ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

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砂糖


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42話


第五部
42話 ミオシティ


 日も落ち、日付も跨いだ頃…カイムの部屋からはまだ光が漏れていた。扉を開くと、カイムがブルーライトカットのメガネをつけた状態でPCと向き合い、キーボードを叩いている。そんなカイムのことをムクホークとキリキザンはジト目で見ているが、集中しているカイムは気づく様子はない。やや呆れつつ、モニターと向き合うカイムにシロナは声をかけた。

 

「…そろそろ休んだら?」

 

 ホウエン地方からシンオウ地方に戻り、再びジムリーダーへとカイムは復帰した。代理を任せていたゲンは、代理が終わると再びどこかへ旅立っていった。帰り際の彼の笑顔は、シロナにとってどこか印象に残っていた。

 ジムリーダーに復帰したカイムだが、論文の執筆も同時に進めなければならない。ホウエン地方に行く前から並行して進めることはやっていたが、貴重かつ膨大な量の資料を得たことで執筆は激化した。シロナと共に冬にある学会で発表できたらと考えていたため、執筆期間は想定よりも少ない。ただ幸いだったのは、カイムとプラターヌ博士で立てていた仮説と今回明らかになった事実に、あまり相違がなかったことだろうか。

 

「キリが悪い。もう少し」

 

 とはいえ、あまり時間がないことも確か。カイムは毎日夜遅くまでジムリーダー業が終わった後、執筆に勤しんでいた。時間がないことは百も承知。だがそれを考慮してもカイムは少々没頭しすぎている。

 

「それ、三十分前にも言ってたわよ。明日もジムあるんでしょ?もう寝なさい」

「いや…だからキリが…」

「ブラッキー、バシャーモ」

 

 シロナがそう言うと、シロナの背後からブラッキーとバシャーモが現れる。ブラッキーがカイムの後頭部に飛びつき、バシャーモがカイムの顔を鷲掴みした。

 

「ちょ」

 

 カイムの制止も聞くことなく、バシャーモはカイムの首根っこを掴み、ずるずると寝室へと引きずっていく。その姿を見ながらシロナは書きかけの論文のデータを保存し、PCの電源を落とす。

 

「バシャーモさん、最近俺の扱い悪くない?」

「貴方が反省しないからよ」

「………いや、仕方ないだろ」

「焦りすぎよ。まだ時間はあるんだから、根詰めすぎないの。もう、人には世話焼くくせに、自分のことは無頓着なんだから」

 

 自身と他者への意識の配分が明らかにおかしいカイムだが、本人はあまりそれを自覚していない。以前ダークライの一件で倒れて以来、多少マシになってきたと思っていたが、執筆とジムリーダー業を並行して進めることでまた再発してきている。ただ、一般人と比較して体がやや頑丈であり、体力もあるため少しくらい無理が効く体であるため、簡単に息切れしたりはしない。そこは自覚しているのがシロナ的にはタチが悪いように思えてしまう。

 

「最低六時間は寝るようにしてる。問題ないと思うんだが」

「ダメよ。ならせめて七時間にしなさい。確かにいいペースで書けてきているけど、修正を考えたらまだ半分程度の進行度よ。今のペースじゃ、体力のあるカイムでも息切れするわ」

「む…」

「それに、ホウエン地方にいるときは休みの時間ほとんどなかったでしょ?疲れが溜まってきているように見えるけど」

「…………」

 

 シロナの言葉に、思わずカイムは押し黙る。実際ホウエン地方ではあまり休む時間はなかった。調査と整理の繰り返しで、休む余裕がなかったため仕方ない部分もあるが、さすがに少し疲れを感じ初めていた。栄養ドリンクなどで誤魔化すようなことはしないが、このままのペースでは確かにどこかで息切れを起こすだろう。

 

「あんまり酷いと、ポケモン達に一日中見張ってもらうからね」

「勘弁してくれ」

「嫌なら、ほどほどにすること。いい?」

「善処する」

「バシャーモ」

「いだだだだだ!」

 

 バシャーモのアイアンクローがカイムの頭を締め上げる。さすがにポケモンの握力でやられれば、比較的頑丈なカイムでも相当痛い。しかもなんの恨みがあってか、爪も軽く立てられている。痛くないはずがない。

 

「わかった?」

「…はい、気をつけます」

「よろしい。バシャーモ、放してあげて」

「あれ?バシャーモ俺のポケモンだよね?」

 

 シロナの指示に自分よりも素直に言うことを聞くバシャーモに疑問を持ちながら、カイムは引きずられていく。そしてその間ずっとブラッキーはカイムの頭に自分の顔をすりすりと擦り付けていた。

 

 引きずられた先は、隣の寝室。さすがに寝るしかないと観念したカイムは小さく息を吐くと、頭からブラッキーを引っ剥がしてベッドに腰掛ける。それを見て、カイムを引きずっていたバシャーモはボールの中に戻り、眠りについた。

 

「そう、それでいいの」

「へーへー、ここまできたら大人しく寝ますよ」

「ブラッキーも一緒ね」

 

 シロナは優しくブラッキーの頭を撫でる。撫でられたブラッキーは気持ちよさそうに喉を鳴らした。それを見て優しく笑ったシロナもカイムの隣に腰掛ける。

 

「…………」

 

 そんなシロナをカイムは横目で見る。シロナの服装は些か防御力が低く、非常にラフなものだった。夏が近いこともあり、北国のシンオウ地方も暑くなってきている。そのためシロナは半袖のシャツの上に(カイムの)薄手のパーカー、下はショートパンツという服装で家の中では過ごしている。これが真夏になるとTシャツ一枚の時や、キャミソールの時もある。それと比較すればまだマシとはいえ、堅物であるカイムからすれば、露出が多いと思えてしまうものだった。無論外ではしっかりとした服を着ているが、もう少し家でもどうにかならないかとカイムは頭を悩ませていた。

 とは言ったものの、二人は同棲してそれなりに長い。また、恋仲になってそろそろ一年経つ。この程度のことは今更(・・)なのだが、それでもカイムとしては色々と思うところは出てきてしまうのだった。

 

(…無防備すぎだろ)

 

 内心でため息を吐きながら膝にいるブラッキーを撫でる。最初は男として見られていないのでは、とも思っていたが、シロナにとって最大の意識は『オフモードを見せること』であると理解している。それ故に、文句を言うこともなかったが、内心では嬉しく思いつつ、あまりにも無防備すぎて少し心配という複雑な心境だった。

 無論、シロナはカイムのそんな考えを知る由もない。カイムが視線を向けると、小さく首を傾げた。普段の凛々しいシロナの立ち振る舞いとは打って変わって、気の抜けた仕草。それを見ることができる人間が自分だけだというちょっとした優越感を感じつつ、カイムはシロナの頭をやや乱暴に撫で回す。

 

「ちょ、もう…何よ。ふふ、やめてよ」

 

 普段の凛々しい様子とは打って変わり、どことなくあどけなさの残る笑顔。外ではまず見せることのない笑顔に、愛おしさを感じてしまう。

 無言でわしゃわしゃと撫で回すカイムに対し、シロナはカイムの両頬を指でつまむ。そして普段はほとんど上がることのない口角を無理やり上にあげた。形としては口角が上がり、笑顔に近い顔にはなっているが、目は笑顔のものとは異なる。そもそも、一般的な笑顔と呼ばれるものになることがほとんどないカイムにそれを要求する方が酷なものではあるが。

