御の体勢に入る。トウガンはこれからバシャーモが使ってくるのは四倍弱点かつ高威力の『インファイト』。まともに受ければ物理防御に秀でているトリデプスでも大きなダメージを受けてしまう。

だがここでトウガンは敢えて受ける選択を取った。

 

「インファイト!」

 

バシャーモの連撃がトリデプスを捉える。いくら防御力が高くとも四倍弱点。ダメージは本来なら大きいはずだった。

しかしトリデプスはバシャーモの連撃を正面から受けるのではなく、設置面をずらすことでダメージを抑えた。それも一度でなく続け様に放たれる連撃全てに対してダメージを受け流すように衝撃を緩和している。その結果、バシャーモの『インファイト』を受けてなお、ダメージは三割程度に抑えられた。

 

「だいちのちから!」

 

地面から噴き出した力がバシャーモを捉える。『インファイト』による耐久ダウンがなくとも残り体力を吹き飛ばすには十分な一撃であり、バシャーモは地面に叩きつけられた。意識を失うことはなかったが、立ち上がる力はもう残っていない。

 

「やれますか?」

「いや、ここまでだ」

「バシャーモ戦闘不能!」

 

地面に倒れ伏しながらバシャーモは悔しそうに歯噛みしていた。そんなバシャーモに近寄り、カイムは優しく背中を撫でる。

 

「よくやった。十分だ。次は勝とうな」

 

そう言ってカイムはバシャーモをボールに戻した。

定位置に戻り、カイムはトリデプスを見据える。

 

「いい動きだったな」

 

トウガンの言葉にカイムは苦笑する。確かにいい動きをバシャーモはしていたが、カイム自身がそれについていけてない部分があった。最高速度でトリデプスに迫り攻撃しようとした時、バシャーモの動きが読まれて一瞬だが思考が止まってしまった。バシャーモ自身が冷静に対処したが、トレーナーがこれではよくないことを自覚していた。

 

「どうやら、まだ至らないことが多いみたいです」

「グハハハ!君の年齢ならまだまだ伸びしろがある!私も数値としてはジムリーダーになってからあまり伸びていないが、昔よりも今の方が強い自信があるぞ!数値だけが強さではない!他は、これから伸ばしていけばいい!」

「…そうですね。まだまだ成長できるみたいです。俺も、ポケモン達も」

「その意気だ!今ここで私を超えてみろ!」

 

トウガンの纏う覇気は鋼のような堅牢さを持っているようにも思えた。その覇気の強さに冷や汗が背中を伝うが、ビリビリと伝わってくる空気をどこか心地よく感じる。

 

「頼んだ、ブラッキー」

 

カイムはフィールドにブラッキーを繰り出す。

ブラッキーの残り体力は六割弱なのに対してトリデプスは七割ほど。加えて種族値としても不利な対面であった。

 

(トウガンさんのトリデプス…特殊型だな。恐らく攻撃力は鍛えていない。イカサマがほとんど入らないな)

 

ブラッキーのメインウェポンは相手の攻撃力を自身の攻撃力として利用する『イカサマ』。相手によっては相当な威力が出るのだが、トリデプスの攻撃力は元々低い。加えて特殊型のトリデプスとなれば、『イカサマ』のダメージはほとんど出ないだろう。

 

「粘り勝ちにいくぞ。バークアウト!」

 

ブラッキーは跳び上がりトリデプスに向けて悪タイプの力が宿る咆哮を放った。

トリデプスはブラッキーの攻撃を避ける素振りも見せず直撃する。しかしトリデプスはダメージを受けた様子もなく、軽く頭を揺らす程度の反応だった。

 

「は?」

「げんしのちから!」

 

反撃の『けんしのちから』が飛んでくるが、ブラッキーは飛んできた岩石を足場にして跳び、攻撃を回避した。

 

(あんま威力高くないけどバークアウトはタイプ一致技。あの程度で済むはずが無い。道具…いや、特性『防音』か!)

 

トリデプスの特性は『頑丈』だが、もう一つ特性がある。

それは『防音』。音系の技である『ハイパーボイス』や『チャームボイス』など一部の技を完全に無効にできる。そして無効にされる技の一つとして、『バークアウト』があった。

 

(んのやろう…完全にメタってきてんじゃねえか!)

 

カイムのブラッキーはサポートもアタッカーもできる。そして今は『バークアウト』によって特攻を下げた上で粘り勝ちを狙うサポート寄りのバトルをしている。元々攻撃系種族値が低いトリデプスなら『バークアウト』によって特攻を下げてしまえばあとは削るだけだと考えたが、完全に読まれていた。

 

「あくのはどう!」

 

対策されていた以上、今あるものでどうにかせねばならない。そう切り替え、カイムとブラッキーは攻めに転じた。

『あくのはどう』を受けたトリデプスは反撃に転じようとしたが、あまりの悪タイプの力に僅かに怯む。

 

「ブラッキー!」

 

その隙にブラッキーは目を閉じる。何かしてくると考えたトリデプスは咄嗟に身構えるが、ブラッキーはなにもしてこない。僅かに体が光っただけだった。

 

「ふむ…何かしてくると思ったが、何をした?」

「さあ?」

「ふふ、言わないか。ならばこちらかいくぞ!トリデプス!ヘビーボンバー!」

 

トリデプスはその巨体を跳び上がらせた。鈍重な動きからは想像もできないジャンプにカイムは思わず声を上げそうになった。

そしてトリデプスはそのまま重力に従ってブラッキーに向けて落下していく。

 

「下がれ!」

 

ブラッキーはバックステップでその場から下がる。その瞬間、先程までブラッキーがいた場所にトリデプスが落下した。トリデプスの『ヘビーボンバー』は凄まじい威力を誇っており、フィールドに小さなクレーターができるほどだった。

 

(…いや、重すぎるな。黒い鉄球か?)

 

トリデプスの素の体重は150キロ近い。そのため通常の『ヘビーボンバー』でも相当な威力が出るのだが、以前見た時はここまでの威力はなかった。技の威力を落とすことを意図的に行うことは可能だが、『ヘビーボンバー』は体重依存の技。自分の意思で威力をどうこうできるものではない。

そう考えると、今まで本気ではなかったと考えるより今回は威力が増したと考えるのが妥当。体重を重くする道具は『黒い鉄球』が有名だが、『黒い鉄球』は同時に素早さも下がる。しかし素が鈍重なトリデプスにとってそれは大した問題ではない。

 

(あれ受けたらブラッキーでも相当ダメージ受けるな。幸い予備動作が大きいから避けやすい)

 

一度飛び上がる動作があるため回避はしやすい。しかしトウガンもそんなことは把握しているため、どこかでこちらの隙を突いてくるのは間違いない。

 

「あくのはどう!」

「だいちのちから!」

 

ブラッキーの『あくのはどう』がトリデプスに直撃するのとほぼ同時に『だいちのちから』が直撃した。ブラッキーは少しだけ跳ぶことで威力を軽減した。

 

「げんしの…」

「ふいうち!」

 

トリデプスが『げんしのちから』で攻撃する瞬間、ブラッキーの『ふいうち』がトリデプスを貫く。防御力の高いトリデプスにとって物理攻撃はそこまで痛く無い攻撃だが、ブラッキーの攻撃はトリデプスの急所を捉え大きなダメージを与えた。

 

「畳み掛けろ!あくのはどう!」

 

『ふいうち』の攻撃を加えながらも力を溜めていたブラッキーはそのまま『あくのはどう』をトリデプスに向けて放つ。いくら耐久力に秀でたトリデプスといえども、無限に受けられるわけではない。ブラッキーの『あくのはどう』はトリデプスの体力を削っていく。

 

「まだだ!鋼は打たれるほど強くなるぞ!」

 

だがトウガンはこれを待っていた。ブラッキー渾身の一撃がトリデプスに入るこの瞬間こそ、トウガンが思い描いた勝ち筋だった。

 

「メタルバースト!」

 

鋼の力が弾け飛び、ブラッキーに襲い掛かる。ブラッキーが与えたダメージが大きく膨れ上がり、ブラッキーにダメージを与えた。

 

(メタルバースト!ここで使ってくるか!)

