ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

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一体いつから、おふれの石室だと錯覚していた。



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ありがとうございます。

ちょっと短め(二万字)。



37話です。


37話 アルトマーレ

ヨシノシティ空港

 

ロビーに溢れる人混みの中に、シロナとカイムはいた。

 

「ったく、幸先が悪いな」

「天気の都合だもの。仕方ないわ」

 

シロナとカイムは、飛行機でホウエン地方に向かっている最中だったが、突如としてホウエン地方全域を異常気象が襲った。その影響でホウエン地方に向けて出発していたシロナ達が乗る便は、道中にあるジョウト地方のヨシノシティへと急遽降りることとなった。

 

「でも、異常気象って…ホウエン地方で何が起こっているのかしら」

「さてな…ダイゴに聞いてみたが、なんでも豪雨と強烈な日照りが入れ替わるように発生しているらしい」

「豪雨と日照りが交互に?」

「ああ。それも、秒単位で天気が変わっているんだと」

 

天気は時と場合によっては非常に移ろいやすくなるものではあるが、豪雨と日照りが秒単位で入れ替わるなどという現象はあり得ない。何か別の力が働いていると考えるのが自然だろう。

ホウエン地方の現状を聞いたシロナは心配そうに眉を顰める。

 

「何が起こっているのかしら…」

「チャンピオンとしてダイゴも調査に乗り出しているみたいだが、今のところ何もわかってないらしい。何にしても、しばらくホウエン地方には行けそうにねえな」

 

現状、ホウエン地方全域が異常気象に見舞われているため、飛行機はもちろん、船での渡航も難しい状況になっていた。異常気象に伴い、気流や海流にも影響が出ていた。そのせいで現状公共交通機関でホウエン地方へ向かうことは厳しい。ホウエン地方の状態が改善されない限り、渡航は難しいだろう。どれだけの期間足止めされるかはわからないが、一朝一夕で解決するものとは思えない。

 

「ダイゴ君からの続報を待つしかないわね」

「だな。ま、あいつもどれくらいこっちに報告する余裕があるかはわからんがな」

 

かなり切迫した状況だというのはわかる。少なくとも簡単に解決する状態ではないため、向こうからの連絡はそうそうできる状態ではないだろう。

 

「こっちからは何もできん。あいつなら、大丈夫だ」

 

心からの信頼によって出た言葉。心配していない、というより、どんな状況でもダイゴなら解決できると、心から信じているのだろう。

 

「そうね。それで、私たちはどうしよっか」

 

思考を切り替えたシロナはカイムにそう問いかける。本来の目的地であるホウエン地方に向かえないのであれば、やることがなくなってしまう。カイムの代理期間はそれなりに長くとっているが、ずっとジョウト地方にいるわけにもいかない。場合によってはシンオウへ戻ることも考える必要があるだろう。

シロナの言葉にカイムはちらりとマップを視線を移した。

 

「……ふむ。ヨシノシティか」

 

現在地はジョウト地方のヨシノシティ。特に何か用事があるわけでもない。以前訪れた時にそれなりに見るものは見た。そしてその後は…

 

「次の飛行機は…未定。決まり次第連絡が来るように手続きしたし…」

「カイム?」

「今から一番近い便は…お、いい時間帯。よし、シロナ。行くぞ」

「え?ど、どこに?」

 

カイムの真意がわからず、シロナは困惑する。

そんなシロナにいつも通りの無表情を向けて言った。

 

「兄妹のとこ」

 

シロナはカイムの言葉に僅かな間考えると、あっとすぐに声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨシノシティからフェリーでしばらく。

海の上に浮かぶ街が見えてきた。

 

「見えてきたわね」

「久々のアルトマーレだな」

 

水の都、アルトマーレ。昨年シロナの突発ジョウト旅行の際に訪れた街だ。その時にこの街の護神であるラティアスラティオス兄妹と触れ合い、仲良くなった。それ以来来訪する機会がなく、時折カノンからラティアスのねだるような動画が送られてくるくらいだったが、偶然の機会とはいえ訪れる時間ができたため、カイムの提案で来訪した。

 

「一年ぶりくらいか?」

「そうね。去年のシント遺跡以来だから、ちょうど一年くらいかしら」

「ラティアスがお前に抱きつく姿が目に見えるよ」

 

ラティアスはシロナに非常によく懐いていた。それこそカノンが少し妬いてしまうくらいに。そのシロナが一年ぶりに来たとなれば、ラティアスは大喜びでシロナに甘えるだろう。

 

「うふふ。かわいいじゃない。貴方のブラッキーみたいで」

「残念。うちのブラッキーはラティアス以上の甘えん坊だ」

「ふふ、それもそうね」

 

別段褒めたわけではないが、カイムの隣でブラッキーが誇らしげに耳をぴこぴこと動かす。その愛らしい姿にシロナはブラッキーの頭を撫でた。

 

「急な来訪だったが、カノンには伝えたのか?」

 

フェリーが街に入ったところで、カイムはシロナにそう問いかける。今回の来訪は完全にイレギュラーなものであり、突然決まったものだ。予め来ることを決めていたら、事前に伝えていただろうが、今回はそうではないため伝えていないだろう。

 

「ええ、さっき伝えたわ。カノンもちょうど学校休みみたいで、出迎えに来てくれるって」

「いいタイミングだったんだな。俺らだけじゃ庭園まで行けねえし、あの兄妹に迎えに来てもらうわけにもいかねえから」

 

ラティアス達が拠点としている庭園はラティアス達の力によって隠されている。その幻覚は定期的に形を変えており、利用可能な入り口にも何パターンか存在しているとのことだった。そのため以前訪れた時に使った道は現在使えないとのことであり、シロナ達だけでは庭園に入ることができない。

そうこうしているうちに、フェリーが港に到着する。

 

「さて…気合入れていきますか」

「そんなに気合いる?」

「ラティアスの遊びに付き合うのは気合が必要だ」

「あ、確かに」

 

遊びに付き合ってあげる前提なのね、と内心でシロナはくすりと笑うのだった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

「シロナさーん!カイムさーん!」

「カノン、久しぶりね」

 

港に着くと、カノンがすぐに二人に向かってきた。

 

「びっくりしました!急に来るんだもん」

「ふふ、ごめんね。急に決まったことだったから」

「悪いな」

「でもタイミングは良かったです。あたし、ちょうど休みだったしね」

 

にこやかに笑うカノンにシロナとカイムはほっとしたように目を見合わせる。急な来訪故に、カノンに迷惑をかけてしまうのではないかと思っていたのだが、タイミングも良かったし、カノンとしてもシロナ達が来てくれるのは嬉しかった。

 

「さ、早く行きましょ!ラティアス(あの子)がシロナさんが来るって聞いた時からずっと急かしてくるんですよ」

「うふふ、嬉しい」

「あんま待たせるのも良くねえし、行くか」

 

荷物を背負い直したカイムの言葉にカノンは頷き、二人を伴って庭園に向けて歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんで?久々だが、元気だったか?」

 

道中にあるポケモンセンターに荷物を預け、カノンと共に庭園に向かう道中カイムはカノンに問いかけた。カノンは画材の入ったバッグを背負い直しながら頷く。

 

「はい。あたしもボンゴレさんも、兄妹も元気でしたよ」

 

ラティアスとラティオス兄妹の存在は伝説としてはアルトマーレ全体に知られているが、今もなおこの兄妹が街を守っていることを知る人間はカノンとボンゴレくらいだ。故に外ではあえて名前を出さず、『兄妹』と表現して言葉にしていた。