 

「口角あげるだけじゃ、笑顔とは言えないわね」

「当たり前だ。俺の表情筋は仕事しないことで有名だぞ」

「威張れることじゃないわよ」

 

 尤も、表情が動かないからといって感情がないわけではない。ほとんど動かない表情の中にもほんの僅かながら変化はある。苦い顔や仏頂面などは除外するとして、その僅かな表情の違いを感じ取れるのは恐らく家族を除けばシロナとダイゴくらいだろう。ここ最近は表情以外の雰囲気から感情を理解できる者も増えてきたが、表情の機微を完全に把握できるのはこの二人くらいである。

 我ながら面倒な人を好きになったものだと内心で苦笑するが、そんなところですら愛おしく感じてしまう。出会ってから四年経過し、彼への想いを自覚してからもそれなりに時間が経つ。だが、今もなおシロナはカイムへの想いが色褪せることなく胸に満ち溢れていた。

 

「さ、寝ましょ。明日もあるわ」

「ああ」

 

 二人は寄り添い合ったままベッドに横になった。本来はシングルサイズだが、二つのベッドをくっつけることでダブルサイズのものにしている。結局ほとんどシングルに収まっているのだが、ポケモン達と共に眠るとなるとさすがにシングルサイズでは狭い。今もカイムの背中側にはトゲキッスが二人の激甘なやり取りに少々うんざりしつつゴロゴロしているため、トゲキッスのことを考えればこのベッドをくっつけた形が一番合っているとも言える。

 カイムはごろりと寝返りを打ち、トゲキッスの方を向く。そしてトゲキッスのふわふわな羽毛に顔を埋め、優しく撫で回した。

 

「トゲキッス、抱き枕適性高え〜」

 

 ふわふわとする羽毛を撫で回しながら思わず呟く。すると背中を向けられたブラッキーが『ボクも撫でて!』と言うようにカイムのシャツを引っ張ってくる。

 

「ブラッキーも撫でてほしいみたいよ」

「いつも撫でてんだろ…ったく。ほら、おいで」

 

 カイムが手招きをすると、ブラッキーは嬉しそうにカイムの方へ向かう。そして仰向けになったカイムの腹の上に乗って丸くなり、すりすりとカイムの側にいるトゲキッスの頬を擦り付けた。そんなブラッキーの顎を優しく撫でるカイムに、シロナは寄り添うように寝っ転がる。

 

「ふふ、やっぱりトゲキッスの羽は気持ちいいのね」

「手触りなら、多分ムクホークよりいい」

「ムクホークもふわふわしてて気持ちいいじゃない」

「あいつのはふかふかって感じ。枕よりも布団適性の方が高えよ」

「布団適性ってなによ」

 

 よくわからない単語に笑いながらツッコミをいれつつ、シロナはカイムの腕を抱くように寄り添う。抱かれた腕からシロナの心音が伝わってきて、どことなく安心感を覚えた。安心感と日頃の疲れからか、カイムの意識は徐々に微睡みの中に落ちていく。そろそろ眠りそうだということを察したシロナは、そんなカイムに優しく口づけを落とした。

 

「おやすみなさい、カイム」

 

 愛しい人とポケモン達と共に眠れる。その日々にささやかな幸せを覚えながら、シロナも目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 朝食をポケモン達と共にとりつつ、二人は日中の予定を確認し合っていた。

 

「今日の予定は?」

「今日はナギサジムとの合同トレーニングだ。今回は向こうがこっちに来るからあんま遅くはならんと思う。晩飯の仕込みはしていくが、腹減ったらおにぎりでも食っててくれ」

「わかったわ。私も今日は打ち合わせと取材。だから、午後は外に出るわ」

「取材?」

「ええ。リーグ前のね」

「ああ、そんな時期か」

 

 リーグ前、出場が決まっている四天王とチャンピオンは必ずリーグ報のインタビューを受ける。リーグ報は定期的に発行されており、ジムリーダーの交代、代理の選出などもこれにより知らされる。その他にもジムチャレンジャーに役立つ情報なども発信しているため幅広く役立つものとなっているのだが、案外新人は知らなかったりする。

 

「もう十回以上取材受けてきたんだろ?さすがに慣れるもんなのか?」

「そうねぇ…最初に比べたら慣れたけど、まだちょっと緊張するわよ」

「バトルでは緊張しねえのにか」

「バトルとインタビューは違うわよ」

「それもそうか」

 

 シロナは10代の時にチャンピオンになり、それからずっとチャンピオンの地位を守り続けている。そのため毎年インタビューを受けているが、やはりまだ少し緊張はする。多少は慣れてきたため、緊張していないように見せることはできるが、少しは緊張していた。

 

「前のテレビの時もか?」

「もちろんよ。でもテレビはリハーサルしていけばあまり問題ないわ」

「へえ…そういうもんか」

 

 (自称)一般人である自分には無縁だな、と考えていると、その考えを見透かしたシロナは楽しそうに笑いながらカイムに言う。

 

「貴方も近いうちに取材受けるかもよ?」

「はあ?なんで俺が」

「だって貴方、ジムリーダーじゃない。それも長いこと変わらなかったミオシティの。ベテランのトウガンさんの後釜なんだし、リーグから取材を受けることも無いとは言えないでしょ」

「む…」

 

 トウガンは、現在ジムリーダーを勤める者の中でも最古参のトレーナーだった。そのためたくさんのトレーナーに親しまれ、多くのトレーナーにとって馴染み深い存在になっている。

 そんなトウガンの後釜として就任したカイム。新人ジムリーダーというだけでそれなりに注目される中、トウガンの後釜となったのだ。いずれリーグ広報が取材に来てもおかしくない。

 

「でしょ?楽しみね」

「なんでだよ…」

「あら、貴方のことがシンオウに広まるのよ?私の弟子はすごいんだっていうのがみんなに知れ渡る。嬉しいじゃない」

「お前の方がすごいだろうに…」

 

 自身を卑下するつもりもないし、今の自分は気に入っている。だがそれはそれとして、カイムの功績は今のところシロナの下位互換に等しい。何もなしえなかった自分がここまで登り詰めることができたのはひとえにシロナのおかげであり、自分がやってきたことは素直に誇りを持っている。しかし、事実のみを見るのであれば、カイムのジムリーダーも論文執筆もシロナのものには遠く及ばない。

 

「事実だけを見ればね。でも、貴方はもう積み上げてきたものの意味を知っている。自分が積み上げてきたものに誇りを持って研鑽を続けている以上、貴方がやってきたこと、これから積み上げていくものは私のものとは違うのよ」

「…ああ」

「だから、貴方がやってきたことが注目されていくことになんの疑問もないわ」

 

 楽しそうに笑いながらシロナは言う。シロナの言うように、シロナとカイムがやってきたことは違う。シロナはチャンピオンとしてシンオウ地方トレーナーの頂点に君臨し、たくさんのトレーナーの目標になっているが、カイムはジムリーダーとして若いトレーナー達を指導し、進む道を示そうとしている。加えて、学問分野においても大きく二人の在り方は異なる。シロナはシンオウ神話をメインの研究テーマに据えているのに対して、カイムは地方に縛られないレジポケモンの歴史を研究している。分野のみで見れば同じものではあるが、二人の為していることは大きく異なっていた。