 

使ってくる予想はしていた。しかし、使われるとしてももう少しトリデプスが削られてからだと思っていたが、想定よりも早く使ってきた。

だが使ってくること自体は予想していたため、カイムの思考は淀まない。次のトウガンの行動にも冷静に対処する。

 

「今度はこちらからだ!ヘビーボンバー!」

 

トリデプスは跳び上がり、ブラッキーに向けて落下してきた。先程よりも動きは速いが、一度見た技である以上回避することができる。

冷静に『ヘビーボンバー』の技範囲外に跳ぼうとしたが、その瞬間ブラッキーの足元がぐらつく。

 

「!」

 

先程の『メタルバースト』の攻撃はブラッキーの足と足元の地面を削っていた。足にダメージがあるだけならブラッキーは難なく回避できたが、足場まで削られていることは想定していなかった。

数瞬回避が遅れる。無理矢理体を捻って回避行動を取るが、凄まじい体重と重力によって加算されたエネルギーは凄まじく、トリデプスの体が直撃していないにもかかわらずブラッキーに大きなダメージを与えた。

 

跳ね飛ばされたブラッキーだが、空中で体勢を立て直して無事に着地する。そしてその瞬間、ブラッキーの体が僅かに光り、全身の傷がみるみる回復していった。

 

「……なるほど、ねがいごとか」

 

先程ブラッキーの体が光ったのは『ねがいごと』による発光だった。『ねがいごと』は一定時間の後、フィールドに出ている味方のポケモンの体力を回復させる技。そしてその技の効果対象にはブラッキー自身も含まれている。

カイムは怯んだ隙に『ねがいごと』を使うことで、押されてきた現状を打破できるように保険をかけていた。ブラッキー自身の持ち物が『食べ残し』であるため体力は徐々に回復するが、回復量は心許ない。無いよりはマシだが、時間がかかるため一撃で消し飛ばされる可能性もあるため保険として『ねがいごと』を使った。

 

「悪くない読みだ!だが鍛えた鋼はこの程度では砕けんぞ!」

「ぶち抜く強さをブラッキー(こいつ)は持っていますよ。ふいうち!」

 

ブラッキーの『ふいうち』がトリデプスに直撃する。先程の急所ダメージだけでなく、バシャーモの『インファイト』のダメージもここで響いてきたのか、トリデプスの動きが更に鈍くなる。

そう何度も受けることはできない。だがそれはブラッキーも同じだった。エンペルト戦でのダメージ覚悟のサポートが今になって響いてきており、先程の『メタルバースト』による足へのダメージが動きを鈍くさせていた。万全の時のような回避行動はできないだろう。

次の打ち合いで決まる。両者はそう確信し、そしてトウガンから動いた。

 

「げんしのちから!」

 

岩石がブラッキーに向けて飛ばされる。

飛んできた岩石をブラッキーは最小限の動きで回避するが、回避されることを見越して死角から放たれた岩石の一つがブラッキーに直撃する。その隙が災いし、複数の岩石がブラッキーに直撃した。

ダメージが大きく、『ねがいごと』によって回復した体力も相当削られた。加えて足へのダメージが響き、直撃によってできた隙をトウガンは見逃さなかった。

 

「今だ!ヘビーボンバー!」

 

トリデプスの巨体がブラッキーを押し潰す。トリデプスの攻撃力は正直高くない。しかし威力が体重依存かつ、『黒い鉄球』の重量も含めた渾身の『ヘビーボンバー』の威力は凄まじく、フィールドを土煙で覆った。

これほどの威力ともあれば、耐久性の高いブラッキーでも大ダメージは必至。ブラッキーは回避もできていない。一度『ねがいごと』によって回復したとはいえ、この『ヘビーボンバー』の威力ならほぼ間違いなく決まるだろうとトウガンは確信していた。

 

「むっ!」

 

だがブラッキーはまだ倒れていなかった。ブラッキーは咄嗟に不完全ながらも『まもる』を使うことでダメージを抑え、『ヘビーボンバー』を耐え切った。

そしてブラッキーの全身から強烈な悪タイプの力が湧き上がる。

 

「あくのはどう」

 

至近距離からブラッキー渾身の『あくのはどう』がトリデプスを撃ち抜いた。特攻はあまり高くないブラッキーだが、力を限界まで溜めて放たれた『あくのはどう』はトリデプスの残り体力を体ごと吹き飛ばした。

200キロ以上ある巨体を吹き飛ばすほどの威力となった『あくのはどう』は文字通りブラッキー渾身の力だった。体力は残っていてまだ動けるが、力を出し尽くして既にヘロヘロになっている。これで立ってこられたらブラッキーといえど打つ手は無い。

 

「うーむ!見事…!」

 

だがトリデプスは目を回しており、戦闘不能に陥っていた。

 

「トリデプス戦闘不能!よってこのバトル、カイムの勝利!」

 

勝利が確定した瞬間、カイムは大きく息を吐いた。

緊張を解いたところでバトルに出ていたブラッキーがカイムに飛びついてくる。気を抜いていたカイムは僅かによろめくが、しっかりと受け止めて労うように優しく撫でた。

 

「見事だった」

 

そんなカイムにトウガンは歩み寄り、豪快に笑う。

カイムは甘えるブラッキーを撫でながらトウガンに向き直った。

 

「だいぶギリギリでした」

「グハハハ!あっさりと抜かれては敵わん!それなりに君の対策をしてきたつもりだったんだが…隠し球がなかなか鋭いものだった!」

「隠し球というより、今日まで使えなかったか使う機会がなかっただけですね」

 

ここ最近、ジムでは新たに加わるキリキザンとの対話やジム全体の動きを把握することに時間をかけていた。故にタスキカウンターや特性『加速』の見せ所がなかったため、タスキカウンターや『加速』を見る機会がなかった。

 

「いやはや…ヒョウタに黒星をつけるだけはあるな!」

「どうも。とはいっても、まだ戦歴では負け越しているんで」

「グハハハ!ヒョウタもジムリーダーとしては先輩だ!意地があるのだろうな!」

 

トウガンは一度言葉を切ると、『ところで』と言ってカイムに問いかける。

 

「最後のヘビーボンバーに対してだが、あのまもるは指示していたことか?」

「ああまあ…ブラッキーは回避がかなり得意なんですけど、無理だと判断したらまもるか不完全なまもるでダメージを抑えるようにしてるんです」

「ほう…では最後のあくのはどうは?普通のものと比べて威力が高いように感じたが」

「シンオウ地方がまだ開拓されたばかりの頃に、『早業』と『力業』ってのがあったんです。普段より素早く放てるけど威力が落ちる『早業』、威力が上がるけど隙が大きくなる『力業』。最後のは力業のあくのはどうです」