その事情を把握しているシロナ達もカノン同様、ラティアス達の名前は出すことなく話を進めている。

 

「妹は…相変わらず元気なんか」

「はい。多分今も、シロナさん達が早く来ないかずっとそわそわしてると思います」

「宥める兄貴の苦労が目に見える」

 

妹であるラティアスは、非常に元気で無邪気な性格をしている。そのため大好きなシロナが来ることが待ちきれなくてずっとそわそわしていることが目に見えるし、落ち着いた兄のラティオスが頑張って宥めている風景も容易に目に浮かぶ。

 

「ふふ、相変わらずなのね」

「お二人がなかなか来ないから、時折妹に泣きつかれるくらいでしたから。昔からいるあたしよりもシロナさんに懐いてて…ちょっと妬けちゃう」

「気軽に来れる距離ならいいんだけど、さすがに簡単に来れる距離じゃないから。ごめんね」

 

ジョウト地方とシンオウ地方はそれほど離れているわけではない。無論距離としては『そらをとぶ』で行ける距離ではないが、ガラルやカロス、パルデア地方よりは近い。もう少し顔を見せに行ければよかったのだが、シロナもカイムもそれなりの立場にあるため、簡単に動くことはできない。

 

「お二人はシンオウ地方ですものね。ただのジョウト地方ならともかく、ジョウト本土からも少し離れているから、簡単にはなかなか来られないか」

「俺もシロナも簡単に動ける立場じゃなくなったから、余計な」

「あ、シロナさんから聞きましたよ。ジムリーダーになったんですよね」

「まーな。今は代理に任せてるが、普段はジムリーダーしてるから簡単にはできん」

 

シロナはチャンピオン兼学者、カイムはジムリーダー兼学者故に移動は簡単にはできない。とはいっても、学者故に現地へ調査しにいく必要があるため、今回はこうして調査に踏み切った。尤も、幸先は悪かったのだが。

 

「ジムリーダーかぁ…じゃあ、バトルのプロってことだ」

「プロを名乗るには些か実力不足だ。アマチュア以上、プロ未満って感じ」

 

バトルにおいてプロという線引きはかなり曖昧だが、カイムの実力でプロを名乗るのは少し力不足感は否めない。それを本人も自覚しているし、これからも研鑽を積んでいくつもりだった。

 

「そういうお前はどうだ?美術の学校に通ってるらしいが、順調に腕は上がってんのか?」

「ぼちぼちですかね。さすがに簡単に腕があがることはないので、色々見ながら頑張ってます」

「いいことね。どんなことも、日頃の積み重ねだから」

「普段は休みに友達と絵を描きにいったりしてます。まだ一年生だし、まだまだ学ぶことは多いです」

 

バトルも絵画も、一朝一夕で腕は上がらない。日々の積み重ねが必要であることをカノンも実感しているため、適度に休みながらカノンも研鑽を積み重ねていた。友人と共に絵を描きに行ったり、スイーツを食べたりと学生生活を謳歌しながら絵を学ぶ生活は、カノンにとってとても充実している。それをシロナ達はカノンの言葉から読み取った。

 

そうこう言いながら歩いていくと、以前の路地とは異なる薄暗い路地にたどり着く。そして影になっている壁に向かってカノンは歩いて行き、壁の中に溶けるように消えた。

 

「何度見ても不思議な光景なことで」

「そうね。あの子達の力…こうしてみると凄まじいわ」

 

あの甘えん坊な様子からは想像もつかないが、ラティオス兄妹は本来伝説のポケモン。そのためこのように道を完全に隠すための幻術も一見するとわからないくらいの力であり、ボンゴレの仕事場から繋がっている道以外は資格無き者は気づかない仕様になっているらしい。誤って誰かが侵入することを防ぐための仕様なのだろうとシロナは考えた。

 

「行きましょ」

「ああ」

 

二人はカノンが入っていった壁に向けて足を進める。すると二人もカノン同様に壁に溶けていき、すぐ先にある暗い道にたどり着いた。向こう側に見えている光に向けて足を進めていくと、見覚えのある綺麗な庭園にたどり着いた。

 

「相変わらず綺麗な庭ね」

「しっかり管理してんだな」

 

少し進むと、カノンの側に赤い影と青い影があった。カノンはそわそわする赤い影を宥めるようにしており、側の青い影は少々疲れた表情をしている。

そこで赤い影は歩いてくるシロナ達に気づく。気づいた瞬間、赤い影はシロナに飛びついていった。

 

「あらあら、うふふ。久しぶりね、ラティアス」

 

飛びついてきたラティアスを優しく受け止めたシロナは、頬擦りしてくるラティアスのことを撫でる。あまりにも嬉しそうなラティアスにカイムの頬も思わず緩んだ。

そしてそのカイムの側にやや疲れたような表情をしたラティオスがふわふわ浮きながら近寄ってきた。

 

「久しぶり。お守り、ご苦労さん」

 

『誰のせいだ』とでも言うようにラティオスはじろりと視線を向けてくる。実際、二人が急に来ることになったためラティアスを宥めることになったため、カイムは苦笑することしかできない。

 

「悪い。今度はもっとちゃんと計画立ててくるから」

 

カイムの言葉に小さくラティオスは息を吐くと、顔をぐりぐりとカイムの頭に押し付けてくる。文句がありつつも、ラティオスとしても二人が来てくれたことは素直に嬉しい。だが苦労させられたのも事実であるため、素直に歓迎するのも癪なのだろう、とカイムは考えた。

ラティオスのすべすべした肌を撫でる。撫でられたラティオスは少し気持ちよさそうに喉を鳴らし、カイムの腰についたボールに視線を向けた。ラティオス兄妹はシロナとカイムのポケモンとも仲が良い。故に、ポケモン達とも会いたいのだろう。

 

「出してやるか」

「ええ。さあ!みんな出てきて!」

 

二人は手持ちのボールを空に向けて投げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

自分の周りをくるくると飛ぶラティアスにシロナは微笑む。シロナが来てくれたことが余程嬉しいのか、ラティアスはずっとはしゃいでいる。他のポケモン達とも遊びながら、隙さえあればシロナのもとへと戻って『楽しい!』と言わんばかりに満面の笑みを向ける姿は、妹というよりも幼い娘に近い気もする。カノン曰く、精神年齢的には12,3歳程度らしいが、ブラッキーレベルの甘え方はそれよりも幼く見えてしまう。

だが決して嫌ではない。むしろ、ポケモンから好かれていることはシロナにとって喜ばしいことであるため、そのような態度を向けられると自然と笑顔になってしまう。

優しい笑みを向けるシロナの手をラティアスが引く。引いた先には、簡易的なブランコ。

 

「ブランコしたいの?」

 

シロナの問いかけにラティアスは頷く。そんなラティアスにシロナは頷くと、ラティアスに続いた。

シロナはブランコに腰掛けると、ラティアスはシロナの背後に回る。そして浮遊の力を使ってブランコを前後に漕ぎ始めた。少しずつスピードを上げていき、すぐにそれなりの速度となった。

 

「うふふ、気持ちいいわね」

 

ブランコによって顔に当たる風はとても心地よく、庭園の空気がよく感じられた。ラティアスも庭園の空気とシロナの存在を感じ取り、とても心地よく思っている。

ブランコに揺られながら、シロナは庭園を見渡した。ラティアス兄妹だけでなく、野生のポケモン達も数多く訪れている。ポケモン達も思い思いに過ごしており、以前訪れた時と同様でポケモン達にとっては非常に居心地のいい空間になっていた。それがラティアス達のおかげなのか、それともこの街自体を守っているという『心の雫』のおかげかはわからない。どちらにしても、この素晴らしい空間にいられることがシロナは嬉しかった。

