ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

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生きとったんかワレェ!!!
と、思う読者もいると思います。
待っている方がいたかはともかく、本当にお待たせしました。
色んな意味で、お待たせ致しました。

バトルシーン書くのは好きですが難しくて筆が進まない+忙しさ限界突破で発狂しながらブリッジしつつ執筆をしている職業病です。
そこの読者、誰が限界社畜ですか。これはただの発作です。



ようやく、ようやく辿り着いた。
58話です。

四万時書いておいて、決勝戦終わってない。
ただ決着はすぐに更新できます。

駄目だこの作者、早くなんとかしないと…って思ったそこの読者。


もう手遅れです。


58話 スズラン島③

「ダイゴが見てきた中で一番綺麗な石ってどんなやつだった?」

 

 隣で採掘したばかりの『雷の石』を丁寧に布巾で拭いているダイゴに、カイムはそう問いかけた。

 ダイゴは石から顔を上げると、嬉しそうにカイムへ目を向ける。

 

「もしかして、カイムも石に興味が出たのかい⁈」

 

 まだ声変わりもしていない幼さが強い声でダイゴはそう言う。だがカイムは顔を顰めると、否定するようにしっしっと手を振った。

 

「違えよ…いや全く興味がないつったら嘘になるけど、採掘までしようとは思わん」

「ええ〜面白いのに…」

「それより、どうなんだ?」

「一番綺麗な石か、難しいね」

 

 楽しそうに言いながらダイゴは手にある雷の石を見つめながら答える。

 

「綺麗というのも、どの段階かにもよって違う。掘り出したばかりの原石か、原石をただ磨いただけなのか、カット加工を入れたものか…どの状態にも相応の魅力がある。それに石は純度によって色合いが変わる。純度が高ければ澄んだ色になるし、不純物が含まれていたとしてもこれもまた違った良さがあるんだ。純度が似たようなものであったとしても、形成されていく過程が違うとまた違った様相にもなるし、形も全然変わってくる。その土地の温度や湿度の影響も受けてくるから、どの状態でも違った魅力があるんだ!そうだ見てくれよ!この前インターネットで見つけたんだけどこの石が…」

「俺の話聞いてた?」

 

 自分の質問から脱線していくダイゴに呆れたようにため息を吐きながらカイムは言う。本当に石が好きなんだなと思うと同時に、そこまでして布教しようとしてくるのをやめてくれと呆れる。

 そうだったと呟き、ダイゴは手元の石に目を落とす。

 

「一番綺麗な石、だったね。うーん…なかなか選び難いんだよね」

「そんなに難しいのか?」

「うん。さっきも言ったけど、状態によって石は様相が全然違う。それぞれ良さがあるから選べないんだ。それに、結局は人の好みになるから」

「…わかんねえよ」

 

 難しい顔をするカイムに、ダイゴは石を光に透かしながら言う。

 

「そうだなぁ…じゃあこう例えよう。カイムもルビー、サファイア、エメラルドはわかるよね?どれが一番綺麗だと思う?」

「どれも綺麗だと思うけど…うーん……強いて言えば、エメラルドかな」

「そう、そういうこと」

 

 わからないとでも言うようにカイムは首を傾げる。

 

「綺麗な石というのに定義はない。数値化できる部分もあるけど、結局はその人の好みで何が優れているか決まるからね。ボクは石の色んな側面全部ひっくるめて好き。だから全部の状態で一番を決めることはできない。決める場合は、ボクの好みが大きく反映されてしまう。だから簡単に一番をと言われても答えにくいんだ」

「じゃあダイゴの好みでいいよ」

 

 ダイゴの話はイマイチピンと来ていないが、とりあえずダイゴの好みを聞ければそれでいいと考え、カイムは問いかける。

 

「ボクの好みかぁ……そうだなぁ…敢えて選ぶなら翡翠の原石かな」

「翡翠?」

「うん。どの石にも原石の時点で魅力はある。ただ翡翠は、加工前も後だけでなく原石時点で大きく状態が違う。それも大きくね。色んな面がある石だけど、翡翠はその中でもかなりその傾向が強い。道具に加工される石は多くあるけど、翡翠はその中でもかなり顕著だ。そういうところも魅力に感じるよね」

「ふーん」

 

 ダイゴの言葉に対してカイムは『なんか思っていたのと違う』みたいな答え方をする。

 

「…じゃあ、誰もが認める『綺麗な石』っていうのは無いのか?」

「誰もが一番と認める石はないかもね。でも誰もが『綺麗』だと思うような石はあるかも」

「どんな石なんだ?」

「色の好みが反映されにくい『透明な輝き』を持つ石かな。例えば、カット加工されたダイヤモンドとか、磨き上げられた水晶(クリスタル)とかね」

 

 ダイヤモンドや水晶は色が付いているものもあるが、基本的には透明。そういった透明な輝きを持つ石ならば、誰から見ても『綺麗』には分類されるだろうとダイゴは告げる。

 ダイゴの言葉を聞いて、カイムはダイゴの手にある雷の石に目を向ける。

 

「そうか、確かにそうかもな」

「石に興味出た⁈」

「いや…俺が知りたかったのはそういうことじゃないよ…」

 

 いつか自分も、ダイヤモンドや水晶のように透明な輝きを持つトレーナーになれるだろうかと考えていた。姉やダイゴのように誰もが認めるトレーナーに、才能がなくても努力を続ければなれる。頂点に立つことは難しいかもしれないが、透明な輝きを持つトレーナーとして認められることはできるはずだと。そう考えていた。

 

「ほら見てくれよカイム!こっちの石は…」

「だから…ああもう、わかったよ…」

 

 カイムの話を全く聞かず相変わらず石のことを楽しそうに語るダイゴの話に耳を傾けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

 目を開くと、そこにはブラッキーの赤い瞳。

 視線を巡らせ、今の自分がホテルの部屋であることを思い出す。目の前のデスクには、タブレット。ヒカリとジュンのデータを見返しているうちにうっかりうたた寝してしまったようだ。

 

「ブラッキー…」

 

 カイムの呟きにブラッキーは嬉しそうに笑い、頬を擦り付けてくる。優しくブラッキーの体を撫でながらカイムは外へと視線を向けた。

 

(随分と懐かしい夢だ)

 

 まだ旅を始めてからそこまで時間が経っていない時の夢。まだ、諦めていなかった時の、純粋だった(現実を知らなかった)時の思い出だ。

 

「透明な輝きか」

 

 カイムの呟きにブラッキーは首を傾げるが、なんでもないとでも言うようにカイムは首を振る。

 スモモとの試合で完全に風化し、トドメを刺したと思っていたかつての思いが蘇ってきた。姉やダイゴのように光り輝く誰かを見続け、輝きを持たない自分と見比べ続けてきた日々。宝石と石ころ。無価値だと己を見下し、上を賞賛して上を目指し続け、そして最後は石ころはどこまで行っても宝石にはなれないと諦めた。諦めた時の怒りと苦しみが、あの瞬間だけ蘇り、己の心を支配した。

 その影響で先程の夢を見たのだろうか。それとも、少し前に話したダイゴの影響か。はたまた、()()()()()()()()の影響か。何にしても、今となっては懐かしくもあり、どこか苦味もある記憶だった。

 

「…忘れないものだな」

 

 挫折したという記憶はやはり強いのか、乗り越えたとしてもやはり記憶からは抜けない。別段忘れたいとも思わないが、こういう時は思い出すのだなと少しだけ意外に思う。

 だが今は違う。かつての自分にはなかった新しい視点と、隣に立ちたいと思う存在。これだけのものが今の自分にはあるぞと、かつての自分に言い聞かせてやりたいとも思えるほどのものが今の自分にはある。

 

「憧れか」

 

 弟子と言えるくらい面倒を見ている少年、ミツルのことを思い出す。ユウキという天才に憧れ、同じようなバトルをすることに固執してしまった少年と、姉やダイゴに憧れた自分。どうしてもかつてを思い出すような少年を前に、放っておけなかったのだと今ならよくわかる。自分よりもはるかに才能がある少年が潰れてしまうことが我慢ならなかった。ダイゴに頼まれたのもあるだろうが、それ以上にかつての己を放っておけなかった。それだけの話なのだが、かつてを思い出したことで繋がるようにミツルのことも思い出したことに、少しだけ自嘲する。乗り越え、受け入れたからこそミツルに対して色々指導できたというのに、まだここまで奥底に残っているとは自分でも思わなかった。

 

(厄介なものだな、感情というやつは)

 

 ふと、似たようなことを言った男を思い出す。

 槍の柱で相対し、悪夢の底で決別した男、アカギ。あれからアカギの足取りは掴めない。熱心に探しているわけではないが、何一つ掴めないということもあり、もうシンオウ地方にはいない可能性すらある。

 

(アカギはこの大会見て……いや、見るわけないか)

 

 ガラル地方にいるイサナが見られるように、この大会はポケモンリーグがある地方ならばどこでも見られる。オーレ地方のようにリーグがない地方にいなければアカギも見ることは可能だが、シロナとカイムに良い感情を持っていないアカギが見るとはとても思えなかった。そんなアカギにとって嫌な思い出のある二人が組んでいる大会など見たくはないだろう。

 

 ぼんやりとそんなことを考えていると、ブラッキーがカイムの頬を舐めてくる。ブラッキーの舌の感触を感じつつ、甘えてくるブラッキーを優しく撫でた。

 

「相変わらず甘えん坊ね」

 

 暫しブラッキーを撫でていると、風呂から上がったシロナが髪を乾かしながら歩み寄ってくる。

 

「大会中だ。構ってやれる時間が少ねえから、余計にな」

「かわいいじゃない」

「まあな。ただ、もう少し年長者としての自覚があってもいいと俺は思うんだよブラッキーちゃん」

 

 ごろごろ。

 カイムの小言などまるで意に介していないブラッキーはすりすりと頭を擦り付けてくるだけ。やはりブラッキーに効果はないらしい。もしかしたらカイムの小言はエスパータイプなのかもしれない。

 

「効果はないってさ」

最初(ハナ)から期待してねえよ。この程度の小言で変わるならとっくに変わってる」

「でも変わってほしいわけでもないんでしょ?」

 

 シロナの言葉にカイムは肩を竦める。今更変わるとも思っていないし、変わってほしいとも思っていない。自分といたいと思ってくれるのならそれでいいとしかカイムは考えていなかった。

 

「だってよブラッキー」

 

 シロナに撫でられてブラッキーは気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らす。無表情がデフォルトのカイムと比べて表情豊かなブラッキーの可愛さにシロナは思わず頬を緩めた。

 カイムに甘えるブラッキーを抱き上げると、シロナはカイムにドライヤーを手渡す。

 

「乾かしてくれる?」

「へーへー。座れ」

 

 カイムは立ち上がりシロナを座らせると、ドライヤーとタオルでシロナの髪を優しく乾かし始める。何度も何度も乾かしてきたその手つきは非常に優しく、手慣れていた。

 

「優しい手つきね」

「髪は女の命だろ?命は丁重に扱わねえわけにはいかんだろうに」

「律儀ね。自分の髪は雑にする癖に」

「ほっとけ」

 

 そんな軽口を叩きながらも乾かす手は止めない。

 

「ねえ」

「ん」

「大会決勝に来てみてどう?前に大会自体は出たことあるけど、ここまでの規模の大会では初めてよね」

「そうだな」

 

 今回の大会はポケモンリーグと遜色ないほどの規模で開催されている。参加人数はともかく、集客数で言えば、まず間違いなくカイムが参加した大会の中では最大級のものだった。

 そんな大規模な大会の決勝に立つ。その事実はカイムになんとも言えない感覚をもたらしていた。

 

「なんというか、現実味がねえな」

「そう?あなたもあなたのポケモン達も、十分強いわ。ここに立っていたとしても、違和感はないわよ」

「実力云々はともかく、『俺』がそんな場所に立つのがな」

 

 きっとかつての己や周囲に言っても誰も信じないだろう。どう足掻いても、カイム一人ではここに辿り着くことは不可能。それは自他共に認める事実である以上、現実味がないという話も意味としてはわかる。

 

「あなた、まだ自分を一般人だと思ってるの?」

「一般人ではあるだろ…」

「ジムリーダーは一般人じゃないわよ。有名人よ有名人」

「そうか?」

「他の地方の人にも名前が知られるのよ?さすがに一般人は無理があるわ」

「………そうか」

 