「ほう、そんなものがあるのか」

「つっても、似たようなことはみんなしてます。昔はそれに名前があっただけです」

 

以前シンオウ地方の歴史を調べていた際にそのような記述が残っていた。そこから着想を得て、カイムは早業と力業と似たようなことをポケモン達に教えるようにしていた。

だがこれはトップトレーナーならば似たようなことはしている。それこそシロナやダンデなどのトレーナー達もやっていた。結局名前があったかどうか程度の問題だった。

 

「なるほど。歴史から学んできたのか。学者らしい学びだな」

 

トウガンはそこで腕組みを解くと、カイムの肩に手を置いて言った。

 

「カイム君」

「はい」

「ミオジムを頼んだぞ!今日から君がミオシティのジムリーダーだ!」

 

そう言われたカイムは目が点になる。

てっきり結果はポケモンリーグの方から直々に発表されると思っていたため、まさかこの場でトウガンに言われるとは思っていなかったからだ。

 

「え…それってここで言うことなんすか?」

「いいや違う!」

「ええ…」

 

困惑するカイムを他所にトウガンは笑いながら言った。

 

「だが、もう決まったようなものだ!筆記は満点!面接も問題無し!そしてバトルはこの結果!落ちる理由はない!そうだろう?」

 

トウガンはポケモンリーグ運営に目を向けながら言った。

目を向けられたリーグ運営は苦笑しながら頷く。

 

「二人も文句あるまい!」

 

トウガンの言葉に試験監督を務めたナタネとマキシは頷いた。

 

「そりゃもちろん!あんないいバトル見せられたら落とす理由ないよ!」

「うむ!まだまだ改善点はあるが、非常にマキシマムなバトルを見せてもらった!文句なしだ!」

「ということだ」

 

あまりにも緩い終わり方にカイムは苦笑する。それでいいのかと思うこともあったが、あまり肩肘張ったものよりも気楽なのも確かであるため、何も言わなかった。

 

「これからは君がポケモンジムを、トレーナー達を導く存在だ!現状に満足することなく、皆を導きながらも、君自身も精進していくことだ!」

「はい」

「うむ、いい返事だ!私も、これから挑戦していく。私たちの新たな門出だな!」

 

豪快に笑うトウガンと苦笑するカイムのもとにナタネ、マキシ、そしてリーグ運営が歩み寄ってきた。

 

「おめでとうカイム君!これで晴れてちゃんとしたジムリーダーだね!」

「責任のある立場になるが、これほどマキシマムなバトルを見せてくれるお前ならば大丈夫だ!何か困ったことがあれば、遠慮なく頼ってくれ!このマキシマム仮面が手を貸してやる!」

「どうも」

 

ばしばしと肩を叩いてくるマキシに淡白ながらも敬意を持った返事をすると、リーグ運営が事務連絡を伝えにきた。

 

「トウガンさんにネタバレされてしまいましたが、試験監督のお二人からの評価も良かったため、こちらとしても落とす理由はありません。これで正式にジムリーダー就任となります」

「手続きとか引き継ぎとか、色々やることはまだありますよね」

「はい。契約書にサインと、ポケモンリーグ公認トレーナーとしていくつか手続きがございます。その後、ミオジムの引き継ぎをトウガンさんにしていただければ、正式にジムリーダーとなります」

 

思ったよりもやることがあるが、ミオジムの仕様は大体把握している。故に手続きはともかく、引き継ぎにはそこまで時間はかからないだろうとカイムは考えた。

 

「これでシンオウ地方のジムリーダー最年長はマキシさんになるのか」

「そうなるな。トウガンさんのようなベテランが抜けるのは少々心細くもあるが、このマキシがこれからはジムを引っ張っていけるように精進しよう!」

「頼んだぞマキシ。彼のことも、シンオウ地方のポケモンバトル界隈もな」

「はっはっは!簡単にはいかんでしょうが、やってみせますとも!なあカイム!」

 

マキシの言葉にカイムは頷く。

 

「まだまだ未熟な若輩者ですけど、やれることを精一杯やります」

「うむ!その意気だ!」

「いっ⁈」

 

カイムはトウガンに思いっきり背中を叩かれ若干驚くが、小さく笑ってブラッキーに視線を落とした。ブラッキーは疲れているのかうとうとしながらもカイムの身体に頭を擦り付けて甘えている。そんないつも通りのブラッキーに少しだけ安心しながらも、観客席でこちらに優しく微笑みかけるシロナに目を向けた。

 

 

おめでとう

 

 

シロナが口パクでそう言っているのが見える。

カイムはシロナの祝いの言葉を受け取り、小さく頷いた。

 

「ではポケモンセンターにポケモン達を預け次第、手続きに行きましょう」

「お願いします」

 

カイムはリーグ運営とトウガンと共にジムリーダー就任の手続きに向かっていった。ナタネとマキシもそれに続き、ナタネが視線で着いてくるかどうかを尋ねてきたが、シロナは首を横に振ってその誘いを断る。

シロナがついてこないことを理解したナタネはカイム達の後を追ってスタジアムから去っていった。

 

そして残されたシロナはスマートフォンを取り出し、ある場所に電話をかけた。

 

「ああ、オーナーですか?シロナです。一つ確認したいことがあるんですけど…」

 

右手についた赤いリングを見ながらシロナは電話を続け、スタジアムにはシロナの声だけが響いていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

手続き等を終え、ようやくトウガンとマキシから解放されたカイムはやや疲れた表情をしながらポケモンリーグスタジアムをあとにした。

 

「…ジムリーダー、ね」

 

自身の新たなジムリーダー用のIDを眺めながら小さく呟く。

小さく息を吐くとスマートフォンを取り出す。画面には一つのメッセージが届いていた。

 

『手続き終わったら部屋に戻ってきてね。待ってるから』

 

メッセージの相手は、シロナ。

カイムは手短に返事をすると、ジャケットを羽織り宿泊先へと歩いていった。

 

 

 

 

 

カードキーで宿泊先の部屋の鍵を開け、カイムは部屋へ戻ってきた。

 

「おかえり」

「ああ、ただい……ま」

 

カイムのことを出迎えたシロナの服装を見てカイムは固まる。

最後に見た時はいつものコートを着ていたシロナだったが、今着ているのは黒いマーメイドドレスだった。

 

「どうしたの?」

 

固まるカイムにシロナは不思議そうな表情を浮かべて聞いてきた。

 

「…なんでドレス?」

「なんでって…ああそっか。まだ言ってなかったわね。ジムリーダー就任のお祝いをするためにレストランを予約したの。ちょっといいところだからドレスコードもあるからドレスに着替えたの」

「ああ、なるほど…」

 

まさかそこまでしてもらっているとは夢にも思っていなかったカイムはどうリアクションすればいいかわからず頭をガシガシとかく。

 

「もう少ししたら予約時間だから。行く前に着替える?」

「ん…ああ、そうだな。インナーとシャツは変えるわ」

 

カイムはネクタイを取り、ジャケットを一時的にハンガーにかけると、シャツとインナーを脱いだ。

一応シロナが目の前にいるのだが、かれこれ数年同棲してなんなら今は同じ布団で寝ている。今更目の前で着替えるくらいではもうなにも言わなくなっていた(シロナが着替えようとするとカイムは別の部屋に移動するが)。