 だからこそ、シロナはカイムが注目されることに何の疑問も持たない。むしろ、当然だと思っている。これからも彼の良さが世間に広まってほしいと願っていた。

 

「………お前は大人だな」

「ふふ、貴方よりもほんの少しだけね」

「俺と二つしか変わらないとは思えんよ、全く」

 

 たった二年。この僅かな期間しか生きている時間は変わらない。だというのに、シロナは自分よりも遥かに多くのものを見て、自らを高めてきたことを改めて実感する。

 

「私と貴方は別の人間。だから、同じものを見てきても、きっと貴方と私は違う答えに辿り着く。過去にどうだったか、というのは大きな問題じゃないわ。大事なのは…」

「これからどうするか、だよな」

「わかってるならいいわ」

 

 それだけ言ってシロナは味噌汁を口に流し込む。安定の味に安心しながら、シロナは食事を進めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食と洗い物、準備を済ませたカイムはバッグを背負って靴を履いた。

 

「じゃあ、行ってくる。昼飯は弁当にしておいたから、取材先に持って行くのでも家で食うでも好きにするといい」

「わかったわ、ありがとう」

 

 カイムの服装は、黒いインナーに紺色のトレーニングウェア、通気性のいい黒いスポーツズボンというものだった。夏も近く、気温も上がってきている。朝でこの気温であれば、夜までこの服装でも問題ないだろう。

 

「あんま遅くならんとは思うが、腹減ったら冷蔵庫にポフィンいれてある。好きに食え」

「いつも通り、用意周到ね。あ、論文できているところまで見せてもらうわ。気になるところがあったら、いつものようにタブレットに送っておくわね」

「助かる」

 

 カイムはバッグを背負い直すと、ボールからムクホークを出す。そして鍵を下げているフックに目を向けようとした瞬間、シロナがカイムに声をかけた。

 

「ね、カイム」

「ん?」

 

 シロナは無言で目を閉じ、そして顔を少しだけカイムに向けてきた。一瞬何事かとカイムは目を見開くが、すぐにシロナの行動の意味を察した。どうするか二、三秒悩み、がしがしと頭をかく。

 

(さすがにやってくれないかな)

 

 なんとなくやってみようと思った故だが、あまり期待していなかったため無理かと内心で諦める。そこで目を開いたところ、目の前にカイムの顔があった。

 

「んっ!ふぁ…」

「…………」

 

 十秒程度のわずかな時間。だが永遠にも思えるほど長く感じる瞬間に、シロナは思わず身を委ねる。

 

「ふっ、あ…」

 

 口が離れていく。ほんの僅かに名残惜しそうにしながらシロナはカイムの瞳を見つめる。青みがかかった深い海のような瞳に吸い込まれそうな感覚に陥った。

 

「満足か?」

「えっ⁈あ、うん…」

 

 低い声にそう言われ、思わず一瞬答えに詰まってしまう。やれやれといった様子を見せながらも、カイムの耳は真っ赤に染まっていた。がしがしと頭をかくと、カイムはシロナの体に腕を回す。

 

「いってくる」

「……いってらっしゃい」

 

 シロナもカイムの体に手を回し、優しく抱き寄せた。

 僅かな時間の後、二人は体を離す。そしてカイムはムクホークを連れてジムへと向かっていった。

 

「♪」

 

 カイムを見送ったシロナは上機嫌で部屋に戻り、仕事に取り掛かる。玄関でのやりとりを見ていたロズレイドは、あまりの甘さに遠い目になっていた。

 同様に、すぐそばで見ていたカイムのムクホークも高すぎる糖分を与えられたことに対する抗議として、カイムにジト目を向けていたが、カイムがその視線に気づくことはなかった。

 そして当の本人の耳は通勤中ずっと赤くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミオジムにて

 

「ねーねー、なんか今日のカイムさん、機嫌良い?」

 

 ジムトレーナーの少女が、同年代のジムトレーナーにそう問いかける。

 

「え?そう?」

 

 だが聞かれた少女はよくわからず首を傾げる。何せ今のジムリーダーは先代と比較してあまりにも表情が動かない。多少声のトーンや雰囲気で感情は理解できるが、それでも表情にほとんど出ない以上、機嫌の良し悪しがわかりづらいのも確かだった。

 

「そうよ!だって、今日のカイムさんなんか声のトーン高くない?」

「あー、たしかに言われてみればそうかも」

「でしょ?何かいいことあったのかな?」

「いいことか…どっかの大会で優勝した…とか?」

「だったらあたし達もそれ知ってるでしょ。それに、あの人大会とか全然出ないみたいよ」

「そうなの?ジムリーダーなのに珍しい」

 

 ジムリーダーはトレーナーの中だとそれなりにハイレベルな腕を持つ。それ故に、大会などでもかなりの成績を収めるパターンが多いのだが、カイムはほぼ出ない。ジムリーダーとしては、かなり珍しい部類だった。

 

「なんか噂だと、すごいトレーナーのサポーターやってるとか」

「サポーター?ジムリーダーが?」

「そー。珍しいよね。トップだとサポーターつけてる人はちらほらいるけど、そのサポーターがジムリーダーって多分相当希少じゃない?」

「そうだと思うよ。少なくとも、あたしは聞いたことない」

「ジムリーダーをサポーターにするってことは…四天王とか?」

「あー、オーバさんのサポーターとかできそう」

「ゴヨウさんも行けそうじゃない?カイムさん、肉体派に見えるけど頭いいんでしょ?」

「そう!タマムシ大学出身なんだって!すごいよね」

「で、結局誰なんだろうね」

「案外チャンピオンとか?」

「シロナさん?あの人、サポーターつけてたっけ?」

「公言はしてないけど、噂はあるよ。ま、そもそもカイムさんのサポーターも噂でしかないけどね」

 

 ジムトレーナーから見ても、カイムの腕はジムリーダー足るものだと思う。そのカイムがサポーターをするとなると、相当な腕のトレーナーになると予想できるが、そもそもこの話自体が噂でしかない。これ以上考えたところで無駄だろうと二人は判断し、最初の話題に戻った。

 

「それでさ、機嫌がいい理由ってなんだと思う?」

「んー…彼女関連とか!」

「えっ⁈彼女いるの⁈」

「らしいよ。この前、おじさん達と話してる時に聞こえたから間違いないと思う」

「へー!でもいてもおかしくないよね。結構ハイスペックだし」

「どんな人なんだろうね」

「想像つかないなー」

「彼女の前だと、どんな顔すると思う?」

「あんまり変わらないんじゃない?でも態度はデレデレとか」

「あり得る〜」

 

 この時、カイムは論文の添削を読みながら小さくくしゃみをしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトブキシティ

 テレビコトブキのビルにシロナは来ていた。目的は無論、リーグ前のインタビュー。

 

「シロナさん、今回もよろしくお願いします」

「ええ、よろしくお願いしますね」

 

 リーグ広報の職員に挨拶を済ませ、質問内容やら細かい擦り合わせ、リハーサルの手順などの打ち合わせを進めていく。このやり取り自体はシロナがチャンピオンになった時から変わっていないため、ある程度順序を把握しているシロナはサクサク進めていった。

 

 そうしてしばらく打ち合わせをし、一区切りついたところで休憩になる。この後撮影などもあるため、スタジオのセッティングを進めるとのこと。それ故に少しの間シロナは休憩ということになった。

 スタジオのセッティングが進んでいくのを眺めていると、一人の女性がシロナの元へ歩み寄ってくる。

 