 シロナの言い分があまりにも真っ当すぎて思わず納得してしまう。確かに他地方の人にも名前が知られるとなると、ただの一般人とは言えない。やはりこのあたりの考え方は簡単には抜けないらしい。

 

「そもそも、あなたの血族考えたら一般人は無理があるわ」

「…かもな」

 

 分家とはいえ、ホウエン地方に古くから根付いている一族の流星の民の出自を持つ。それを考えると確かに一般人とは言えないかもしれないが、あくまで血族が一般ではないというだけ。カイム自身の人生は、シロナと出会うまでは平凡極まりない。

 流星の民の話から、カイムはふと一人のことを思い出す。

 

「流星の民といや…ヒガナ、元気にしてるか?」

「この前連絡したわ。忙しそうだけど、元気みたいよ」

「そうか」

 

 伝承者の()()として動き、失敗した女性…ヒガナ。彼女は今、ホウエン地方のマグマ団とアクア団のサポーターとして活動し、両団のパイプ役として働いている。かつての行いがある故に、いまだにカガリやウシオからの当たりは強いが、挫けることなく懸命に動いているとシロナは聞いた。

 

「色々大変みたいだけど、前を向いて生きているわ。自分の罪と向き合い、シガナの思いを伝承するためにね」

「人は人と繋がることでしか何かを成し得ない。ようやくそれに気づけたようで何よりだ」

「あなたが言うと、重みが違うわね」

 

 笑いながらシロナはブラッキーを撫でる。ブラッキーは喉を鳴らしながらシロナの膝で丸くなった。

 そこでドライヤーの音が消える。手にした櫛でシロナの長い髪を梳かしていく手つきは、非常に優しい。気持ちよさに身を委ねていると、あっという間に終わってしまった。

 

「ほれ、終わったぞ」

「ありがと」

「んじゃ、ブラッキーのブラッシングはよろしく」

 

 カイムがブラッキーとムクホークをブラッシングするときに使う櫛を差し出してくる。シロナはそれを受け取ると、ブラッキーの短い毛を優しく撫でた。くすぐったそうに、気持ちよさそうに身を委ねてくるブラッキーを見て、シロナは思わず笑顔になる。ここまで感情表現が豊かなポケモンが、無表情のカイムに一番懐いているというギャップは今になっても面白くもあり、愛らしくも思えるものだった。

 

「気持ちよさそうね」

「ブラッシング、好きだからな」

「昔から好きなの?」

「ああ。イーブイの時からな」

 

 懐かしむように答えるカイムの声は優しく、慈愛に満ちていた。やはり最初のポケモンであるブラッキーとバシャーモは、カイムの手持ちの中でも特別な立ち位置なのだろうとシロナは思う。

 そこでふと、カイムのスマートフォンが目に入る。

 

「そういえばカイム、私がお風呂入ってる時に少し出てたわよね。なにしてたの?」

「ダイゴからちょっとな」

 

 澱みなく答えるカイムの言葉からは、何故か彼の親友であるダイゴの名前が出てきた。

 

「ダイゴ君?なんで?」

「今日のバトルの話とかも含めて、ちょいとな」

 

 ダイゴとの通話であればわざわざ部屋を出る必要はない。これは何かあるなと察したシロナは楽しそうにカイムに問いかける。

 

「ちょっとって何よ」

「言葉の通りだ」

 

 どうやら言う気はないらしい。だがなんとなく面白さを感じたシロナは少ししつこく聞こうとする。

 

「えー教えてよ。多分、石関連でしょ」

「あいつに頼るなんてポケモンか石しかねえよ」

「わかった!去年みたいに私の誕生日プレゼントでしょ」

 

 カイムは全く動じることなく肩を竦める。

 

「シロナは勘がいいな」

「あ、やっぱり当たりでしょ。カイム、サプライズ系苦手だもんね」

「わかっちゃいるが、そう言われるとちと癪だな」

 

 隠し事が苦手というより、シロナの勘が良すぎるが故に苦手に思われているだけな気もするが、否定する気も特にない。苦い顔をしながらシロナの正面に腰掛け、肘をついて外に視線を向けた。

 

「で?今年はどんなプレゼントを用意してくれたの?」

「そこまで教えてやる気はねえよ」

「もー…教えてくれてもいいじゃない」

 

 少しむくれるシロナを見て、カイムは外を眺めたまま口を開く。

 

「じゃあこうしよう。俺たちが優勝したら教えてやる。優勝できなかったら誕生日までお預けだ」

 

 カイムの提案に驚いたようにシロナは目を見開く。

 

「なーに?優勝できないと思ってるの?」

「いや、そんなことはない。ただまあ、これは俺にとって勝っても負けてもいい賭けだからな。互いにとって大したデメリット無しの賭けなら、特に問題あるまい」

 

 どちらでもいい。それが本心であることがシロナには声色でわかった。だがどうしてここまでするのかは少しだけ不思議でもある。去年も似たようなことをしていたため、カイムの性格上ぼんやりと教えるくらいはしてくれそうだと思っていたのだが、どうやら教える気はないらしい。

 

「むう…まあいいわ。そうしましょ」

「んじゃそういうことで」

「じゃあせっかく決勝の話が出たし、少し明日の話をおさらいしておきましょ。ちょうどタブレットもあるしね」

 

 シロナはデスクにあったタブレットを手に取り、決勝の相手であるヒカリとジュンのデータを呼び出す。

 

「二回戦でヒカリはヨノワールとマンムー、ジュン君はカビゴンとフローゼルを出した。つまり、明日はその他のポケモンが出ることになるわ」

 

 ヒカリの登録ポケモンはエンペルト、ヨノワール、バクフーン、マンムー、ドンカラス、ピクシー。ジュンはドダイトス、ムクホーク、フローゼル、カビゴン、ヘラクロス、ギャロップ。二回戦で出てきたポケモンを考慮すると、決勝で出てくるポケモンはそれ以外のポケモンとなる。

 

「ヒカリはエンペルト、バクフーン、ドンカラス、ピクシー。ジュンはドダイトス、ムクホーク、ヘラクロス、ギャロップだな」

「ええ。この中の誰が来るか考えて、私たちも手持ちを選出したわね」

 

 ヒカリもジュンもタイプバランスが良い。故に明確なタイプ有利対面を作ることは難しい。

 

「ポケモンのレベルはシロナには及ばないものの、かなり高い。一部のポケモンは俺よりも上」

「たった数年でここまでのレベルに育て上げるなんて、いつぞやのレッド君とグリーン君を見てるみたいね」

「やれやれ。天才を相手するのは骨が折れる」

「残念ながら、この大会に出てる人はみんな秀才。みんなあなたより格上よ」

「だろうな」

 

 参加者の中で才能のレベルを比較した場合、カイムは間違いなく最下層。本人もそれは自覚しているため否定するどころか肯定した。

 だがシロナが言いたいことはそれではない。

 

「でも、才能が一番凡庸なあなたがここまで来られたことも事実。才能は確かにあった方がいい。ある一定のところを境として、それ以上はいけなくなる。でもそれが何かを諦める理由にはならないし、こうしてあなたみたいに純粋なバトルの才能がなくとも、それ以外の能力がある人もいる」

 

 バトルの才能だけでバトルは決まらない。もし才能だけで全てが決まるなら、カイムは決勝まで来れていない。シロナの力を持ってしても、シロナ単独の能力だけでこの大会を勝ち抜くことは不可能だった。だからここまで来られたのは、カイムの実力があったこと、そしてシングルバトルでは決して発揮されない隠れた能力があったことが起因している。その事実を今一度シロナはカイムに実感してほしかった。

 

「悪くねえ。こうして、天才に混ざって戦い抜けたことは、存外に嬉しいものだ」

「ふふ、実感してくれてよかった」

 

 シロナはブラッキーを撫でるとタブレットに視線を戻す。

 

「ごめん、話が逸れたわね。二人の手持ち的に、ドンカラスとムクホーク以外に地面タイプの一貫が取れてる。逆に、鋼タイプの通りが悪いわ」

「バシャーモとムクホークが使えん以上、俺はタイプ相性が悪い。加えて、ジュンの手持ちは物理防御が厚めだ。ムクホークの『威嚇』もあるしな」

「ヒカリちゃんはバクフーンいるからルカリオとメタグロスはきついけど、ピクシー、エンペルトは通りがいい。ただドンカラス選出もあるし、メタグロスの選出は難しいわ」

 

 ヒカリとジュンの手持ちは全体的に鋼タイプへの刺さりがいい。それ故に、選出可能なポケモンのうち半分が鋼タイプのカイムにはやや相性が悪かった。やりようはあるだろうが、方法が限られてくる。その分、対策されやすくもなるだろう。

 

「攻撃に関しちゃ、今回はかなりシロナ頼りになる部分が多そうだ」

「任せて。ただ、一部の相手はカイムに頑張ってもらわないとだからね?」

「わかってる。今回は…向こうに合わせて変則的にジョブを変えていく感じにするしかあるまい」

「得意でしょ?」

「シロナほどじゃねえよ」

 

 シロナのスタイルは相手に合わせて変則的に戦法を変える後手必殺型。そしてカイムは相手の攻撃に合わせて攻撃を放つカウンタースタイル。どちらも相手に合わせて動くスタイルを得意としているため、相手に合わせて変則的に動くことは得意だった。今回もやることは同じということは、二人ともよくわかっている。ただ違うのは、二人揃ってやるということ。相手が二人になること。

 

「二人相手にするということは、それだけ適応しなければならないことが増えること。でも私たちならできる。探って慣れて、見極める(適応する)。これが私たちのやるべきことだわ」

「ああ。特殊な状況下ではあるが…こいつらと、お前とならできるだろう」

「もちろんよ。私たちならできる。それだけの実力は持ち合わせているわ」

「まあ、不確定要素も多いがな」

 

 ヒカリとジュンの現時点での能力は、四天王には及ばない。だが持ち合わせるポテンシャルは大きい。そのポテンシャルが十全に発揮された場合、その実力は四天王にも匹敵する。当然、カイムでは戦うことはできても勝つことは難しい。さすがにシロナに匹敵するとは思えないが、それでも実力は高い。特にこの二人は本番で発揮されることが多い。戦闘中に成長するタイプである以上、カイムには特に厳しい戦いになるだろう。なぜなら、戦闘中に成長するという体験をしたことがなく、できない。そしてできないことは、彼の想像の域を出ない。彼らはカイムが想像もできないようなことを平然と土壇場でやってのける。

 

 先の試合のスモモのように。

 

「すげえよな」

「そうね」

「シロナもそっち側だろ」

「否定はしないけど、あの子達ほど強烈なものじゃないわ」

 

 苦笑するシロナは膝上で丸くなるブラッキーに視線を落とす。

 確かにシロナは天才の部類だろう。だが、天才の中にも更に選りすぐりの天才というのは、確かに存在する。ヒカリやジュンほど強烈な才能は、シロナにはない。尤も、あの二人ほど強烈ではなかったからこそ、シロナはここまで強くなれたのだが。

 

「ガン攻めのジュン君とオールラウンダーのヒカリちゃん。面白い組み合わせよね」

「大体はジュンが攻めてヒカリが臨機応変に動くって感じだったな」

「多分、ジュン君がガン攻めを押し付けてくるタイプだから、ヒカリちゃんがそれに合わせたって感じじゃないかしら」

「だろうな。ただ厄介なのが、ジュンが本当の意味で攻め一辺倒じゃないことだ。要所要所でヒカリのサポートに回ることもあった。相性が悪い相手にはヒカリがダメージ取りやすいように動いてたし、最低限の連携はしてくるだろうよ」

 

 脳筋に思えるジュンだが、脳筋戦法を押し付けるための手段はかなりちゃんとしている。考えているというより感じている感じが強いが、それでもこうして結果に結び付けられているあたり、野生の本能に近いレベルで危機管理はできている。

 ただ、これはヒカリの動きがあったからこそ十全に発揮されたと言える。仮にジュンが二人いて、ジュン同士でペアを組んで大会に出た場合、一回戦突破も難しい。この二人が単純な実力で勝るデンジ・オーバペアを下すことができたのも、ヒカリがジュンの危険感知を高い精度で理解していたことが一番大きな要因だとシロナとカイムは考えていた。

 

「連携のレベルなら負けないけど、ジュン君の危険感知能力とヒカリちゃんの適応力がどこまで響いてくるか。これが予想できないのが一番大きいわね」

「ポテンシャルがデカすぎるからな。まあでも、出てくるポケモンはある程度絞られてる。レベルは高いが、得意技やできることに偏りはある。傾向の把握と対策ができるのはありがてえ」

