ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

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レジポケモン考察見てたら遅くなりました。






39話


39話 ミナモシティ

「なんでこう、立て続けに来るのかな…」

 

 ホウエン地方ポケモンリーグがある街、サイユウシティ。ポケモンリーグスタジアムのトップに、ダイゴは立っていた。その表情は暗く、頭を抱えたくなる思いだった。そんなダイゴの背後に、一つの人影が歩み寄ってくる。

 

「天変地異の次は隕石たぁ、ツイてねえな」

「カゲツさん…」

 

 特徴的な髪型をした柄の悪そうな男…カゲツが苦笑しながらダイゴの隣に立つ。

 

「本当ですよ。今年、誰か厄年だったりします?」

「ははっ!どうかねぇ。オレぁ違えが、四天王の誰かは厄年かもしれねぇな。なんなら、ダイゴは違うのかい?」

「把握してないですよそんなの」

「そうだった。お前、仕事以外だと基本的に石とポケモンしか頭になかったな」

 

 カゲツはくつくつと笑いながらポケットからタバコを取り出し、ライターで火を付けた。ダイゴに煙がかからないように風下で煙を吐き、カゲツは空を見上げる。

 

「隕石ねぇ…とんでもねぇものがこっちに迫ってきてるんだな」

「イメージつきませんよね」

 

 今、ホウエン地方には宇宙からの巨大な隕石が迫ってきている。かつても隕石が落ちてきたことがあるらしいが、それはグラードンやカイオーガが活動していた遥か昔。加えてその時代に落ちてきたものよりも、さらに巨大な隕石らしく、このホウエン地方はほぼ全滅するレベルらしい。

 

「ホウエン全域が吹っ飛ぶくらいのデカさだろ?イメージできなくても当たり前だろうよ」

「いえ、ボクが言ってるのは隕石の構成物質とか質感とかです」

「……オレも大概だが、こんな時でもお前石のことかよ」

 

 楽しそうに笑いながらカゲツは再び煙を吸い、吐き出す。ひとしきり笑うと、携帯灰皿にタバコの灰を落とし、再びタバコを口にくわえた。

 

「宇宙センターはどうするつもりなんだ?発覚してから二日…未だに対応案ナシか?あんまもたついてると、住民の避難が間に合わねえぞ」

「無い…わけでは無さそうです。ただ、色々と足りないものがあるみたいでして」

「足りないもの?」

「まあそこは追々。それに、当てもあるんで」

「そうかい。お前がそう言うなら、とりあえず任せる」

 

 カゲツは煙を吐き出すと、タバコを潰して火を消し、灰皿の中に詰め込んだ。

 

「ゲンジの旦那も色々と調べてくれてるし、プリムとフヨウも自分の専門分野でできることを探ってる。この前の一件もだが、オレらをもっと使ってくれていい。将来社長になるんなら、人を使うことを覚えろ」

「……はい」

 

 ダイゴは少し前にあったグラードンとカイオーガの一件で、四天王と一人の少年と共に事態を収拾した。その時、チャンピオンという立場からか、積極的に自分でどうにかしようとしていたことをカゲツは言っている。ダイゴが自ら動くことはいい。ただ、ダイゴにもできることは限度がある。それを自覚し、自分の手の及ばない範囲は任せることを覚えろ、とカゲツはダイゴに言った。できていないわけではない。だがまだ甘いというだけだ。

 それしてそれはダイゴにも自覚があった。他者を使うこと。これは、ダイゴにとってまだ少し苦手意識のある。しかしいつか会社のトップに立つ者として、これは会得せねばならないものだと自覚していた。そう考えた時、ふと脳裏によぎったのは、親友の横顔だった。

 

「…あいつなら、どうしたかな」

「あいつ?」

「前にお話しした、ボクの親友ですよ」

「ああ、なんかそんな話してたな」

「ボクよりも弱いくせに、ボクよりも強い心を持ってる。自分ができないことを把握して、周囲の人に助けてもらいながら前に進む。どうしようか悩んだ時、ここ最近はあいつならどうするかって考えるようにしてるんです」

「へえ。お前がそんだけ言うたぁ、すげえ奴なんだな」

 

 楽しそうに笑うカゲツを横目に、ダイゴは空を見上げる。今もホウエン地方に迫ってきている隕石。そして先日起こった天変地異。何かしら関係があるのではないかと疑ってしまう。

 

(…こんな時、キミならどう考えるんだい?カイム)

 

 今まさにホウエン地方に戻ってきている親友のことを考えながら、ダイゴはゆっくりと目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 石室の奥…真実が記された部屋が開放されてから数日。

 おふれの石室を調べて尽くした二人は、キナギタウンの宿屋で情報整理していた。

 

「ふむ…元々ほしかった材料はあらかた集まったな」

「論文を書くには十分な調査量ね。あとは具体的な考察と分析、組み立てといったところかしら」

「ああ、そうなる。とりあえず調査した資料は分野ごとに分けて、プラターヌ博士にも共有するつもりだ」

「いいと思うわ。予めプラターヌ博士も目を通しておければ、カイムの考察にも色々と修正をいれやすくなるはずよ」

 

 タブレットやノートパソコンを操作しながら二人は資料を整理していく。カイムは主に古代文字の資料、シロナは石室内部の人工物や造りについて調べ、まとめていた。一週間程度の調査結果としては上々であり、論文を書くには十分な量だと言えるだろう。

 

「わかってないのは、あのルカリオとキリキザンの異変よね」

「ああ。それについても石室内部を色々と調べてみたが、それらしいものはなかった」

「私もよ。あの異変で確実に何かが起こったと思うんだけど…それらしいヒントがないのよね」

 

 石室内部はかなり徹底的に調べ尽くした。現在発掘されている部分において、二人が見ていない場所はない。それくらい二人はこの滞在期間中、長い時間を石室で過ごしたのだが、それでいてなおヒントを見つけられずにいた。

 

「そうなると、石室外か」

「やっぱりそう思うわよね」

「まあ、自明だな。古代人達はレジポケモンを封印したが、次に気になるのはどこに封印したのか。それが一切記されていない」

「当たり前といえば当たり前かもしれないわね。レジポケモンの力を恐れて封印したのに、それを悪用されたりしたら封印の意味がなくなるもの」

 

 古代人達が恐れ、封印したほどの力を持つポケモン。それを封印した場所を知られた場合、悪用されないとも限らない。それこそサカキのような人物であれば、間違いなく悪用するだろう。

 

「人の悪意は際限ねえからな。そこに関しちゃ、過去も今も変わらないんだろうよ」

「そうね。それで?ここ最近ホウエン全域で何か異変はあったの?」

 

 カイムはあの日以来、石室内部にヒントが無い可能性も考慮し、ホウエン全域で何か異変がないかを探っていた。情報収拾に関してはシロナが知る限り誰よりも高いカイムであれば、手がかりの少ない情報であったとしても見つけ出すことは可能だろうが、さすがに手がかりが少なすぎたのか、難航していたことまでは把握している。それからどうなったのかを聞いたところ、カイムはブルーライトカットのメガネを外し、タブレットをシロナに見せた。

 

「つい最近、ミナモシティ付近の丘で、突如岩に穴が空いたらしい。中は何もなかったらしいが、点字みたいな模様があったとか」

「点字…!それは間違い無さそうね」

 

 古代文字は現代に存在する点字と酷似している。しかし点字とは異なり、読み方にはかなりクセがあるため、普通の点字のように読むことはできない。今のところ、読み方の法則性を知るカイムとシロナ、そしてプラターヌ博士くらいしか読むことはできないだろう。

 

「ああ。だから明日、ミナモに行く。現場を見て、判断するさ」

「さすがね。でも、どうやって見つけたの?その程度じゃネットニュースにもならないでしょ?」

「ネットニュースだけじゃねえ。SNSも使えば、そこそこ情報は集められる」

「SNS?貴方、なんかやってたっけ?」

「Pockestagram、Pocketterとかならアカウントはある。動かしてねえし、本当に情報収拾用だ」

 

 カイムも一応SNSのアカウントは持っているが、主に情報収拾にしか使わない。それ故に投稿などは一切しないし、動かしたこともない完全な見る専門のアカウントとなっていた。

 

「何よ、言ってくれればフォローしたのに」

「いや、投稿しねえから。情報収拾用だし」

「じゃあこれを機会に個人アカウント作りましょ?」

 

 カイムに対して、シロナもアカウントは持っており、時折投稿もする。カイムとの関係を匂わせるような投稿は一切しないが、出場する大会の告知やイベントに参加する際はその投稿をしているアカウントだった。プライベートの投稿をすることはほとんどなく、それが世間でシロナの私生活が謎扱いされている理由の一つなのだが、当然そんなこと本人は知る由もなかった。

 それはそれとして、カイムはシロナの申し出に首を横に振る。

 

「投稿することがねえし、何より俺が作ると公式アカウントみたいな扱いになるだろ。やんねーよ」

 

 一応カイムも新任とはいえジムリーダー。ポケモンリーグ公認トレーナーであり、シンオウ地方では名前と顔が知られるようになってきた。下手にアカウントを作ると、それが公式アカウントのような扱いをされるのではないかという懸念点があり、わざわざアカウントを作ることを嫌がった。

 

「むう…でも確かに、今の貴方が作るとそうなるのか」

「そーだ。それに、俺ぁ大会とかほとんど出ねぇし、投稿することがねえよ」

「ブラッキーの寝顔で良くない?」

「は?わざわざ外に出すわけねえだろ」

「親バカねぇ」

 

 食い気味に拒否するカイムに苦笑しつつ、シロナは話を戻す。

 

「それで?そのミナモシティに行くのはいいけど、それはどこなの?」

「正確に言うと、120番道路だ。少し外れた場所に丘があって、その上にある大きな岩が目的のものになる」

「少し距離あるけど、下見くらいなら一日でできそうね。そこは一般人が行ってもいい場所なの?」

「一応あのあたりは古代からある場所だと判明してたが、それ以外は何もない。一般人が行っても問題ない」

「そう。なら、明日早速動きましょう」

「ああ」

 

 そう言って二人は荷物を纏め始める。

 そこでシロナはミナモシティという土地にふと既視感を覚え、カイムに問いかけた。

 

「ねえカイム。ミナモシティってことは、ご両親のとこには…」

「今のところ行く予定はねえ。一応ホウエンに戻ってきてることは伝えてあるが、寄る暇があるかはわからんって言ってる」

 

 ミナモシティはカイムの故郷。そのため、カイムの両親が住んでいる土地だった。シロナも以前カイムの両親に挨拶したことがある。父親であるナダはカイムに良く似ており、不器用だが思いやりのある人物だった。母親であるタキはカイムとは似ても似つかないゆるふわな性格だったが、カイムのポケモンに好かれるという特徴はタキ譲りなのだという。姉であるイサナは今はガラルに住んでいるため、ホウエン地方にはいないが、シロナは定期的ち連絡を取っており、カイムの家族との繋がりはかなり強いと言えるだろう。そのため、もし時間があればまた両親に会いたいと思っていたが、意図せずその機会が訪れた。

 

「なら、どう?」

「……まあ、いいか。出来れば寄れとも言われてたし、問題ねえだろ」

「やった!」

(何がそんなに嬉しいのかねぇ…)

 

 カイムからしたら、大した行事ではない。実家に戻るだけであるため、何の感慨もないのだが、シロナからしたら違うのだろう。

 

(…俺がシロナの実家行くようなものか)

 

 そう考えると、確かに悪い気はしない。カイムも、シロナの実家に行ったときは緊張していたが、同時に嬉しさも感じていた。それと同じ感じなのだろうと考え、納得したカイムは小さく息を吐くと、両親に連絡すべくスマートフォンを取り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

翌日

ミナモシティ住宅街

 

「♪」

「ご機嫌だな」

 

 鼻歌交じりに足を進めるシロナに、カイムはそう告げる。シロナが機嫌を損ねることはあまりないのだが、ここまでご機嫌なのも割と稀有だ。カイムからしたら、そんなに自分の実家は魅力的なのかと首を傾げるものなのだが、シロナからしたらそうではないらしい。

 

「ええ。またナダさんとタキさんに会えるんだもの」

「うちの両親、そんなに気に入ったのか?