「あら、シロナさん。もしかして、広報インタビューですか?」

「あ、キクノさん」

「ふふ、元気そうね」

 

 シロナに声をかけてきたのはキクノ。シンオウ地方四天王の一人であり、四天王最年長の女性だ。長いこと四天王の座にいることもあり、シロナがチャンピオンになった時から交流がある。

 

「はい、広報インタビューです。ここにいるってことは、キクノさんもですよね」

「そうよ。このインタビューも何回目かしらねぇ」

 

 長いこと四天王を勤めるキクノ。その年月はシロナのものを遥かに上回る。いつ頃からこの広報があるのかシロナは詳しく知らないが、シロナが旅に出る前からあったことは確か。その時からキクノは四天王の座についていたため、通算で二十回を超えるインタビューを受けていることになる。

 

「ふふ、初めてシロナさんがインタビュー受けていたのが、ついこの間に思えるわ。初めてのインタビュー、ガチガチに緊張してたものね」

「や、やめてくださいよキクノさん…初めてだったんですから」

「リーグを優勝した時のインタビューでは堂々としてたのに、こっちじゃリハーサルで上がってしまってたことを考えると、やっぱり年頃の女の子ね。今はもう立派なレディだけど」

「もう十年以上ですからね」

 

 シロナが先代チャンピオンに勝利してから、十年以上が経過した。あの日のことは、今でも鮮明に思い出せる。最強への挑戦に期待を膨らませ、刺すような覇気に満ち、窒息しそうなほど研ぎ澄まされた空気の中をシロナは戦い抜いた。きっとあの日のシロナと昨年のヒカリは同じ思いだったのだろう。

 そしてキクノはその時から四天王を勤めている。先々代チャンピオンとして名を馳せていたキクノは、四天王という地位に留まり、今も後進の育成として、向かってくるチャレンジャー達に立ち塞がる壁として存在していた。シロナがまだジムチャレンジャーだった時に出会い、今もこうして肩を並べている。その事実がキクノというトレーナーが、大地の堅く確固たる信念を持ち続けている証拠とも言えるだろう。

 

「去年は当たらなかったし、今年は当たりたいものね。去年のシロナさん、とっても強くなってた。きっと今年はもっと強いんでしょうね」

「もちろんです。常に進化し続けてこそチャンピオンですから」

「ふふ、若さとは素晴らしいわね」

 

 キクノはそこで一度言葉を切ると、せっせとセッティングを進めるスタッフ達を見つめる。

 

「この歳になると、若い人たちの進化が今まで以上に嬉しくなるの。わたしのような先人達の強さを吸収し、さらに高みへ昇っていく若い才能…それをポケモンリーグで見るのが好きでね。毎年楽しみなのよ。ここ最近はシンオウ地方に限らず、たくさんの才能が台頭してきてるじゃない?だからよりそう思うのよ」

「そうですね。ヒカリちゃんやジュン君、他地方ならレッドやグリーンみたいな素晴らしい才能が頭角を見せていますから」

 

 今の若いトレーナー達の才能は世界的にも注目されている。カントーチャンピオンのレッドを筆頭に、レッドのライバルであるグリーン、二人の幼馴染のリーフ、ホウエン地方であればユウキ、シンオウ地方ならヒカリとジュン、イッシュ地方ではチャンピオンアイリスや最強の挑戦者と名高いトウコ、Nに並ぶ英雄トウヤなど、たくさんのトレーナーが世界に名を轟かせていた。シロナもチャンピオンになった当初、シンオウ地方最年少チャンピオンとして相当注目を浴びたため、当時の自分と同じように現れた才能達を見て懐かしい気持ちになると同時に、自分も負けないように精進していこうと考えていた。

 

「シロナさんの時もすごかったわね。貴女がチャンピオンになった時、わたしが準決勝でバトルしたから」

「そうでしたね。あの時のバトル、今でも思い出せます。あの時、当時のチャンピオンであるクロツグさんと、先代(・・)チャンピオンのキクノさん…どちらとも戦えたんですから」

 

 キクノは、クロツグがチャンピオンになる前のチャンピオン…つまり、シロナの先々代チャンピオンということになる。

 

「もうあれから十年以上経つのねぇ…時が経つのは早いわ」

「そうですね。私も、よくそれを思います」

 

 チャンピオンになってから、カイムと出会ってから…どこから考えても、もう長い時間が経過した。まだまだシロナの人生は続いていくだろうが、それでも過去の時間はあっという間に過ぎ去っていったように感じてしまう。

 そこで一度話が途切れるが、キクノはすぐにシロナに問いかけてくる。

 

「そういえば…助手君は?」

「ああ、カイムですか。ここにはいませんよ。今はミオジムでナギサジムと合同トレーニングしてます」

「あらそう!見覚えあると思ってたけど、やっぱりトウガンさんの後釜は助手君なのね!」

 

 キクノはカイムとの面識はほぼない。だが一人でなんでもやってきたシロナが『助手を雇った』という話を聞き、一度だけ挨拶をしたくらいだ。そのため名前と顔が一致しきっておらず、もしかしたら、程度の認識だったらしい。

 

「それでええと…助手君はカイム君でいいのよね」

「はい。合っていますよ」

「カイム君、確か貴女の弟子でもあるのよね。バトルも考古学も」

「そうですよ。まだまだ未熟ですが、自慢の弟子です」

「そう!ジムリーダーになるなんて、シロナさんの弟子なだけあるわね。それに、トウガンさんの後釜になれるほどなんて…」

「地力なら、まだトウガンさんの方が高いと思います。でも、彼には鋼のように硬く、逆境に屈しない強い心があります。いつか、シンオウ地方のトレーナーを支えていけるようなトレーナーになれますよ」

「貴女がそこまで言うトレーナー…ふふ、わたしが現役のうちにお手合わせ願いたいわね」

 

 カイムの実力は、当然キクノには遠く及ばない。だが単純な実力のみでバトルの勝敗は決さない。折れずに逆転の活路に辿り着くまで粘り続ける。それこそ彼が厳しい修行の果てに見出した強さだった。その強さがあれば、きっとキクノ相手にもいいバトルができるだろうとシロナは考えていた。

 キクノはそこで渡されていたお茶を手に取る。それを開けて中身を飲むと、シロナに向き直った。

 

「それで?」

「?」

「カイム君、付き合っているんでしょ?どんな調子?」

「!」

 

 キクノに二人の関係は伝えていない。だというのに、キクノは二人がそういう関係だと言い当てた。ほんの一瞬シロナは驚いた表情を見せるが、すぐに普段の表情に戻る。

 

「誰から、お聞きになりました?」

「いいえ。ただ、貴女が異性を長らく側に置くということは、そうなのかなって。それに、助手ができてから貴女はより強く、美しくなった。美しさに磨きがかかったって感じかしら?恋をすると、女性は美しくなるからね」

「…キクノさんには、敵いそうにないですね」

「ふふ、長いこと生きてると色々わかるものよ。それで?問題なく仲良しでいられているかしら?」

「はい。彼、とても優しいので」

「あらあら、いいことね。あまり表情豊かには見えなかったけど、ちゃんとお互い想いは伝わっているようね」

 

 キクノがカイムと顔合わせした時、彼の表情はほとんど動かなかった。誰に対してもそうであるためキクノがそう思ってしまうのは仕方ないことだが、一度しか会っていないキクノにもそう思われているという事実にシロナは思わず苦笑した。