しかし何も言わないだけで何も思わないわけではなかった。カイムの鍛えられた体を見てシロナは少しだけドギマギしているのだが、カイムがそれを知る由はない。シロナの思いを知ることなく、カイムは黒いインナーと紺色のワイシャツに着替えた。

 

「待たせた。行けるぞ」

「じゃあ行きましょうか。あ、その前に」

 

シロナはテーブルに置かれていたボールホルダーをカイムに手渡した。ポケモンセンターに預けておいたポケモン達をカイムが手続きしている間にシロナが受け取っておいてくれたものだ。

 

「ああ、ありがとう」

 

カイムはボールホルダーを腰につけると、シロナと共に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

シロナ達が訪れたのは、スズラン島にあるホテルの中で一番高級なホテルの最上階にあるレストランだった。

 

「いらっしゃいませ」

「予約していたシロナです」

「お待ちしておりました。ご案内します」

 

店員に連れられて窓際の席に向かう。

椅子を引かれそこに座ると、目の前にメニューが置かれた。メニューの説明を一通り済ませると店員は去っていった。

 

「すげえ店」

 

カイムは周囲を見渡しながらそう呟く。高級感溢れる店は無駄に煌びやかにすることはなく、シンプルながらも高級さを醸し出していた。

周囲に客はまばらにいるが、それぞれの席で簡易的に仕切られているため気配がするだけで顔を見ることはできない。

 

「でしょ?スズラン島で一番高級なお店よ」

「ジムリーダー就任祝いにしちゃ、ちと高級すぎる気もするがな。祝ってくれることは素直に嬉しいが」

「あら、ジムリーダー就任だけじゃないわよ」

「え?」

 

意外そうに言うカイムにシロナはくすくすと笑う。

 

「やっぱり忘れてたのね。そうだろうとは思ってたけど」

「え、なんかあったっけ」

 

カイムの頭には何も浮かんでこない。予想していたシロナは肩にかけたストールを畳んで空いている椅子の背もたれにかけながら続ける。

 

「今日は何日?」

「…三月十五日」

「じゃあ明日は?」

「十六日…あっ」

「そう、貴方の誕生日よ」

 

カイムの誕生日は三月十六日。ジムリーダー就任と誕生日を同時に祝うためにシロナはこの高級レストランを予約した。

 

「忘れてたな…承認試験で頭いっぱいだった」

「自分のことになると無頓着になりがちだものね。それに大事な試験だったし、頭から抜けてても仕方ないわ」

「…そっか、そうだったな」

「時期が合ったのはたまたまだけど、どうせなら一緒にお祝いした方がいいかなって。カイムもこれから忙しくなるんだし」

 

引き継ぎはしたし代理の時もジムリーダーとしての業務を行なっていた。そのため多少業務には慣れているが、環境が異なることもあり慣れるまでは少し時間が必要だろう。加えてそろそろスクールを卒業した新米トレーナー達が挑みにくる新年度だ。それなりに忙しくなるだろう。

 

「それもそうか。気ぃ使わせて悪いな」

「気にしないで。私の誕生日の時も色々やってくれたでしょ?おあいこよ」

「ああ、そうだな」

 

そう言ってカイムはメニューを開く。

二人で食べ物をシェアすることも考慮し、二人は別のコース料理を注文することにした。店員に注文を取ると、すぐにシャンパングラスが目の前に置かれる。そしてそこにシャンパンが注がれた。

 

「それじゃ、カイムのジムリーダー就任と誕生日を祝って乾杯」

「ありがとう。乾杯」

 

二人は軽くグラスを合わせ、シャンパングラスに口をつける。シャンパンの味と炭酸の刺激が口に広がっていき、アルコールが喉を熱くさせた。

 

「いいシャンパンだな。飲みやすい」

「カロス地方で作られたシャンパンらしいわ。それなりに上物よ」

 

酒があまり強くないカイムにも比較的飲みやすい物であり、このような店で出されている以上シロナの言う通りそれなりに上物なのだろう。これがどれほどの値段なのかはわからないが、なんとなく聞く気にはならなかった。

 

「いいお店でしょ?」

「ああ。だが、人が思ったよりも少ないな」

 

周囲にあまり客はいない。高級店故だからなのか、それとも他の理由があるのかカイムにはわからなかった。

 

「スズラン島は基本的にポケモンリーグのためにある島。だからリーグがある時じゃないとあまりこういう宿泊施設は使われないのよね」

「なるほど、そういうことか」

 

ポケモンリーグのためにある島ならリーグが開催されていない時期であれば、人が少ないのも自明。カイムは納得してシャンパンを再び口に含んだ。

シロナはカイムの目を見ながら聞いた。

 

「ジムリーダーになって、どう?」

 

シロナの問いにカイムはグラスを置いて先程もらった新しいIDを取り出して答える。

 

「そうだな…実感は、湧いてる。前に代理やってたのがやっぱ良かったみたいでな。ちゃんとやっていけるか不安もちょいとあるが、多分大丈夫だと思うよ」

「貴方ならできるわ。私が鍛えたんだもの。自信を持って」

「…ああ」

 

カイムは窓の外に映るポケモンリーグのスタジアムに目を向けながら続ける。

 

「俺がジムリーダーか。昔の俺に言っても信じないだろうな」

「そうねえ…多分信じないでしょうね。特に大学時代のカイムなら余計にね」

「違いねえ。それに、俺が試験とはいえあのスタジアムで戦ったなんて絶対信じねえよ」

 

かつて諦めた過去。その諦めた心をシロナは拾い上げ、そしてここまで導いてくれた。それだけでなく学者としての道も開いてくれた。カイムからすればどれだけ返しても足りないくらいの恩義を感じている。

 

「シロナには感謝してる」

「急にどうしたの?」

「俺がここにこうしていられるのも、ジムリーダーになれたのもシロナのおかげだ。シロナがいなかったら、俺は多分誰の目にも留まらない生き方をしていたよ」

 

シロナは一度シャンパンに口をつけ、カイムの言葉に返した。

 

「感謝してくれているのは感じてるわ。カイムにとって私が指導したことは大きなものなのもなんとなくわかる。でもね、私もカイムに感謝してるの。貴方がいたからバトルも研究もここまで伸ばせた。貴方がいなかったら、ここまでにはなれなかったと思うわ」

 

カイムがシロナに感謝しているように、シロナもカイムに感謝していた。カイムはシロナに対して何かを教えたり導いたりはしなかった。しかし、ずっとシロナのことを支え、時には立ち止まることも必要だと教えてくれた。ずっと走り続けてきたシロナにとってこれがどれほど大きなものなのかをカイムは多分一生理解できないだろう。しかしそれでも、今こうして共に過ごせるのであればそれでいいと思えた。二人が出会えた。それだけで十分だった。

 

「きっとこんな風に思える人には出会えないでしょうね」

「…そうだな」

 

カイムが再び口を開こうとした瞬間、料理が運ばれてきた。タイミングを逃したカイムは口を閉じ、料理に視線を落とす。

 

「うまそうだ」

「でしょ?さ、食べましょ」

「ああ」

 

その後、二人は雑談を重ね、カイムは時折珍しく笑顔を浮かべながら食事を進めていった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