「もちろん。二人ともとっても素敵な人じゃない。会うの楽しみだわ」

「そうかい」

 

 自分の両親を気に入ってくれているのは、カイムとしても悪い気はしない。

 そんなことをぼんやり考えながら、カイムは自宅のインターホンを鳴らす。すぐに中から声が聞こえ、扉が開いた。

 

「あら〜二人とも、おかえり〜」

 

 扉から出てきたのは、カイムの母親であるタキだった。腕の中にはエルフーンがいる。

 

「久しぶりね〜シロナちゃん。また会えて嬉しいわ〜」

「お久しぶりですタキさん。私も会えて嬉しいです」

「カイムも元気そうね〜」

「ああ」

「うふふ〜暑かったでしょ〜?さ、入っ…」

 

 タキが『入って』と言い終わらないうちに、タキの腕の中のエルフーンがカイムの顔を見てパッと表情を明るくする。そして腕の中から飛び出し、カイムの顔に突撃した。

 

「ぶっ!」

「あら〜」

 

 エルフーンはモフモフの背中をカイムの顔に押し付け、楽しそうにふわふわと頭に乗った。以前はあまり絡んでいるのを見なかったが、どうやらエルフーンはカイムにもよく懐いているらしい。そして遊ばれているカイムは、鬱陶しそうにしながらも払い除けるようなことはせず、小さくため息を吐いた。

 

「…はぁ、とりあえず入らせてくれ。暑い」

 

 頭からエルフーンを引っ剥がすと、小脇に抱えてカイムは家に足を踏み入れる。シロナもそれに続いていった。

 家に上がり荷物を置き、リビングに腰を落ち着けた。そこにタキが冷たいお茶を運んでくる。

 

「どうぞ〜」

「あ、ありがとうございます」

「ん、あんがと」

 

 未だにエルフーンがカイムの頭で遊んでいるが、さすがに見かねたタキがエルフーンを回収した。回収されたエルフーンは特に気にすることなく、楽しそうにタキの腕の中でモフられている。

 

「相変わらずエルフーンはカイムのこと好きね〜」

「不本意だが、おもちゃとして最適なんだろ。今に始まったことじゃねえ」

「うふふ〜、それもそうね〜」

 

 タキはソファに腰掛けると、お茶を一口飲み、エルフーンをモフりながら二人に笑顔を向けた。

 

「改めておかえり二人とも〜。長旅ご苦労様〜。大変だったでしょ〜?」

「俺らよりホウエン地方(こっち)の方が大変だったんじゃねえのか?天気が変になってたんだろ」

 

 先日、ホウエン地方全域が日照りと豪雨が秒単位で入れ替わるという意味不明な事態が起こっていた。結果的にダイゴを筆頭とするトレーナー達によって解決され、ホウエン地方の出入りが可能にはなったが、このミナモシティもその影響を受けていないはずがない。シロナ達よりもホウエン地方に住んでいる人々の方が大変だっただろう。

 

「そうね〜…大変ではあったけど、結局私たちは何もしてないし、非常時用の備えはいつもしてるから大丈夫だったわ〜」

 

 だがタキとしてはそこまで大変には思わなかったらしい。天気がおかしくとも、天変地異の起点はルネシティ。ミナモシティから少し距離があるため、天気の影響はあってもそれ以外はほぼ何もなかった。そのためそこまで大変だったという認識がタキの中ではないらしい。

 

「洗濯物が外に干せないくらいかしらね〜」

「そうかい。ま、無事ならいいよ」

「うふふ〜ありがとうね〜」

 

 タキはそこで一度言葉を切り、お茶を口に含む。そしてエルフーンをモフりながら再び口を開いた。

 

「それで二人は…お仕事で来たのよね〜?」

「ああ」

「カイムのお仕事?それとも、シロナちゃん?」

「今回はカイムです。前回は私の用事でしたけど」

 

 前回、ホウエン地方に訪れたのは、オーキド博士から託された『古びた海図』の真相を確かめるためだった。仕事ではなく、完全な興味本位ではあったのだが、行くだけの価値はあるものだった。

 

「あらあら〜カイムのお仕事ね〜。論文書いてるって聞いたけど…それ関連〜?」

「ああ」

「そう、じゃあ頑張ってね〜。シロナちゃん、カイムのことよろしくね〜」

「はい」

 

 楽しそうに笑うタキを見てシロナは思わず頬を緩める。ふわふわとした話し方はやはり腕の中にいるエルフーンとよく合っていた。

 と、そこでシロナはもう一人、この家にいるべき存在の姿が見えないことに気がついた。

 

「あの…ナダさんは?」

 

 タキの夫であり、カイムの父親であるナダ。その姿が見えないことをシロナは疑問に思った。ナダは教師であるため平日に家にいないことは何の疑問もないが、今日は休日。故に、家にいてもいいのだが、外出しているのかもしれない。

 

「ああ、お父さんは今日部活の顧問よ〜。ハイスクールバトルの地区予選があるの〜」

「ああ、地区予選今日なのか」

 

 バトルにも様々な分野があり、スクール、ハイスクール、オープンなどがある。スクール分野はまだスクールを卒業していない生徒のみが参加可能な分野であり、ハイスクールも同様の区切りで開催されるバトルだ。オープンはポケモンリーグを含めた、年齢に関係なく参加可能なバトル分野のことを指している。

 そしてナダはハイスクールの教師であると同時に、勤めているハイスクールのバトル部顧問もしていた。かつてバトルで名を残そうと努力していた名残か、そこそこうまく指導できているようで、ナダの学校が地方大会優勝したこともあるらしい。

 

「そうよ〜。今年は地区予選一位通過するんだって息巻いていたの〜」

「いいんじゃね?じゃあ今日は泊まりか」

「多分ね〜。今年は見込みのある子もいるみたいだし、いいところまで行くんじゃないかしら〜。それに、カイムがジムリーダーになったからか、気合い入ってたわ〜」

「…そうかよ」

 

 ナダはバトルで名を残すことはできなかった。それ故に、自分と同じように凡庸であるカイムがジムリーダーになってくれたことが心の底から嬉しかった。一度は諦めたが、最高の縁に恵まれたことで立ち上がることができ、そして努力の末にジムリーダーという立場を勝ち取った。シロナにはまだわからないが、自分の子供が努力して親を超えるということは、きっと誇らしいのだろう。

 

「そう。だからお父さん、明日までは多分帰ってこないわ〜」

「わかった。つっても俺らもいつまでいるかわからん。アタリを付けた場所がスカの可能性もあるし、スカだったらまたすぐ別の場所に向かう」

「ええ、大丈夫よ〜。すぐにいくのかしら?」

「ん、ああ。そうだな」

 

 カイムはそこで隣にいるシロナに目を向ける。シロナは視線に気づくと、微笑みながら頷いた。

 

「私は大丈夫よ。いつでも行けるわ」

「OK。ならすぐに向かおう」

「もう少しゆっくりしてもいいのに」

「時間は有限だ。ジムリーダー代理にやってもらってんだ。無駄に時間はかけられん」

「真面目ね〜。お父さんそっくり」

 

 やれやれといった様子をみせながらも、タキはそれ以上言うことなく立ち上がる。そして二人をそのまま玄関まで見送ってきた。

 

「じゃあ、いってくる」

「いってらっしゃい。帰ってくる時、連絡いれてね〜」

「ああ」

「シロナちゃん、この子多分忘れるからよろしくね〜」

「あ、はい」

 

 タキの言葉にカイムは顔を顰める。

 

「いや、忘れねーよ」

「説得力ないわよ〜」

「…………」

 

 シロナの元で修行していたことをカイムは両親に伝えていなかった。そのことを突っ込まれると、カイムとしては何も言うことができなくなる。ふわふわとした口調と雰囲気のタキだが、言うことはしっかり言うし、思いの外言葉のキレが鋭い。

 

「ちっ…」

「じゃ、気をつけてね二人とも〜」

「はい。また後で」

「ん」

 

 シロナが頭を下げる横で、珍しく不貞腐れたような顔をするカイムにシロナはやれやれといった様子を見せる。

 

「ほーら、不貞腐れないの。事実でしょ?」

「…わーってるよ」

 

 カイムは大きくため息を吐くと、自分の両頬を叩く。思考を切り替え、歩きながら自分のタブレットを取り出した。

 

「今回向かうのは、120番道路の奥地。調べたところ、そこは『古代塚』と呼ばれていたらしい」

「古代塚?」

「ああ。そこにある岩は、遥か昔からそこに存在していたことがわかっている。ただそれだけで、他には何もなかった。なんとなく意味ありげではあったみたいだが…岩自体は大したものもなかったからずっと放置されてたんだ」

 

 120番道路の奥地、『古代塚』。

 

「でも今回の岩が開いたと」

「みたいだ。ただ、現地に行かないと何もわからん。早速向かうとしよう」

「わかったわ」

 

 そう言ってシロナはトゲキッス、カイムはムクホークを出して跨ると、カイムの先導の元、120番道路へと飛んでいく。その後ろ姿をタキは嬉しそうにエルフーンと共に眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

120番道路奥地

 

 目的地にたどり着いた二人はポケモンをボールに戻し、目の前にある丘を見上げた。丘には階段が整備されており、その先には大きな岩が鎮座している。ネットで一瞬話題になったためちらほら人がいるが、片手で数えられる程度の人しかいないため、特別問題にはならないだろう。

 

「ここが…古代塚?」

「そう呼ばれてる。この岩は遥か昔からここにあること以外、何もわかっていない」

「…でももしかしたらこの先に、古代人の真実があるのかもしれないのよね」

 

 分野は違えど、シロナも考古学者。かつて栄えた文明の真実があるかもしれないと考えると、胸の高鳴りが抑えきれなくなる。思わず身震いしてしまうほどの興奮を、同様にカイムも感じていた。

 

「…あるかはわからん。だが、可能性はあると思う」

「行きましょう。私たちで真実を明らかにするの」

「ああ」

 

 そう言って二人は人が通れるくらいの穴をくぐり、岩の内部へと足を踏み入れる。中は当然真っ暗であったため、シロナはランタン、カイムは懐中電灯で辺りを照らした。

 

「……中は、おふれの石室と比べて質素というか、何もないな」

「そうね。おふれの石室はいくつか建築物があったけど、こっちはないのね」

 

 内部には特に何かあるわけでもなく、岩石と同程度の体積を持つ空間があるだけだった。中央には水溜りがあるが、ほかに目につくものはない。

 

「例の古代文字が記されているのは…一番奥のあれかしら」

 

 シロナがライトで照らした先には、一枚の大きな岩。そしてそこにはカイムが分析した古代文字が彫られている。

 

「あれだな」

「思ったより大きいわね。単純な大きさならおふれの石室よりも大きいかしら」

「多分な。石室の調査で古代文字の分析もだいぶ慣れた。すぐに読み解いてくるから待っててくれ」

 

 カイムはタブレットを片手に石板へと近づいていき、ルカリオに持ってもらっているライトの光を頼りに解析を始めた。その後ろ姿を眺めつつ、シロナは周囲を見渡す。

 

(……岩をくり抜いた、というより、元々空洞だったのかしら。人の手によって加工された形跡がない。自然にできたものを封印場所として利用したのか、それともここは元々彼らの住処だったのか…現段階では何もわからないわね)

 