 

「すみません…彼、誰が相手でも表情が動かないので」

「いいのよ、気にしないで。表情が動かなくても、きちんと礼節は弁えていたもの。それに、彼が優しくて優秀な人だってことは評判でわかってるから」

「あら、そうなんですか?」

「ええ。とはいっても、その評判とシロナさんの助手君が同一人物だって一致したのは今だけどね」

 

 四天王とチャンピオンはリーグ全体の運営に関わることもある。中でもキクノは、積極的にリーグ運営に関わろうとする節があった。そのため新人ジムリーダーであるカイムのことも把握はしていたし、ここ最近の評判も耳にしていたらしい。

 

「カイム、評判いいんですね」

「ええ。ジムリーダーとしての腕はまだまだだけど、教えるのが上手いみたい。新米トレーナーからリーグに出るような腕の立つトレーナーまで、丁寧に分析して指導してくれるみたいよ」

「なるほど、その評判はあってもおかしくないですね」

 

 カイムは、残念ながら感覚的に物事を捉えることが得意ではない。雰囲気で察していくことができないことを自覚しており、その弱点を克服するためにシロナが課した課題は『言語化』であった。どんなことに於いても、言語化していくことを意識させた。その言語化の成果が出るまで多くの時間を要したが、その分カイムは初期と比べて大きく伸びた。この言語化という課題をこなしてきただけでなく、『できない者の気持ちがわかる』という凡人故の特性も相まって、カイムの指導能力は新人ながらすでにジムリーダーの中でもトップレベルだった(単純な腕は下の方だが)。

 

「ジムリーダーも四天王も…それぞれの形で役割を全うしているけど、彼の形はこれからのトレーナー達にいい刺激を与えそうね」

「たくさんのトレーナーは自分で試行錯誤しながら強くなるしかない。でも、若いトレーナー達『皆が通る道』を指し示すことができる存在…そんな存在にカイムはなれると思うんです。これからの世代を下から支えるようなトレーナーに」

「ふふ、なるほどね。これからの世代を支える存在…そんな人が側にいるシロナさんが強く、美しくなった理由がよくわかるわね」

「キクノさんは、もうチャンピオンを目指さないのですか?」

 

 キクノは先々代のチャンピオン。かつてはシンオウの頂点に君臨していたトレーナーだが、長いこと四天王の座でトレーナー達の壁としてあり続けている。年齢により衰えてはいるものの、シンオウの頂点に再び立つだけのポテンシャルは持ち合わせているだろう。

 

「そうねぇ…今は、上を目指すよりも下のトレーナー達の壁としてあることに楽しさを感じているから」

「そうですか」

 

 それもまたトレーナーとしての在り方。故にシロナはどうこう言う気はない。

 だがそれと同時に、キクノは楽しそうに笑みを深くする。そして大地のように静かで、重圧感のある覇気がシロナに向けられた。

 

「でも、少しでも隙があればすぐにその場所を奪いにいくわよ?」

 

 単純な覇気の強さは、レッドの方が上。だがレッドのように苛烈で鋭い覇気ではなく、のしかかるような強さはキクノが積み上げてきた年月の重みを感じさせた。

 だがシロナにとって覇気は怯む理由にはならない。むしろ、闘志を燃やす薪にしかならなかった。

 

「上等です」

 

 鋭く、強い覇気。どんなに才能のあるトレーナーであろうと、この覇気を持つシロナに勝つことは困難を極める。改めてシロナが十年以上シンオウ地方の頂点に君臨していられた理由をキクノは肌で感じた。

 ほんの一瞬。その僅かな時間にぶつかり合った覇気がスタジオ全体の空気を僅かに軋ませる。その空気の変化に気づけたスタッフは片手で数えられる程度だが、すぐに二人は覇気を納め、緩やかに笑い合った。

 

「ふふふ、今年のリーグも楽しみね!シロナさんがどんなに強くなったか、見せてもらうわ」

「強くなってもコンセプトは変えません。バトルを心から楽しむ…それが私が最強でいられる理由ですから」

「あらあら、言うじゃない。でも、揺るがない大地の強さも忘れないでね。貴女のガブリアスとトリトドンの指導をしたのが誰か…忘れたとは言わせないわよ」

「だからこそですよ。かつての指導をもとに、どれだけ強くなったか比べてみてくださいね」

 

 柔らかく微笑む二人だが、その目には強い闘志が宿っている。後進の育成に力を入れるキクノだが、やはり彼女も生粋のトレーナー。強いトレーナーと戦うことに喜びを覚える存在だった。

 

「シロナさん!そろそろリハーサルなので準備お願いします!」

「あら、お呼びね」

「みたいです。では、行ってきますね」

「頑張ってね」

 

 スタッフに呼ばれたシロナはスタジオへと歩いていく。

 その後ろ姿をみて、キクノは今年のリーグが更に楽しみになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

 日が落ち始めた頃、シロナは帰宅して。午後からの取材の後、キクノとの談笑をしていると、それを見たスタッフが急遽座談会を提案した。シロナとキクノはここまでの時間を振り返るいい機会だということで、それを受け入れた。その結果、予定よりもだいぶ帰宅時間が遅くなってしまった。

 シロナの声に反応したのか、台所に続く扉がわずかに開く。そこからブラッキーが顔を出した。

 

「ただいま、ブラッキー」

 

 シロナの顔を見たブラッキーはピンと耳を立てると、とてとてと歩み寄りシロナにだっこをせがむ。シロナはブラッキーを抱き上げ優しく撫でていると、カイムが顔を出した。

 

「おかえり」

「ただいま。遅くなってごめんね〜」

「いい。連絡きたし、道草食ってたわけでもねえんだろ」

「もちろん。貴方のごはん食べたいから、どこにも寄らず一直線で帰ってきたわ」

「文字通り、一直線か」

 

 シロナの背後にいるウォーグルを見てカイムはそう呟く。コトブキシティから自宅まで本当の意味で一直線で帰ってきたのだろう。

 

「じゃ、手ェ洗ってこい。飯にしよう」

「カイム」

「ん?」

 

 シロナはカイムを呼ぶと片腕を広げた。その意味をすぐに理解したカイムは、シロナの体に手を回し、シロナを抱き寄せる。カイムの行動にシロナは満足したように『むふー』と息を吐いた。

 

「満足したかよ」

「もー少し」

「へーへー、好きなだけどーぞ」

 

 軽口を叩きながらも、カイムは回した腕に程よく力を込めてながらぽんぽんと背中を叩く。二人の間に挟まれているブラッキーも、大好きな二人に挟まれてご満悦の様子。

 しばしの抱擁の後、二人は離れた。

 

「じゃ、手ェ洗ってこい。飯だ」

「ええ」

 

 シロナはブラッキーを下ろすと、洗面所へと歩いていく。残されたブラッキーはご機嫌で台所に戻るカイムについていくが、帰って早々非常に糖度の高いやり取りを見せられたウォーグルは遠い目をしていた。尤も、その遠い目に気づく存在はここにはいないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食後、洗い物を済ませたカイムがリビングに向かうと、シロナがタブレットを操作し、ガブリアスが何かをじっと見つめていた。ガブリアスが何をしているかはわからないが、シロナは何か調べ物をしているようだった。

 

「何調べてんだ?」

 