食事を済ませた二人は会計を済ませて店から出た。

 

「ん〜!美味しかったわ」

「高級店なだけある。値段相応の味だった」

「でしょ?喜んでもらえてよかった」

 

シロナは楽しそうに笑いながらストールを自分の肩にかけた。室内といえど廊下はシロナの服装では少し冷える。暖かい店内からの廊下であったため、少しだけ肌寒く感じられた。

 

「この後はどうする」

「あっちにラウンジがあるの。ちょっと寄っていきましょ」

 

シロナが指差した先には確かにラウンジがあった。ラウンジは基本室内だが、外に出ることもできるようでポケモンリーグスタジアムを見下ろすことができる構造になっている。

 

二人はラウンジに足を踏み入れるが、店員が数人いるだけで他に客らしい人影はほとんどない。シーズンオフなのもあるが、時間も少し遅い。人がいないのは当たり前だろう。

 

「シロナはここに来たことあるのか?」

 

先程のレストランもだが、シロナはこのホテルの構造を把握している様子だった。少なくともカイムが助手としてシロナと行動を共にするようになってからはこのホテルには来ていない。以前来たことがあるのか疑問に思ったカイムはシロナにそう問いかけた。

 

「ええ。チャンピオンを防衛するたびに来てたわ。ただ貴方が来てからは寄らなくなったの」

「なんで?」

「貴方の料理が好きだから」

 

シロナにとってチャンピオンを防衛したときの祝いは、高級な料理よりもカイムの心がこもった料理の方が嬉しかった。無論それだけでなく、単純に昔よりも忙しくなったことやカイムがこういう店に慣れていないことも理由としてはあったが、一番の理由はカイムの料理を食べたかったからだった。

 

「…そうか」

「照れてる?」

「やかましい」

 

がしがしと頭をかきながら視線を逸らすカイムの耳は赤く染まっている。赤く染まった耳は青いイヤリングをより目立たせていた。

シロナは楽しそうに笑いながらカイムを連れて外のラウンジへと足を踏み入れる。思ったよりも風はないが、やはりまだ三月ということもあり夜は寒い。

 

「ここから見るスタジアムもいいわよね」

 

シロナは眼下に広がるスタジアムを眺めながらそう呟く。スタジアムはライトアップされており、先程のカイムとトウガンのバトルによって荒れたフィールドの整備がされていた。

 

「そうだな。さっきまで俺、あそこにいたんだよな」

「ええ。私が戦った場所と同じ場所よ」

「……そうか」

 

カイムは一度言葉を切ると、ぽつりと呟く。

 

「…映画みてえな話だな」

「え?」

 

カイムの言葉の意味がわからずシロナはカイムに聞き返した。

 

「あの日シロナと出会って、ここまできた。間違いだらけでポケモン達にも不本意の道を歩ませようとしてたのに、シロナのおかげでこうして今はポケモン達にも誇れるような生き方をしてる。モブだった俺がいきなり主役になったみたいな、そんな映画みてえな話だなって」

 

そう思えるくらいここ数年の生活はカイムにとって劇的だった。辛く苦しい時もあり、辞めてしまいたいと思うことも少なからずあった。それでも今こうしていられるのは、全てシロナがいてくれたから。きっと自分だけだったら何万回繰り返そうともここまで至ることはできなかっただろうと、今のカイムにはそう思えた。

 

「そうかもしれないわね。でもね、貴方の人生の主人公は貴方しかいない。なにが良くないのか、どこが良くないのかを私は教えただけ。貴方は決して端役なんかじゃないのよ」

「今はそれがよくわかる。こんなはずじゃないって思いながらやってきたけど、全然できなくて…辞めてしまおうと諦めたこともあった。いつか主役になれるようにって、思いながらやってたのかもしれない」

 

何もできず、何も成せない。そんな自分がいつか物語の主役のように輝ける日が来ることを夢見て努力をしてきた。

だがそもそもそれが間違いだった。己の人生において、主役は己のみ。それがわからず、他人の人生で記憶に残るような主役になろうと足掻いた。他者ではなく己に目を向けることをしなかったかつての自分が伸びるはずがなかった。

 

「でも今やトレーナーを導くジムリーダー。バトルのことをなにもわかってなかった俺がだぜ?映画みたいだろ」

「ふふ、そうね。最底辺から駆け上がったストーリー…素敵だわ」

 

シロナの言葉にカイムは小さく笑う。シロナの言う『最底辺から駆け上がったストーリー』という言葉があまりにもしっくりきたからだ。

 

「シロナ。これを見てほしい」

 

カイムはシロナに向き直ると、シロナにスマートフォンの画面を見せる。そこにはなにか文章が書かれているのがわかった。

 

「これは?」

「この前俺が書いた論文を読んだナナカマド博士からの評価と打診だ」

 

以前、ナナカマド博士と出会った時に論文の評価をするという話をしていた。今カイムのスマートフォンに映されているのはナナカマド博士からの評価だった。

だが評価だけではない。文末にまた別の打診が記されている。その内容を読んだシロナは僅かに目を見開いた。

 

「これ…レジ系のポケモンに関する仮説を記した本の執筆依頼じゃない!」

「ああ。この論文、かなり業界でもウケが良かったらしい。それを見てナナカマド博士が今ある遺物や文献をまとめて本を出さないかって打診してきたんだ」

「すごいじゃない!」

「ま、言い出したのはプラターヌ博士なんだがな」

 

カイムは当然プラターヌ博士との繋がりはなかったのだが、この論文を通してカイムはプラターヌ博士との関わりを持った。そしてプラターヌ博士はカイムの論文を気に入り、本を書く打診をしてきた。

 

「そう。プラターヌ博士が」

「いくらシロナの名前が入ってたとしても、俺自身界隈では無名もいいところだ。プラターヌ博士はそれを勿体ないって言ってくれて、それを解決するために今回の打診をしてきたらしい」

 

無名ということはそれだけで見向きされなくなる理由になる。シロナの名前によって多少それは緩和されているだろうが、それでも無名なことに変わりはない。

 

「そんで、色々とツテを使って出版社と連携して書くことになる。まだ企画段階だが…そのうち忙しくなる」

「ふふ、いいことよ。応援してるわ」

「どーも。多分どっかでシロナの手を借りることもあると思う。そん時はよろしく」

「もちろん。貴方のためならいくらでも手を貸すわ」

「…ありがとう」

 

そこでシロナは思い出したように鞄から一つのラッピングされた袋を取り出し、カイムに手渡した。

 

「はい。少し早いけど、誕生日プレゼント」

「お、マジか。ありがとう。開けていいか?」

「ええ」

 

カイムはシロナの了承を得ると、リボンを解いて袋を開いた。

袋の中にはチェーンに繋がれたブローチみたいなものと、何かが入った箱だった。

カイムはまずチェーンを取り出す。ただのペンダントに見えなくもないが、ペンダントにしてはチェーンが大きすぎる。

 

「これは?」

「キーストーンをつけるチェーンよ」

「キーストーンを?」

 

確かにチェーンにつけられているブローチのようなものは丸いなにかをはめこめる形をしている。なにを入れるんだろうと思っていたが、まさかキーストーンだとはカイムも思っていなかった。

 

「前にナナカマド博士に会った時、貴方もキーストーンをもらったでしょ?でもまだカイムはメガストーンを持っていないから未だに箱に保管してる状態だったから、いつかメガストーンを手に入れた時に使えるかなって」