 

しばらくブランコに揺られていたが、シロナはふと一つの案をが思い立つ。ちらりと背後にいるラティアスに目を向け、そして遠くでラティオスやポケモン達とボール取りをしているカイムに目を向ける。汗を流しながらも僅かに笑顔を見せながらボールを持って逃げたりポケモン達にパスしたりしてラティオスの追跡から逃げるカイムを見ると、それももう少しでいいかとシロナは笑う。

そこでシロナはパッとブランコから飛び降りる。そしてラティアスの方を見ると手を差し出した。

 

「おいで」

 

シロナの言葉に頷いたラティアスは、シロナに向けて飛んでいき、普段のブラッキーのようにシロナに頬を擦り付けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと。甘えなラティオス!動きが単調だぞ!」

 

ラティオスがボールを取ろうと突っ込んできた動きを見切り、カイムはムクホークに向けてボールをパスした。ボールを受けたムクホークはさらにルカリオにパスしたが、その瞬間バシャーモがパスカットし、ラティオスに投げて寄越した。

 

「げ。見切られたか…ならムクホーク」

 

ムクホークはラティオスの死角からラティオスに迫ると、ボールを奪おうとするが、ラティオスはひょいと浮いて逃げる。そこにカイムが迫ってくるが、そこでラティオスは『サイコキネシス』でキリキザンにボールを渡した。ボールを受け取ったキリキザンは、ラティオスから進路を変更して目の前から迫るカイムに気づき、バシャーモに投げ渡す。

しかしそのボールの軌道はトリトドンの水によって逸らされる。取り損ねたボールはメタグロスの方へと飛んでいき、メタグロスは鋼鉄の腕をぶつけてダイレクトパスをカイムに向けて放った。

 

「よし、ナイスだメタグロス」

 

受け取ったボールを取りに行くバシャーモが迫る。カイムはそれを視界の隅に捉えており、バシャーモがカイムに迫ると同時にバシャーモの腕がギリギリで届かない進路でボールをトリトドンに向けて投げた。トリトドンは器用に頭にボールを乗せるとメタグロスに投げ、メタグロスは『サイコキネシス』を使ってカイムへとボールを返した。ハイペースでパス回しされるボールにラティオス達は対応できていない。

しかしそこで黒い影がカイムの死角から迫る。カイムがボールを受け取る瞬間、黒い影…ブラッキーがボールを取ろうとする。

 

「甘い」

 

だがカイムはそれも見切っていた。ブラッキーの身体を右腕で抱え、左手でボールをキャッチする。

 

「敢えて動かないで自分の選択肢が薄くなるの待ってたろ?お前らのことは一番俺がわかってんだって」

 

カイムは飛んできたムクホークにボールを投げ、ブラッキーとほぼ同じタイミングでボールを取ろうと迫ってきてラティオスの身体も捕まえる。

 

「同時にやるなら完全にタイミング揃えないと意味ねえぞ」

 

捕まえられたラティオスはむすっと表情を歪める。ブラッキー達のように戦闘訓練を行なっていないラティオスは戦闘におけるセオリーは理解していない。故にそういったバトル知識を持ち出されると、ラティオスは何も言えない。不貞腐れるラティオスをわしわしと撫でつつ、カイムの腕の中ですりすりと頬擦りしてくるブラッキーをラティオスの背中に乗せた。

 

「ちと休憩だ。疲れた」

 

カイムは上着を脱ぎ、汗が滲んだ額を拭う。背中にブラッキーを乗せたラティオスはその側に降り立ち、カイムに視線を向けた。

以前アルトマーレを訪れた時と比較して、少しだけ表情が豊かになった気がする、とラティオスは思う。カノンの話では『ジムリーダー』というトレーナー達の関門たる存在になったと聞いていたため、それが要因なのかもしれない。もしかしたらもっと他の要因もあるのかもしれないが、それをラティオスは知らない。ラティオスの中でもカイムは人間の中ではトップレベルに信頼を寄せている相手であるため、知りたいなと内心で思っていた。

 

そんな思いを内心で抱え、じっとカイムを見ていると、カイムがその視線に気づく。

 

「ん、どした」

 

カイムはラティオスを撫でながら聞く。ラティオスは小さく鳴いてカイムの頬を少し引っ張る。

 

「な、なんだよ…」

「貴方が明るくなった理由が知りたいのよ」

 

ラティオスの真意を汲み取ったシロナがラティアスを連れてカイムに歩み寄ってきた。シロナの言葉にカイムは首を傾げながらシロナに問い返す。

 

「明るくなった?俺が?」

「ええ。正確には、表情が豊かになった、と言うべきかしら?そうよね?ラティオス」

 

シロナの言葉にラティオスは頷く。ラティオスとラティアスは人やポケモンの感情がぼんやりとではあるが、色でわかる。それ故にカイムのように表情はほとんど動かない人間でも、喜怒哀楽を感じ取ることが可能だ。だからカイムの心がとても優しいことを感じ取ることができ、カイムに対して親愛を感じることとなった。

そしてラティオスはカイムの表情が以前訪れた時よりも豊かになっていることに気づいた。ラティオス達はカイムがどのような一年を過ごしたのかを知らないため、それを疑問に思っていても仕方ないだろう。

 

「そっか。二人は私たちの一年間がどんなものなのかそんなに知らないのよね」

「前に会った時から、か…なんかすげえ濃い一年だったな」

 

それこそ、昨年の激動はこのアルトマーレから始まったように思える。シント遺跡の調査はシロナ自身のテーマのための調査ではあったが、その後の突貫旅はシロナが思いつきで行なったものだった。アルトマーレではラティアス兄妹、ウバメの森ではセレビィと会合。エンジュシティでは特別なポケモンと出会うことはなかったが、二人にとって非常に『特別な時間』ではあった。あの時の簪はシロナにとって宝物であり、今も大事な時は必ずあの簪をつけている。(尤も、カイムは簪を送る意味をいまだに知らないのだが)

 

「ジョウトから戻ってから、ポケモンリーグにシロナが出たんだよな」

「ええ。シンオウ地方最大のバトル大会なの。二人とも知ってる?」

 

そう言ってシロナはタブレットを操作し、大会の動画を表示させた。ラティオス達はあまり外界の情報に聡くない。それ故にバトルのことは最低限知っているが、大会のことはあまり知らない。

タブレットに映るシロナの姿にラティアス達は目を輝かせた。優しいシロナとポケモン達が苛烈に、鮮烈に戦う姿は兄妹にとても格好よく見えた。

 

「かっこいいよな」

「うふふ、ちょっと照れ臭いわね」

 

シロナの戦う姿がとても格好良く見えたラティアスは目を輝かせながらシロナに抱きつく。普段の穏やかで優しいシロナのことは無論大好きだが、格好良いシロナの姿もラティアスにはとても綺麗に見えた。どちらもシロナであり、ラティアスにとって大好きな人であることは変わらないが、シロナの新たな一面を見ることができたのが嬉しいのか、ラティアスは楽しそうにはしゃいでいる。

それはラティオスも同じだったのか、タブレットに映るシロナの姿を興味深そうに見ていた。ラティオス自身は別段バトルをしたいと思うことはないのだが、こうして高め合い、競い合う姿はラティオスにとって新鮮なものに映ったらしい。

 