 カイムの問いかけに反応したシロナは、タブレットの画面をカイムに見せる。タブレットにはポケモンのタマゴについての情報が記されていた。

 

「カイムが前にヒガナからもらったタマゴ、何のタマゴかわかってないでしょ?だからせめて、何のタマゴかだけでも調べてみようと思って」

「ああ、そういうこと」

「でもダメね。トゲピーみたいな一部のポケモンを除いて、ポケモンのタマゴって基本的に見た目同じなのよね」

 

 一部の例外を除き、ポケモンのタマゴの柄は基本的にどのポケモンも似たようなもの。そのため、タマゴの柄でどのポケモンが生まれてくるかを判別するのはなかなか厳しい。

 

「前に俺の方でも調べてみたが、やはりダメだった。柄だけで調べるのは、多分不可能だろうよ」

「そうね。生まれるまでまだまだかかるでしょうし、のんびり待つことにしましょうか」

「しかし、それはそれとして…ガブリアスは何してんだ?」

 

 ガブリアスは先程からずっとタマゴのことをじっと見つめている。毛布に包まれ、バスケットの中で温められているタマゴを何をするでもなくただじっと見つめていた。

 

「さあ…ただ、何か気になるみたいなのよ。ガブリアスも何が気になるのかよくわかってないみたいだけど、なんとなく側にいたいのかもね」

「へえ…まあ、ポケモンは人間よりも感覚が鋭いしな。何か感じるものがあるのかもしれん」

「もしかしたら…同族の気配を感じてる、とか?」

「同族?ならあのタマゴはフカマルか?」

「わかんないわよそれは。同族といっても、ドラゴンタイプって意味の同族かもしれないし。そもそもこれも直感で言ってるだけだしね」

「ドラゴンタイプか…まあ、あり得ん話ではないか」

 

 ヒガナが自身の過去を語った際、ボーマンダやオンバーン、ヌメルゴンの存在が明らかにされている。もしかしたらシガナのポケモンだったかもしれないが、ヒガナのポケモンだった場合、そのあたりのドラゴンタイプのポケモンの可能性もないとは言えない。

 

「そもそも、ポケモンのタマゴっていまだにどうできるかわかってないんだよな」

「そうなのよね。いつも知らない間にできてるっていうし…タマゴについてわかっているのって、多分同じタマゴグループじゃないとできないっていうのくらい?あ、あとメタモンとはどのポケモンともタマゴができるっていうのもあるわね」

「ふむ…いつのまにかある以上、どのポケモンのタマゴなのかわからないのも仕方ないわな」

「だからこそ、ポケモン達の直感が手がかりになるかもね。私の手持ちでドラゴンタイプなの、ガブリアスだけだし…近いものを感じているのかも」

「ガブリアスが案外母性感じてたりしてな」

 

 シロナのガブリアスの性別はメス。それ故にこのタマゴに対して何かしら母性でも感じているのかもしれない。普段は陽気な性格をしているガブリアスだが、面倒見が良く、他のポケモン達からの信頼も厚い。だからなのか、このタマゴに対しても面倒見の良さを発揮しているのかもしれない。

 

「この子、面倒見がいいから」

「主人に似たのかね」

「あら、そう?」

「似てるよ。こんな俺を最後まで面倒見てきたんだ」

「かもしれない。でも、最後までついてきたのは貴方よ?途中で諦めず、食らいついてきたからできたこと。全部、貴方の力」

「…どうだかな」

 

 カイムはシロナの言葉に内心で苦笑する。何度も諦めようとしていた以上、自分の力だけで食らいついてきたとは言い難い。

 そんなカイムの真意を読み取ったシロナは、自分の隣にカイムを座らせる。そしてぎゅっと抱きしめた。

 

「何にしても貴方が頑張ったからよ。そこは自信持っていいの」

「…そうかい」

 

 相変わらず自己評価が低いカイムだが、シロナと出会ってかなり改善された。そういった部分にもカイムの成長を感じられ、シロナとしても嬉しいものだった。

 そのまま離れようと体を起き上がらせようとするが、シロナはカイムを抱きしめた腕に力が入っており抜け出すことができない。

 

「…おい」

「なに?」

「…………」

「いや?」

 

 優しい声色と慈愛深い微笑み。だがその声の中にどことなく圧を感じる。

 

「いやじゃねえよ」

「ありがと。じゃあ、充電させてね。今日は2回もインタビューあって疲れたから」

 

 想定外の2回インタビュー。シロナとしても、大先輩のトレーナーと腹を割って話し合えたことは非常に有意義な時間であった。だがそれはそれとして、疲弊はしてしまう。明日もまた仕事はある。体力が比較的高いシロナといえど、回復は必要。だから愛おしい人を抱きしめて、充電したかった。

 

「…好きにしろ」

 

 やれやれといった様子ではあるが、なんだかんだで満更でもなさそうなカイムだった。

 

 

 そんな二人の側でポケモン達は遠い目をしながら思い思いの時間を過ごしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく抱き合っていた二人だが、風呂が沸いた通知音が聞こえてきたことで、互いに抱擁を離す。

 

「風呂、入ってこい」

 

 それだけ言ってカイムは庭に出る。そしてメタグロスを出すと、キリキザンも呼んでスポンジを手に取った。

 

「カイムは?」

「メタグロスとキリキザン磨く。少し、頭の中整理したくてな」

「あら、今日の合同トレーニングで何か掴んだ?」

 

 今日はミオジムとナギサジムの合同トレーニングだった。トレーニングやバトルの内容については夕食中に色々と聞いており、カイムとデンジのバトルの結果は二敗一分でカイムの惨敗だったという。そのことについてもあるだろうが、論文についても関係しているだろうとシロナは予想した。

 

「二敗一分の惨敗だったが、まあ色々と参考になった。さすがジムリーダートップの実力だよ。新入りの俺とは、強さの厚みが違いすぎる」

「培ってきた経験がまだまだ向こうの方が多いもの。仕方ないわ。でも、負ける気もないんでしょ?」

「ああ。少し、自分で考えてみたいこともあってな」

 

 シロナに相談せず自分で考えたい、と言うのはカイムにしては珍しい。大体どんなことでもシロナに相談してきたカイムだが、ここは己の頭で考えて辿り着きたい、という思いがあるのだろうとシロナは考える。

 

「そう。じゃあ頑張って考えてみて。必要ならいつでも手を貸すから」

「助かる。論文もあるから、結論が出るまで少し時間が必要だろうがな」

「だとしてもよ。人は、とても多くのものを考えることができる。今の貴方にできる最大限の力を尽くして、考えて抜きなさい。今の貴方なら、きっと望む答えに辿り着けるわ」

 

 シロナはカイムを鍛える中で、考えることを徹底させてきた。カイムに才能はないが、考える力はある。だからこそ、己の頭で考えさせ、その先に辿り着くであろう答えへと誘導していた。きっと今回考えるべきことも、シロナの力を借りながらであろうとも答えに辿り着けるだろうとシロナは確信していた。

 

「善処しよう」

「ふふ、頑張って」

「ああ。じゃ、風呂行ってこい」

「ええ」

 

 カイムの言葉にシロナは立ち上がる。と、そこで一つ気を張りっぱなしな雰囲気のあるカイムの気を緩ませてあげようと考えた。

 

「ねえカイム」

「ん?」

「一緒に入る?」

「⁈」

 