「なるほどな」

 

シロナの言葉にカイムは納得する。

実際カイムはまだメガストーンを持っていないためキーストーンを持ち歩いていない。そのためいつか手に入れた時のために、と言っているが、メガストーンはそれなりに希少だ。いつ手に入るかわからない。

 

「でも、メガストーンなんて簡単には手に入らんぞ」

「そうだけど、なんとなく近いうちに必要になる気がするの」

「直感か?」

「ええ、直感よ」

「シロナの勘は当たるからな。とりあえず大切にさせてもらうよ」

 

カイムはチェーンを袋に戻すと、もう一つ入っていた箱を取り出した。

 

「こっちは?」

「開けてみて」

 

シロナに促されるままカイムは箱を開いた。

するとそこには金属でできたブラッキーとバシャーモが淡い青の石を守るようにしているオブジェが出てきた。

 

「おい、これ…」

「ええ。貴方が私に贈ってくれたガブリアスとほぼ同じものよ」

「この石は…」

 

淡い青色の石は綺麗に研磨されていたが、売り物ほど形は綺麗ではない。少々手作り感が残っているものになっていた。

 

「前にトウガンさん達と採掘したでしょ?その時に採れたものよ」

「…つまりそれって」

「そう。前に私に贈ってくれたガーネットと同じよ」

「はは…マジかよ」

 

これにはさすがにカイムも笑った。まさか二人とも同じ場所で同じ時間に同じことを考えていたとは思いもしなかったからだ。

いつからこの作業に着手したかはわからないが、以前カイムがガブリアスを贈った時、シロナも今のカイムと同じ思いだったのだろう。そう思うと心の底から嬉しさと少しの気恥ずかしさが湧き上がってきた。

 

「やっぱトウガンさんの知り合いに頼んだ?」

「ええ。私たちがどちらも鉢合わせになることもなかったのも、多分向こうが色々と気を使ってくれたからよ」

「今度、お礼しねえとな」

 

カイムは手に持ったブラッキーとバシャーモのオブジェを眺める。非常に精巧に作られており、よくできた代物だった。

 

「ありがとう。嬉しい」

「喜んでもらえてよかった。今年が貴方にとって良い一年になるよう願っているわ」

「ああ。いい一年にする。俺にとっても、シロナにとっても」

 

カイムはそこで一度言葉を切る。そしてどこか恥ずかしそうに視線を巡らせながら頭をがしがしとかいた。

どうしたのだろうとシロナが不思議そうに見ていると、カイムは苦い表情をしながら口を開く。

 

「…シロナ」

「どうしたの?」

「バレンタインの夜に、言ったこと覚えているか?」

 

突然の言葉にシロナは一瞬頭を巡らせるが、すぐになにを話したのかを思い出す。

 

「ああ、あれね」

「…そのことなんだが……その…今はまだなんも準備できていないし、これから忙しくなっちまう。でも、ちゃんと…ちゃんと準備して言うからさ。さっき言った本が書き終わるまで、待っててくれるか?」

 

カイムとしても、情けないと思ってはいる。シロナの気持ちも理解し、自分としてもその気持ちに応えたいという思いはあった。

しかしまだその準備ができておらず、ジムリーダーになり本も書くとなると、相当忙しくなる。あまり器用ではないカイムでは、並行して進めることは恐らく難しい。少なくとも本が書き終わるまでは厳しいだろう。

それを理解していたカイムは、この本が書き終わるまでシロナに待ってほしいと頼んだ。本当なら今すぐにでも言いたいことではあるが、人生で一度しかないことである以上、勢いや雰囲気で言ってはいけない。ちゃんと準備をして万全の状態でその瞬間に臨むのがシロナへの礼節と配慮だろうと判断した。

その結果、待ってもらうとになってしまうことを、申し訳なく思いつつもシロナに頼んだ。

 

「いいわよ」

「…え?」

 

いつも通りの返事にカイムは思わず聞き返してしまう。カイムとしてもまさかここまであっさり了承されるとは思ってもいなかったため、ぽかんとしてしまう。

そんな珍しい表情をするカイムにシロナは笑いながら続けた。

 

「確かに、カイムの言う通りその想いはあるわ。でもね、そこまで急いでいるわけでもないの。私には私の事情があるし、カイムにはカイムの事情がある。例え今よりも親密な関係になったとしても、それはずっと変わらないわ。貴方が何か考えた上でそう言うんだったら、私はいつまでも待つわよ」

 

シロナもカイムが考え無しに待ってほしいと言っているわけではないことくらいわかっていた。生真面目で不器用なカイムは、きっと自分もシロナも納得できるようにその瞬間を迎えたいだけだとわかっている。

カイムなりにシロナのために最善を尽くそうとしてくれている。それがわかる今の言葉で十分だった。

 

「考え無しに待ってほしいだったらちょっと小言くらい言ったかもしれないけど、そうじゃないことくらいわかるわよ」

「…悪い。助かる」

「いいのよ。あ、いつまでも待ってるって言ったけど、あんまりにも待たされたら私から言っちゃうわよ?」

「んな情けねえことしねえ。ちゃんと言う」

 

シロナはその言葉を聞くと楽しそうに笑い、カイムの腕に自身の手を絡めた。

 

「楽しみにしてるわね」

「ああ」

 

カイムの言葉にシロナは頷くと、吹き抜けた風の冷たさに体を震わせた。

そんなシロナの様子を見て、カイムはジャケットを脱ぎシロナの肩にかけていつものぶっきらぼうな口調で言う。

 

「肩出した服でこの寒空の下いるからだ。風邪引くぞ」

「…カイムは寒くないの?」

「生憎、防寒対策はバッチリでな。寒くねえわけじゃないが、この格好でも問題ない」

 

シャツの下に保温性の高いインナーを着ているため、寒さは感じてもシロナほど寒くは感じない。加えて首にはシロナからもらったマフラーも巻いている。十分な防寒対策だといえる服装だった。

 

「ありがと」

「ん」

 

肩にかけてもらったジャケットを撫でながらシロナは礼をいい、カイムは淡白に返す。そんないつも通りのやりとりなのに、シロナは先程の言葉もあって胸が熱くなる想いだった。

そしてその想いを少しでも伝えようと、シロナは口を開く。

 

「カイム」

「なn…」

 

シロナはカイムの巻いているマフラーを軽く引き、カイムの顔を自身に寄せる。そして目の前に来たカイムの顔に自分の顔を近づけ、唇を重ねた。室内のラウンジに人影はないが、室内から見るとちょうど二人の唇が重なった部分がシロナが引いたカイムのマフラーで見えなくなっていた。

 

ゆっくりと顔を離す。互いに顔が赤くなっているが、シロナは優しくカイムに微笑んだ。

 

「待ってるわね」

「……ああ。待っててくれ」

 

カイムはシロナの身体を抱き寄せ、スタジアムを見下ろした。

 

いつか来るその日のために、決意を固めながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、ラウンジのスタッフ達が甘い空気を創り上げるシロナとカイムを見て大騒ぎしていた。

 