「この時はカイムにもたくさんサポートしてもらったわね」

「それが俺の仕事だ」

「わかってるわ。いつも助かってる。ありがと」

「ん」

 

当然のことをしたまでだ、とでも言うようにカイムは息を吐くが、ラティオスとラティアス、そしてシロナの目にはそう言われて少し嬉しくなっているのがわかった。素直に口にしないカイムのことが面白くてシロナはラティアス達と目を見合わせて笑う。

 

「何笑ってんだよ」

「別に〜」

「…んだよ」

「そういえば、私たちが付き合い始めたのもこの時からよね」

「…そうだな」

 

今でも思い出せる、後夜祭の夜空に浮かぶ花火が上がる中、思いを告げあったあの瞬間。花火に照らされるシロナの横顔と、花火の色に上書きされながらも赤くなった顔で自身の心の内を吐露したカイムの顔。二人にとって忘れられない瞬間であり、昨年の中で最も幸せな瞬間の一つだっと言えるだろう。

 

「へえ〜…お二人が付き合い始めたのはそこからなんですねえ」

 

と、そこでシロナ達の背後からそう言葉が投げかけられる。振り返ると、楽しそうに笑いながらカノンが歩み寄ってきていた。

 

「そうだが…言ってなかったか?」

「言ってませんよ。前の時、カイムさんが誤魔化したじゃないですか」

「どーだったかねえ」

「カイムさんがあたしのこと子供扱いして答えなかったじゃないですか!忘れたとは言わせませんよ」

「さてね。子供なのは事実だし、そんなこと言ったかもな」

 

カノンの年齢を直接聞いていないが、せいぜい16程度…高くても18は越さないくらいだとカイムは考えている。既に成人してからそれなりに経過しているカイムからしたら実際子供だし、子供扱いすることになんら間違いはないだろうと思っての態度だったが、カノンからしたら不服らしい。

 

「もう…あたし、そんな子供じゃないですよ」

「そう言ってるうちは、まだ子供だっての」

「むう…シロナさん、助けて」

「カイム」

「…………」

 

シロナの一言でカイムは口を閉じ、肩をすくめた。

それを見てカノンは少しだけ楽しそうに笑う。

 

「シロナさんの言うことは聞くんだ」

「ほっとけ」

「うふふ。カイムは私には逆らえないものね」

「へーへーその通りですよ」

 

実際、師匠として厳しく鍛えられた結果故か、基本的にカイムはシロナに逆らえない。全てにおいてではないが、基本的に素直に言うことを聞くため、こういう場合はシロナを使うというカノンの選択は非常に有効的だった。

 

「それで?どっちから告白したんですか?」

 

カイムが口を閉じたことをいいことに、カノンは目を輝かせながらシロナにそう問いかける。大好きな二人の関係性ということで、カノンの隣でラティアスまで興味深そうにしており、とても逃げられるような雰囲気ではない。ラティオスはラティオスで、少し興味ありそうな表情で見てくるため、これは観念して話すしかないか、とシロナは白旗を上げて口を開いた。

 

「私よ。ポケモンリーグで優勝したら、言おうって決めてたの」

「わあ!素敵!なんて言ったんですか⁈」

「『貴方を一人の男性として愛しています』って言ったの」

 

あの時の心臓の高鳴りは、今でも思い出せる。今まで抑えてきた思いを告げる高揚感と、拒否されないかと心配する緊張感によってあの時の心臓はかつてないほど高鳴っていた。それこそ隣にいたカイムに心臓の音が聞こえるのではないかと思えるほどだった。

だが決して嫌な高鳴りではなかった。どんな返事だったとしても、どのみちシロナはカイムへの想いを抑えることは不可能だった。仮に拒否されたとしても、後悔はなかっただろうし、カイムとの関係性は師弟兼サポーターという関係のまま変わらなかっただろう。ただ、もし振られていたらカイムのいない場所で一人でひっそりと涙を流していただろうけど。

 

「うわぁ…!すごいいい!こう、大人の恋愛って感じ!」

「ふふ、やっぱりこの手の話は恥ずかしいわね」

 

カノンは『大人の恋愛』と称しているが、そこに至るまでの過程はとても大人らしい恋愛だったとは言えない。なにしろ二人ともほぼ初恋に等しい状況だったため、どうすればわからず想いを自覚してからも表に出さないように気を張っている部分があったからだ。尤も、気を張っていてもかなりの高頻度で互いに態度に(無意識ながら)出ていたが、鈍感…というより、経験のない二人はなかなか気づかなかった。

 

この二人の状況を見ていたカトレアは、糖分にやられてげんなりした顔をしながら後にこう語った。

 

『アタクシは超能力で人の感情が色で見えることがあるの。あの二人は付き合う前から互いに好き合っていることがバレバレな色をしていたし、仮に色がなかったとしてもあれで気づかないのはスクール生よりも鈍感だと言わざるを得ませんわね。おかげでストレートティーやブラックコーヒーの消費量が増えましたの。早く結婚なさい』

 

このように、互いに経験の無い者同士故の鈍感さを大いに発揮していたのだった。そのためカノンの想像している『大人の恋愛』とはかなり異なっているのだが、それを本人達はあまり自覚していないため訂正することはない。

 

「へえ〜そっか。素敵な恋愛してるんですね」

「色んな人の助けを借りたけどね」

 

カトレアとダイゴがこの瞬間、同時にくしゃみをしたことを知る者はいない。

と、そこでカノンはシロナとカイムの右手薬指に赤と青の指輪があることに気づいた。

 

「あ、その指輪もしかして!」

「ここで買ったアルトマーレガラスのリング…今も大事にしてるの」

 

以前アルトマーレを訪れた際、シロナはカノンにおすすめのアクセサリーショップを聞いた。その時に勧められたアクセサリーショップで購入したのが、今まさに二人が着けているリングだった。よくよく見ると、二人は耳にも色違いのイヤリングをしている。これも同じ店で買ったものだろうとカノンはすぐに理解した。

 

「イヤリングもお揃いじゃないですか!」

「ええ。貴女に勧めてもらったお店で買ったの。今でも、大切にしているの」

「ふふ、おすすめしてよかったです!」

 

シロナが髪を耳にかけ、着けているイヤリングを顕にする。イヤリングの色はラティアスと同じ赤色であり、それをつけてくれているのがカノンは嬉しかった。また、カノンだけでなくラティアスも嬉しかったのか、シロナの耳を見て目を輝かせている。そんなラティアスが愛おしく、シロナはラティアスの頬を優しく撫でた。

そしてそんなシロナとラティアスを見て、ラティオスはカイムに目を向ける。すぐにその視線に気づいたカイムは視線の意図を理解し、自分の耳についたイヤリングを右手の薬指で見せた。ラティオスと同じ青色のアクセサリーを見て、ラティオスは嬉しそうにカイムに顔を押し付ける。それを見てラティオスの背中に乗っていたブラッキーはラティオスの首に足を回してぎゅーと抱きしめていた。

 

「お前の色、いいよな」

 

カイムの言葉が嬉しかったのか、ラティオスは嬉しそうに喉を鳴らす。ラティオスの喉を撫でると、ラティオスは気持ちよさそうに目を細めた。それを見た背中に乗っていたブラッキーは『ボクも撫でて!』というようにラティオスの背中から降りてカイムに頭を擦り付けてくる。それに乗っかってラティアスまでもがカイムに頭を押し付けてきて、カイムはげんなりと表情を歪めた。

 

「な、なんだよ…おい、やめろって」

 