 唐突な提案にカイムは思わず振り返る。シロナの顔はイタズラを仕掛けた子供のようで、この提案が完全にカイムへのイタズラであることを瞬時に理解した。

 

「…バカ言ってねえで、さっさと行け」

 

 少し、ほんの少しだけ震える声。言葉を発するカイムの耳だけでなく、首、顔までも赤く染まっている姿をみて、シロナは楽しそうに笑った。

 

「はーい、わかったわよお母さん」

「誰がお母さんだ。はよ行け」

 

 そうボヤきながらカイムはメタグロスの体を磨き始める。その後ろ姿を見てシロナはリビングを出た。そして部屋で着替えを取り、風呂場へと足を運ぶ。

 服を脱ぎ、体を清める。長い髪は手入れが大変ではあるが、長いことこの手入れをしてきているシロナはかなり短時間で行えるようになっていた。

 一通り全身を清め、湯船に浸かる。そして湯気でぼんやりと霞む電灯を眺めていると、突然先程の提案を思い出し、顔を真っ赤に染めた。

 

(………押しすぎ、かしら)

 

 普段はシロナの方からカイムにちょっかいを出して大きなカウンターを受けるのが恒例になってきているし、シロナ自身そのカウンターを喜んでいる節がある。普段は見ることがあまりできないカイムから押してくる姿はシロナ的に嬉しいものでもあったが、それはそれとしてたまには赤面して狼狽える鉄仮面(カイム)を見たいという思いもあった。

 

「……やっぱり、ふいうちって強いのね」

 

 あの顔色すらあまり変わらないカイムをあそこまで真っ赤にさせた経験は、シロナですらあまりない。耳が赤くなる程度なら何度もあるが、顔全体が赤くなる様はそう見ることはできない。

 普段『ふいうち』か『カウンター』で真っ赤にさせられているシロナだが、今回はカイムに『カウンター』をさせる暇もなくノックダウンさせた。その事実が嬉しいと同時に、この『ふいうち』があまりにも強い反動を自身に与えることを今ここで理解した。

 

(…今更(・・)ではあるけど、やっぱり押しすぎたわね…)

 

 普段からベタベタしているとはいえ、今回の一撃は堅物のカイムを一撃で仕留めるだけもあり、シロナ自身にも大きなダメージを与えた。今シロナの胸中は、八割ほど羞恥で埋まっている。残りの二割は…

 

「……………」

 

 お湯で顔を洗う。歪む水面に髪を纏めた自分の顔が映し出され、自分の顔もカイムに負けず劣らず真っ赤に染まっているのが見えた。湯あたりするにはあまりにも入浴時間は短い。飲酒をしていたわけでもない。だというのに、胸の動悸は治らず、顔は熱い。お湯の熱さではない熱がシロナの胸中と顔を覆っていた。正直、あの提案についても今更(・・)ではあるのだが、いつまで経っても堅物で初心な二人にはまだハードルが高かった。

 

「…ベタ惚れね、私」

 

 この状態で長く入浴していると、本当に湯あたりしかねない。そう考えたシロナは早々に浴槽から体を上げるのだった。

 

 

 

 

 一方、同時刻。

 

「……………」

 

 カイムはメタグロスの足に頭を一心不乱に打ちつけ、煩悩を消し去ろうとしていた。その様子を見たキリキザンはカイムの気が触れたのかとオロオロするが、バシャーモがそのキリキザンの肩を優しく叩く。

 

 放っておけ。まともに付き合うだけ無駄だ。

 

 そんな思いが込められた諦観の視線を受け、キリキザンは『あっ(察し)』といった表情になる。そしてなおも顔を打ち付けるカイムの後ろ姿を諦めたように眺めていた。

 

「…………はぁぁぁ」

 

 数分後、何事もなかったようにメタグロスの体を磨き始めたカイムを見て、『こいつの精神構造はどうなってんだ』とポケモン達に不思議がられていたのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メタグロスがピカピカになり、キリキザンの頭の刃も綺麗に磨かれた頃、シロナは風呂から上がってきた。いくら比較的早めに出たとはいえ、そもそもの入浴時間が長いためニ匹の身体を磨ききるには十分すぎる時間だった。

 

「あら、ピカピカね」

 

 先程盛大に『じばく』しておいて、この変わりよう。

 とはいえ、カイムはシロナが風呂で悶えていたことを知らない。そのためカイムから見たらしてやられた、という思いしかないが、反撃できるほど精神的HPは回復していない。今日のところは負けにしておいてやる、と珍しく小物らしいセリフを胸中で吐きつつ、シロナの方を振り返る。タオルで乾きかけの髪を拭きながら立つシロナは大きめのTシャツにショートパンツという非常に防御力が低いものになっていた。

 またそんな格好して、と小言を言いたいところだが、今のカイムにはそれを言う余裕がない。やれやれと小さくため息を吐いて、メタグロスの頭を撫でる。

 

「今日、こいつらバトルで頑張ったからな。綺麗にした」

「今日のバトルは…デンジ君とだけ?」

「向こうのトレーナーともやった。ただ、ジムトレーナー相手には指導メインだったがな」

 

 なんならデンジの指導よりも評判が良かったりするのだが、それは別の話。そもそもカイムはそれを知らないのだが。

 

「ふふ、向こうのトレーナーにとても評判良さそうね」

「どーだかな。俺の指導がどうかは知らんが、デンジの指導が下手なのはわかった」

 

 デンジは天才、とまでは言わないが、非常に卓越した才能を持っている。それ故か、できない人の気持ちを想像することしかできない。基本的に言葉ではなく、バトルを通しての指導がメインだったデンジに対して、カイムは完全に言語化した上での指導。凡人からしたら、どちらの指導がわかりやすいか言うまでもない。

 

「それで?バトルはどうだった?」

「さすがに強え。シンオウジムリーダーの中で最強ってのも、眉唾じゃねえ。一戦目、二戦目はやりたいこと全部阻止された。タイプ相性のいいトリトドン使ってもダメだった」

「なるほど、やっぱりデンジ君はジムリーダーの中でも頭一つ抜けてるのね。去年のバトルでも、相当な実力を見せてくれたし。でも、一回は引き分けにできたんだ」

「二回のバトルであいつとあいつのポケモンの癖を捉えた。最後にその癖を利用して、デンジを誘導していったんだが…」

「それにも対応された、と。素晴らしい才能ね」

 

 シロナは、デンジとリーグ以外でも何度かバトルしている。それ故に、彼の非常に高い才能は実感していた。ジムリーダーとしてふさわしい実力を得たカイムを相手に二勝し、最後の最後に完全にポケモンの動きを見切ったカイムの秘策にすら対応した。今のデンジは、恐らく四天王に最も近い実力を秘めたトレーナーと言えるだろう。

 

「貴方がさっき言ってた考えたいことって、多分それ関連よね」

「ああ、まーな。ただ、あまり使う機会がない(・・・・・・・・・・)可能性があるから、気長に考えるとするわ」

「……そう。貴方がそう言うなら、それでいいわ」

 

 話の流れとして、バトル関連であることは間違いない。だがあまり使う機会がないというのはどういうことなのかシロナにもわからなかった。だがカイムが気長に考えると言った以上、それでいいとシロナは判断し、それ以上言うことはなかった。