 古代文字に扉の開放時期。これらからこの場所がおふれの石室に関連するものであることはほぼ間違いないだろう。だが古代人達は何故この場所を選んだのか。それが不明だった。この場所が何かに適していたのか、それともここしか選択肢がなかった(・・・・・・・・・・・・)のか。謎は深まるばかりだが、カイムが分析している石版の内容さえわかれば、それも明かされるかもしれない。シロナなりに思考を回しながら分析が終わるのを待った。

 

 数分後、カイムが戻ってくる。そして分析内容をシロナに見せた。

 

「『我々の意志を継し者よ 真ん中で光り輝け』…どういうこと?」

「さてな。詳しくはわからん」

 

 色々とわかるかもしれないと期待していたが、明かされた文章は意味不明だった。我々…恐らくそれは古代人のことを示しているのだろうが、後半の『光り輝け』については本当に意味がわからない。

 

「…我々っていうのは、多分古代人のことよね。でも真ん中で光り輝けっていうのは…?」

「とりあえず調べてみよう」

 

 カイムに続いてシロナは部屋の中央部に足を向けた。トゲキッスにランタンを持ってもらい、頭上から照らしてもらうが、特別変わったものはない。

 

「特に何も無さそうだが…」

「そうね。でも真ん中って、多分ここらへんで合ってるわよね?」

「ああ。床面積や形からみてもまず間違いないだろう」

 

 上を見上げてみても、特に何もない。そうなると、真ん中という場所自体が違うのでは?とも考えたが、他に真ん中ともいえる場所もない。

 

「仕方ない。とりあえず、『光り輝け』だけでもやるか」

「何か策があるの?」

 

 『光り輝け』という以上、それなりの光量が必要になると予想できる。しかしシロナとカイムの手持ちにある光源はランタンと懐中電灯のみ。もしこの二つで解決できる程度の光量であれば、とっくに何か起こっているだろう。つまり二人は更に強い光源が必要となる。それをわかった上で、カイムはシロナの言葉に頷いた。

 

「トゲキッスのマジカルシャイン」

「…なるほど。確かに光量としてはかなりのものね。でもマジカルシャインでいいのかしら」

「さてな。でもホエルオーとジーランスの時みたいに特に指定されていない以上、光量が足りれば何でもいいんじゃねえか?」

「それもそうね。じゃ、やってみましょ。トゲキッス、マジカルシャイン」

 

 ランタンをトゲキッスから預かると、トゲキッスは全方位に向けてフェアリータイプの光を放った。全方位ということで当然シロナ達にも余波が及ぶが、それはブラッキーが『まもる』で防いだため被害はない。

 そしてトゲキッスの光が放出されると、先程まで古代文字が書かれていただけの石板に異変が起こる。中央部の岩が崩れ、人が進めるくらいの道が現れたのだ。

 

「…………」

「……現れたわね」

「……そうだな。いいことなんだが、それでいいのかって思っちまうな」

 

 正直、ダメ元程度のノリで『マジカルシャイン』を頼んだ。しかしまさかこれで道が開けるとは思いもしなかったため、二人とも『これでいいのか』と思ってしまう。

 だがそれはそれとして、道が開けたこと自体は喜ばしいこと。進む以外の選択肢はない。

 

「何にしても、進む以外に選択肢はないわ。行きましょう」

「ああ」

 

 カイムは夜目の効くブラッキーを出し、懐中電灯を用いて奥へと進んだ。道の先は階段になっており、螺旋階段状になっていた。天井は比較的低く、カイムもシロナも若干屈まないと、頭が天井についてしまいそうなほどの大きさだった。

 そしてしばらく降りると、鋼の扉が現れる。扉には古代文字のような模様が彫られているが、カイムが読み解いた古代文字のどれとも当てはまらない。

 

「…この模様……もしかして、レジスチルの目?」

「発見されたレジスチルの目は確かにこんな目ぇしてたな。つまり、この先にいるのはレジスチルか。予想はしていたが…いよいよ現実味を帯びてきたな」

 

 おふれの石室で起こった異変。それはルカリオとキリキザンがトリガーとなって起こったものだった。加えて足元の鋼を示す模様。このことから、二人はこの異変で明らかになるのは、レジスチル関連の何かではないかと考えた。そしてその予想が正しかったと、二人は目の前の模様を見て確信した。

 

「…準備はいい?」

「ああ。行こう」

 

 そう言ってカイムは鋼の扉に手をかけ、力一杯押した。扉の先に灯はない。ないはずなのだが、部屋全体が見渡せるほど明るい。

 

 そして部屋の中央部には、無機質な鋼の塊が鎮座していた。

 

「レジ、スチル」

 

 鎮座している鋼の塊は、レジスチルだった。カイムの言葉に反応したのか、レジスチルは目を光らせ、立ち上がった。

 

「…ブラッキー、影を広げろ」

 

 カイムの指示に従い、ブラッキーは波導を広げる。もし敵意や悪意が相手にあれば、ブラッキーの影によって感知することができる。感知することができれば身構えることもできるし、何より迎撃にしろ逃亡にしろ対応が早く動ける。

 最低限警戒していたが、レジスチルは動かない。ただこちらをじっと見つめるだけで、動く気配は一向にしなかった。

 

「…動かないわね」

「ブラッキーもレジスチルの敵意は感知できないらしい」

 

 ブラッキーは一切レジスチルに対して警戒心を見せない。つまり、レジスチルはこちらに害意はないということなのだろう。そう判断した二人は僅かに警戒しながらもレジスチルに歩み寄り、その巨体を見上げた。

 

 

じ・じ・ぜ・じ・ぞ

 

 

 唸り声にも似た音をレジスチルは響かせる。その音にどんな意味があるのかわからない二人は咄嗟に警戒体勢を取るが、そんな二人に対してブラッキーは耳をぴこぴこと動かすと、レジスチルの巨体に近寄った。レジスチルは足元に来たブラッキーを見つめると、すっと腕をブラッキーに差し出した。ブラッキーはその手を伝ってレジスチルの身体に登り、頭の上にちょこんと座り込んだ。

 

「…ブラッキー、大丈夫なのか?」

 

 カイムの問いかけにブラッキーは楽しそうに頷く。ブラッキーがここまでの態度を見せるということは、大丈夫なのだろうと二人は警戒心を解いた。

 

「…まあ、とりあえずいいか」

「そうね。レジスチルに敵意は無さそうだし、それでいいことにしましょ」

 

 そう会話をしていると、レジスチルが二人に目を向けてきた。無機質な目を向けられ、カイムは思わずドキッとしてしまう。

 

(こうしてみると、ちょいと怖えなさすがに。ゼクロム以上に生物味がねえ。でも、見た目だけで封印しなきゃならんほどではねえな)

 

 レジスチルは実際目の当たりにしても、やはり生物らしさが全くない。ブラッキーが警戒していないどころか楽しそうにしているのもあり、こちらも警戒心を解いているが、ブラッキーがいなければ警戒心を完全に解くことは出来なかっただろう。

 

「さて…こうして出会えたはいいが…こっからどうするか」

「そうね。レジスチル本人は多分色々知っているんでしょうし、もしかしたら教えてもらえるのかもしれないけど…そもそも意思疎通できるのかしら」

 

 おふれの石室を作った古代人と目の前のレジスチル。関連性は言うまでもないだろう。しかし、そもそもレジスチルがその記録を残しているのか、そして残していたとしてそれを伝える方法があるのか、伝える方法があったとして、伝える気があるのかが不明だった。

 

「……レジスチル。こっちの言葉、わかるか?」

 

 カイムの言葉にレジスチルは目を光らせる。どうやらこちらの言葉は通じていることを確認したカイムは目を僅かに輝かせた。

 

「すげえ…言葉が通じてるぞ」

「かつて古代人達と暮らしていたことを考えたら自然ではあるけど、それでもこうして意思疎通できるのは感慨深いわね」

 

 ブラッキーを頭に乗せたまま無機質な目をこちらに向けてくるレジスチルだが、言葉は通じているらしい。しかし、向こうがどういった意思を持っているのかはわからない。

 

「…しかし、何か聞いてもレジスチルの言葉わかんねえしな…」

「そうね…どうしようかしら」

 

 どうするかを二人して頭を悩ませていると、レジスチルの頭の上にいるブラッキーがレジスチルに何か言いながら頭をぺちぺちと叩く。するとレジスチルは目を光らせると、空中に文字を映し出した。

 

『我を目覚めさせたのは、汝らか』

「!」

 

 突然空中に浮かび上がった文字を見て、二人は驚愕して目を見開く。まさかこんな形で意思疎通が図れるとは思わなかったため、思わず硬直してしまうが、すぐに立ち直りレジスチルの問いかけに答えた。

 

「ああ。俺たちがお前を目覚めさせた」

『何故』

「何故って聞かれると…ちょっと困るな」

「正直、目覚めさせたこと自体は事故に近いものね…」

 

 二人はおふれの石室を調査していたが、レジスチルを目覚めさせるつもりはなかった。それ故に『何故』と聞かれると返答に困ってしまう。

 だがここで下手な嘘は不誠実。そのため嘘偽りなく答えることをカイムは選んだ。

 

「俺たちは、かつてお前と過ごしていた人たちの歴史を調べているんだ。その過程で偶然お前のことを目覚めさせただけで、何か目的があって目覚めさせたわけではない」

『把握』

「それでレジスチル。もし貴方さえ良ければ、なんだけど…貴方が共に過ごしていたという人たちのこと、教えてくれない?」

 

 このレジスチルが古代人と過ごした個体なのは、間違いないだろう。そしてそうだとしたら、レジスチルは古代人の生活について把握していることになる。もしそうだとしたら、レジスチルから古代人達について聞くことができるのではないか。そう考えたのだ。

 無論レジスチルが拒否したらそれまで。そのためレジスチル次第なのだが、レジスチルはあまりにも無機質であるため出方がわからない。どうなるかと内心ハラハラしていたが、レジスチルは文字を空中に映し出した。

 

『承諾』

「…え、いいの?」

『拒否する理由はない』

「そ、そう。なら、早速聞かせてもらうわ。ほら、カイム」

「あ、ああ。悪いが、頼む」

 

 その後、カイムはレジスチルに様々なことを聞いた。古代人達の生活模様、主食、街の形態や組織構造。さらには古代人達が用いていた技術についても教えてもらった。

 

「…つまり、古代人達は岩で街を創り、氷で食料を保存して、鋼で岩と氷でできないことを補っていた、と。それに、鋼は電気を制御するのにも使ってたのか」

「その電気って、もしかしてレジエレキのこと?」

『肯定』

「そうか…やはり、レジポケモンは人に技術の発展を齎していたんだな。ん、それじゃあレジドラゴは?」

『龍の力は強大。人が制御し切るには困難故に、戦場のみで使われていた』

「なるほど…確かに、人の生活においてドラゴンの力は不要。そうなると、戦うための力として扱われることになるのね」

 

 カイムとシロナがレジスチルに質問し、レジスチルがそれに答えるというやり取りがしばらく続けられた。その間の映像記録も全て保存しつつ、メモを取り進めていくうちに、古代人達の生活模様とレジポケモンの関わりはかなり明らかになった。

 

「古代人の生活…かなり高度な水準だったようね」

「まさか電気まで扱う技術があったとはな。古代シンオウ人でも電気まで使ってた記録ねえだろ?」

「そうね…今のところ、ここまで古い文明において電気を使っていたのは、多分彼らだけでしょうね」

「龍の力で外敵を倒し、大地を構成する岩、氷、鋼を使って街を創り、そして電気で生活を豊かにする…この年代としては、多分最高峰レベルの文明だ」

「…でも、彼らは滅びた。記録もほとんど残らないくらいに」

 

 これほどまで高い文明を持っていながらも、古代人達の記録はほとんど残っていない。つまり、彼らの記録はここに至るまでの間に埋もれてしまった…いや、消されてしまった(・・・・・・・・)のではないかと考えられるほどまで残っていない。