ブラッキー、ラティオス兄妹に群がられ、カイムはそうぼやくが、その表情はどこか緩い。ポケモン達が大好きなカイムにとって、ポケモンに群がられることは嬉しさしかないため、普段全く動かない表情が緩んだのだろう。

 

「うふふ、相変わらずポケモンに好かれるわね」

「遊ばれてるの間違いだろうに」

「でも嫌じゃないんですよね?」

「…………」

 

否定の言葉はない。事実、彼にとっては決して嫌なことではないからだ。やれやれといった表情をしながらも、カイムはラティオス達を優しく撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿泊先のホテルでくつろぎながら、二人は寄り添いあっていた。

 

「明日はどうしよっか」

 

完全にノープランで来てしまったため、計画か全くない現状。そのため明日以降の動き方をどうしようか二人で考えている最中だった。

 

「んー…どうせなら、ラティオス達となんかしたいが…あいつら基本的に庭園から動けねえしな」

 

ラティオス達の存在は伝説上では広く知られているが、今もなおアルトマーレを守っていることを知るのは、庭園の守り人であるカノン一族を除けばシロナとカイムのみ。故に、ラティオス達の姿を堂々と見せて街中を彷徨くことは基本的にできない。

 

「ラティアスは変身できるし、変身した状態で一緒に回ればいいんじゃない?」

「それは考えたが、あくまであいつらの身体が変化したんじゃなくて光の見え方を変えてるだけだ。どこまで対応できるのか次第だな」

 

ラティアスが以前見せた変身は、周囲の光の屈折を変えることで別の姿に見えるようにしているだけ。そのため、ラティアスの身体が変化したわけではない。

 

「結構ラティアスは街中を歩いているみたいだし、大丈夫だと思うけど」

「ラティアスだけならな。カノン曰く、ラティオスは変身するのがあんま得意じゃないんだと。姿を消すことや道を見えなくするのは得意だが、自分を変身させるのを長時間維持できるかがわからないんだと」

 

ラティオスの方が夢幻の力は大きいが、自分の姿を別のものに見せる力はラティアスの方が得意とのことだった。そのためラティオスは普段街中を見て回るときは基本的に見えなくするだけで、変身したりはしないらしい。以前訪れた際は最後の最後でカイムに変身したが、あれも一瞬だった。つまり、ラティオス達と共に街中を見て回るとしたら、ネックになってくるのはラティオスの変身維持可能時間だということになる。

 

「そっか。なら明日、ラティオスの変身維持時間聞いてから決めましょ」

「そうだな。ホウエン地方もまだ全然収まってないみたいだし、気楽に決めてくか」

 

ダイゴからの続報はないが、SNSやインターネットから得られる情報では、いまだにホウエン地方の異常気象は収まっていないらしい。夜故に日照りはないが、豪雨が降ったり止んだりを繰り返しているようだった。異常気象が収まらない限り、シロナ達はホウエン地方に向かえないし、行けたとしても調査どころではないだろう。

 

「ええ。明日、ラティアス達と決めましょ」

 

そう言ってシロナはダブルサイズのベッドに寝そべり、カイムに手招きした。それに応えるようにカイムはベッドに腰掛け、シロナと顔を見合わせながら横になった。

 

「ふふ」

 

シロナは嬉しそうにカイムを抱き寄せる。カイムの胸板に額を当てると、一定のリズムで鼓動が聞こえてきた。どこか優しさを感じられる、そんな音にシロナは心が落ち着いていくのを感じる。

 

「どうした?」

「んー?昼間はポケモン達に貴方のことを譲ってたから、今は私が貴方のことを独占してるの」

「彼氏冥利に尽きる」

「カイムは無愛想で不器用だけど、とても優しくて楽しい。そんな貴方に寄ってくるポケモン達の気持ちはよくわかるわ」

「不器用は余計だっての…事実だけど」

 

シロナの頭をぽんぽんと撫でながらカイムは苦笑する。そして仰向けになると、自然とシロナの頭が胸板を枕にするような体勢になった。

シロナの絹糸のような髪の毛をさらさらと撫でる。撫でられたシロナは少しくすぐったそうにみじろぎをするが、止めるようなことはしない。むしろもっとやってほしいと思っていた。

 

「こうして撫でられていると、大切にされてるんだって実感するわね」

「いつも大切にしてんだろ」

「わかってるわ。でも、こうされるのが好きなの。だからもっとして」

「へーへー仰せのままに」

 

シロナがこうされるのが好きなように、カイムもシロナの髪を撫でるのが好きだった。絹のようにさらさらとした美しい髪はとても触り心地がよいだけでなく、こうすることで自分の心の一部をシロナに共有できているような感覚があったからだ。シロナもカイムも心を大切にする。言わなくても互いに心は繋がっているが、こうして行動に示すことでより深く繋がれているように感じられる。だから二人ともこうして寄り添い合う時間を大切にしていた。

 

「あー、このまま寝ちゃいそう」

「まだ風呂入ってねえだろ。寝るなら風呂入ってからの方がいいんじゃねえのか」

「わかってるわよ…でも、お風呂から上がったら貴方がお風呂入るでしょ?一人でこのサイズのベッドで待ってるのは、少し手持ち無沙汰よ」

 

ダブルサイズのベッドは、当然ながら一人では大きい。二人でも少々大きいのだが、一人となると尚更だ。そこで一人で待っているのも、少しつまらない。あとは寝るだけなので楽しかろうがつまらなかろうが何も問題ないのだが、こうしてカイムが側にいられる幸せを少しでも長く実感していたかった。そういう思いはダークライ事件以降、ポケモン達だけでなく、シロナも大きくなっていた。

 

「あとは寝るだけだ。大人しく待ってろ」

「…うーん、そうね」

「そうだ」

 

カイムの言葉に一瞬だけ間を空けて、シロナは顔を上げる。そしてカイムの顔に手を添えて唇を落とした。啄むような触れ合いの中、互いの体温と息遣いが間近に感じられる。

そして顔を離すと、シロナは赤みがかった顔色に少し恥ずかしそうな笑みを浮かべながら言う。

 

「貴方とのキス…いつしても胸が熱くなるのに、とても落ち着く。不思議ね」

「シロナ以外経験ねえから比べられんが、そういうもんなんだろ」

「カイムは、どう?」

「…シロナが近くにいることが実感できる。だからその…まあ、なんだ?…もっとしてたい、と思うこともある」

「ふふ、よかった」

 

そう言ってシロナは軽くキスすると、着替えを持って風呂場へと歩いていった。

残されたカイムはたった今落とされたキスの感触とシロナの顔が脳裏から離れず、大きく息を吐く。

 

(…好きだ)

 

溢れ出た感情を小さく口にする。付き合って一年弱。いまだに付き合いたてのハイスクール生のような態度を取るカイムに、ポケモン達は生暖かい目を向けるか『またやってるよ』と呆れるかの二択だった。現にベッドの隅でうとうとしていたムクホークは特に何もリアクションせず、大きくあくびをするだけ。こんな様子で結婚できるのかはわからないが、さっさと結婚しろと周囲は思っているのだった。

 

一方、シロナもシャワーを頭から浴びながら顔を赤くし、悶絶していた。似たもの同士、お似合いといえばお似合いなのだろうが…周囲からしたら口から砂糖を吐きそうな気持ちになっていた。多分、そんな二人を見て嬉しくなっているのはブラッキーくらいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「そっか。ラティオスはあまり長いこと変身してられないのね」

 

シロナの言葉にラティオスは頷く。変身して街中をしょっちゅう彷徨いているラティアスは変身の持続時間も長いが、ラティオスはそうではない。そのため変身はできるが、長時間維持できないのだという。