「おい!シロナさんが新しいジムリーダーとイチャついてんぞ!彼氏いたのかよ!」

「割と有名だよ?めっちゃいい雰囲気出してるって」

「え、お前シロナさんが彼氏いたことショックなの?」

「いやそうじゃない!彼氏がいること自体は別にいい!なんだあの甘い空気とあの表情!凛々しいシロナさんが乙女の表情してたぞ!尊すぎんだろ!」

「あー、そういうことね」

「でもあの二人いいペアよね。クールな二人って感じで絵にもなるし」

「確かに。推せるカップルかも。新しいジムリーダーの方は全然知らんけど」

「壁になってあの二人を見ていたい」

「オタクじゃん」

「わかる。あたしも壁とか観葉植物とかになって見ていたい」

「あれ?僕が少数派?」

 

こんな会話がされていたことを二人は知らない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

おまけ

 

 

ガラル地方

バウタウン

 

バウタウンにあるブティック『アクアラグーン』で、二人の女性が雑談を重ねていた。

 

「ルリナ〜この前の試合見たよ?ヤロー君相手に勝つなんてやるじゃない!」

「タイプ相性って大きいわよね。すっごく対策していってようやくギリギリのバトルだったのよ?」

「だよね。見ててハラハラしてたもん」

 

そう言って明るく笑う女性はソニア。そしてソニアと言葉を交わす褐色肌の美女はバウタウンのジムリーダールリナ。

二人は休みが重なったため、知り合いの店に服を買いに来ていた。会計のカウンターに寄りかかりながら話すソニアに対して、ルリナは備え付けの椅子で長い足を組んでいる。

そんな雑談を重ねる二人に店の奥から店主が顔を覗かせた。

 

「はい二人ともお待たせ!ルリナちゃんは注文があったワンピース、ソニアちゃんはトップスよ!」

「お!きたきた!」

「いつもありがとう、イサナさん」

「いいっていいって!二人ともアタシのお得意様だからね!」

 

二人に気さくに話しかける店主の名はイサナ。ホウエン地方から来たスタイリストであり、ルリナとソニアにとっては良き友人である人物だ。

 

「やっぱイサナさんのデザイン、あたし好きだなぁ。シンプルだけどちゃんと可愛いもん」

「あら嬉しい。じゃ、これからもご贔屓にしてね」

「ええ。もちろん」

「あ、そうだルリナちゃん。今度ファッション誌の取材受けるからモデルやってくんない?」

「はい、いいですよ。マネージャーにこちらから話を通しておきますんで、スケジュールはそちらで決めてもらってください」

「オッケー。いつもありがとうね」

 

モデルであるルリナ相手にもイサナは普段通りのテンションで話をする。分け隔てなく接してくれるイサナにルリナとソニアは心を開きこうして休みの時などに訪れておしゃべりに興じることが多々あった。

 

暫し三人で談笑していると、店の扉が開いた。

三人はそちらに目を向けると、白髪混じりの髪を携えた初老の男性が立っていた。

 

「おや、ガールズトークの邪魔をしてしまったかな?すまないね」

「いやいや大丈夫よ。いらっしゃいカブさん」

 

入ってきたのはエンジンシティジムリーダーのカブだった。ガラル地方ジムリーダーでは最年長ながらも高い実力を保ち続けているトレーナーだ。

 

「珍しいね。カブさんがわざわざ来るなんて」

「ちょっとこっちに用事があってね。ついでに今度新人のジムトレーナーが入るから新しくユニフォームを注文しておこうと思って」

「ああユニフォームの注文ね。オッケーオッケー。サイズと数は?」

「LサイズとMサイズを一つずつお願いするよ」

「LとM一つずつね…よしオッケー。注文ありがとございます。請求書はあとで送っておきますね」

「うん。よろしく頼むよ」

 

イサナは注文内容をタブレットに記録し、快活に笑う。

カブはそんなイサナに頷くと店の中を見渡した。

 

「ここはいつきても新しいデザインがあって飽きないね」

「ふふふ、ありがとう。そうだカブさん。せっかくきたんだし、お茶くらいなら出すけどどうします?」

「ん、そうかい?じゃあせっかくだしいただこうかな」

「はいよ。じゃあ今出すね」

 

イサナは一度バックヤードに引っ込むと、ティーカップとポットを持ってきてお茶を淹れるとカブに差し出した。

 

「はいどーぞ」

「ありがとう。いただくよ」

「イサナさーんこっちにもおかわりー」

「はいはいどーぞ」

 

カップを差し出してくるソニアのカップにもイサナはお茶を注ぐ。

イサナは自分のマグカップにもお茶を注いで一息つくと、思い出したように話し始めた。

 

「あ、そうそう。今のカブさんのジムトレーナーの話で思い出したんだけどね?この前アタシの弟がジムリーダーになったの!」

「へえ…弟さんはどこに住んでいるんだい?」

「シンオウ地方よ。生まれと育ちはアタシと同じホウエンだけどね」

「そういえば、イサナさんもカブさんと同じホウエン地方出身でしたね」

 

今はガラル地方にいるが、カブもイサナもホウエン地方が出身。ガラルに来た時代はかなり異なるが、似たような経歴を二人は持っていた。

 

「そうなの。それでその弟は昔バトル全然できなかったのに、いい師匠に恵まれてね。ジムリーダーになれるくらいの実力をつけて、数日前にはれて承認試験に通ったんだって!」

「シンオウ地方は承認試験でジムリーダーが決まるんだったわね」

「みたいよ。それでその弟がジムリーダーになったってこの前報告きてアタシすっごく嬉しかったの。それを聞いてほしかったんだ」

「そうか。弟さん、頑張ったんだね」

「頑張ったわよね。昔はジムバッジ集めるのに四年くらいかけてたのに」

 

その言葉にソニアは驚いて声を上げた。

 

「四年⁈時間かかったんだね…」

「まあね。単純にバトルが下手だったのが大きいと思う。それで自分に才能がないことを理解しながらも、最後まで諦めず頑張ったの。途中諦めた時期もあったみたいだけど、いい師匠のおかげでジムリーダーにまでなれたんだ」

 

嬉しそうに語るイサナにルリナは楽しそうに笑いながら言った。

 

「弟さんのことを話すイサナさん、楽しそうですね」

「まーね。ここまで諦めず突き詰めることができる弟のこと、尊敬してるから。何回倒れても諦めず突き詰める…誰にでもできることじゃないと思うの。そういう人って応援したくなっちゃうじゃん?」

「確かに…頑張っている人って応援したくなるわ」

 

カブはイサナの言葉を聞いて顎に手を当てた。

そして過去を思い出しながら口を開いた。

 

「そういえば…前にホウエン地方に帰った時に何度もジムリーダーに挑んでいる子がいたな。何度も負けているのに、諦めずバトルを挑んでいる子」

「へえ。あの子みたいな子が他にもいたんだ」

「何年前だったかな…もう十年以上前だから記憶がちょっと曖昧だけど、そういう頑張る根性って大事だよね」

 

その少年のことはカブの記憶によく残っていた。泣きそうな顔になりながらも諦めず果敢に攻めたいく少年とポケモン。己の未熟さを自覚しながらも今あるものでどうにか足掻く姿は、当時マイナーランクに落ちていたカブにとてもいい刺激になった。

 

「あの子の頑張る姿を見て、僕もまた頑張ろうって思えたんだったなぁ」

「そっか。じゃあその子は図らずもカブさんのことを救ってくれたんですね」

「うん。今こうしていられるきっかけを作ってくれたんだ。あの子、今はどうしているのかな」

 