 おふれの石室に、『外敵』の存在が記されていた。つまり、この高度な文明に対しても敵対勢力があったということ。それが何なのかはわからないが、ここまでの文明を持つ集団相手に敵対する勢力とは何だったのかまでは記されていない。

 

「…じゃあ、聞くしかねえよな」

 

 なら、目の前にいるレジスチルに聞くしかないだろう。今のところ、二人の問いには完全に答えてくれている。たまたま答えられない内容が無かっただけなのかもしれないが、この問いにも答えてくれるのではないか、という期待を込めて、シロナはレジスチルに問いかけた。

 

「レジスチル…貴方と過ごした人々と、敵対していた勢力について聞いてもいいかしら」

 

 シロナのレジスチルは目を光らせ、シロナ達の目の前に文字を映し出した。

 

『承諾。我々と敵対していた勢力は、アルセウスを筆頭とした神話上世界を創造した者達』

「……やはり、お前らはアルセウスと敵対していたのか」

 

 カイムが初めて書いた論文…『アルセウスとレジポケモンの対立関係について』という論文に記した内容。そこにはプレートの記述とキッサキ神殿の立地などを参考に、二つの勢力が対立していたことを書いた論文だった。

 そしてカイムの論文で記した通り、アルセウスとレジポケモンは対立していたと、レジスチルは告げた。ここまでは予想していたことだが、最も重要となる『何故対立していたか』について聞くことができる。そう考えたカイムは、自身の鼓動が速くなるのを感じた。

 

『我らは、王と共に彼らに立ち向かい、そして敗れた。その時、《王》はアルセウスに力を奪われ、今もなお眠り続けている』

(…プレートの記述と同じ。つまり、レジポケモン達は敗れ、力をプレートという形で奪われたのね)

(眠り続けているってのは…キッサキ神殿のあいつのことか。確かにあれは眠っているだけで、生きていた。敗れた後、キッサキ神殿で眠りについたのか、それとも封印されたのか…どちらにしても、レジスチルが言ってる《王》ってのは、レジギガスのことでまず間違いないだろう)

 

 以前シロナと共にキッサキ神殿を訪れた際、最下層で巨大なポケモンの石像を見た。それはレジギガスであり、今もなお眠り続けているレジポケモンの王たる存在だった。レジスチルの言う王が眠り続けている、という言葉から、カイムはレジスチルと共に戦った王が、あのキッサキ神殿のレジギガスであることは間違いないだろうと判断した。

 

『我々は敗れ、王は眠りについた。そしてその後、共に過ごした人々は我々を封印した』

 

 レジスチルの言葉を見たカイムは違和感を覚え、レジスチルに問いかける。

 

「…ん?待ってくれ。お前らは負けたんだろ?でも、お前らを封印したのは…古代人達なのか?」

『肯定。力を奪われたのは王のみ。我々は人の手によって封印された』

「確かにおふれの石室にもそんな記述があった。でも、おふれの石室にはお前たちの力で外敵を退けたって記述とある。これは、どういうことだ?」

『我々はアルセウスに敗れ、王は眠りについた。王の力を奪ったアルセウスは我々に手を下すことなく、そのまま姿を消した。我々は残された民と共に過ごし、そして最後はその民達の手で封印された』

「…つまり、アルセウスとレジギガスが対立し、アルセウスが勝った。アルセウスはレジギガスの力を奪い、レジギガスは眠りについた。そして残されたレジスチル達と古代人達が共に過ごし、最後は古代人達の手で封印された、ということね」

『肯定』

「レジスチル達と古代人は、レジギガスとアルセウスの対立後につるむようになったってことか」

 

 かつて大地を支配していたレジギガス達。だが何らかの理由でアルセウスはレジギガス達と対立した。そして戦いの末、レジギガス達は敗れ、見せしめのためかレジギガスの力は奪われた。そしてレジギガスの力を奪ったアルセウスは姿を消し、残されたレジスチル達と人々が共に過ごすようになった、ということなのだろうとカイムは理解した。

 

「そうか…レジギガスとアルセウスが対立してたのは、レジスチル達が古代人とつるむよりもさらに昔ってことか」

「プレートにそのことが書かれているということは、その対立の様子を当時の人々が見ていたということかしらね」

「多分な。その時の様子を見て、アルセウスを中心とするシンオウ神話ができたのかもしれん」

「可能性はあるわね」

 

 アルセウスと対立した、ということは、アルセウス側にアルセウスが生み出した神々…ディアルガ、パルキア、ギラティナがいたとしてもおかしくない。その際に、ディアルガの『時の咆哮』、パルキアの『亜空切断』、ギラティナの『シャドーダイブ』を見て、信仰するようになったと考えても違和感はないだろう。とはいえ、アルセウスに冠することはレジスチルも記録していないらしく、あくまで予想でしかないが。

 

『王が眠りにつき、残された我々は人々と共に過ごした。人々は我々の力を《技術》という形で使い、発展を続けてきた。時に、アルセウスを信仰した者達と対立することもあった。しかし、我々と共に過ごした人々の文明は長く続いた』

「おふれの石室を作った人たちのことだな」

「そうね。石碑の記述と一致するわ」

 

 古代人はレジポケモンから恵み…技術を授かったと記していたが、実際はレジポケモン達の力を扱うための技術を始めから持っていた、または開発したという。若干想定していたニュアンスとは異なったが、概ねおふれの石室の記録から考えていた流れの通りだった。

 

『そして我々は封印された。彼らの手で』

「…そうか、お前らは最後…古代人の手で封印されたんだったな」

『肯定』

「どうして彼らは貴方達を封印したの?」

『彼らは我々の持つ力の矛先が自身らに向くことを恐れた。例え我々にその意図が無くとも、彼らは我々を信じきることが出来なかった。それ故に、封印という手段をとった」

(おふれの石室の懺悔通りだな)

 

 レジスチルとおふれの石室の記録内容は今のところほほ100%一致している。レジスチルがこの場で言ったことは全て事実なのだろうとカイムは判断し、ノートにペンを走らせていく。

 

『そして今に至るまでの長き時、我は眠りについていた。我が知る古代人(彼ら)についてはこれが全てだ』

「…ありがとう、レジスチル。とても貴重な記録になったわ」

「ありがとう」

『問題ない』

 

 今もなおブラッキーを頭に乗せたまま、レジスチルは答える。気づけばブラッキーの隣にはムクホークとシロナのトリトドンまでいる。知らぬ間にボールから出てきていたポケモン達がレジスチルの体に群がり、ちょっかいかけたりしているが、レジスチルは気にする様子もなく出会った時と変わらない無機質なままだった。

 おもちゃのように群がられてなお、変わらない態度を見せるレジスチルを見て、カイムは一つ疑問を覚える。そしてその疑問をレジスチルにぶつけた。

 

「レジスチル。お前、散々恵みを与えてきた古代人達にその…裏切られる形で封印されたんだよな」

『肯定』

「なら…お前は、人を恨んでいないのか?」

 

 様々な形で古代人達に尽くしてきたというのに、最後は『怖かった』などという利己的な理由で封印された。その扱いだけを見れば、レジスチルが人間を恨んでいたとしてもおかしくはない。そう考えたが故の疑問だった。

 だがレジスチルの答えはカイムの予想とは違った。

 

『否定。我々は、彼らから多くの記録を得た。そして最後は封印されるであろうことも予測していた。恨む理由は無い』

「…え?」

「封印されるのを、わかっていたの?」

『肯定。我々の力を使い、文明が発達した。文明が発達すれば、我々の力を必要としなくとも豊かな暮らしができる。その末に我々の力が必要無くなり、彼らと袂を分つことになることは予測していた。我々のように強大な力を持つ存在は、弱き者達と共に歩み続けることはできない。それは生命として、文明としての進化を止める可能性があるからだ。どのような形であれ、彼らと我々はいつかこうなるとわかっていた』

 

 レジギガスをはじめとするレジポケモン達は、強大な力を持つ存在。それ故に文明を急速に発展させる手助けをすることも可能だが、いつまでもレジポケモン達に頼らなければならない文明など、脆弱と言うほかない。だからレジスチル達は追放であれ封印であれ、いつか自分達が古代人達と袂を分つことになるとわかっていた。

 

『我々にも意思がある。だが、彼らが我々にした封印は必然であり、そうなるとわかった上で我々は彼らと共に文明を築いた。恨む理由はない』

「どうして、古代人達の文明を発展させることに協力したんだ?」

『彼らは人だけでなく、ポケモン達と共に生きる民族だった。人だけの力でなく、ポケモン達と協力することで生きる彼らの持つエネルギーに文明としての可能性を感じた』

「古代人達は、ポケモン達と生きる民族だったのね」

 

 シンオウ地方のかつての名前、ヒスイ地方の時代は、『ポケモンは怖い生き物』として扱われていた。人とポケモンが互いのことを知らなかったが故の見識であり、決して不自然なことではない。ポケモンの持つ強大な力は人を傷つけることなど簡単にできることだ。そう思われていたとしても仕方ないことだ。

 だがレジスチルは古代人達はポケモンと共に生きる民族だと言った。ポケモンと共に生きることで、人だけでは生み出すことのできない大きなエネルギーを持った民族であった彼らに、レジスチル達は可能性を感じた。加えて、彼らからレジスチル達に接触を図ってきたという。大地を司り、構成するエネルギーから生まれたレジスチル達からしたら、レジスチル達の住む大地に根を下ろし、友好的な態度を見せてくる古代人の文明に可能性を感じるのもわからない話ではない。

 

『文明の発達が必ずしも大地にとって良いことばかりではない。だが、生命の発達に最も重要な鍵になるのが文明だと、我々は判断した』

「…そうか」

「じゃあ…今ある文明は古代人の文明がルーツになるの?」

『否定。彼らの文明は滅ぼされている(・・・・・・・)

「滅ぼされて?」

「…古代シンオウ人?」

『不明』

 

 レジスチル達と共に文明を築き上げた古代人達は、レジスチル達が封印された後に滅ぼされている。滅びた時、既にレジスチル達は封印されているため、何によって滅ぼされたのかはわからない。古代シンオウ人によって滅ぼされた可能性はあるが、ホウエン地方とシンオウ地方でかなり距離がある。信仰対象のアルセウスとかつて争っていたとはいえ、わざわざこんな遠くまで滅ぼしに来るとは思い難い。

 

「滅びる要因は、何も外敵だけじゃねえ。集団ヒステリーでレジスチル達を封印するような事件があったわけだし、内戦で滅びた可能性もあるだろ」

「確かに…もしかしたら、内戦で国がめちゃくちゃになり、そこから逃れた人たちが世界中に遺跡を残し、ホウエン地方に残った人達が最後におふれの石室を残したって線もありそうね」

「まあこればかりは想像の域をでねえがな」

 

 レジスチルが封印された後の話であるため、最終的に古代人達の文明が滅びた理由については推測することしかできない。しかしレジスチルが『滅ぼされている』と断言する以上、何かしらレジスチルにも思うところがあるのかもしれないとシロナは考えた。

 

「でも滅ぼされたって断言する以上、何かレジスチルはそれについて知っているのよね」

『肯定。彼らは栄えた文明故に、一枚岩では無かった。また、彼らを敵視する国もあった。我々が封印される前は、我々と意思疎通を図っていた王が彼らを治めていた。しかし王が病に倒れ、我々が封印されたとなると、彼らの文明がその後分裂、または外敵からの侵攻があったことは想像に難くない』

「…なるほど、内戦の要因も侵攻の要因も当時からあったってわけだ」

『肯定』

 

 国が大きくなり、豊かになるほどそれを面白く思わない国も出てくる。加えて、内部にも派閥ができ、国は一枚岩ではなくなる。あまりにも人間らしい要因だと言えるだろう。

 

(国同士の対立の理由は何であれ、文明という『形』ができた以上、いつか滅びるのもまた必然。古代人については概ね知ることができたわね)

 

 古代人達の発祥、文化、生活模様、そしてレジスチル達を封印した理由と文明の最後…これらはおふれの石室を調べただけでは到底知り得ない情報だ。レジスチルを目覚めさせたのは偶然とはいえ、こうしてかつて存在した文明の記録を知ることができたのは非常に貴重な経験だと言えるだろう。

 だがそれと同時に、シロナは何かが引っかかる感覚を覚えた。何か根本的なものをわすれている。そんな感覚だ。

 

(……国同士の対立。その理由は、多分豊かな資源と生活…そして技術力が関係している。あとは当時の統治者の方針。他に私たちが聞かなければならないことは…?)