 

「うーん。じゃあ街中をラティアス達と見て回るのは厳しそうね」

「カノンも今日は学校だ。本来の管理者がいない中で勝手するのもな」

「そうねえ…でもせっかくだし、二人と過ごしたいし」

 

シロナの言葉にラティアスは嬉しそうに頬擦りしてくる。そんなラティアスを優しく撫でながらシロナはラティオスに目を向けた。

 

「姿を消すだけなら、長い時間できるのよね?」

 

ラティオスはシロナの言葉に頷いた。それを見たシロナはラティアスの手を取りながら立ち上がった。

 

「じゃあ、ラティオスは見えなくなって、ラティアスは変身して行きましょ」

「どこ行くんだ?」

「色々。食べ歩きして観光よ」

「なるほど、計画的だ」

 

カイムは苦笑しながら立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトマーレの街中、シロナとカイムは一人の少女を連れて歩いていた。その少女はシロナに寄り添いながら上機嫌に鼻歌を歌っており、その馬場からも周囲から視線を集めている。

 

「楽しそうだな」

「うふふ。私と街を歩けるの、嬉しい?」

 

少女…ラティアスは元気よく頷く。ラティアスは現在、一人の少女の姿でシロナとカイムと共に歩いており、その少女はシロナの妹であるクロナに良く似ていた。普段はカノンの姿で彷徨いているのだが、この街にはカノンを知る者もいるし、何よりカノンは今学校の時間。誰かに見られて変な噂を立てられるくらいなら、別の誰かに変身した方がいいだろうとカイムが提案したところ、ラティアスはシロナそっくりの姿に変身した。髪型や身長など、クロナと異なる部分はあるものの、パッと見では二人は姉妹にしか見えない。変身としては十分だろう。

 

「本当の姉妹みたいだな」

「従姉妹くらいじゃない?」

「むしろ娘か?」

 

カイムの言葉にシロナは顔を赤くする。シロナの将来の願望に、二人の子供と共に街を歩く、というものがある。その想像の姿と今の姿があまりにも一致しているものであり、それを無意識とはいえカイムは言い当てた。

突然シロナに『嬉しさ』と『恥ずかしさ』が入り混じった感情が吹き出しており、それが何なのかわからずラティオスは首を傾げた。それに気づいたシロナは顔を赤くしながらもラティアスの頭を撫でる。結局シロナの感情はわからなかったが、シロナが撫でてくれたからラティアスは何でもよくなり、シロナに抱きつくのだった。

 

それを見ながらラティオスは透明になりながらもカイムの頭を小突く。何故小突かれたのかがわからず、カイムは首を傾げた。しかしラティオスはやれやれと息を吐きつつ、カイムの頭に軽く頭を乗せる。

 

「???」

 

ポケモン相手にもだが、この男は人を惹きつける何かを持つ。ラティオス自身、それに惹かれていたものもあるが、ポケモン以上にシロナに対しては謎の特攻言動を放つことがある。そしてなにより、それに自覚がないことが一番タチが悪いとラティオスは思っていた。それを抜きにしてもカイムはいい友人であるため、困った友だと内心で考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

運河や大きな橋、広場や宮殿などをラティアス、ラティオスと共に回る。無論ラティアス達はこの街に住んでいるため、今更行くものではないのだが、ラティアス達も二人と共に街を回れるのが嬉しいのか、ずっと上機嫌だった。ラティアスは当然として、ラティオスも姿が見えないながらも楽しそうにしているのが伝わってくる。

 

そんな中、ラティアスはふと足を止めた。

 

「どうしたの?」

 

それに伴って、シロナも足を止める。そしてラティアスの視線先を追うと、そこにはクレープ屋があった。

 

「…クレープか?」

「みたいね。もしかして、食べたいの?」

 

ラティアスはシロナの問いかけに少しだけ躊躇するが、おずおずと頷く。ラティアスは街を彷徨いてはいたが、金銭は所持していない。そのため、今までスイーツの類を食べたことはなかった。だから憧れはあったし食べてみたいとも思っていたが、それはシロナ達に奢ってもらうことに他ならない。だから肯定するのに僅かながら躊躇してしまった。

 

「そうか。なら食おう」

 

ラティアスが頷いたのを見ると、カイムは財布を取り出してクレープ屋に向けて歩いていく。それを見たラティアスはシロナに視線を向け、視線を向けられたシロナは優しく微笑みラティアスの頭を撫でる。

 

「カイムが奢ってくれるって。好きなの食べていいのよ」

 

シロナの言葉を聞いてラティアスはパッと表情を明るくすると、シロナと見えないラティオスの手を引いてカイムの後を追っていった。

 

シロナ達が追いつくころには、カイムは既に店頭にいた。無表情の男が真剣にクレープを選んでいるシーンはどことなくシュールでもあるが、敢えてシロナは言わなかった。

 

「ほれ、はよ選べ」

 

カイムはそう言ってシロナに手渡す。受け取ったシロナはラティアスと共にメニューを覗き込む。様々な種類のクレープが記されており、どれにしたいかシロナはラティアスに見せる。

 

「どれがいい?」

 

メニューを見たラティアスは目を輝かせる。わくわくとメニューを見つめる姿にシロナは思わず笑顔になった。姿は見えないが、ラティオスの気配もすぐそばにある。ラティオスとしても興味があるもののようであり、暫しシロナの側に気配が留まっていた。ただそのあとすぐに気配が離れていき、気配はカイムの側へと移っていくのを感じる。それを感じたシロナはラティアスと共にクレープ選びに集中するのだった。

 

一方、早々に選び終えたカイムは暇を持て余していた。楽しそうにクレープを選ぶシロナとラティアスをぼんやりと眺めながら、腕を組む。そんなカイムのそばにラティオスの気配を感じる。姿を消しているラティオスに話しかけることはできないが、やれやれといった表情をしているのだろう。

 

「お兄さん。あの別嬪さんは、お兄さんの連れかい」

 

手持ち無沙汰の様子を見せるカイムに、クレープ屋店主がそう問いかけてきた。

 

「…ええ、まあ」

「やっぱりかい!いやあ、いいねえあんな美人さん達!奥さんと、娘さんかい?」

 

そう問いかけられ、カイムはほんの一瞬答えるのに躊躇する。確かにシロナとは恋人関係だが、まだ夫婦ではない。それに対してカイムも色々と準備はしているが、まだ全く準備はできていない。『それ』に関しては、まだ先の話になるだろう。

 

「いえ、彼女とその妹」

「彼女さんか!どこから来たんだい」

「シンオウ地方っす」

「シンオウ地方か。アルトマーレには、観光かい?」

「ええ。本当はホウエンまでいく予定だったんすけど、今ホウエン地方やばいみたいで足止めされたんです。それで急遽ここまで来ました」

「ホウエン地方か!今異常気象がすごいんだってね。早く直るといいんだが…」

 

ホウエン地方の異常気象は今もなお続いている。今朝ダイゴから連絡があり、原因は『伝説のポケモンの復活』とのことだった。マグマ団、アクア団と名乗る団体がそれぞれ伝説のポケモン復活を企てており、それらの復活が異常気象を引き起こしているらしい。まだ不完全な復活故に異常気象程度で留まっているが、完全に復活した場合は人の手に負えるものではなくなってしまう。

だかダイゴには何か考えがあるらしく、たくさんの人と協力して動いているとのこと。口調も少し疲れてはいるが、とても覇気に満ちていた。心配する必要は無さそうだとカイムは判断した。