優しく微笑むカブにイサナは聞く。

 

「その子の名前は?知り合いいるしわかる人いるかも」

「うーん、さすがに覚えていないなぁ…」

「まあ覚えてないよね」

 

なにせ十年以上前の話だ。カブ自身も見ていただけで実際バトルしたわけではない。覚えていなくても仕方ない。

 

「そういえば、イサナさんの弟さんの名前って?」

「あれ?言ってなかったっけ」

 

そういえば言っていなかったかもしれないとイサナは考える。そもそも和解(?)したのが比較的最近であるため、言ってなかったとしても不思議ではない。

 

「ええ。弟さんがいるのは知ってたけど、弟さんのお話が出たのは初めてだったと思うわ」

「そっか。言ってなかったわね」

 

ルリナとソニアは比較的よく話すため、話したのではと考えていたが話していなかったらしい。

イサナはロトムスマホを取り出すと、アルバムに保存されている弟と弟の恋人のツーショットの写真を表示させた。

 

「これがアタシの弟。名前はカイム」

「ん?」

「あれ?」

「あっ」

「……え?」

 

写真を見たルリナとソニアの表情が固まる。そしてカブは何かを思い出したようにぽんと手を叩いた。

三人の表情が想像とは違うものでイサナは不思議そうな表情をした。

 

「カイム君じゃん」

「カイム君ね」

「…え?二人とも知り合い?」

「うん。あたしはチャンピオンズトーナメントでね。シロナさんがダンデ君とバトルした時に」

「あたしはライモンシティでたまたま出会ったの。前にカミツレさん、シロナさん、アイリスちゃんでモデルした時に会ったわ」

「………あの子、人脈広いわね」

 

まさかの繋がりにさすがのイサナも苦笑する。イサナとしてもこの二人とカイムが知り合いだとは思っていなかった。

そしてカブも何か知ってそうな表情だったため目を向けると、頷きながら写真を見ていた。

 

「この子だよ!さっき僕が言ってた子!大分顔つきが変わってるけど、面影がある!名前も確かカイムだったはずだよ」

 

カブが先程話していた少年はカイムだったらしい。あまりにも意外な場所で認知されていたことに、イサナはもうなにも驚かなくなってしまった。

 

「……あの子はポケモンだけじゃなくて人も引き寄せるのね」

「まさかイサナさんの弟がカイム君だったなんて…」

「世間は狭いね」

「全くよ…カイムがこんな人脈広いなんて」

「ははは!僕も昔見た少年が君の弟とは思いもしなかったよ!それに、弟君が一緒に映っているのはシンオウ地方チャンピオンのシロナさんじゃないか」

「ああ、そうなの。カイムはシロナさんと恋人なの」

 

イサナの言葉にソニアはさらに驚きの声をあげた。

 

「こ、恋人⁈サポーターじゃなくて⁈」

「サポーター兼助手だけど、同時に恋人よ」

「知らなかったわ…モデルで一緒になった時に仲良いなとは思ってたけど…」

「すごい子なんだね」

「アタシが思ってた以上にそうみたい」

 

あまりの人脈にイサナは苦笑をしてしまう。

 

「ねえねえ、もっとカイム君のこと教えてよイサナさん!」

「お、興味ある?いいわよ、話してあげる」

 

その後イサナは三人に昔のカイムのことを話すのだった。

 

 

 

そしてその数日後、カイムのスマートフォンにイサナ、ルリナ、ソニア、カブが共に映る写真が送られてくるのだが、カイムは全く意味がわからなかった。

 

 




このくらいのバトルだと書きやすい。
ちなみにカイムとトウガンのバトルBGMは『対戦!シンオウフロンティアブレーン』を想定してます。
ブラッキーの技が五つになってますが、バークアウトが効かないからねがいごとと入れ替えたってイメージでお願いします。


カイムの言葉の続きは近いうちに。
今の二人の関係はシロナさんが勇気を持って一歩を踏み出したから始まりましたが、当時のカイムはまだ自信をもちきれていなかったため一歩を踏み出せませんでした。その負い目というか、自覚があるため今度は自分から言うという決意が今回で固まりました。
それと同時に今後の人生にも関わることなので、ちゃんとお互いに準備していく必要があるとも考えています。ぶっちゃけシロナさんは経済的にもいつでもウェルカムなのですが、このクソ真面目男は人生に一度しかない機会にちゃんと準備したいという思いからここでは明言しませんでした。あともう少し恋人としての距離感を私が見ていたいだけです。

ジムリーダーってみんなキャッチコピーみたいなのがあるらしいのですが、カイムのが全く思いつきません。今のところチェレンの『真理を追い求める者』みたいな感じで『歴史を紡ぐ者』くらいしかでてきません。



シロナ
誕生日を祝えて満足。カイムが今日の言葉の続きを言ってくれることを心待ちにしながら、カイムの執筆を手助けしていく。

カイム
ジムリーダー就任。イメージとしてはチェレンのジムリーダー像に近い感じ。執筆とジムリーダー、二つをこなしながら『準備』は難しいと判断した結果、待ってもらう判断を取った。情け無いと自分では思っているが、それで中途半端になるくらいならここは情けなくていいと判断した。
感想で聞かれたのでCVを考えてみた結果、赤羽根健治さん、内山昂輝さん、石川界人さんあたりが合うかなと思ってます。

ナタネ
試験監督その1。かわいいしもうちょっと出したかったけどこれ以上今回は出せそうになかった。

マキシ
試験監督その2。何気に初登場。脳筋族っぽいけどちゃんと頭を使える筋肉。トウガンがジムリーダーをカイムに譲ったことでジムリーダー最年長に。

トウガン
割と出てるけどバトルは初めての人。最初のバトルの時は特殊型だったから今回も特殊寄りの技構成にした。今回バトルを書くにあたりトリデプスの種族値を見ましたが、攻撃系種族値どっちも低くて笑った。

ルリナ
ソニアと共にイサナの店で時々だべっているのが目撃されており、イサナとも仲良し。実はカイムとの面識あり。

ソニア
実はこの人もカイムと面識がある。イサナの服のデザインとスタイリングが好みで服を買うときはよくイサナの店に訪れる。

カブ
ホウエン地方出身のジムリーダー。ホウエン地方ジムリーダーアスナの祖父では?と言われていたが、明言されてないから今回は言及しない。マイナークラスに落ちたことがあるらしく、初心に帰るためにもホウエン地方に一度戻ってきた。その時にド下手くそなのに諦めないカイムの姿をみて再び頑張る気力が湧いてきた。面識はないが、カイムのことを知っていた。

イサナ
ブティック『アクアラグーン』の店主で、カイムの姉。ガラル地方のルリナ、ソニア、カブがカイムのことを知っているとは思いもしなかった。世間の狭さを知った瞬間だった。


ポケマスで執事姿のノボリクダリを引けたのですが、そのノボリクダリの間にハロウィンカトレアさん挟むと最高にいい。ハロウィンカトレア、すこ。
イベントを見てこんな会話ありそうと妄想。
ユウリ「カレーは最高の材料だからね!」
カイム「カレーは材料じゃねえ」

以上作者の無駄な情報でした。



第三部、これにて終了です。
次回から四部に入ります。今まで通りシロナさんとカイムがイチャつくだけの話を続けていきます。ちなみに第四部で二人の関係は深くなります。お楽しみに。

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