 

 シロナは思考を巡らせるが、即座に答えが出てこない。そんなシロナを横目に、カイムはさらにレジスチルに問いを投げかけた。

 

「レジスチル。お前たちはいつから存在するんだ?」

 

 とても大雑把で、不明瞭な問い。しかしかつて古代人や古代シンオウ人達と関わりのあった以上、それよりさらに昔から存在していたことになる。具体的な数値はもらえないだろうが、なんとなくの形でも答えをもらえないかとダメ元で投げかけた問いだった。

 そんなカイムの問いにレジスチルはさらに言葉を映し出す。

 

『正確な数値は不明。ただ、王の記録によると、王はこの大地に根付いた最初の生命体とある』

「大地に根付いた…最初の生命体?」

『これから伝えるのは王の記録。故に、我も映像としての記録を持ち合わせないものだと理解した上で聞くことを願う』

 

 そしてレジスチルは王…レジギガスの記録を語り始めた。

 

『かの神…アルセウスは無の中から生まれ、時、空間、反物質を確立させた。時と空間が相互に絡み合い、反物質が二つを支えた。それにより、世界という概念が誕生した』

(これは…シンオウ神話にある創世の神話!)

 

 シロナが研究するシンオウ神話。その神話の中に記録されていた内容と全く同じ内容がレジスチルから語られた。やはりシンオウ神話とレジポケモン達には何か大きな関わりがある。それを決定付ける言葉でもあることに、シロナは心が熱くなる思いに駆られた。

 

『そして世界が生まれた時、様々なエネルギーが発生した。そのエネルギーは様々な形で影響を与え合い、いつしか空、海、大地が生まれた。そして我々の王は、最初に誕生した大地に芽生えた最初の生命体だった』

「レジギガスが、最初の生命体…!」

 

 この事実に、カイムだけでなくシロナも驚愕を隠せなかった。なにしろ現代の通説では、全てのポケモンの祖先はミュウだと考えられていたからだ。どのポケモンの遺伝子も、限界まで遡ればミュウに辿り着くとされ、事実ミュウの化石の遺伝子は無数のポケモンの遺伝子が合致するものとなっていたらしい。

 だが違った。レジスチルは真の意味で最初のポケモンはミュウではなく、レジギガスである。そう語ったのだ。もしこれをポケモン生物学者達が聞いたら発狂してもおかしくない。そんな二人の驚愕を他所に、レジスチルはさらに語る。

 

『王は、世界が生まれる時に生じたエネルギーが作用しあった結果生まれた。そのため、あらゆる種類のエネルギーを持っていた』

(あらゆる種類のエネルギー…全タイプのエネルギーを、レジギガスは持っていたのか)

 

 レジギガスの持つタイプが何かはわからない。しかし、もしかしたら全てのタイプを持つポケモンだったのかもしれないとカイムは考えた。

 

『そして王は、エネルギーを使い我々を生み出した。我々は、大地を司る存在となった。この時、まだ我々以外の生命は存在しなかったが、我々が大地を広げるうちに少しづつ生命が増えていった』

「貴方達が大地を広げていったのね。その過程で様々な生命が増えてきたと」

『肯定。だが我々は異質だった。アルセウスと対立し、そして敗れた』

「…なるほど、そこに繋がるのか」

 

 アルセウスが宇宙を、アルセウスから生まれた三体が世界を、そしてレジギガス達が大地を作り上げた。そして最後、アルセウスと対立して敗れ、レジギガスは眠りについた。これがレジポケモン達とアルセウスの関係だとカイムは納得した。

 だがこのレジスチルの言葉を見たシロナはハッとする。これこそがシロナの違和感の正体だと実感したシロナは、レジスチルに疑問をぶつけた。

 

「レジスチル。もう一つ聞かせて」

『何だ』

「貴方達が《アルセウスと対立した理由は何?》」

「!」

 

 シロナの言葉にカイムは目を見開く。事前知識のせいでスルーしていたが、アルセウスとレジギガスが『何故』対立していたのか。それを二人は知らない。プレートにも『プレートの力はレジポケモン達から奪ったもの』としか記されていないため、何故アルセウスとレジギガス達が対立していたのかを詳細に示すものがない。

 

「しまった…確かにその理由、俺たちは知らないな」

「ええ。どちらが仕掛けたにしろ、対立には必ず理由があるはず。私たちは事前にアルセウスとレジギガスが対立していたことを知っていたから疑問に思わなかったけど、よく考えたらそれについて誰も語ってないのよ」

「確かに…ああ、どっかで一度疑問に思ってたはずだが、すっかり忘れてたな」

「私も。だからレジスチル、対立の理由を教えてくれないかしら」

『承知』

 

 レジスチルは、アルセウスと戦った光景を思い出しながら言葉を浮かび上がらせる。

 

『結論から言うと、我々が異質だったからだ』

「異質…さっきも言ってたよな。どういう意味なんだ?」

『我々は、生命として(・・・・・)異質。あらゆる存在は生命であろうと無かろうと、いつかは滅びる。大地、海、空…星ですら、いずれ訪れる滅びを避けることはできない』

 

 形あるものは、いつか滅びる。それら自然の摂理であり、何であれ覆すことのできない事実。それはシロナ達も理解している。かつて積み上げてこられた時間を知る…それこそが考古学を学ぶ醍醐味の一つだと理解しており、そしていつか自分達もその過ぎ去りし時になることも理解していた。

 

『だが、我々は永遠。故に、アルセウスと対立した』

「…ちょっと待って。永遠っていうのは、もしかして長い時間の比喩じゃなくて…」

『真の意味での永遠。例えこの星が朽ち果てようとも、我々は消えない。時と空間の果て…真の意味で全てが終わるその時まで、我々は消えることはない』

「……そうか。永遠のポケモン」

 

 おふれの石室には、レジポケモンのことを『永遠のポケモン』と言っていた。それを見た当初、カイムだけでなくシロナも長い時間を生きるポケモンの比喩表現だと考えていた。

 しかし、そうではなかった。レジスチル…いや、レジポケモン達は真の意味で永遠の存在。たとえ星が朽ち果てようとも、この時間と空間が果てるまで存在が消えることはない存在だという。

 

『我々は不滅。倒れることはあれど、滅びることはない』

「でも、それとアルセウスとの対立に何の関係があるの?」

 

 シロナはその不滅であるということとアルセウスとの対立…そこに何の因果関係があるのかわからなかった。不滅であることが世界の維持に何かしら不都合を齎すとも考えづらい。しかしレジスチルがここでレジポケモンが不滅であることを言ったということは、何か意味があるはず。そう考え、レジスチルに更なる問いを投げかけた。

 レジスチルはシロナの問いに対して、文字を更に浮かび上がらせる。その内容は、シロナですら予想できないものだった。

 

『不滅であったから、対立した』

「…え?」

『形あるものは、時には逆らえない。いつか必ず滅びる。それが世界の摂理。しかし我々は世界の(・・・)摂理から外れた存在(・・・・・・・・・)だった。故に、アルセウスは我々を滅ぼそうとした』

「は?いや、ちょっと待ってくれ。世界の摂理から外れた存在…?」

『言ったはずだ。我々はどれほどの時が流れようと、星が朽ち果てようと消えない。つまり、アルセウスが創り上げた世界の摂理から外れた想定外の存在。故に、アルセウスは我々を消そうとした』

「不滅であるだけで、アルセウスはレジポケモンを消そうとしたの?」

 

 確かに不滅であるということは、自然の摂理から外れた存在だといえる。しかしそれだけでわざわざ消さなければならないほどの存在なのかと言われると、シロナはわからなかった。現にこうしてレジスチルは存在しているわけであり、世界の各地で度々レジポケモンは確認されている。消さなければならないほどのものとは思いづらい。

 

『肯定。我々は不滅であるが故に、強大で無限のエネルギーを持ち合わせる。故に、力の使い方を誤れば世界そのものを滅ぼしかねない』

「世界を滅ぼすほどのエネルギー…!」

「確かにそんなもの持つ奴らがいたらやばいが…でもそれって、お前らが大人しくしてりゃ問題ないんだろ?」

『肯定。しかし、我々が意図せずその力を暴発させた場合を考えると、アルセウスの判断は筋が通っている。我々はアルセウスのように独自の空間を持つ存在ではなく、大地に根付いた存在。故に、力の使い方を誤った時、皺寄せを受けるのはこの星。万が一を考えれば、消そうとしてもおかしくはない。それが意図せず生まれたものであれば尚更だ』

 

 カイムだけでなく、シロナですら『無限のエネルギー』がどれほどのものなのかを想像できない。ただ、膨大なエネルギーを持ち、それが世界を滅ぼすほどのものであった場合、その存在が自分の作った世界に現れたとなると警戒して然るべきなのかもしれない。しかもそれが意図して生まれたものではなく、イレギュラーな形で生まれたものであれば尚更だ。

 

『我々の意図がどうであれ、時と空間という自然の摂理に従うことなく、無限のエネルギーを持つ存在である以上、アルセウスとの対立は避けられなかった。とはいえ、王も生まれ、我々を創り上げた以上、意志がある。アルセウスと戦うことを選んだ』

(無限のエネルギーを持つ以上、こいつらがタイプエネルギーを司る概念に近い存在なのは間違っていない。だが概念に近かろうと、永遠に滅びることがなかろうとこいつらはれっきとした《生命》。意思があるのも当たり前か)

 

 たとえ概念に近い存在であっても、レジポケモン達も生命。故に、意思があり、そのままアルセウスの迫害を受け入れる理由にはならない。生まれた以上、そのまま世界に存在する権利があると言ってもいいのだろう。

 

『そして結果、我々は敗れた。しかし、全てを創り上げたアルセウスですら、世界を創り上げるのに力を使った状態では我々を完全に消し去ることはできなかった。そこでアルセウスは我々を封印することにした。王の力を奪われ、王は眠りについた。我々は王が眠りについたことで一時的に機能を停止したが、王同様無限のエネルギーを持つ我々はそう長い時間停止することはなく、再び活動を再開した。そして人々と会合した』

「そうか…そこで古代人と出会うんだな」

「彼らにもたらした恵みっていうのは、レジスチル達の持つ無限のタイプエネルギーを使っていたのね」

『肯定』

「…流れが見えてきたな」

 

 簡易的であるため、おおまかな内容ではあるが、全体的な流れは見えた。とはいえ、あまりにも衝撃的で予想していなかった内容であるため、頭に入り切っていない部分がある。少し整理する時間が必要だとカイムは判断した。

 

「全体的にはわかった。まだ聞きたいことはあるが、かなりの時間ここにいる。一旦引き上げよう」

「そうね。レジスチル、目覚めたばかりなのにごめんなさい。とても助かったわ。ありがとう」

『我は不滅。時に縛られることはない』

「そういうことじゃねえんだが…まあ、何にしても助かった。礼を言う」

『感謝を受領。外部の日はすでに沈んでいる。推奨、早急な帰還』

「うえっ⁈そんな時間かもう」

 

 腕時計で時間を確認すると、既に日没の時間を過ぎており、ここに到着した時間を考慮すると、相当長い時間ここにいたことになる。まさかここまでの時間を過ごしているとは思わなかったカイムは、驚愕の声を上げた。