 シロナは表情の動かない横顔を眺める。出会ったばかりの時にはあった陰りはなく、表情が動かないこと以外は一般的な青年だが、今は立派なトレーナー兼学者へと成長した。体も心も学生の時よりも遥かに逞しくなったが、ポケモンや大切な人へと向ける優しい瞳は変わらない。その優しい瞳がどうしよもなく愛おしく思えてしまう。先程のふいうち(じばく)の反動の余韻が残っていたためか、シロナはカイムのことを背後から抱きしめた。

 

「お?どした」

「なんでもないんだけど…なんか、急に『好き』が溢れてきて」

「なんだそりゃ」

「ふふ、私もよくわからない」

 

 本当によくわからない。ただ、好きという感情が溢れてきて、こうしたくなってしまった。

 

「ねえカイム」

「ん」

「好き」

「そうかい。俺もだ」

 

 自分の体に回されたシロナの腕を優しく撫でながら、答える。あの日、あの場所にいなければ、今の自分はいない。偶然だったとしても、あの日シロナに見つけてもらえた。シロナの側で、自分は成長させてもらえた。両親とは別ベクトルで、多大なる恩義を感じている。

 だが、もしそうでなかったとしても、きっと自分はシロナという女性のことを好きになっていたのではないか。そう思うこともあった。たらればではあるが、違う形で出会うことができていたら…その時もきっと、自分はシロナの側にいたいと願うようになったのではないか。この先、カイムが望んでいることについて考えるうちに、そう思えるようになってきた。

 

「カイムは、私のどんなところが好き?」

「どんなところ、か…難しい質問だ」

「難しいの?」

「ああ、難しい」

「どうして?」

 

 シロナがカイムのことを想っているように、カイムもシロナのことを想っている。それは間違いないし、シロナもそれを実感している。だが、カイムはここで『難しい』と言った。

 

「…言わなきゃ駄目か?」

「だめ。言って」

「……お前の、好きじゃないところを探す方が難しいんだよ…」

 

 照れ臭さそうに口をへの字にしながらカイムは言う。その耳は、赤く染まっていた。

 

「…え?」

「…お前の…ポケモンへ愛情深いとこも、学問へ熱心なとこも、家だとだらしないとこも…全部」

「あ…」

 

 カイムの言葉に、シロナは思わず言葉を失う。下がったはずの体温が再び上がるのを感じた。

 

「……満足か?」

「…ど」

「ど?」

「どこが…一番好き?」

「前に言ったろ…」

「もう一度…聞きたいの」

 

 カイムの肩に顔を埋めながら、問いかける。シロナの顔から伝わるカイムの体温も高い。互いに体温が上がっているのを感じながらも、カイムは口を開いた。

 

「…シロナは、俺とポケモンを信じてくれた。誰もが…俺たちですら、一度諦めたこの道を進むことになんの疑問も持たず、『できる』と。お前から見たら純然たる事実だと思ったからなのかもしれんが…それが、俺にとってどんだけ嬉しかったか」

 

 ただ信じてくれる。シロナはずっとカイムのことを心から信じている。たったそれのことだが、誰もが諦め、諦観された自分のことを一度も諦めなかった。出会った時から今まで自分のことを変わらず、心から信頼している。それだけで十分だった。

 

「ああ、俺がお前のことを愛する理由にそれ以上はねえよ」

 

 歯が浮くような言葉。だが、カイムの心をそのまま言葉にしたものでもある。心の底を言葉にしたことは、あの初めて心をそのまま口にした夜以来何度かあるが、それでもいまだに慣れない。耳が非常に高い熱をもっているのがわかる。

 

「…………」

「なんか言えよ…」

「無理」

 

 顔が熱い。前に言われた言葉と同じだが、何度聞いても嬉しさと愛おしさが溢れてしまう。ふいうち(じばく)の反動が無ければ反応できただろうが、今はそうもいかない。

 少し待ってみたが、結局シロナは動かない。はあ、とカイムは大きくため息を吐くと、振り返ってシロナのことを抱き上げた。

 

「えっ、わっ!」

「よっ」

 

 カイムは抱き上げたまま回る。遠心力でシロナの長い髪がふわりと舞い上がり、月明かりに照らされて金色の髪が美しく輝いた。

 

「お前の髪は綺麗だな」

「あら、貴方の瞳も綺麗よ」

「お前ほどじゃねえよ」

 

 なおも抱き上げたままのカイムに、シロナはおずおずと尋ねる。

 

「ね、ねえ…重くない?」

「重いいってぇ!」

 

 あまりにもストレートに応えるカイムに思わずシロナはカイムの額を叩いた。叩かれながらもシロナを落とさず抱き上げたままのカイムは、内心で自分のことを褒めた。

 

「そんなストレートに言わないでよ!」

「ああ⁈成人人間一人だぞ⁈重いに決まってんだろ!」

「女性に重いって言わないの!女性は体重に敏感なんだから!」

「気にするような体重してねぇだろ!」

「そうだけど!…って、なんで私の体重知ってるの?」

「いや知らねえよ!テキトーに言っただけ…って暴れんな!危ねぇだろぉお⁈」

 

 年甲斐もなくギャーギャーと騒ぐ二人。抱き上げられたシロナは暴れて、抱き上げていたカイムはバランスを崩して倒れた。カイムが倒れたことで、二人は地面に転がった。

 カイムは咄嗟に自分が下になるようにしたため、シロナが地面につくことはなかった。カイムの顔の側に自分の顔がある。じっと見つめる青い瞳に、引き込まれそうにかる。

 

「シロ…」

 

 すっと、唇を重ねる。僅かな時間ののち、顔を引き上げた。キスされたカイムは少しだけ惚けた顔をしていたが、すぐにシロナを抱き寄せる。

 

「ありがとう、俺を見つけてくれて」

「私こそ。貴方を見つけた時、私も貴方に見つけてもらったんだから」

 

 互いの心音を感じながら抱き合う。月明かりに照らされながら、二人はお互い出会えたことに心から感謝した。

 

 

 

 

 

 

 そしてそんな糖分が高すぎる二人を見て、ポケモン達は遠い目をする。

 

 

 

「おんみょーん」

 

 

 

 夜空にミカルゲの鳴き声だけが響くのだった。

 

 

 

 

 




砂糖でした。


UAが80万いきました。
こんな私が壁になって見てたいだけの話がこんなに見られてるの面白く感じてしまいます。
記念にちょっとした小話でも書こうと思います。ネタが思いつけば。

シロナ
ふいうちをやろうとして『じばく』になった人。シンオウ地方で数少ないメガシンカの使い手だが、唯一とは言っていない。砂糖漬けになるとここで書くことがない。はよ結婚しろ。

カイム
指導力だけならデンジを大きく上回る。デンジとのバトルは一方的でもなかったが、引き分けが限界だった。デンジのジムリーダーとしての姿が割とだらしなかったため、散々小言を言ったが効果はなかった。表情は動かないが、内心はシロナにデレデレ。

キクノ
他に年配トレーナーいなかったから、先々代チャンピオンということになってもらった。個人的にはマスタードポジに近いものだと勝手に考えてる。鑑識眼はカイムをも上回るが、指導力はカイムの方が若干高い。二人が組んだら、どんな凡人トレーナーもエリートトレーナーになれる。


今後の予定(閑話を除く)
ポケモンリーグ
タマゴ関連
N再会
カイム、弟子を取る
カイムの論文関連
カルネ来訪
レッドとグリーンとの再会
例のイベント

とりあえずこんな感じです。
今年の間に本編完結させたいけど、閑話いれたら多分無理。でも書く。


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