 

 バトル中の成長については考えたとしても恐らく想定通りにはならない。だが現時点での能力は把握できているため、相手の手札に対してこちらがどう手札を切るか。これを予めある程度決めておくことで、咄嗟の判断を迷わないようにすることを二人で決めていた。

 

 それからしばらく二人は明日のバトル方針について確認を進める。いい時間になったところで、シロナはタブレットをデスクに置いた。

 

「とりあえず、これだけ確認できれば充分ね。今日はもう休みましょう」

「ああ。さすがに疲れたし、明日は今日以上に疲れそうだ」

「メンタル?フィジカル?」

「今日はフィジカル。明日はメンタル」

「ふふ、そうかもね。()()叫んでもいいのよ?」

 

 シロナの言葉にカイムは苦い顔をした。

 

「黒歴史確定だ。あんな公衆の面前でキレるなんざ」

「みんなにとっては意外な一面を見られたって感じかもね。大体冷静なあなたがあんな表情するんだもん」

 

 今回の大会はポケチューブで配信されている。故に、カイムのあの叫びも当然配信に乗っていた。

 

「嫌な話だ」

「そこまで嫌がらなくてもいいのに。意外ではあっても、おかしくはないわよ」

「自分の心の底に残った昔の自分が全国配信されてんだぞ。嫌にもなる。それに、ダイゴとカトレアに後で何言われるかわかったもんじゃねえ」

 

 大きくため息を吐いてカイムは外に視線を向ける。考えても無駄であることは間違いないが、それでもこうしてネット上に残るのは、とてもいい気はしない。

 ガリガリと頭をかくと、カイムは立ち上がる。

 

「あー考えたくねぇ…さっさと寝ようや」

「ふふ、そうね。そろそろ寝ましょ」

 

 シロナは膝上で丸くなるブラッキーを抱き抱えると、カイムの手を引いてベッドに入る。少し慣れてきたホテルのベッドの感覚と愛する人の体温を感じて、シロナの胸中は安心感で満たされた。

 

「ねえ」

「あん?」

 

 ベッドで二人はブラッキーを挟むように寄り添い合う中、シロナが問いかけてくる。

 

「この大会で、新しい自分の可能性は見つけられた?」

「いや別に」

 

 カイムの答えにシロナはむっと頬を膨らませる。

 

「もうちょっと考えてもいいんじゃないの?」

「俺の可能性見つけてどーすんだよ…トレーナーごとにいろんな一面があるのを今後バトル界隈を担うであろう若いのに見せるってのがコンセプトだろ」

「あなたもその一面を見せる対象の一人なんだけど?」

「俺は変わんねえだろ…」

 

 本当に『人間、自分のことになると馬鹿になる』という言葉が似合う人だとシロナは内心で呆れる。まるで今までやってきたことと何も変わらないとでも言うような態度を見て、シロナはカイムの頬を突く。

 

「いてえ」

「あなたね、本当に変わらないなら決勝まで来られると思う?」

「俺だけならともかく、シロナがいる。真っ当にやればできるだろ」

「私への信頼が厚いわね、まったく」

 

 嬉しいような、なんか違うような。そんな複雑な気持ちを抱えながらシロナはカイムの腕を抱いて目を閉じる。

 そのままシロナはすぐに眠りに落ちたが、カイムは眠らなかった。

 

「…俺の可能性は、お前がいないと発揮できない。そんなの、お前が魅せたい可能性じゃねえだろ」

 

 自分が集団戦が得意なことはなんとなく気づいていた。それでも決勝まで来られるとは思っていなかった。もちろん相手との相性や運も味方したことはある。だがそれだけで決勝まで来られるほど、この大会に出場しているトレーナーは甘くない。

 そんな中、凡人の自分がここまで来た。それは自分の少ないポテンシャルを限界まで引き出すことができるパートナーがいたからだと考えていた。

 

 尤も、シロナの場合は互いのポテンシャルを120%を引き出せるだけであり、仮にカイムのペアがシロナでなかったとしても互いに100%を発揮できるのだが、カイムは知らない。

 

 ブラッキーがすりすりと頬を擦り付けてくる。可愛らしいブラッキーを優しく撫でると、カイムも目を閉じて間も無く眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、ヒカリとジュンは朝早くから簡易フィールドに集まっていた。目的はもちろん、夕方にある決勝戦について。

 

「じゃあ、最終確認しよっか」

「えー必要か?」

 

 タブレットを持って確認を始めようとしたヒカリに対して、ジュンは頭の後ろで手を組んで気が抜けた声を出す。呆れたようにヒカリはため息を吐いた。

 

「相手はシロナさんとカイムさんよ?昨日の調整で大体できてるけど、一応確認はしとかないと」

「結局警戒すんのはシロナさんだろ?ならもうそれ以上言うことねえじゃん」

「ジュン…それ、カイムさんは警戒しないってこと?」

 

 確かに素の実力は劣る。しかし、ここまでのバトルを見てきてカイムを警戒しないという選択肢はヒカリにはなかった。

 無論ジュンも考えなしではない。

 

「違うよ。確かにカイムさんは強え。でもあの人はデータが少ないし、何よりサポートの動きなんて想定しようがない。それこそ、昨日のバトル…バシャーモがルカリオのはどうだんを蹴り返したみたいな動きなんてわかんないだろ?だから警戒するだけ無駄って話だ。どうせ、全部想定外なんだし。それに結局フィニッシャーはシロナさんだ。なら、警戒する必要ないだろ」

「それはそうだけど、全員が全員サポートの動きってわけじゃないでしょ?」

「アタッカーのカイムさんは別に怖くねえから」

 

 バッサリ切り捨てるジュンにヒカリは大きくため息を吐く。確かにジュンの言うことはわかる。付け焼き刃なのはバトルを見ていればなんとなくわかる。だが、警戒しなくていいと切り捨てていいようなものではない。場を荒らすには十分なレベルだ。

 

「アタッカーで前に出てきたら、オレが抑え込む。アタッカーとしての動きならオレが負けるはずないからな!そうじゃなかったら、ヒカリが合わせてくれ!」

「もう…」

 

 これだから天才は、とヒカリは呆れたようにまたため息を吐く。

 ジュンは考えなしに思えてちゃんと理に適った考え方をしている。ただ言い方や思考回路があまりにも直感的なせいで少し理解するのに時間が必要な場合もあるため、ヒカリはやや呆れ気味だった。

 ただヒカリにはない直情型の動きは参考になるし、何より結果を出している。これが天才というやつなのだろうとヒカリは自分を納得させ、エンペルトに寄りかかった。

 

「そんでさ!シロナさんは昨日話した通りでいいよな」

「うん。出てくるポケモン次第ではちょっと変わるけど、昨日話した通りでいこ」

「オッケー!間違えたら罰金だからな!」

 

 楽しそうに笑うジュンにヒカリは苦笑する。前のリーグでシロナに負けたこともあり、ジュンの中で目標は父親であるクロツグとシロナの二人になっていた。その目標の一人が対戦相手にいるのだからこうなるのも納得はできる。それにジュンの言っていたシロナへの警戒については決して間違いではない。昨日のバトルでカイムがアタッカーを勤めた際の動きは悪くはないものの、一流とは言えないもの。確かに殴り合いならば、ジュンが負ける道理はないだろう。

 

(ただ、カイムさん。本当に予想ができないんだよね)

 

 カイムというノイズのせいで対策がしにくい。シングルならば問題はない。だが集団戦という特殊な環境に対する異様な適性が対策をさせにくくさせていた。

 

「試合は夕方だよな」

「うん。その前にエキシビションがあるから」

「ちぇー長いなぁ。エキシビションも面白いけど、早くバトルしてぇなぁ」

 

 ジュンはドダイトスの上に乗り、わくわくしたように体を揺らす。ヒカリもその気持ちはよくわかるため、素直に頷いた。

 

「仕方ないけど、待ちきれないよね。ポケモンリーグ以外にこんな大きな大会そうそうないもん」

「だよな!それにタッグバトルの大会なんて、オレはじめてだ!」

「ないよね〜タッグバトルの大会。あたしも見たこと…多分ないもん」

 

 まだトレーナー歴の短い二人だが、大会の経験数は既にカイムより多い。だがそんな二人でも、タッグバトルの大会というのは見たことがなかった。

 タッグバトルはそれだけマイナーなルールであり、同時にタッグバトルの難しさが身に染みる大会でもあった。

 

「なんでこんな無いんだ?」

「戦力調整が難しいもん。強い人二人が組んで出たら、ほとんど出来レースみたいな感じになりかねないからじゃないかな」

「なるほど!確かにそうだな。そう考えると、今回のルールは超良い感じなんだな!」

「それだけシロナさんが頑張ってくれたおかげで、あたし達はこうしてバトルできてる。本当にすごいよ、シロナさん」

 

 旅をしている時からの付き合いだが、ヒカリにとってシロナはトレーナーとしても人としても目指すべき存在だった。優しいだけでなく、バトルも強く、頭もいい。ヒカリにとって、憧れの存在そのものだった(家事スキルについてはヒカリはあまり知らない)。そんなシロナが時間をかけて作り上げたこの大会の決勝に立てることが、ヒカリはとても嬉しかった。故に、早くバトルしたいというジュンの逸る気持ちもよく理解できる。

 

「ポケモンリーグじゃないけど、こんなに大きな大会で優勝できたら、超気持ちいいだろうなぁ」

「だろうね。あたしも、まだリーグ優勝はしたことないから想像できないや」

「オレもない。前はシロナさんに負けちまったから」

 

 悔しそうに表情を歪めたジュンの脳裏には前回のリーグの光景があった。目標にしている父クロツグを超えたことでチャンピオンに上り詰め、そして10年以上もの長い期間に防衛し続けているシンオウ地方最強のトレーナー。正直、まだ届くとはジュンもヒカリも思っていない。だがタッグバトルという特別なバトルであれば、超えられるのではないかと思っていた。そんな予感が二人の中にはあった。

 

「でも、なんかこう…今回は勝てそうな気がするんだよなぁ」

「あたしもそう思う。今回は届く気がするな」

「シングルだとまだ勝てる気しねえけど…タッグならいける気がする」

「ジュンがまだ勝てないって、珍しいね」

 

 ジュンはかなりの自信家であるため、こうして『勝てない』と口にすることは少ない。そのためヒカリの目には珍しく映った。

 ヒカリの言葉を聞いたジュンは口を尖らせながら答える。

 

「仕方ねーだろ。レベルもまだオレの方が下だし、シロナさんはできることが多すぎるんだよ。何度もやれば何回かは勝てると思うけど…多分、勝率はかなり低くなると思う」

「なんでもできるからね、シロナさん」

「さすがにダディより強いあの人に勝てるって言い切るほど、オレは自信家じゃないよ。ま、いつか超えてやるけどな!」

 

 ふん、と胸を張るジュンにヒカリは頷く。

 ヒカリも同じ思いだったからだ。今はまだ超えられないかもしれない。だがいつか必ず超えてみせる。その決意がずっとみなぎっていた。

 シングルではまだ素の実力で勝てる気はしない。何回かやれば勝てる時もあるだろうが、それでもまだ実力はシロナには至らないと思っている。ただ、タッグバトルなら別。今回のバトルはなんだか勝てるような気がしていた。

 

「ジュン」

「ん?」

「勝つよ」

「おうよ!」

 

 二人は拳をぶつけ合い、決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カイムは一人で選手控室でエキシビションが終わるのを見ていた。タッグバトルではあるが、ペアをシャッフルしてバトル直前までわからないというバトルは思いの外盛り上がった。

 

「エキシビション、終わった?」

 

 そこでシロナが控室に入ってくる。服装はいつもとは違うため、雰囲気も大きく違った。

 

「ああ。インターバル挟んで俺らだ」

「そう。もうすぐね」

 

 下ろした髪をふわりと靡かせながらシロナは座る。

 

「緊張してる?」

 

 少しだけ、カイムの波導の流れが硬いようにも見えたシロナはそう問いかける。

 

「少し。ただ、フィールドに立ったらもうやるだけだし、そん時はもう大丈夫」

「そうよね、あなたは直前よりも少し前の方が緊張する変なタイプだもんね」

「とんだ言い草だ。否定はしねえが」

 

 そんな軽口を叩き合いながらも、シロナはカイムの手を優しく撫でる。

 