 

「どーりで、レジスチルの頭の上でムクホークが爆睡してるわけだ」

 

 話に熱中している間に、レジスチルの頭の上ではブラッキーを始めとし、トリトドンやムクホークが眠りについていた。話をしている間、レジスチルはほとんど微動だにしなかった。硬い体ではあるが、なんとなく居心地が良かったのかポケモン達はぐっすり眠っていた。

 

「熱中しちゃったわね。そろそろ戻りましょ」

「ああ。またな、レジスチル」

『また来るといい』

 

 そう言って二人はポケモン達をボールに戻し、レジスチルの部屋から出ていった。

 外に出ると、日は完全に落ちていた。そしてレジスチルの部屋は電波が届かなかったためか、一斉にスマートフォン通知が届く。その中にはタキからのものもあり、何時頃に戻るのかを聞くメッセージがあった。

 

「やっべ…母さんからメッセ来てた」

「心配かけちゃったわね。早めに戻りましょ」

「そうだな」

 

 そう言ってカイムはムクホークをボールから出す。レジスチルの頭の上で眠っていたため、まだ眠気が残っているのか、目をしぱしぱさせている。そんな様子のムクホークに苦笑しつつ、ムクホークに乗ろうとした瞬間、カイムのスマートフォンが振動した。

 

「ん…すまんシロナ。ちと待ってくれ」

「大丈夫よ」

「悪い」

 

 カイムはシロナの了承を得ると、スマートフォンを取り出し画面を見る。そしてそこに記された名前を見て、眉を顰めた。

 

「ダイゴ?」

 

 確かスマートフォンの通知の中に、ダイゴの名前はあった。しかしわざわざ繰り返しかけてくるとなると、それなりに急ぎの用事なのだろう。そう考えたカイムは、すぐさま通話を繋いだ。

 

「もしもし?」

『あ、出た!ごめんカイム、今大丈夫?』

「大丈夫だ。こっちこそさっき出れなくて悪い。電波ないとこにいてな」

『いやいや。忙しい中かけてごめんよ』

「ん。そんで?どうしたんだ」

『話が早くて助かるよ。実は、キミに頼みたいことがあるんだ』

 

 ダイゴは、今カイムがホウエン地方に戻ってきていることを知っている。だが同時に戻ってきた理由も把握しているため、用もなく電話をかけてくるとは思わなかったが、やはり何かあるらしい。

 

「頼み事?何だ」

『うん。キミに、調べてほしいことがあるんだ』

 

 カイムの情報収集能力は、常軌を逸したもの。短時間で、正確性の高い情報を非常に多く集めることができる。その情報から結論を導き出す能力が欠けていたため若干宝の持ち腐れになっていたが、シロナに鍛えられたことでこの情報収集能力は非常に強力なものになっている。

 ダイゴもそれをよく把握していた。昔から調べ物だけは誰よりも優れていたカイムのことを知っているからこそ、今回調べ物をカイムに依頼することにした。

 

「調べ物?構わんが…何についてだ?」

『流星の民について、調べてほしいんだ』

「流星の民?なんでそんなもんを…」

『この前の異常気象と、少し関わりがあるみたいでね。ただ彼らはあまり俗世と関わりがない。だから些細なことでも情報がほしいんだ』

 

 ダイゴの声音は少し硬い。理由はわからないが、何かしら切羽詰まる理由があるのだろうとカイムは判断した。

 

「…わかった。とりあえず流星の民の伝承、来歴、在籍人物リスト、くらいは調べておく」

『え、そんなに?正直、伝承くらいで十分だったんだけど…』

「調べるだけだろ?今日明日でやっつけて、明日にでもまとめて送ってやる」

『で、でも…キミの仕事もあるんだろう?そんな無理しなくても…』

「別に調べるだけなら大したことねえよ。それに、そんな切羽詰まる声してる奴が遠慮してんじゃねえ」

『あー…わかる?』

 

 普段の口調と比較して、どこか硬く焦ったような声音。普段の余裕のある声を知っている身からすれば、かなりの違いがあることがわかる。親友であるカイムなら尚更だ。

 

「とりあえず、流星の民について調べておく。データは…お前のタブレットでいいか?」

『助かるよ。ありがとう』

「んじゃ、調べ次第送る」

『うん、またね』

 

 そうしてカイムはスマートフォンを切った。何があったのかはわからないが、とりあえず調べるか程度の軽い気持ちでカイムはシロナに向き直る。

 

「悪い、待たせた」

「いいのよ。ダイゴ君…よね?」

「ああ。ちと、調べ物を頼まれてな」

「あら、得意分野じゃない。何について?」

「流星の民。ホウエンに古くから住む民族でな」

「民族?何でダイゴ君がその人たちについて知りたいの?」

 

 チャンピオンであり、デボンコーポレーションの御曹司であるダイゴが何故、古くから住む民族のことを知りたいのか。少なくともシロナにはその理由を見出すことができない。

 とはいえ、急ぎの用事であることもあり、カイムも詳細には知らない。故に、説明することはできない。そもそもカイムも衝撃的真実の連続でかなり疲労が蓄積している。聞く余裕はなかった。

 

「さてな。まああいつのことだ。悪用はせん。んなことより、早く帰ろう。情報を整理したいし、何より疲れた」

「そこは心配してないわよ。でも、そうね…今日はちょっと疲れたし、帰りましょうか。タキさんが心配してるわ」

「だな。腹も減ったし、帰ろう」

 

 そうして、シロナとカイムはそれぞれのポケモンに乗ってカイムの実家へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 カイムの実家に戻り、食事を済ませ、シロナは入浴を済ませた。風呂から上がると、カイムはソファに横になり、頭の上でブラッキーが丸くなっていた。だが呼吸の妨げにはならないように、口と鼻は塞がないようにしているあたり、時々この体勢で寝ていたのかもしれない。

 

「疲れちゃったのね」

 

 横になり静かな寝息を立てるカイムの頭を優しく撫でる。その感触で起きたブラッキーが目を覚まし、あくびをしながらカイムの頭からどいてシロナの膝に移った。

 

「ふふ」

「あらシロナちゃん。もう上がったの〜?」

 

 そこにタキがマグカップを持って歩み寄ってくる。

 

「はい。お風呂、ありがとうございました」

「いいのよ〜。はい、ほうじ茶よ〜」

「あ、ありがとうございます。いただきます」

 

 タキからマグカップを受け取り、ほうじ茶を口にする。ほっとする味にシロナはなんとなく故郷のカンナギタウンを思い出した。幼い頃、よく祖母が淹れてくれたほうじ茶。淹れた人物が違うため少しだけ味が違うが、やはり落ち着く味だった。

 

「あら、どうしたの〜?何か思い出してる?」

「えっ…わ、わかります?」

「ん〜なんとなく、ね」

 

 カイムも人の感情の機微には割と鋭い。いつもではないが、そういうところがあるのは、やはり母親であるタキ譲りなのかもしれない。

 

「鋭いですね、タキさん。実は、少しだけ故郷を思い出していました」

「あら〜、シロナちゃんはどこ出身なの?」

「カンナギタウンです。シンオウの北の方にある田舎ですよ」

「そうなのね〜。私も出身は田舎だから、ちょっと気持ちわかるわ〜」

「タキさんは、どちらの出身なんですか?」

「私はムロタウンよ〜」

「ミナモシティじゃないんですね」

 

 カイムの話だと、カイムの生まれも育ちもミナモシティとのことだった。他にホウエンの街の話はほとんど出てこなかったため、てっきり両親もミナモシティ出身なのかと思っていたが、そうではないらしい。

 

「そうよ〜。それに、お父さんもミナモじゃないのよ〜。あの人はルネシティ出身でね〜」

「そうなんですね。ミナモには、どうして?」

「お父さんがルネシティ出身だからかしらね〜。海が好きなのよ。それで海から比較的近い場所に住みたいってなった結果よ〜」

 

 海が好き。それはカイムもよく言っていることである。やはり親子なのか、カイムと両親の共通点は割と多いようだった。それに確か姉であるイサナもガラル地方の海付近に住んでいるのだとか。まさに血筋を感じる話だと、シロナは内心で考える。

 

「でも、そんなに出身が遠いのに…お二人はどうやって出会ったのですか?」

「うふふ〜お父さん、大学の後輩なのよ〜」

「あ、そうなんですね。お二人とも大学卒とは伺ってましたけど、同じ大学だったとは」

「学部は違ったけどね〜。私は経営、お父さんは理学部だったわ〜」

「学部は違う…あれ?ではお二人の接点はどこですか?サークルとか?」

「違うわよ〜。私がお父さんのことを学内で見かけて、一目惚れして猛アタックしたの〜」

「ひ、一目惚れ⁈」

 

 想定外の言葉にシロナは思わず声を上げてしまう。おっとりしたタキがまさか一目惚れして、ナダに猛アタックしたとはどうも想像しづらかった。

 

「そうよ〜。うふふ、私も若かったわね〜」

「ど、どうやって近づいたんですか?」

「色々頑張ったのよ〜?いきなり告白したかったけど、そんなのフラれるにきまってるじゃない?それに学年も私が上だったから、同じ授業にもいないしね〜。だから私、お父さんのアルバイト先に入ることにしたのよ〜」

「そ、そうなんですね…」

 

 想定以上の行動力に、思わずシロナは困惑してしまう。ここまで行動力のある人だとは思ってもいなかったため、シロナの中のイメージとはかなり異なっていた。だがイサナもかなり行動力のある人であったため、ここにも血筋が現れるものなのかと内心で納得した。

 

「そこからは猛アタックよ〜。デート誘ってお弁当作ってバイトのシフト被せて…ストーカーにならないラインを引きつつ、限界まで押してたわ〜」

「行動力、すごいですね…」

「そうね〜私も若かったのよ〜。でもお父さん、堅物だったから苦労したわ〜。バイトのシフト中は話してくれたけど、デートもお弁当も断られてたのよ〜。あ、でもなんだかんだいいながらお弁当は食べてくれてたわ〜。嬉しかったな〜」

 

 なんとも糖分の多いタキの話にシロナは思わず苦笑してしまうが、シロナとカイムがそれ以上に糖度の高い会話をしていることを当人は自覚していない。

 

カイム(この子)も堅物で真面目でしょ〜?そういうところ、お父さんそっくり。シロナちゃんも落とすの苦労したんじゃない?」

「…そう、ですね。私の場合、いつからカイムのことを好きになったのかよくわからないんですけど…それでも、色々と苦労はしました」

 

 ある日ふとカイムのことを異性として意識するようになった。多分、その日よりも前からきっとカイムのことを意識していたのだろうが、いかんせん経験がなかった。それ故にカイムへの恋心をなかなか自覚することができず、カトレアやカルネに相談したこともあったのだが、ある日突然それが恋であることだと自覚した。

 自覚することももちろん苦労したが、それ以上に同棲の説得に苦労した。いやそもそも付き合う前から同棲というのも色々と順序をすっ飛ばしているのだが、それはこの際いい。堅物であるカイムを説得するというのは想定以上に大変だった。生真面目堅物のカイムは、恋人でもない異性の家に寝泊まりすることはどうなのかと考える人物であり、同棲した場合はシロナの家に住むことになるため基本的に家賃が必要なくなる。シロナの家のローンが残っていれば、それを肩代わりするなどできただろうが、チャンピオン兼考古学者の財力というのは一般人のそれを遥かに凌駕する。故にローンもないため、払うのはせいぜい光熱費程度。未熟者である自分が、そんな風に甘えた環境にいてはいけないとカイムは考えたため、非常に説得に苦労した。

 

「でもその苦労をしてでも、カイムといたかったんです。少しでも長い時間を彼と過ごしたくて…頑張った結果、カイムが最後は折れてくれました」

「結構頑固でしょこの子。よく頑張ったわね〜」

「ええ、本当に苦労しました。でも、おかげでとても嬉しかった。苦労が報われた以上に、彼と過ごせる時間が増えることが…とても、とても嬉しかったんです」

 