 

「…まあ、大丈夫ですよ。ホウエン地方のチャンピオンが色々動いてるみたいだし、それにチャンピオンってすごいじゃないですか」

「僕はあまりポケモンバトルは見ないけど、チャンピオンって言うくらいだしそうなんだろうね」

「ええ」

 

わざわざカイムはダイゴと自分が親友であることは言わない。大っぴらにしたいとも思わないし、したところで何もない。自分はただダイゴを信じればいいと考えての言動だった。

 

「お兄さん」

「はい?」

「彼女さん、大事にしてやんなよ」

 

店主にそう言われて、カイムは僅かに目を見開くが、表情をほとんど変えることなく頷いた。

 

「はい」

「いい返事だ。クレープ一つ、おまけしようかね」

「そりゃいい」

 

そこまで話したところで、シロナ達が歩み寄ってくるのが見えた。やっと決まったか、と楽しそうな姿を見て小さく呟き、姿の見えないラティオスと共に苦笑するのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

夕刻

一通り街を回り、一行は庭園に戻ってきた。はしゃぎ過ぎて疲れてしまったのか、ラティアスは庭園に戻るなりシロナの膝ですやすやと眠ってしまっていた。

 

「はしゃぎすぎたみたいだな」

「ええ。でも、私もラティアス達と街を回れてよかったわ」

 

シロナの言葉にラティオスは笑顔になり、シロナの膝で眠るラティアスの頭を優しく撫でた。ラティオスとしても、ここの守り人であるカノンやボンゴレ以外の人物と共に街を巡る経験は初めてであったため、とても楽しめた。なにより、妹がいつも以上に楽しそうにしている姿が見られて嬉しかったようだった。

 

「シロナさーん!カイムさーん!」

 

そこで庭園にカノンとボンゴレが入ってくる。カノンは学校帰りなのか、画材を持っており、ボンゴレも作業着のままだった。

 

「お久しぶりですな、お二人とも。昨日は顔を見せられず申し訳ない」

「いえ。私たちが急に来ただけですから」

「ありがとうございます。ラティオス達は、お二人のことが大好きみたいですからな。我々としても、お二人に来てもらえるのは嬉しい限りです」

 

ラティオス達の存在はボンゴレ一族しか知らない。そのため、アルトマーレと基本的に縁のないシロナのような一般人がこうしてラティオス達と触れ合えるのは、非常に稀。それもあり、ボンゴレはこうして二人がいてくれることはとても嬉しかった。

そう話しているうちに、ラティアスが目を覚ます。ぱちぱちと目を瞬かせるが、まだ眠いのかシロナの膝に頭をぐりぐりと擦り付けた。

 

「ほら、そろそろ起きて。夜眠れなくなっちゃうわよ」

「シロナさん、発言がお姉さんみたい」

「うふふ。私、妹いるからかしらね」

「シロナさん、妹さんがいるんですね!」

「そう。少し歳は離れてるから、こういうこともしたの。懐かしいわ」

 

今となってはしっかり者のクロナだが、昔からしっかりしていたわけではない。当然幼少期はシロナや祖母のアイナに色々と面倒を見られており、シロナと比べられて不貞腐れていた時期やすれ違った時期もあった。だがそれはそれとして、シロナにとって大切な妹であることに変わりはない。かつてのクロナとは似ても似つかないが、自分よりも歳下の家族がいる、という経験が、ここまでラティアスに愛情を注げる一因でもあるのかもしれない。

 

「妹の方がしっかり者だがな」

「カイム?」

 

シロナが笑顔をカイムに向け、カイムは肩をすくめる。そんなカイムの肩をシロナは小突いた。滅多に表情の動かないカイムはくつくつと笑い、ラティオスもそれにつられて笑う。

 

「なんで二人で笑ってるのよ」

「事実だろうに。なあラティオス」

「もう!」

「やべ。逃げろラティオス」

 

カイムは立ち上がり、ラティオスと共に走り出す。カイムとラティオスは、シロナとラティアスの姉妹とは違い、どちらかといえばダイゴとの関係に近い。

 

「…あの二人も仲良しよね」

「そうですね。ラティオスはとても思慮深く、ラティアス同様に悪意に聡い。だから我々の一族以外でここまで共に笑い合える友人がいるというのは、彼らにとっても嬉しいのでしょう。普通のポケモンのように、トレーナーと旅に出ることはできないから、余計彼のような存在が嬉しいのですよ」

「あたしもラティオス達もこの街のことは大好き。だけどそれはそれとして、外の世界への興味がある。だから外から来た二人は、ラティオス達にとって外の世界の象徴に近いのかも」

「外の世界の象徴か…悪くないわね」

 

いつの間にかラティオスの背中に乗せられてブラッキーと共に飛んでいるカイムの姿を見て、シロナは優しく微笑む。

 

そんな中、ラティアスはシロナに抱きついて頬擦りをするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

カノンの自宅でカイムは腕を組んで苦い顔をしていた。

 

「…なんでこうなったんだ」

 

カイムの呟きにラティオスとラティアスは楽しそうに笑った。そしてシロナとカノンは買い物袋を手に、荷物をキッチンに乗せる。

 

「まーまー。みんなカイムの料理の腕前を見たいのよ」

「そうですよ。あんなにシロナさんが絶賛するんだから、せっかくだし食べてみたいじゃないですか」

「いやまあ…いいんだけどさ。あんま凝ったもんは作らねえからな」

「いいのよ。それでも十分おいしいんだから」

「信頼されてるんですねえ」

 

カノンの冷やかすような言葉にカイムは淡々と答える。

 

「信頼されなきゃサポーターなんてできねえって」

「そういうことじゃない気もしますけど」

「そういうもんだ」

 

それだけ言うと、カイムはルカリオを出し(ブラッキーは勝手に出てルカリオの頭に乗ってる)、ラティオス達が興味深そうに見守る中、調理を開始した。材料を買い物袋から取り出し、使う順番に適当に並べると、腕まくりをし、手を動かし始める。

 

「それで?何を作るの?」

「庭園で食える飯ってことで、サンドウィッチ」

「あら、いいわね。手軽に食べられるし」

「サンドウィッチ!確か、パルデア地方でよく食べられてますよね」

「手軽に作れるし、挟むもの次第では栄養バランスもよくなるしな」

 

そう言いながらカイムはパンをカットしていく。そこにペーストを塗り、野菜をカットして下味をつける。ルカリオの手も借りつつ、テキパキと調理を進めていく姿は、主婦顔負けのものだった。

 

「うわぁ…手際いいですね」

「ほぼ毎日三食作る生活続けりゃな」

「あたしも結構作るけど…ここまではできません。すごいです」

 

カノンは通学の都合上、両親と離れて暮らしている。そのため家事全般はそれなりにできるが、ここまで手際よくはできない。それに側でサポートするルカリオの姿も様になっている(頭で楽しそうにするブラッキーは除く)。

調理を進め、あっという間に人数分のサンドウィッチができた。だが栄養バランスを考慮して食事を作るカイムはこれだけでは終わらない。

 

「これだと少しバランス悪いから…あと二品くらい作るか」

「え?まだ作るんですか?」

「これだけだとバランス悪い」

「…主夫だ」

「やかましい。ん、ルカリオ。あの材料頼む」

 

不機嫌そうに言いながらも、ルカリオと共にサクサクと調理を進めていうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

庭園にて、カイムはバスケットを広げる。バスケットの中には、メインのサンドウィッチのほかに、シーザーサラダと卵焼きが入っていた。

 