「ねえカイム」

「ん?」

「私、こうしてあなたと本当の意味で隣で戦えることが嬉しいの」

 

 普段の大会やバトルでもカイムは隣にいてくれる。だが、実際にバトルする時は一人。今回のように肩を並べて戦ったことは、ほとんどない。時折背中を預けることはあれど、肩を並べるというのはトレーナーには案外ないものだった。

 だからこの大会で文字通り肩を並べて戦えることがシロナは嬉しかった。隣にいてくれることがこんなにも嬉しく、心強いことなのだと知れたことが嬉しく、心強いものだった。

 

「隣で戦うって、案外ないもの。ポケモンバトルだと尚更ね。背中を預けて戦ったことは何度かあるけど、隣はあんまりない。だから嬉しい」

「そうだな」

「あなたとだからここまで来られた。そう思えるの」

「だといいな」

 

 実際のところ、シロナの対応力があれば誰と組んだとしても問題はない。互いに100%の実力を発揮できるだろうというのが、カイムの見解だった。だがそれはそれとして、カイムだからと言われることは素直に嬉しい。

 ことん、とシロナは頭を傾けてカイムの肩に体を預ける。互いの体温が伝わり、互いの重さが互いを支え合うように預けられた。

 

「あなたと勝ちたい」

 

 シロナはそう呟く。

 カイムは小さく息を吐くと、口を開いた。

 

「昨日、ダイゴとの会話を思い出したんだ」

 

 突然出てきたダイゴの名前にシロナは不思議そうにカイムへと目を向ける。

 

「誰もが認める綺麗な石ってどんなものかって。そしたらあいつは『好みにもよるけど、透明な輝きを持つ石はきっと誰もが綺麗だと認める』って答えたんだ」

「それで?」

「今ならなんとなくわかる。これから戦うヒカリとジュン(あいつら)は、誰もが認める透明な輝き(才能)を持っているって。そんで、俺はかつてその透明な輝きを求めていたんだと。そんな輝きを持つ存在になりたかった」

 

 カイムはシロナの背中に手を回す。

 

「自分が宝石(天才)ではなく、鉱石(秀才)でもなく、石ころ(凡人)だとわかってもなお、そんな輝きが欲しかった。石ころはどんなに磨いても宝石にはなれない。そう思い知って、磨くのを辞めた時期もあった。苦い思い出だ」

「そうだったわね」

 

 でも、と付け加えてカイムは続ける。

 

「でも、シロナが教えてくれた。石ころは石ころでも、無価値じゃない。磨けば宝石にだって負けない強さがあるって。同じことをしても宝石には届かないけど、石ころの強さ(輝き)を教えてくれた」

 

 カイムも頭を傾け、シロナの額と自分の額を合わせる。互いの瞳が合わさり、息づかいが感じられた。

 

 

「透明な輝きへの憧れはある。でも、それは()()()()()一番の輝きじゃない」

 

「透明よりも綺麗な輝きがある。今は、心からそう思っている。この輝きを教えてくれたのは、お前だ」

 

「その輝きは透明な輝きに決して負けていないって、確かめに行く。俺にとってこれから始まるのは、そんな戦いだよ」

 

「お前と肩を並べてそんな戦いに赴けることが、俺も心から嬉しい」

 

 

 カイムの言葉を聞いて、シロナは驚いたように目を見開きながらもふっと笑い、カイムの手を握った。

 

「じゃあ、あなたも同じ思いってことね。二つの意味で」

「ああ。隣で戦えること、可能性を見せること。まあ、俺が言う可能性とシロナが言ったものは別のものだけどな」

「そんなことないわ。あなたが()()()可能性は、きっとこれから多くのトレーナーにとって希望になるんだから」

「尚更、優勝しねえとな」

 

 そこでカイムは一度言葉を切ると、シロナの服装に目を向ける。

 

「…話は変わるが、お前…その服で出るのか?」

 

 カイムの言葉にシロナは首を傾げる。

 

「似合わない?」

「いや似合う。モデルと見間違えるくらいには美人だし、すげえ似合ってる」

「じゃあいいじゃない」

「いや背中オープンワールドしてんだろ」

 

 シロナの服装はハイネックノースリーブのトップスに、ショートパンツ。そして膝上まであるロングブーツという服装だった。ショートパンツとロングブーツは昨日着ていた波導使いの服装と似ているためこの際言及しないでおくが、トップスは別。波導使いの服装とは異なり、肩甲骨少し下あたりまでが完全に開いており、防御力はかなり低いようにも思える。

 

「上からロングコート羽織るわよ?」

「いやバトルの余波でコート靡いたら背中見えるぞ。全国配信だぞこの大会」

「別に背中くらいモデルした時に見せてるし…」

「そういう問題か…?」

「大丈夫よ、減るものじゃないし」

「俺のメンタルは減るんすけど」

 

 げんなりしながら言うカイムに、シロナは笑う。

 

「なーに?ドキドキしたの?」

「するだろそりゃ…」

「ふふ、嬉しい。でも変えないわ。今からじゃ時間ないし、気に入ってるから」

 

 そうかよと続けて、カイムは呆れたように力を抜いた。こうなることは目に見えていたため、これ以上言っても無駄だと判断したのだろう。

 

「あなたの服は、袴…?」

「ちょっと違う。俺もよく知らん。良さげだったからってだけだ」

 

 カイムは濃いベージュの袴のようなズボンに、ピッタリとした黒のインナー、そして半袖のジャケットという出立だった。

 

「…あなたこそ、ちょっとボディライン出し過ぎじゃない?」

「ジャケット着てんだろ」

「それでもよ。あなた鍛えてるから…」

「何言ってやがるか」

 

 全く意に介していないカイムに、シロナはほんの少しだけ不満そうに息を吐く。

 

(自分がどう見えているか無頓着なんだから)

 

 カイムは普段から鍛えている。故に、ピッタリしたタイプのインナーを着れば鍛えた肉体が浮き彫りになる。ジャケットを着たとしても見える部分があるため、シロナからしたらやたら防御力が低く見えてしまう。

 

「言っても変えないんでしょ?」

「今からじゃ時間ねえっつったのはお前だろ」

「そうだけど…もういいわ」

 

 シロナは諦めたように呟き、カイムの膝に頭を乗せた。

 

「あなた、もう少し自分がどう見られているか自覚した方がいいわよ」

「ああ?」

「あなたは魅力的なんだから」

 

 シロナの言葉を鼻で笑う。

 

「寝ぼけてんのか?」

「事実よ」

「寝言は寝て言え」

 

 全く聞く気がないカイムに対して、シロナはむっとしたように表情を歪める。そしてカイムの顔を両手で掴んだ。

 

「なんっ…」

 

 そのままシロナはカイムを引き寄せると、唇を重ねた。互いに刻み込むような口付けに、カイムは驚きながらも応える。

 少しの間互いに互いを刻み込むと、力が緩んだところでカイムは目を開き、顔を離した。

 

「…どうしたんだ」

「こうして、いきなりキスできるくらい私はあなたに惚れ込んでいるの。あなたの魅力を否定するのは、あなた自身でもいい気はしないわ」

「似た話を前にしたな」

「ええ。だから、肯定しろとは言わないけど否定しないで」

「悪かったよ」

 

 同じ話をさせてしまったことを少し申し訳なく思いつつシロナの頬を撫でる。シロナはわかればいいと言わんばかりにカイムの手に頬を擦り付け、その手を撫でた。

 

「わかればよろしい」

 

 満足そうに笑うシロナにカイムは苦笑して時計を見る。まだ少し余裕はあるが、そろそろ移動し始めていい時間だろうと判断した。

 

「そろそろ行こう」

「もうそんな時間?」

「時間としちゃちと早い。遅れるよかいいだろ」

「それもそうね」

「化粧とか平気か?」

 

 先ほどのキスでリップが落ちたりしていないかと心配して問いかけ、起き上がったシロナは控室の鏡を見て頷いた。

 

「平気よ」

「そうかい。ならいい」

 

 カイムも立ち上がると、ボールホルダーをベルトにかけて立ち上がる。ぐっと伸びをすると、シロナの手を取った。

 

「行こう。俺は証明のための戦い」

「私は、シンオウ地方の未来を見せる戦い」

 

 見据えるものは少し違う。だが、心に宿る思いは同じ。

 

「これは証明だ。凡人(石ころ)でも宝石(天才)に牙が届くってな」

「これは証明よ。私たち(シンオウ地方)の未来は、確かにここにあるってね」

 

 二人は最後に抱き合うと、小さく口付けを交わして控室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ皆様、大変長らくお待たせいたしました!これより、シンオウ地方スタータッグトーナメントの決勝戦を開始いたします!』

 

 実況の言葉に会場全体が歓声に包まれる。

 

『このタッグバトルトーナメントという単純な実力だけでは測れない特殊な環境を勝ち抜き、決勝戦で鎬を削るのはこの2ペアだ!』

 

 スタジアムのゲートがライトアップされ、ゲートから二人の影が現れる。

 

『シンオウ地方期待のルーキーがここまでやってきた!シンオウ地方の可能性をここに見せつけた次代のチャンピオン候補!モンスターボールペア、ヒカリandジュン!』

 

 ライトアップされながら現れた二人はいつもとは違う服を着ていた。ジュンはポケモンレンジャーの隊服、ヒカリはポケモンコンテストで着ているドレスだった。

 フィールドに立った二人は普段とは違う真剣な表情でボールを手に取る。

 

「やっぱ決勝戦は空気が違えな」

「だね。でも、いいよね」

「ああ!この空気、最高だ!」

 

 熱を帯びた空気を全身に感じながらも二人は頬が緩む。

 そして、フィールドの向こう側にあるゲートを見た。

 

『そしてこのスーパールーキーと戦うのは、この二人!シンオウ地方最強のトレーナーと強さを導くプロフェッサー!シロナandカイム!』

 

 ゲートから二人の人影が現れる。シロナは普段のコートに近しいロングコートだが、インナーとして着ている服が違う。ハイネックのノースリーブとショートパンツ。そしてロングブーツという服装。カイムは袴に近いズボンとピッタリしたインナーの上にジャケットという出たちだった。

 服装が普段と大きく異なる。だが服装だけではない、明らかに普段とは違う覇気。シロナからは刃のように鋭い覇気、カイムからは鋼の如き重厚な覇気を感じた。

 

「ビリビリくるな」

「…うん」

 

 ジュンは二人とあまり関係は持っていないが、ヒカリは二人と関係が深い。普段の二人とは全く違う空気に、思わず冷や汗を流した。

 

(…トレーナーってみんな、バトルの時に空気は変わる。でも、ここまで変わる人は…はじめて。こんなに強い人だったの?)