 渋々、といった様子ではあったものの、承諾してくれた以上、シロナのことを嫌ってはいないということ。嫌われてはいないと思っていたが、同棲を受け入れてくれたということは、少なからず好意はあるのだろうとシロナは思い、それが嬉しかった。

 実際のところ、カイムはこの時すでにシロナに対して好意を向けていた。ただそれを伝えることを躊躇い、極力今まで通りの関係でいることに注力した。しかしそこに同棲の申し出をされ、内心嬉しかったのだが、付き合ってもいないし、何より自分に対してかなり無防備な姿を見て、『自分は異性として意識されていない』という考えに落ち着いてしまっていたカイムは、その申し出を拒否した。だがそれに懲りず、シロナは何度も申し出をしてきて、その結果カイムが折れるという結果になった。

 

「あらあら〜…こんなに想ってもらっちゃって〜」

「す、すみませんこんな話…」

「いいのよ〜。私の子供がこんな素敵な子に想われてるなんて…親としては嬉しい限りよ〜。ありがとうね、シロナちゃん」

「いえ、そんな…私なんて、彼に助けられてばかりで…」

「でも同じくらい、この子はシロナちゃんに助けられてるわ。そうでなきゃ、こんな良い目をしてないもの〜」

 

 前に帰ってきた時、明らかに学生の時と比べて良い目をするようになっていた。何もかも諦めたような目をしていた時よりもはるかにいい顔をしており、そうしてくれたのはシロナだとすぐにわかった。

 

「…イサナはなんでもできたけど、カイムは何も出来なかった。その劣等感から色々やるようになったけど…そうね、結局イサナと同じようにできたものは何もなかったわね〜」

「昔から、イサナさんは多才だってカイムも言ってました」

「そう…だから、卑屈になっちゃったのよね〜。カイムに色々と教えてくれたみたいだけど…苦労したんじゃない?」

「…そうですね。でも、全然苦ではなかったですよ」

 

 お世辞にも覚えはいい方ではなかった。だが愚直に、歯を食いしばってついてくるカイムを指導するのは、シロナにとって全く苦にはならなかった。卑屈であっても、諦めはしない。日に日に少しずつとはいえ、できるようになる姿は、シロナにとっても嬉しいものだった。

 

「一度大きく挫折を知っている…それが、カイムの強さであり、今のカイムの優しさにも繋がっていると思うんです。できない苦しみも、挫折の痛みも…自分と他者の違いも知っているから、他者に寄り添えるし、理解しようと歩み寄れる。とても素敵で、カッコいいところですよ」

「…そう」

「そんな彼と、私は歩いていきたい。いつか死ぬその日まで、彼の隣で…一緒に」

 

 眠るカイムの頬を撫でながら、シロナは言う。嘘偽りのない、心からの言葉。眠るカイムには届いていないが、そんな言葉をカイムにかけてくれる人がいるという事実に、タキは目頭が熱くなる思いがした。

 

「やだ…シロナちゃんかっこいい」

「えっ⁈」

 

 驚くシロナをよそに、タキはシロナの頭に優しく手を乗せる。慈愛に満ちた手は、今までシロナが触れることのなかった『母親』の手だった。

 

「ありがとう。カイムのことを見つけてくれて。この子の側にいてくれて、ありがとう」

「…感謝するのは私です」

「うふふ、かわいいわね〜」

 

 思わずタキはシロナのことを優しく抱きしめた。暖かい体温だけでなく、優しい空気感。その空気感に、シロナは自分の知らなかった『母親』というものを感じ取った。

 

(…母親って、こういう感じなのかしら)

 

 今まで母親という存在と触れることのなかったシロナからすると、タキは初めて触れた『母親』という存在だった。祖父母は当然シロナ姉妹に良くしてくれたが、それはどこまでいっても祖父母としての愛情。母親からの愛情を知らなかったシロナは、生まれて初めての母親としての愛情を感じた気がした。

 

「タキさん」

「なに〜?」

「カイムと出会わせてくれて、ありがとうございます」

「!」

「カイムは、確かに平凡な青年です。何か特別な才能があるわけではない。お姉さんと比べたら、できたことは僅かかもしれない。でも、それを知ってなお、タキさんとナダさんはカイムがやりたいことを後押ししてくれたって聞いてます。お二人の後押しがなかったら、私は彼と出会うことはありませんでした」

 

 カイムが大学に行きたい、と言った時、両親は二つ返事で了承してくれたと聞いた。そのための受験勉強も全面的にサポートしてくれたおかげで、行きたい大学に行けたし、やりたいこともやれたとカイムは言っていた。

 もし、両親のサポートがなかったら、両親が大学に行くことを許してくれなかったら…シロナはカイムと出会うことはなかった。きっかけはカイムの意思かもしれないが、それでもこの両親でなければ、きっとシロナはカイムと出会うことはできなかっただろう。

 

「カイム、良く言ってるんですよ。ご両親には感謝してるって。私も感謝してるんです。こんな素敵な人を育ててくれて、出会わせてくれてありがとうって」

「あら…」

「私は、色々と支えてもらってばかりです。でも、私も彼のことをずっと側で支えていきます。それが私の、願いでもあるので」

「…そう」

 

 タキとナダにとって、イサナとカイムはどちらも大切な子供。だがイサナの奔放さと多才さに、カイムはずっと劣等感を抱いていた。その劣等感を払拭させることができず、諦観した光を宿す瞳を見るたびに、両親は胸を痛めていた。だがそんなカイムが『大学に行きたい』と両親に言った時、二人はすぐに了承した。二人はカイムが挑戦したいと思ったことは、間違いでない限り、全力で応援すると決めていたからだ。幼少期はそのスタンスが仇となり、カイムに劣等感を抱かせてしまったが、そのスタンスのおかげでシロナはカイムと出会えたと言った。

 自分達が子供にしてきたことが、無駄ではなかった。それどころか、シロナとカイムにとって、最高の施しだと言われ、タキは思わず目が熱くなるのを感じた。あまりの嬉しさに、タキは思わず涙がこぼれそうになる。しかしその瞬間、眠るカイムがうめき声を上げた。

 

「もう…こんないい子がプロポーズしてくれてるのにカイムは…」

「プロッ⁈」

「あら、違うの〜?」

「ち、違っ………くは、ない…で、すけど…」

 

 顔を真っ赤にしながら言葉を尻すぼみにさせていくシロナを見て、タキは楽しそうに笑う。

 

「婚約は…その様子だと、まだなのね〜」

「まだ、です…それに、付き合ってから一年経ってませんし…」

「でも同棲してるんでしょ〜?三年くらい?」

「ええ、まあ…」

(もう結婚してるようなものじゃない?)

 

 同棲をそれなりにしてるから結婚とは、かなりの暴論ではある。しかし、二人の空気感はタキから言わせれば、新婚ほやほやのラブラブ夫婦にしか見えなかった。付き合ってから一年経っていないとはいえ、この二人なら夫婦円満にいくだろうと誰が見ても思うような空気である以上、そう言われても仕方ない部分はあるだろう。

 

「プロポーズは、まだです。でも、カイムは考えてくれてます」

「あら、そうなの?」

「はい。明言はしてませんけど、ちゃんとまっててほしいって言ってくれました。今書いてる論文は、とても大掛かりで…考古学学会でもかなり注目されるような内容です。それを書き終えて、トレーナーとしても学者としても一人前になったらって、約束してくれました」

「…なーんだ。ちゃんと考えてるのね。なら、私が言うことは無いわね〜」

 

 タキはシロナの膝にいるブラッキーを優しく撫でる。ブラッキーは気持ちよさそうに喉を鳴らし、それを見たタキは優しく笑った。

 

「二人の人生だし、二人で決めなさい。でも、もし何か困ったことがあれば、何でも頼ってね。私たちにできることを、存分にやってあげるから」

「…はい。ありがとうございます」

「うふふ。さ、このねぼすけを起こしましょ〜」

 

 そう言ってタキはカイムの体をゆする。しかし、眠りが非常に深いカイムはその程度では起きないことをシロナは知っていた。

 

「カイム」

 

 シロナはカイムの頬に手を添え、耳元に顔を寄せた。

 

「起きて」

 

 たった一言。だがその一言に、慈しみだけでなく、底冷えする何かが込められていることをタキは敏感に感じ取り、思わず身震いした。

 そして同じものを感じ取ったのか、カイムはゆっくりと目を開く。

 

「…ん、あぁ…やべ、寝てたか」

「お風呂空いたわよ。入って」

「…ああ、わかった」

 

 カイムはがしがしと頭をかくと、ソファから起き上がり、首を鳴らしながら歩いていく。シロナの膝にいたブラッキーはぴょんと飛び降りると、とてとてとカイムについていった。

 

「…あの子、なかなか起きないのにすごいわねシロナちゃん」

「ふふ、ちょっとコツがあるんです」

(……聞かない方が良さそうね〜)

 

 そのコツとやらが何なのかはわからないが、なんとなく聞かない方が良さそうだと直感したタキは何も聞くことはしなかった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

「電気消すぞ」

「はーい」

 

 入浴も済ませ、布団に入った二人は電気を消し、並んで横になった。今二人はかつてカイムが使っていた部屋に、布団を並べて寝ている。電気が消え、真っ暗になるが、うたた寝をしてしまったカイムは少し目が冴えてしまい、寝つけそうにない。

 

「眠れなさそうね」

 

 シロナは寝息が一向に聞こえてこないため、カイムが寝付けないのを感じ取った。

 

「うたた寝しちまったからな。目が冴えてる」

「あんなところで寝るからよ」

「違いねえ。一通り調べ物できたから、気ぃ抜けたんだよ」

「調べ物って、ダイゴ君の?」

 

 レジスチルの洞窟から出てすぐにかかってきたダイゴからの電話で依頼された調べ物。それがもう一通り調べられたという事実に、シロナはカイムの情報収集能力の高さを改めて実感した。

 

「ああ。流星の民といえど、ちゃんと住民登録されてる。リストについては、大した手間じゃなかった」

「相変わらずすごい情報収集能力ね」

「こんなのやり方わかれば誰でもできる」

「それで?どんなことがわかったの?」

 

 カイムは平然と布団に潜り込んでいたブラッキーを撫でながら調べた内容について語る。

 

「流星の民は、古代ポケモンであるグラードン、カイオーガが活動していた時から続いている民族らしい」

「そんなに昔から?」

「ああ。彼らは荒ぶるグラードンとカイオーガを鎮めた存在…レックウザを崇める一族らしい。アルセウス達を崇めていた古代シンオウ人と似たような感じだな」

 

 大地の化身、グラードン。

 海の化身、カイオーガ。

 そして天空を統べる存在、レックウザ。

 

 古代より存在した凄まじい力を持つポケモン達は、人々にとって崇拝すべき存在であり、同時に畏怖の象徴でもあった。中でも一際強い力を持っていたレックウザは、あまりにも強大な力を持つが故に、世界を滅ぼしかねなかったグラードンとカイオーガを鎮めるほどの力を持っていた。そして、そんなレックウザを流星の民は崇めた。

 

「流星の民の語源もそこから来てるらしい。レックウザは、流星に密接に関わりがあるらしくてな。そのレックウザを崇める一族ってことで、流星の民」

「そんな事実があったのね」

「ああ。流星の民はあまり俗世には関わらないが、別に俗世を毛嫌いしてるわけでもなさそうでな。割と色々情報は出てくる。ただ…」

「ただ?」

「伝承者と呼ばれる存在についてだ」

 

 調べていくうちに、流星の民には『伝承者』と呼ばれる存在がいることがわかった。しかし、その伝承者が何を伝承している存在なのか、どういった役割があるのか、誰が伝承者として任命されるのか。詳しいことはカイムですら調べることができなかった。