「おー!すごーい!」

「いや…完成見てたろ」

「そうですけど!盛り付けも上手いんですね!」

「美味そうに盛り付ける方が、美味く食える。多分」

 

カイムの料理に、ラティアスだけでなくラティオスまでもが目を輝かせていた。ラティアスが早く食べたい、と目で訴えてくるため、カイムはやれやれと息を吐きながらバスケットをラティアスに近いシロナに手渡す。バスケットを受け取ったシロナは、カットされたサンドウィッチをラティアスとラティオスに手渡した。そして他のポケモン達にも作ったフードを渡していく。

 

「美味しそうでしょ?早速いただきましょ」

「いいんですか⁈じゃあ早速、いただきます!」

「どーぞ」

 

カノンとラティオス達は同時にサンドウィッチにかぶりつく。ペーストの辛味、野菜の味とベーコンの味、チーズや卵などの味がパンの味にうまくマッチして、カノンが食べたサンドウィッチの中で最も美味しいと思える味が口に広がった。

 

「すごい美味しいです!」

「でしょ?やっぱりカイムはどんな料理も美味しくできるのよ」

「切って焼いて挟んだだけだ。誰でもできる」

「このペースト…もしかして、からし使ってまふ?」

「飲み込んでから喋れ。ああ、からしマヨネーズだ」

「からしがこんな洋風のサンドウィッチに合うなんて…知らなかった」

 

料理スキルの高さに内心で舌を巻きつつ、カイムの腕をカノンは絶賛する。そして毎度のことながら、その賞賛に対してシロナが満足そうな表情をした。

 

「さすが私のサポーターね」

「そらどーも」

「嬉しそうですね、カイムさん」

「………」

 

カイムは無言でお茶でサンドウィッチを流し込み、卵焼きを口に放り込む。そしてその横でラティオスとラティアスが一心不乱にサンドウィッチを頬張っていた。もぐもぐと口を動かすラティオス達は、まるで子供のようだった。

 

「焦って食べなくていいのよ」

 

シロナの言葉にラティアスは顔を上げ、口をいっぱいにしながら『美味しい!』とでも言うように笑顔を向けた。ラティオスも口についたソースを器用に手で拭くと、カイムに美味しいと伝えるように鳴く。

ラティアスは口元の食べカスに気づいていない。幼い子供のようなラティアスにシロナは優しく微笑みながら、ナプキンでラティアスの口元を拭う。

 

「ついてるわよ。ふふ、かわいいわね」

 

ラティアスは笑顔で頷くと、再びサンドウィッチをもぐもぐし始める。シロナはそんなラティアスを愛おしく撫でているが、そのシロナの口元にも僅かにソースがついていた。

 

「シロナ」

 

カイムが口元を指差し、それを伝える。それに気づいたシロナは口元を拭うが、うまく取れない。

 

「ったく…」

 

カイムはナプキンを手に、シロナに歩み寄る。そしてシロナの口元をナプキンで拭った。その際口紅が取れないようにうまく拭う。

 

「ありがと」

「ん」

 

そう言って、シロナはカイムの口元に人差し指を当てる。

 

そのやり取りを見て、カノンだけでなく、ポケモン達も遠い目をしながら食事を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

2日後

 

港にカイムとラティオスは海を眺めていた。

そこにシロナとラティアスが歩み寄る。

 

「ダイゴ君からの連絡は終わった?」

 

スマートフォンをポケットにしまいつつ、カイムは振り返った。先ほどまでカイムはダイゴと連絡を取っていた。その内容は、なんとなく予想はつく。

 

「ああ。ホウエン地方の異変が、収まったとのことだ」

「早いわね。さすがダイゴ君」

「ま、ダイゴだけで解決したわけじゃないって強調してきたがな。それでもあいつの手腕があったのは確かだ」

 

ダイゴ曰く、以前リーグで戦ったユウキ、と言う少年の力を借りたらしい。恐らく、ヒカリ同様『選ばれし者』なのだろうと思う。

 

「じゃあ、ホウエン地方に向かわないとね」

 

二人の目的はホウエン地方であり、アルトマーレではない。明日にでもホウエン地方への飛行機も再開するだろう。そうなると、ラティオス達と過ごせるのは、今日が最後になる。

それを感じたラティアスは寂しそうに目を伏せる。ラティアスにとっては、姉が遠くに行ってしまうようなものだ。ラティオスにとっても親友が遠くにいくのだ。寂しくないわけがない。

それを感じ取ったシロナとカイムは、ラティオス達を抱きしめる。

 

「…また来るわ。今度はもっと長く、計画的にね」

「ああ。またクレープ食おう」

 

カイムの言葉にラティオスは鳴く。その意味をなんとなく感じ取ったカイムは苦笑した。

 

「俺のサンドウィッチがいいってか?いいけど、そんなんでいいのか?」

 

カイムの言葉にラティアスとラティオスは頷く。それを見たカイムはシロナの手を取り、苦笑しながらラティオスを撫でた。

 

「ま、気に入ってもらったならいい」

「気に入ってもらえてよかったわね」

「ああ。また来ような」

「ええ。今度はもっと計画的にね」

 

そう言ってシロナとカイムは、ラティオス達を抱きしめる。シロナだけでなく、ラティオス達の体温を感じていた。

 

 

 

波の音と心音、そして互いの心を感じながら、夜は更けていった。

 

 

 

 




年の最後なので、ラティ兄妹と二人をキャッキャさせたかった。

爆速で書いたので誤字多いかもしれません。よろしくお願いします。


活動報告に私の推しトレーナーと推しポケモンを羅列しました。書きたい人はお好きに自分の推しを書いてください。活動報告の方には返信しませんが、私が見てにっこりするだけです。

一年の区切りということで、なんとなくシロナとカイムのステータスを独断と偏見で数値化してみました。
トレーナーステータス(各項目10点満点)
シロナ
体力 7
頭脳 10
統率力 9
育成力 10
鑑識眼 10
精神力 10
合計 56
10年以上チャンピオンの地位を守り続けているだけあり、トレーナーの中では最高峰レベルのステータスを持つ。ポケモンで言えば5Vレベル。天性の才能以上に努力によって培った実力故に調子による実力の振れ幅は小さく、レッドやヒカリのようなひらめきや土壇場における爆発力は少々欠ける。その分確固たる安定した実力を持っており、まぐれで勝てることはまずない。学者気質故にかつては若干体力に不安があったが、カイムの献身によりチャンピオンズトーナメントやリーグを最後までベストコンディションで勝ち抜くくらいの体力はついた。統率力が9なのは、ポケモンの意思に任せたバトルを好むからであり、本気でやれば10になる。

カイム
体力 9
頭脳 7
統率力 6
育成力 6
鑑識眼 7
精神力 9
合計 45
ジムリーダーの平均数値は45〜48くらい故に、ジムリーダーの中では下の方。統率力と育成力はシロナに鍛えられたため、平均以上のレベルになった。体力と精神力…体、心はもともと素質があったためトップレベル。数値としてはこれでほぼカンストしいるが、頭脳と鑑識眼はもう少し伸びるかも。でもどのステータスも10に到達することはない。

ちなみにレッドは体力、グリーンは精神力以外オール10です。

今回、更新の早さもあり、感想に返信できていませんが、全て目を通してにっこりしてます。
感想・評価はとても励みになりますので、良ければお願いします。



良いお年を。

みなさんの推しタイプは?

  • ノーマル
  • ほのお
  • みず
  • でんき
  • くさ
  • こおり
  • かくとう
  • どく
  • じめん
  • ひこう
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