 

 ジムリーダーである以上、弱くはない。だが存在していたわずかなデータを見た限り、ヒカリが今まで戦ってきたトレーナーほどの強さはないように思えた。

 だがこうして相対してみると、纏う空気は強者のものと同じ。ただこの空気がカイムの実力を表したものなのか、それともシロナと共に並んでいるからここまで強い覇気になっているのかヒカリにはわからなかった。

 

「二人とまたこうしてこの場に立てることを嬉しく思うわ」

 

 ヒカリが内心で冷や汗を流している中、シロナは刃のような空気から普段の穏やかな雰囲気になりながら言う。

 

「また来たぜ!今度は勝たせてもらうからな、シロナさん!」

「特殊なバトル、とっても楽しかったです。だからこそ、あたしとジュンでお二人を超えて、この大会のトップに立ちます!」

 

 気合い十分な二人を見て、シロナは笑い、カイムは表情を変えない。

 

「…前に会った時より、数段強くなっているわね」

「当たり前だろ!バトルフロンティアで修行してきたんだからな!今回は負けねえよ!」

「前だけ見て走り続け、ここまで来たか。ああ、素晴らしいな」

 

 小さくカイムは呟く。ヒカリは何故か、カイムの重厚な覇気が少しだけ鋭くなったように感じ、背筋が伸びる思いに駆られた。

 

「二人がどんな連携を仕掛けてこようとも、オレ達が全部上回ってやる!」

「二人にはお世話になりました。だから!感謝を込めて、ここは全身全霊を見せます!」

 

 ジュンとヒカリがボールを手に取る。それを見たシロナとカイムもボールを手に取った。

 

「お前らみたいなルーキーがこうして決勝戦に辿り着く。素晴らしいよ。シンオウ地方の可能性を見せつけるという大会のコンセプトはこの時点で果たされたと言っても過言ではない。だがな」

 

 カイムの青い瞳が向けられたジュンとヒカリは、全身に冷や水をかけられたような錯覚を覚えた。

 

「上ばっか見てると、足元の石ころに気づかないかもしれねえぞ」

 

 言葉の意味を二人は正しく理解できない。だが、カイムのことをそこまで警戒していなかったジュンですら、この瞬間はカイムからの覇気に表情が引き締まった。

 

「お前らはすごいよ。本当にすごい。前を見続けた結果、ここに至ることができたんだとわかる。どこかで止まることもなく、ただひたすら求めたものを追い求めてな」

 

 カイムの脳裏に過ぎるのは、弟子であるミツル。カイムの言葉に宿る思いに誰が色濃く出ているのかシロナにはわかった。

 

「お前らはきっと、走り続けてきた。上を見続けてきた。だからここにいる。その力をここで見せてほしい。シンオウ地方の未来を担うトレーナーの一人として…シンオウ地方の頂点であるシロナと、関門の一つに過ぎない(石ころ)に」

 

 ジュンはカイムが言ってることがよくわからず、首を傾げる。ヒカリはなんとなくわかったのか、小さく頷いた。

 

「これ以上の言葉は不要ね」

 

 シロナはベルトに下がったボールホルダーからボールを取り出す。カイムもそれに続くようにボールを手に取った。

 

「始めましょう。最高の舞台よ!」

「今度こそ超えてやるぜ!」

「ここで証明してやる」

「この勝負、あたし達が勝つ!」

 

 全員がボールを構えた。

 

『スタータッグトーナメント決勝戦!バトル開始!」

 

 合図が響くと同時に全員がボールを投げる。

 

「いくわよ、ガブリアス!」

「ブラッキー、いくぞ」

「いけ、ドダイトス!」

「ピクシー、お願い!」

 

 それぞれのポケモンがフィールドに着地する。

 シロナはガブリアス、カイムはブラッキー、ジュンはドダイトス、ヒカリはピクシーを繰り出した。

 

「いきなりガブリアスか…トゲキッスかロズレイドあたりが出てくるかと思ったんだけど」

「最初からエース同士のぶつかり合いができるんだ!ここを越えれば、一気に流れを掴めるぜ!」

 

 そんな単純なものじゃないと思うけどなとヒカリは思いつつも、ジュンが言うことが正しいことも理解している。ガブリアスは紛うことなきエース。そのガブリアスを先に倒せれば、間違いなく流れには乗れる。しかもタイプ相性のいいピクシーも組み合わせられた。対面としては、かなり良い。

 だが同時に、ブラッキーというノイズが盤面を単純にさせてくれない。火力はないが、サポートという面においては最高峰の能力を持つ。ガブリアスが暴れてブラッキーがサポートするという流れが容易に想像できた。ジュンのドダイトスは高火力高耐久だが速度がない。威力で全てを押し潰せれば楽だろうが、間違いなくそうさせてくれないのがこの二人。タイプ相性有利でも、油断は決してできないことを改めて実感する。

 

「行くわよカイム。頼むわね」

「ああ」

「ガブリアス、じしん!」

 

 ブラッキーがガブリアスの背中に乗ると、ガブリアスがフィールド全体に衝撃波を放つ。

 

「いきなりかよ!ドダイトス、こっちもじしんだ!」

 

 ワンテンポ遅れてドダイトスが『じしん』を放ち、ガブリアスの放った『じしん』とぶつかり合う。大きな衝撃波がフィールドでぶつかり合い、フィールド全体が衝撃波で揺れた。ワンテンポ遅れたことでドダイトスとピクシーはわずかに余波を受けるが、ダメージはほとんどない。

 

「ピクシー、ムーンフォース!」

 

 土煙から現れたピクシーがフェアリータイプエネルギーを凝縮した弾丸を放つ。ガブリアス、ブラッキー共に効果抜群技であるため、受ければダメージは大きい。

 ピクシーの動きを見て、ブラッキーが前に出た。

 

「アイアンテール」

 

 硬化させた尻尾を撫でるように振り、ピクシーの『ムーンフォース』を受け流す。弾くでも打ち破るでもなく受け流し、進路を変えるだけ。例え高威力の効果抜群技であろうとも、ダメージは無いに等しい。

 

「タネばくだんだ!」

 

 前に出たブラッキーに向けてドダイトスが追撃の『タネばくだん』をばら撒いてくる。上から降ってきた『タネばくだん』を見て、ブラッキーは跳んだ。

 

「弾け」

 

 ブラッキーは維持していた『アイアンテール』で『タネばくだん』を弾き飛ばす。全てを弾き飛ばすことはできなかったが、直撃することなく余波のみのダメージは小さく、体勢を崩すことなく着地した。

 

「ピクシー、マジカルシャイン!」

 

 間髪入れずにピクシーが追撃してくる。いくら防御に徹した動きをしていたとしても、このタイミングなら回避も防御もできない。そう考えたヒカリの追撃だったが、これはタッグバトル。ブラッキーだけならどうしようもなかったが、カバーできる味方がいるならば話は別。

 

「ストーンエッジ!」

 

 一瞬にしてブラッキーの背後まで距離を詰めたガブリアスが、目の前に岩石の壁を作り出す。ピクシーの『マジカルシャイン』は岩石の壁に阻まれ、完全に防がれた。

 

「(前にもやってたストーンエッジの壁!でも本来の使い方じゃないから、防御力は低いはず!)ジュン!」

「おうよ!ドダイトス、10まんばりき!」

 

 ドダイトスの巨大な体が岩石の壁をぶち破り、壁の後ろにいた()()()()()を弾き飛ばした。ブラッキーはバックステップで下がりつつ早業の『あくのはどう』でドダイトスを穿つことでダメージを大幅に削る。

 

「もう一発ぶち込めドダイトス!」

 

 続けてドダイトスがブラッキーに追撃を加えようと肉薄する。

 その瞬間、ヒカリは何かに気づいて目を見開いた。

 

「ジュン、下がって!」

「遅い!」

 

 ドダイトスの背後に影が現れる。影…ガブリアスは咆哮を上げながらドダイトスの巨大な体に一撃を叩き込み、ドダイトスを弾き飛ばした。

 

「れいとうビーム!」

「まもる」

 

 ドダイトスを攻撃したガブリアスに向けてピクシーが『れいとうビーム』を放つ。だがピクシーの攻撃はガブリアスと場所を入れ替えたブラッキーに防がれた。

 

「ならこうだ!じだんだ!」

「げきりん!」

 

 追撃に失敗したことをエネルギーに変えたドダイトスの一撃と、理性を飛ばすことなく凄まじいエネルギーを纏うことで身体能力を限界まで上げたガブリアスの一撃がぶつかり合う。互いに弾かれるが、技威力が上昇しているドダイトスの攻撃力が僅かに勝り、少しだけ大きくガブリアスを弾き飛ばした。

 その一瞬をヒカリは見逃さない。

 

「ムーンフォース!」

 

 ブラッキーは先程『まもる』でガブリアスを守った。『まもる』は連続使用すると成功率が著しく低下する。ここで『まもる』を使うギャンブルタイプのトレーナーではないことをヒカリは瞬時に判断した。

 

「(さすがに判断が早えな。回避もしにくい良いタイミングだ。ここまで登り詰めた実力は伊達じゃねえ。だが)早業・サイコキネシス!」

 

 ブラッキーから強力な念力が放たれ、『ムーンフォース』とぶつかる。威力やタイプ、ブラッキーの特攻を考えればまず間違いなくブラッキーの攻撃が競り負ける。だがブラッキーは正面からぶつけることはせず、上から押しつぶすように念力をぶつけた。『ムーンフォース』は地面にぶつかり、弾け飛ぶ。

 

「っ!さすがですね!ジュン!」

「まかせろ!リーフブレード!」

 

 ドダイトスの背中から伸びた木の枝が剣へと姿を変え、ブラッキーに振り下ろされる。だがブラッキーの背後から現れたガブリアスがその攻撃を止めた。

 

(ガブリアス!戻りが早えな。げきりんの身体能力強化だな!)

 

 シロナのガブリアスは『げきりん』により極限まで身体能力を向上させたとしても理性を飛ばすことなく動ける。上がった身体能力はノックバックからの立ち直りも早くさせることが可能であり、ダメージのないノックバック程度ではほとんど時間を稼ぐこともできない。

 ドダイトスとガブリアスが鍔迫り合った一瞬。この瞬間にブラッキーは『あくのはどう』を放ち、ドダイトスへダメージを与える。ドダイトスはブラッキーがタメをつくった瞬間にガブリアスとの鍔迫り合いから抜け出し、『リーフブレード』でガードするが、完全にダメージをゼロにすることはできない。

 しかしドダイトスほどの耐久力があるポケモン相手の場合、ブラッキーの特攻では大したダメージにはならない。

 

「そんな攻撃じゃあ怯まないぜ!10まんばりき!」

「ガブリアス!」

 

 『げきりん』が維持されたままのガブリアスがドダイトスの一撃を防ぐ。ダメージはないが、ドダイトスの足元が衝撃を受けて小さなクレーターになった。

 

「ムーンフォース!」

「まもる」

 

 ピクシーがドダイトスの背後から現れ、『ムーンフォース』による攻撃が放たれる。しかし攻撃はブラッキーの防壁によって防がれた。

 

「(タイミング完璧!さすがね!)ドラゴンクロー!」

「弾けドダイトス!」

 

 『げきりん』のエネルギーを爪に集中させたガブリアスの攻撃をドダイトスは維持していた『10まんばりき』で弾く。ガブリアスの体勢は崩れないが、僅かにできた隙をジュンは見逃さない。

 

「早業・タネマシンガン!」

 

 威力よりも切り替え速度重視で放たれた『タネマシンガン』はガブリアスを的確に捉える。一発目は受け、二発目はガブリアスの爪が弾くが、三発目を弾くと同時にピクシーが再び『ムーンフォース』を放とうとしていた。

 受ければダメージは免れない。だがガブリアスは回避しようとせず、ドダイトスのみを視線に捉えていた。

 

「(ピクシーを警戒しない…?フェアリータイプ技を受けたらガブリアスどころか()()()()()()…しまった!)ピクシー、下よ!」

「アイアンテール」

 

 突如下から現れたブラッキーが硬化させた尻尾を振り上げることでピクシーの『ムーンフォース』の方向を上に逸らすだけでなく、効果抜群の鋼技をピクシーに叩き込むことでダメージを与えた。

 

「叩きつけろ!」

「ガブリアス、ドラゴンダイブ!」

 

 ブラッキーは振り抜いた勢いを使い、『アイアンテール』を回転しながら叩きつけようとするが、ピクシーは空中で体を捻ることでブラッキーの攻撃を回避する。そのまま反撃の『マジカルシャイン』を放とうとしたが、ガブリアスの『ドラゴンダイブ』によって吹き飛ばされたドダイトスがピクシーに向かって転がってきて、ドダイトスへの攻撃になりかねなかったため技を中断。ドダイトスの体勢を整えさせるためにサイコパワーを利用してドダイトスの体を受け止めた。

 追撃を警戒して即座に体勢を立て直すが、ブラッキーとガブリアスは追撃してこなかった。

 

「やっぱ連携レベルは向こうがずっと上だな」

「掛け声もなくここまでの連携ができるなんて…」

 

 前の二試合を見てきても思ったが、この二人は連携する際に掛け声がほぼない。だというのに互いが互いにほしい動きをできている。それがこの大会で最下位レベルの実力であるカイムがいてもなお決勝まで来られた理由の一つだった。

 

「でも怖くねえ。厄介なだけだ」

「うん。メインで動いているのがガブリアスだし、ブラッキーの火力は高くない。厄介でも怖くはない」

 

 だが出ているポケモンがブラッキーである以上、厄介ではあってもやりようはある。ピクシーへのダメージはタイプ相性的に大したダメージにならないし、ドダイトスも耐久性と持ち前の攻撃力があれば対処できる。

 

「交代することもねえだろうし、ガブリアスの攻撃はオレが受ける。殴りながら守るから、ヒカリはここぞの一撃頼むぜ」

「任せて」

 

 そう言ってシロナとカイムを見据えるのとほぼ同時。

 

「『俺は怖くないからガブリアスをどれだけ早く落とせるか』とか、そんな感じの話をしてそうだなこりゃ」

 

 カイムはいつもと変わらないテンションでそう言った。

 