 

「伝承者についてだけは、その名前以外一切出てこなくてよ。一昔前の伝承者の名前以外、何も出てこなかった。何故この名前だけ出てきたのかもわからん」

「不思議なこともあるのね。それで、その伝承者の名前は?」

「シガナって書いてあった」

(シガナ?…ヒガナと、何か関係があるのかしら)

 

 シロナが先日出会った女性、ヒガナ。謎めいた雰囲気だったが、結局彼女の正体は最後までわからなかった。そのヒガナとそっくりの名前であるシガナ。何か関係があるのかもしれないが、シロナがそれを確かめる術はない。そもそも二人には直接的に関係はない話だ。深入りすべきことではないだろう。

 

「とりあえず、調べたものは全部ダイゴに送った。何に使うかは、今度聞かせてもらうさ」

「レジスチルの情報整理もしてたでしょ?今日はよく頑張ったわね」

「まーな。色々と衝撃的すぎて、気が抜けたらつい寝ちまうくらいにはな」

「ふふ、いい寝顔だったわよ」

「いつも見てんだろ」

 

 同じベッドで普段から寝ている以上、互いの寝顔はいつも見ている。今更真新しいものでもないのだが、愛しい人の寝顔というのはいつ見てもいいものだった。

 

「そうね。それに、タキさんとも色々話せたし、いい時間だったわ」

「母さんとか。何話してたんだ?」

「貴方のことよ」

「ロクな話されてねえことだけは確かだな…」

 

 げんなりするカイムの布団に、シロナは潜り込む。そしてカイムに顔を近づけると、優しく頬を包み込んだ。

 

「貴方のことが大好きって、タキさんに伝えてただけよ」

「…そりゃ、嬉しいねぇ」

「カイムは、私のこと好き?」

「ああ」

「ふふ、ありがと」

 

 シロナは一度言葉を切ると、カイムの布団の中で丸くなるブラッキーを優しく撫でる。ブラッキーは薄らと目を開けるが、シロナに撫でられる感触に安心し、再び目を閉じた。

 

「…タキさんと話してて思ったの。母親ってこういう感じなのかなって」

「………」

 

 シロナに、母親はいない。正確に言えば母親を知らない。物心ついた時には、既に祖父母の手で育てられており、妹のクロナも既にいた。加えて両親に関わるものはシロナが物心つく前に、全て祖父母が処分してしまっている。故に、シロナは両親を知るきっかけもなかった。

 

「シロナは、両親に会いたいと思うか?」

「そうねぇ…どうかしら。この歳まで来ると、さすがに何も想わなくなるわね」

「そうか」

「会いたいって言ったら、どうするの?」

「…会わせられる保証はない。だが、やろうと思えば、多分名前と顔くらいは調べられる」

 

 カイムの調査能力を持ってすれば、全力を出せば恐らくシロナの両親の顔と名前くらいは判明するだろう。いくらシロナ自身が知らなくとも、シロナという人間の出生記録まで遡れば何かしらは出るはずだ。とはいえ、既に故人となっている可能性も否定できないし、シンオウ地方にいる保証もない。故に、会わせられる保証はないとカイムは言った。

 

「そうね。きっと貴方なら、調べられるんだと思う」

「………」

「でも、いいわ。今更知ろうとも思わないし、今の私にとっての母親像はタキさんだし…それに、お婆ちゃんとお爺ちゃん、クロナもポケモン達もいたから寂しくもなかったわ」

「…そうだったな」

 

 知りたくない、といえば嘘にはなる。どういう人なのか微塵も興味が湧かないわけではない。だがそれでも、自分の育て親は祖父母であり、シロナにとっての理想の母親像はタキになった。それで充分だと、今のシロナには思えた。

 

「今の私は、充分満たされてる。だから、別に無理して調べなくていいわ。それより、今はもっと大事なことがあるでしょ?」

「…そうだな。今は、論文に集中。明日もレジスチルのとこ行って、色々と聞かねえと」

「まさか本物のレジスチルと出会えるなんてね。しかも、アルセウスとの対立の詳細についてまでわかるなんて…とても濃い一日だったわ」

 

 レジスチルと出会うだけならまだ想定内だったが、そのレジスチルからアルセウスとレジギガスの対立について教えてもらえるとは思いもしなかった。カイムが以前執筆したアルセウスとレジギガスの対立についての論文。その論文に書いた内容とレジスチルが語った内容の大筋は合っていたが、対立の理由だけは不明であったため、今回知ることができたのは非常に大きな収穫だった。

 

「お前と会ってなかったら、こんな経験もなかっただろうな」

「かもね。私も出会う機会はなかったと思うわ。それに、ラティアス達と出会うこともなかった。貴方との縁が、たくさんのものを繋げてくれたの」

「そうか。あの日、お前が俺を見つけてくれたけど、同時に俺はシロナを見つけることができたんだな」

「ふふ、私たちはお互いにお互いのことを見つけたのね。隣にいるのに、最も適した相手を」

 

 布団の中でシロナはそっとカイムの手を取る。手を握られた感触を感じたカイムは、シロナの手を握り返した。

 

「貴方の心は、たくさんの人やポケモンと繋がっている。私はその繋がりに、偶然入れた。そして今、こうして最も近い場所で繋がれている。嬉しいわね」

 

 海のように、たくさんの心を受け入れ、繋がる心。そんな暖かくて深い心の一番近い場所にいるのが自分であるということに、シロナの心は満たされる思いだった。

 

「…それが俺の世界だ。俺がいて、シロナがいて、ポケモン達がいて、みんながいる。一人じゃ、駄目なんだよ俺は」

「前に言ったわね。貴方は寂しがり屋だって」

「認めるのは癪だが、否定できんな。お前が一日いないだけで、寂しくなっちまう」

「私もよ。欲を言えば、いつでもどんな時でも側にいて欲しい。そうできないのが人というものだけど、そのぶんこうして触れ合える時は、存分に触れ合いたいわ」

 

 シロナは布団の中でカイムの腕を抱き、体を寄せた。腕越しに、シロナの静かな心音が伝わってくる。

 

「…俺もだ」

 

 そう言ってカイムはシロナのことを抱き寄せる。必然的に密着した二人は、どちらからともなく顔を寄せ、唇を重ねた。

 そして目を閉じ、額を合わせる。お互いの体温と息遣い、心音が感じられ、心が落ち着いていくのを感じた。

 

(…いつか、貴方と本当の家族になりたい)

 

 そんな願いを抱きながら、シロナの意識は微睡に落ちていく。眠ったシロナの頭を優しく撫で、シロナとの間に挟まるブラッキーに目を向けた。本来なら窮屈なはずだが、大好きな二人に挟まれて眠るブラッキーの寝顔は穏やかで、とてと気持ちよさそうにしていた。珍しく優しく微笑み、愛する人とポケモンの側で、カイムもゆっくり目を閉じる。

 

 

そのままカイムは深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

いつか来る、シロナと本当の家族になれる日を夢見ながら。

 

 

 

 




メタグロス内定歓喜


パルデアにシロナとカイムがいた場合の妄想


シロナ+オモダカ、ネモ
「シンオウ地方チャンピオンとお会いできて光栄です」
「ふふ、ありがとうございますオモダカさん。私もパルデア地方チャンピオンと出会えて嬉しいわ」
「良ければ、アカデミーにも足を運んでみてください。貴女とバトルしたがる生徒は多くいるでしょうし、教師陣にもいい刺激になると思います」
「ええ、是非とも」
「トップ!シンオウ地方のチャンピオン来たって本当…あ!もしかして貴女が⁈」
「あら、初めまして。私はシロナ。シンオウ地方チャンピオンよ」
「あ、あたし!ネモっていいます!バトルしましょ!」
「ネモはこの歳でチャンピオンクラスなんです。いい刺激になると思うので、よければ彼女ともバトルしていただけませんか?」
「ええ、喜んで」

カイム+アオキ、チリ
「え、四天王ってこんなに事務処理してんの?」
「はい。トップの指示なので」
「面接もやらなあかんからなぁ…四天王も楽やないで」
「つか、この事務処理無駄じゃないすか?マクロ組めば一瞬じゃ…」
「……マクロ組む余裕とスキルがあれば、ですがね」
「………パルデアリーグ、ブラック?」
「なはは!否定しきれんな!というか、事務処理できんのがアオキさんとウチしかおらんからやな。それにチリちゃんもアオキさんもそこまでパソコン強くないんや。マクロなんて組めへん」
「人を増やすかシステム導入しろや…」
「トップは中途半端にアナログな方なので」
「なっはっは!その通りやなあ!チリちゃん的には、そんなとこもおもろいんやがな!」
「…わかりました。とりあえずマクロ組んでおきますんで好きに使ってださい」

二時間後
「事務作業が…こんなに早く終わるんか…⁈」
「それに、彼の料理…絶品です。是非うちのリーグに来ませんか」
「いや、俺シンオウの人間なんで」
「後生やカイムさん!パルデアリーグに来てくれ!あんたがいるといないとでは仕事効率が段違いや!」
「やかましい!俺はシンオウの人間だしジムもあんだよ!無理だっつってんだろ!」



「…なんか、気に入られてますね」
「ふふ、カイムは有能だから」
「ふむ…是非とも我がパルデアリーグの職員に…」
「だめです。私の」
「それは残念」


レジスチルは歴史を語っている間、ポケモン達に群がられています。

アルセウスとレジギガスの対立チャート
1.アルセウス、世界を創る
2.世界に海、空、大地ができる
3.その過程で生じた余剰エネルギーが組み合わさり、レジギガスが生まれる(全タイプ所持)
4.レジギガスが自身の持つタイプエネルギーを用いて、レジポケモン達を創る(タイプエネルギーは大幅に枯渇するが、まだ残存)
5.レジギガスをはじめとした無限のエネルギーを持つレジポケモン達がアルセウスの目に留まり、対立する
6.レジギガスが敗れ、封印される。それに応じてレジスチル達も一時的に機能停止する(レジギガスのタイプがノーマル以外全て剥奪、プレートになる。この時できたプレートに古代シンオウ人がアルセウスの歴史を刻む)
7.レジスチル達が機能を取り戻し、目覚める
8.古代人達と接触する
9.レジポケモンを恐れて封印

なんか矛盾点とかあるかもなんで、見つけたら教えてください。


シロナ
作中最高峰の洞察力の持ち主。レジスチルの語った歴史を瞬時に記憶し、理解した。本来はカイムの研究のためにレジスチルのもとを訪れたが、想定外にアルセウスの歴史についても知ることができ、カイムの書いた論文を基にもう一本論文を書くことになる。両親のことは知らないが、カイムの両親がシロナの中での両親像になっていく。

カイム
レジスチルと出会えて内心ウキウキ。洞察力は人並みだが、調査能力は最強レベル。流星の民リストをどこから取得したのかは不明だが、そのリストの中に『ヒガナ』の名前があることに気づいていながらも、何も言わなかった。疲れるとブラッキー、バシャーモ、ムクホークあたりに顔を押しつけて脳死でモフる。バシャーモはあんまりモフられると逃げるため、あんまモフれない。

タキ
お母さん。黒髪糸目。怒る時、本気になったとき、目が開く。瞳の色は青みがかった黒。50代だが、40代と間違われる。

レジスチル
古代人と共に生きたポケモン。レジギガス同様無限のエネルギーを持つため、どれだけ時が経とうと、空間が歪もうと朽ちることがない。自我は薄いものの、ちゃんと意思はある。訪れた者の心をある程度感知できるため、もしレジスチルに会いにきた人間に邪心があれば、レジスチルの部屋の扉は決して開かないようにしてる。喋り方はニーアオートマタのポッドを参考にした。


めっちゃ楽しく書けましたが、矛盾点がないか少々不安。


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