「かもね。ブラッキー全力のあくのはどうであの程度のダメージ。どれだけブラッキーが頑張っても、致命的な一撃にはなり得ない。事実だもんね」

「完全な出し負けだけど、ある意味計画通りってところか。ここまでは」

「このくらいなら小手調べのうちよ。ここから上がってくるわ」

「嫌な話だ」

 

 スロースターターというほどではないが、二人の調子はムラがあるため試合中に調子が上がってくるタイプ。特にジュンはそれが顕著であるため、ドダイトスの攻撃はこれさらさらに苛烈になることが予想できる。

 

「想定通りの展開だが、出し負けなのは変わりねえ。打ち合わせ通り行くか?」

「ええ。()()()()()()()。最悪のパターンでのスタートだけど、布石は充分。タイミングを見逃さないようにしないとね」

「そこらへんは任せる。好きに動いていい」

 

 集団戦では必ず言う『好きに動け』というカイムの言葉。これは本当に信用できる。マグマ団を相手にした時もレッド、グリーンとタッグバトルをした時も…どんな状況でも必ず好機に繋げてきた。

 その実感を持っているシロナは、カイムの言葉を素直に受け入れる。

 

「じゃあ行くわよ!ガブリアス、じしん!」

 

 ブラッキーがガブリアスの背に乗った瞬間、ガブリアスが放った衝撃波がフィールド全体を揺らす。

 

「ドダイトス、地面に向けて10まんばりき!」

 

 ドダイトスの一撃が地面に向けて放たれ、ガブリアスの放った衝撃波を相殺。同時に、ドダイトスの背中を踏み台にしてピクシーが飛び上がった。

 

「マジカルシャイン!」

「まもる」

 

 ブラッキーがピクシーの攻撃を防ぎ、ガブリアスへのダメージをゼロにしつつ前に出る。速度はない。だがドダイトスが次の行動に移る瞬間かつ、ピクシーが着地できていない絶妙な瞬間を狙った。

 

「(嫌なタイミング!でも、その程度の速度でできることなんて怖くねえ!)早業・リーフブレード!」

「アイアンテール」

 

 威力は落ちるが瞬時に形成された刃がブラッキーに振り下ろされるが、ブラッキーは硬化した尻尾を盾にしつつ回転しながらドダイトスの攻撃を受け流す。

 同時にピクシーが着地し、ドダイトスと斬り合うブラッキーに向けて攻撃しようとした瞬間、ピクシーの目の前に岩石が迫っていた。

 

(ロックブラスト⁈違う、これはステルスロック!)

 

 ピクシーは咄嗟に反応し、岩石を防御体勢で受ける。直撃はしたが、完全に受けきったためダメージはほぼない。さらにほぼ同時に放たれた岩石をブラッキーは視線を向けることなく完璧なタイミングで頭を下げることで回避しつつ、ドダイトスに岩石を直撃させた。直撃した岩石は弾け飛び、鋭い岩となってドダイトス達の周囲に漂い始めた。

 

「こんなの痛くねえよ!10まんばりきでぶち破れ!」

 

 ダメージがほぼないドダイトスは攻撃を切り替え、強力な一撃でブラッキーを貫こうとした。

 しかしその瞬間、貫くような痛みがドダイトスを走る。怯んだとは言えないレベルのコンマ数秒にも満たない隙。この隙をブラッキーは見逃さない。

 

「でんこうせっか」

 

 高速の体当たりがドダイトスに直撃。ダメージは小さいが、ぶつかった反動を使いブラッキーはドダイトスの体を踏みつけて大きく距離を取った。

 

「ムーンフォース!」

「早業・あくのはどう」

 

 空中にいるブラッキーに向けてピクシーが追撃するものの、ブラッキーは空中で『あくのはどう』を放つことで反動を使い、空中で回避した。

 

「ガブリアス、アイアンヘッド!」

「っ!ドダイトス、ウッドハンマー!」

 

 ピクシーに向けてガブリアスが肉薄するも、ドダイトスが立ち塞がる。ガブリアスが硬化させた頭を振り下ろし、ドダイトスが正面から丸太のような大槌をぶつけた。一瞬技を出すのが遅れたドダイトスの攻撃は勢いに乗り切れておらず、威力で勝るものの若干押される。

 

「バークアウト」

「ピクシー、カバー!」

 

 鍔迫り合うドダイトスに向けてブラッキーが悪タイプエネルギーが込められた咆哮を放つが、ピクシーが割って入り攻撃を受け切る。ダメージは少ない。だが、特攻を下げられたことが特殊メインのピクシーには痛手だった。

 

「じならし!」

「ぶっ飛ばせドダイトス!」

「ピクシー、マジカルシャイン!」

 

 鍔迫り合いから一転、ガブリアスが地面を揺らす。足場を揺らされた影響で至近距離にいたドダイトスとピクシーは素早さが落ちるものの、ドダイトスは鍔迫り合いのまま維持していた『ウッドハンマー』でガブリアスを撃ち抜き、ピクシーも回避できないほど広範囲に放たれた光でガブリアスを貫いた。

 

(ダメージ少ねえ!打点をずらされた!)

 

 高威力技と効果抜群技によって貫かれたガブリアスだが、ダメージが少ない。ドダイトスの『ウッドハンマー』は『じならし』による振動とガブリアスの身のこなし、ピクシーの『マジカルシャイン』は若干ドダイトスを盾にするようにガブリアスが動いたことで直撃が避けられた。しかし2体分の攻撃を受けた以上、ダメージはある。体力の二割ほどを削られたが、ガブリアスはいまだに健在。

 

(しかもステルスロックをばら撒かれた。戦闘中はともかく、入れ替えとたまに来るスリップダメージ…ピクシーは特性でスリップダメージはないけど、ジュンの次のポケモンがきつい。この感じ、向こうは入れ替えは無さそうだね)

 

 ピクシーのタイプ相性がいい以上、こちらは出し勝ち状態。交換してくるかなとも予想したが、これだけ攻め気があるならば交換はないだろうとヒカリは判断し、同様の考えをジュンも瞬時に察した。

 

「ならガンガン行くまで!ピクシー、れいとうビーム!」

「ドダイトス、10まんばりき!」

「ブラッキー」

 

 ピクシーとドダイトスの攻撃が同時にガブリアスへ向けて放たれるが、ブラッキーの『まもる』が両者の攻撃を受け切る。しかし2体同時に攻撃を受けたことで、『まもる』によりダメージをゼロにすることはできたものの、勢いまでは殺し切れない。『まもる』の防壁を展開したまま、ブラッキーは吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされたブラッキーと入れ替わるようにガブリアスが前に出る。攻撃直後の2体は大きな隙を晒している。直撃を入れられるほど大きな隙だが、ヒカリはこれを待っていた。

 

(ピクシーがいる以上、ドラゴン技は使えない。地面か鋼か炎かはわからないけど、サブ技程度ならどうにかできる。ブラッキーのカバーもない。カウンターで、大きな一撃を叩き込む!)

 

 次に出る技が何かはわからないが、ドラゴンタイプ技以外。タイプ一致の地面技であればドダイトスの草タイプ技で貫通できるし、サブ技ならばタイプに合わせてどちらも動ける。次の攻撃を早業で出すことで、ガブリアスへ致命的な一撃を与えることができると、ヒカリ達は瞬時に悟った。

 この判断は正しい。真っ当にシングルバトルをやってきたトレーナーであれば、この判断をするだろう。

 

 だからこそ生まれた、思考の穴。

 

()()()()()、ガブリアス」

「は?」

 

 目の前に来ていたガブリアスが突如、ボールに戻された。そして間髪入れずにフィールドへ出てきたのは、トゲキッス。

 

「(ここで変えるのかよ!しかもトゲキッス!)下がれドダイトス!」

「(ここまで攻め気を見せていたのはブラフ!あたしもジュンも引っかかったってわけね!)ピクシー、ムーンフォース!」

「ブラッキー、ひかりのかべ」

「トゲキッス、エアスラッシュ!」

 

 ドダイトスは物理防御は硬いが、特殊は物理ほど硬くはない。それが効果抜群タイプの飛行タイプが相手であれば、尚更。攻撃を嫌ってドダイトスが下がると同時に、ピクシーが『まもる』が解除されたブラッキーに追撃を放つ。だがブラッキーは『ひかりのかべ』を展開し、さらにトゲキッスの『エアスラッシュ』がぶつかり合うことで、ブラッキーへのダメージをほぼゼロに抑えた。

 交代した瞬間は、ポケモンは一瞬動けない。戦闘不能時の交代以外はその一瞬を狙うことは容認されている。故に交代直後の着地狩りはダメージを与える絶好のチャンスだったが、ブラッキーの鮮やかなカバーにより防がれた。

 

(火力はないし動きも早くない。シングルなら全く怖くないけど、タッグになった瞬間ここまで厄介になるなんて!いつもの可愛いブラッキーからは考えられないほど性格が悪い!)

 

 火力は高くないし状態異常にしてくるわけでもない。だが、シロナの動きに対して最高とも言えるサポートをしてくるブラッキーは、あまりにも厄介だった。こちらの攻撃は通らず、向こうの攻撃ばかり通るような形勢になりつつあり、嫌な空気をヒカリは感じ取った。

 

「ブラッキーを先に落とすよ!」

「おう!ドダイトス、ウッドハンマー!」

「ブラッキー、弾け」

 

 ドダイトスが振り下ろしてきた丸太の大槌を、ブラッキーは尻尾で弾く。『アイアンテール』ですらない尻尾の攻撃だが、うまく勢いを受け流し、ダメージを抑えながらドダイトスの攻撃を凌ぐ。

 

「ムーンフォース!」

「トゲキッス、こっちもムーンフォースよ」

 

 ドダイトスの攻撃を凌ぐブラッキーに対してピクシーの『ムーンフォース』が放たれるものの、トゲキッスが全く同じ技で攻撃を相殺。

 同時に大振りの『ウッドハンマー』がブラッキーに叩きつけられるが、ブラッキーは回転しながらドダイトスの攻撃を受け流した。しかし完全な防御ではない。着実にブラッキーにダメージは蓄積していた。

 

「(受け流してこのダメージかよ。あんま悠長にしてる暇はねえな)ブラッキー、ふるいたてる」

 

 ドダイトスの大振りを受け流してできた隙。この僅かな時間を使って、ブラッキーは自身の肉体を奮い立たせ、攻撃能力を上げる。

 

「一段階上がっても、ドダイトスには通じねえよ!10まんばりき!」

「トゲキッス、カバー!」

 

 ブラッキーに向けて振り下ろされたドダイトスの足を回避しつつ、トゲキッスがブラッキーを背中に乗せて飛び上がる。飛行タイプを持つトゲキッスに、地面タイプ技の回避は造作もない。

 そこでトゲキッスのカバーがあることを予想していたヒカリが動く。ピクシーは高速で飛び回るトゲキッスを的確に撃ち抜くのは難しいと判断し、広範囲技で体勢を崩すことを選んだ。

 

「マジカルシャイン!」

「エアスラッシュ!」

 

 光と真空の刃がぶつかり合う。威力が僅かながらも高いトゲキッスの攻撃がピクシーの『マジカルシャイン』を貫通してくるものの、威力が大きく削られたピクシーへのダメージは少ない。また、広範囲技を使ったことにより部分的ながらもピクシーの攻撃の余波は防ぎきれず、ほんの僅かにトゲキッスがダメージを受ける。

 トゲキッスの背中から飛んだブラッキーは尻尾を硬化させ、重力の力も使って攻撃を放つ。

 

「アイアンテール」

「ドダイトス、リーフブレード!」

 

 ブラッキーの尻尾とドダイトスの刃がぶつかり合い、金属が弾かれるような音が響く。着地したブラッキーが維持していた『アイアンテール』でドダイトスの攻撃を弾きつつ、ピクシーに攻撃を叩き込もうとするが、ドダイトスの想定以上に鋭い攻撃がブラッキーを阻んだ。

 

「アタッカーの動きなら負けねえよ!」

「だろうな。そこで張り合う気はねえよ」

 

 ドダイトスの鋭い攻撃が再びブラッキーに襲いかかるが、ブラッキーは硬化させた尻尾を器用に使って刃を受け流す。

 

(火力はともかく、防御の動きはすごい!そこだけなら四天王レベルだな!自分で攻撃しなくていいからこそ、防御の動きがさらに洗練されてる!)

 

 ドダイトスの素早さが低いことを考慮しても、ここまでドダイトスの攻撃を捌けるのは並大抵の動きではない。防御の動きだけならまず間違いなく四天王レベル。攻撃の火力や動きはそこまで怖くないためシングルなら恐るるに足りないが、タッグバトルなら話は別。

 

「エアスラッシュ!」

「ムーンフォース!」

 

 トゲキッスとピクシーの攻撃が再び相殺しあう。

 タッグバトルである以上、どちらかが時間を稼いでもう片方が攻撃するという手法が取れる。故に、防御が得意なブラッキーの動きが、単純な戦闘能力以上の厄介さを生み出していた。

 

「(このままじゃジリ貧だな。なら!)一発デカいのいくぜドダイトス!早業・じしん!」

「ちょっ!ピクシー、下がって!」

 

 状況を変えようとドダイトスがフィールド全体に衝撃波を放つ。想定していなかったピクシーはギリギリダメージを免れたが、ドダイトスの側で着地を失敗して僅かに体勢を崩した。

 その一瞬をトゲキッスは見逃さない。

 

「ムーンフォース!」

 

 ピクシーに向けてトゲキッスの攻撃が放たれる。体勢を崩したピクシーに回避はできないが、早業により次の動きが早くなったドダイトスが前に躍り出る。

 

「ぶちかまし!」

 

 ドダイトスの強力な一撃がトゲキッスの攻撃を突き破る。ダメージはあるが、ドダイトスの攻撃の勢いが衰えることはない。攻撃の矛先は、トゲキッス。飛行タイプを持つトゲキッスに地面タイプ技である『ぶちかまし』は無効。だというのに放ってきたということは、当てられる算段があるということ。

 

「(こいつ!)ブラッキー、カバー!」

「ピクシー、じゅうりょく!」

 

 突如、フィールド全体が強力な重力に覆われる。空中にいたトゲキッスは浮遊することができず地面に叩きつけられ、そこにドダイトスの強力な一撃が加えられた。ギリギリでブラッキーが『あくのはどう』によってトゲキッスを弾くことにより直撃は免れたものの、トゲキッスへのダメージは大きい。

 

「まだまだぁ!ストーンエッジ!」

「はどうだん!」

 

 岩石の刃が追撃でトゲキッスに迫るが、トゲキッスは『はどうだん』を放ち岩石の刃を砕くと同時に反動で攻撃の範囲から逃れる。

 

「ムーンフォース!」

「まもる」

 

 即座にピクシーが追撃してくるが、予想していたブラッキーがトゲキッスへの攻撃を防ぐ。弾けた『ムーンフォース』の背後から、ドダイトスがブラッキーに肉薄した。

 

「リーフブレード!」

「エアスラッシュ!」

「早業・マジカルシャインよ!」

 

 ドダイトスの攻撃に対して咄嗟にトゲキッスが反撃してくるものの、ピクシーは早業を駆使して攻撃後の硬直を半ばキャンセルさせながら攻撃。フェアリータイプの光がブラッキーとトゲキッスを貫いた。『ひかりのかべ』が大きく威力を削るが、効果抜群であるブラッキーへのダメージは少なくない。加えてドダイトスもトゲキッスの攻撃を受けながらもブラッキーへと攻撃し、さらにダメージが嵩む。

 咄嗟にブラッキーは体を捻って直撃は避けたものの、体勢が悪い。着地はしたが立て直すために一瞬の隙が生まれる。好機と見たドダイトスがさらに追撃しようと迫ってきた。

 

「(ペース上がってきたな。これ以上向こうのペースに合わせるときつい。少し落ち着いてもらうか)バークアウト!」

「はどうだん!」

 

 ブラッキーが悪タイプのエネルギーが籠った咆哮とトゲキッスの『はどうだん』が()()()()()()()()()()。ブラッキーの咆哮とトゲキッスの攻撃によって巻き上がった煙がドダイトスの視界を塞いだ。

 

「(目眩し?この程度で効果あると思ってのか?)怯むなドダイトス!煙は濃くない!突っ切って10まんばりき!」

 

 ドダイトスは煙の中で目を凝らす。そして煙の中で僅かに動く影を視界の隅に捉え、影に向けて攻撃を振り下ろした。

 ドダイトスの攻撃は影を的確に捉えた。しかし、手応えがない。

 

「ブラッキー!」

 

 ドダイトスの攻撃した方向と逆から、ブラッキーが飛び出してドダイトスに肉薄する。

 だがそう来ることをヒカリは読んでいた。

 

「ムーンフォース!」

 

 過去にシロナが目眩しからの不意打ちをしてきたデータがある。だからこういう手段を使ってくる可能性は頭に入れていた。故に、ヒカリは即座に対応に移り、ブラッキーへカウンターを加える。

 しかしピクシーが攻撃を放った瞬間、違和感を覚える。ブラッキーがピクシーの攻撃を完全に目で捉えていたのだ。

 

「まもる」

 

 ブラッキーの展開した防壁がピクシーの『ムーンフォース』を弾き飛ばし、同時にドダイトスからの攻撃も受けきる。この展開がさらにヒカリに違和感を与えた。

 

(読まれた⁈でもそれなら、わざわざ自分の視界も悪くする目眩しを展開したのは何故?読まれても対応できる自信が…しまった!)

 

 突如、煙の中から()()()が現れる。白い影…トゲキッスは、ピクシーに向けて攻撃を放った。ピクシーは突然現れたトゲキッスに対応できず、攻撃を受けてしまう。しかし、ピクシーにダメージはなかった。

 

「れいとうビーム!」

 

 至近距離まで迫っていたトゲキッスに向けて『れいとうビーム』を放つが、放つ瞬間にピクシーの全身が痺れ、出が遅れる。その一瞬の隙でトゲキッスはピクシーの攻撃を回避した。

 

(でんじは!)

 

 ピクシーの特性は『マジックガード』。攻撃技以外でダメージを受けなくなる。現在フィールドにばら撒かれている『ステルスロック』や状態異常でもダメージは受けないが、状態異常そのものを防ぐことはできない。慢性的な痺れは肉体の敏捷性を著しく落とし、行動を制限してくることもある。元より素早さは高くないが、より低くなることはかなり致命的。目眩しからの展開を状態異常にするために使ってくることを読みきれなかったのは、二人の実践経験の少なさが招いた結果といえる。

 

「ぶっとばせドダイトス!ウッドハンマー!」

「のろい」

 

 だがドダイトスはピクシーを気にすることなく、全力の一撃をブラッキーに叩き込む。ブラッキーは『のろい』で全身を強化すると同時にバックステップを入れることでドダイトスの一撃の威力を大幅に削る。

 

「(結構攻撃してんのにダメージ少ねえ。何より少しずつ回復してるし、持ち物は食べ残しかだな。なら怖いことはなんもない!)追撃するぞヒカリ!」

「うん!ムーンフォース!」

「こっちもムーンフォースよ!」

 

 ピクシーとトゲキッスの『ムーンフォース』がぶつかり合う、弾ける。麻痺による素早さ低下が弊害となり、ピクシーの攻撃の出が一瞬遅れる。ダメージはないものの、弾けたエネルギーがピクシーの視界を一瞬塞いだ。

 

「でんこうせっか」

 

 突如、ブラッキーが動く。

 下がった素早さを『でんこうせっか』の速度で補い、高速でピクシーに肉薄した。

 

「(でんこうせっかの推進力で肉薄!速度は速いけど…)そのくらいの速度、対応できないとでも?」

 

 ブラッキーの突進に対して、ピクシーは難なく回避。さらに追撃を予想して攻撃体勢に入り、ブラッキーに照準を定める。

 

「チャームボイス!」

 

 フェアリータイプエネルギーが込められた声が発せられ、ブラッキーに迫る。ブラッキーは高速で攻撃の効果範囲から逃れる。

 しかしそれが誘導されたものだと即座に気づく。

 

「10まんばりき!」

 

 回避方向にいたドダイトスがブラッキーを弾き飛ばす。直撃はギリギリで避けたが、ブラッキーは大きく跳ね飛ばされる。

 

(今、バックステップいれた!距離取ってきたな!)

 

 あまりにも大きすぎるノックバック。防御力が上がったブラッキーならばここまで吹き飛ぶことはない。ならば自分から飛んで威力を減らしたと瞬時に理解する。

 

「なら、ヒカリ!」

「ピクシー、ムーンフォース!」

「エアスラッシュ!」

 

 ピクシーの攻撃とトゲキッスの攻撃が再びぶつかり、弾ける。

 

「トゲキッス、リフレクター」

 

 弾けた瞬間、トゲキッスが動く。ブラッキーとトゲキッスの周囲に物理技を軽減させる壁が展開された。

 

「くそ、両壁作られた!」

「切り替えていくよ!火力で押しつぶすまで!ムーンフォース!」

「トゲキッス!」

 

 ピクシーの攻撃をトゲキッスがカバーする。『ひかりのかべ』でダメージは大幅に削られるが、ブラッキーが動ける状態でわざわざカバーする必要はない。何かあると二人は警戒心を高めるが、ブラッキーは前に出てきた。

 

「(…なに?)ジュン!」

「いくぜドダイトス!リーフブレード!」

 

 迫り来るブラッキーに対して、ドダイトスは草の刃を展開。素早さが下がっているブラッキーが『でんこうせっか』も使わずに迫ってきたとしても、素早さが低いドダイトスだとしても迎撃は容易だった。その事実にヒカリは違和感を覚えつつ、ジュンの迎撃に任せる。

 その瞬間だった。

 

「バトンタッチ」

 

 ブラッキーの姿がボールへと戻り、即座に次のポケモンが現れる。

 

「ルカリオ、いくぞ」

 

 着地した瞬間、ルカリオはドダイトスの『リーフブレード』を白刃取りの要領で受け止める。そのまま受け流すと、技ではない単純な体術の掌底でドダイトスを弾き、トゲキッスの隣に着地した。

 

「バトンタッチ…つまり、あのルカリオは攻撃二段階、特攻と防御一段階上がってんのか」

「うん。素早さは下がっているけど、でんこうせっかの推進力があるし、あまり意味はないかも」

「…どっちも交代してくるなんてな」

 

 ポケモンバトルにおいて交代はリスクが大きい。必要な場合もあるが、大きな隙ができることになる。だがフォローができる相方がいるタッグバトルであれば、リスクが大きく減る。タッグバトルに慣れていない二人にとっては想定外の選択肢だった。

 

「あんまり予想してなかったね。これ以上交代してくるとはあまり思えないけど…頭にいれつつ切り替えていくしかないね」

「だな。それに、ルカリオならオレがやれる」

 

 鋼タイプは地面タイプに弱い。ドダイトスの火力であれば、高火力技が直撃すれば一撃で落ちる。そうでなくとも、そう何度も受けられない。ドダイトスの素早さは高くないが、ドダイトスの攻撃能力ならば回避もしきれず捉えられる自信があった。

 現時点でドダイトスの体力は五割、ピクシーは六割。トゲキッスは七割、ルカリオは満タン。交代したガブリアスは八割、ブラッキーは五割。ヒカリとジュンの控えポケモンは出ていないため体力は減っていない。今のところ、体力的にはヒカリとジュンの方がややリードしている。だが、両壁とルカリオのステータスアップ、加えてピクシーの麻痺がある。決して油断できる状況ではない。

 

「ヒカリ、悪い。カイムさんへの評価、オレが間違ってた」

「やっと?」

「サポートだけなら問題ないって思ってたけど、全然そんなことない。ここまで厄介だとは思ってなかった」

「だから言ったじゃん」

 

 サポート行動一つ一つは決して怖くない。だがサポート行動がシロナが理想通りに近い動きをしてくる。それがジュンの想定を大きく超えた。

 

「怖くはない。でも、やばい。警戒心マックスでいく」

「うん、的確。正直、あたしも想像してた以上だった」

 

 カイムの能力は決して高くない。だが、やってることがあまりにも的確。シロナがやってもらったら嬉しいかつ、こちらがやられたら嫌なことを続けてくる。

 

「でも、超えられる」

「だな。届く、いや届いてみせる!いくぞヒカリ!」

「もちろん!ピクシー、マジカルフレイム!」

「ルカリオ、はどうだん」

 

 ピクシーの炎とルカリオの波導がぶつかり合う。ルカリオの『はどうだん』が僅かに突き破るが、ドダイトスは『はどうだん』を『リーフブレード』で切り裂く。

 

「ドダイトス、10まんばりき!」

「トゲキッス、エアスラッシュ!」

 

 即座に攻撃を切り替えたドダイトスの攻撃とトゲキッスの攻撃がぶつかり合う。トゲキッスの攻撃で僅かにダメージを受けながらもドダイトスは止まらない。攻撃の矛先はルカリオ。

 

「ギリギリまで引きつけろ」

 

 ルカリオはドダイトスの攻撃に向かい合い、自らの波導を広げる。ドダイトスの攻撃がルカリオが広げた波導の範囲に入った瞬間、ルカリオは動いた。

 

「コメットパンチ」

 

 ドダイトスの攻撃を紙一重で回避しながらも、ルカリオの硬化させた腕がドダイトスに突き刺さる。

 

「こいつ…!」

 

 だがドダイトスは真正面からルカリオの拳を受け切っていた。拳を受けながらもドダイトスは攻撃に使っていた地面タイプエネルギーを頭に凝縮し、威力を軽減。ドダイトスの瞳はルカリオを正確に捉えている。

 

「(なんつー耐久力(タフネス)!回避された瞬間、攻撃の波導(エネルギー)を頭に集中!反応速度のギアが上がったなこいつ!)下がれルカリオ!」

「逃がさない!ピクシー、マジカルシャイン!」

「でんこうせっか!」

 

 ルカリオの姿が消え、一気にゼロから最高速度まで上がりピクシーの攻撃範囲から逃れる。

 その瞬間、ピクシーの視界の隅に白い影が映った。

 

「エアスラッシュ!」

「避けてピクシー!」

 

 真空の刃を回避しながら、ピクシーは空中で体を捻りトゲキッスに反撃の『マジカルシャイン』を再び放つ。トゲキッスは僅かに受けたものの、体勢は全く崩さずに距離を取った。

 

(動きのキレがすごいわね。ジュン君に引っ張られる形でヒカリちゃんのギアも上がった。重力場を維持しながらここまで動けるのもすごい。シンプルな身体能力はカイムのルカリオの方が上でしょうけど、体の使い方は向こうが一枚上手ね)

 

 フィールド全体に影響を与える『グラスフィールド』や『じゅうりょく』のような技は維持が難しい。フィールド技を維持しながらバトルができるポケモンは少なく、できるようになるまでは相当な訓練が必要となる。フィールド技を維持するだけでなく、攻撃を回避しながら反撃までできるピクシーの身体能力は、既にカイムが鍛えたポケモンを超えている。

 

「ただそれだけで勝敗には直結しないわよ。トゲキッス、こっちもマジカルシャイン!」

 

 トゲキッスが広範囲に向けてフェアリータイプの光を放つ。

 距離が離れていたこともあり、ドダイトスは地面を隆起させることで攻撃を防ぎ、ピクシーはドダイトスの出した盾の背後に身を隠すことで攻撃を回避。そして攻撃の効果時間が終わった瞬間、トゲキッスに向けてドダイトスが肉薄した。隆起した地面を踏み台に、さらにもう一台隆起させることで勢いをつけ、ドダイトスの素早さ以上の速度を瞬間的に出し、トゲキッスに迫る。

 

「早業・10まんばりき!」

「避けてトゲキッス!」

 

 速度はあっても動きは直線的。回避することは難しく無い。だが、トゲキッスが回避する方向を読んでいたピクシーが追撃に迫ってきていた。

 

「ムーンフォース!」

 

 トゲキッスに向けてフェアリータイプのエネルギー弾が放たれる。回避直後のトゲキッスが連続して回避することは難しく、無理矢理体を捻って直撃は避けたものの、ダメージは免れない。

 さらにそんなトゲキッスに向けて早業により攻撃後の隙を大きく減らしたドダイトスが肉薄する。

 

(追撃の追撃!避けきれない!)

「ストーンエッジ!」

「しんそく!」

 

 咄嗟にトゲキッスは『しんそく』によりギリギリで攻撃範囲から逃れるものの、回避はしきれず翼が岩石の刃によって穿たれ、大きなダメージが入った。

 

「まだまだぁ!10まんばりき!」

「ムーンフォース!」

 

 ドダイトスがトゲキッスを仕留めるべくさらに追撃してくるが、トゲキッスも負けじと反撃する。トゲキッスの攻撃とドダイトスの攻撃がぶつかり、互いにノーダメージで弾かれた。

 弾かれたトゲキッスを見て、ピクシーが追撃しようと動く。その瞬間、ヒカリの背筋に嫌な予感が走った。

 

「やばっ!ピクシー避けて!」

「遅え。力業・コメットパンチ」

 

 突如姿を現したルカリオ渾身の『コメットパンチ』がピクシーに突き刺さる。ギリギリで防御体勢をとったにも関わらず、ルカリオの攻撃はピクシーのガードを貫通してピクシーに直撃した。

 

(やられた!マジカルシャインは攻撃じゃなくて目眩しのため!マジカルシャインの光に隠れて気配を消し、トゲキッスが視線を引き付けるように立ち回ってその隙にルカリオが近寄ってきた!しかも時間をかけてタメを作ったから威力が高い!)

 

 言うなれば、トゲキッスは目眩しと囮だった。

 シングルバトルでは決して使えない戦法。それ故に、想定しきれておらず、直撃を受けることになった。

 ピクシーはギリギリ体力が残ったものの、体力は残りわずか。次に受ける攻撃が何であれ、ダウンは避けられない。それほどまでに致命的な一撃だった。

 

(こっちの意識がどこに向いているか、それを的確に読んでくる。シングルバトルと違って一点集中すると寧ろやられかねないことはここまでの道中でわかってたけど…カイムさんはその意識の隙をつくのが抜群に上手い!タッグバトルだとここまで厄介になるの⁈)

 

 シングルバトルでは絶対に成立しない厄介さ。二回戦まで見ていたヒカリもそれは理解していたが、実際に相対してみると想定をはるかに超えてくる。

 そんな厄介さを目の当たりにして、ジュンは()()()

 

「ならこうだ!じしん!」

「まもる」

 

 フィールド全体に衝撃波が走る。ルカリオは徒手居合の構えを取ると、防壁を展開して攻撃を防ぐ。トゲキッスも防壁を展開し、ドダイトスの攻撃を防いだ。

 両者が防御に切り替えた隙を使い、ピクシーは体勢を整える。体力が残り少ないこともあり、『じゅうりょく』の維持も難しくなってきていた。

 

「だけどここで退くことはしないわ!ピクシー、ムーンフォース!」

 

 ルカリオに向けて『ムーンフォース』が放たれる。ルカリオは『ラスターカノン』を放ち、相殺する。

 その瞬間、攻撃の陰からドダイトスが現れる。

 

「10まんばりき!」

「エアスラッシュ!」

 

 ドダイトスが再び剛腕を振り下ろし、トゲキッスの放った真空の刃とぶつかり合う。ドダイトスはダメージを受けながらも、トゲキッスの攻撃を突き破った。

 

「そうなるわよね。カイム!」

「わーってる。ルカリオ、カバー!」

 

 振り下ろされたドダイトスの剛腕を、波導を凝縮させた腕で受け止める。ダメージをゼロにはできないものの、威力の落ちたドダイトスの攻撃は完全に止められた。

 

「コメットパンチ」

「弾けドダイトス!」

 

 ルカリオが拳を振り上げた瞬間、ドダイトスが体当たりでルカリオを弾く。技を維持した状態で弾かれたルカリオは、再びドダイトスに向けて走り出した。

 

「させない!マジカルシャイン!」

「トゲキッス、ムーンフォース!」

 

 ピクシーがフィールド全体に眩い光を放つが、トゲキッスの『ムーンフォース』が盾となり、ピクシーの攻撃を抜けられる穴を作り出す。ルカリオはその穴へと飛び込み、ドダイトスへと肉薄した。

 

「殴り合い大歓迎だぜ!」

「へえ?なら…受けてみろよ。コメットパンチ!」

「ぶちかまし!」

 

 肉薄してきたルカリオに対して、ドダイトス渾身の一撃が繰り出される。技同士がぶつかると思われたが、ルカリオはドダイトスの攻撃を弾いた。

 

「マジっ⁈」

「正面から殴り合うわけねーだろ。シロナ!」

「エアスラッシュ!」

「ピクシー、カバー!」

 

 正面から殴り合うフェイントからの、トゲキッスの攻撃。一瞬虚を突かれたドダイトスは動けないものの、ピクシーの『早業・マジカルシャイン』により威力が大きく削られた攻撃では、効果抜群技にしてはダメージが少ない。だが、ダメージを受けながらも攻撃力に達してきたドダイトスの体力は既に二割。大技を受けられるだけの体力は、もうない。

 

「まだまだァ!」

 

 だがそんなこと知るかと言わんばかりに、ドダイトスはルカリオに突撃していく。

 

「ちょ、もう!ピクシー!」

 

 そんなドダイトスに驚きながらも、ピクシーもルカリオに肉薄した。

 ピクシーとドダイトス、そしてトゲキッスの位置を俯瞰の目で見たカイムは、刹那の瞬間でルカリオの逃げ場が無くなったことを理解する。

 

(完璧な位置どり!トゲキッスの位置でルカリオの逃げ道を塞いだ!この一瞬で示し合わせも無しでこれをやるか!)

「ぶちかまし!」

「ムーンフォース!」

 

 ルカリオを挟み込むように攻撃が放たれる。どちらも高威力技。両壁があるとはいえ、耐久力の低いルカリオがどちらか受ければ大ダメージ。両方受ければダウンだろう。

 

(選択肢は、四つ)

 

 凝縮された時間の中、カイムの思考が一瞬だけ加速する。

 回避、迎撃、防御、返し技(カウンター)。できることはこれだけ。

 

(この中で、()()()()()()()大きな利益になる動きはどれだ)

 

 この選択における目的は一つ。バトルメイクにおいて、どの選択肢が最も利益に繋がりやすいか。その答えは瞬時に導き出されたが、同時に難易度の高さも理解していた。

 

 やれるわよね。

 私なら、そこは切り抜けるわ。

 

 視線は向けていないが、シロナから感じる視線は雄弁に語る。試すように、祈るように向けられた視線に、カイムは思わず口元を歪めた。

 

「(回避と攻撃、両方やらなきゃならないってのが辛いところだなぁ!)ルカリオ!コメットパンチ!」

 

 ルカリオは咆哮と共に腕を硬化させると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。鋼タイプであるルカリオに地面タイプ技は効果抜群。例え攻撃をぶつけて威力を落としたとしても、ルカリオへのダメージは決して少なくない。加えて、ピクシーの追撃もある。ここでその選択は悪手にしか思えなかった。

 だがドダイトスの攻撃に対して、ルカリオの攻撃は正面から放たれたものではなかった。角度をつけて叩き込まれた一撃は、ドダイトスの攻撃のベクトルをずらす。

 

(まさか!)

 

 ジュンとヒカリはそれをみて、ルカリオがやろうとしていることに気づく。しかし、既に対応できるタイミングは逸していた。

 

「受け流せ、ルカリオ」

 

 ドダイトスの強力な一撃に対して、ルカリオの全力の一撃がぶつかる。しかし、正面からぶつけるのではなく、角度をつけてぶつけた。それにより、ドダイトスの攻撃は角度がずれ、ルカリオの体に攻撃を当てながらも直撃はせず、流れた攻撃の勢いのままルカリオの体を通り抜けた。

 

(受け流しやがった!)

 

 ただ受け流したわけではない。技がキャンセルできないように技同士をぶつけると直前まで思わせておきつつ、角度をつけて受けることで威力負けしていようとも受け流せる状態にしたのだ。

 そして受け流した先には、ピクシーの『ムーンフォース』。ドダイトスは咄嗟に『ぶちかまし』をぶつけることで『ムーンフォース』のダメージを最小限に抑えたものの、回避はできない。

 

「っ!」

「そのままピクシーに攻撃!」

 

 ダメージを受けながらも攻撃を維持していたルカリオは一気にピクシーへ迫る。

 

「ぶち抜け」

 

 ルカリオの拳がピクシーを貫く。

 だがピクシーは吹き飛ばない。攻撃を受けながらもルカリオの腕を掴んだ。体力が完全に消し飛ばされ、ダウンするまでのほんの僅かな時間。ピクシーはルカリオの腕を拘束した。

 

「!」

 

 ルカリオは掴まれたことに気づき、すぐに振り解こうと腕を引く。しかし、腕は抜けない。

 その僅かな時間で、ドダイトスが目の前まで迫ってきていた。

 

「ぶちかましだ!」

 

 高威力技がルカリオの体を貫く。ルカリオは波導を全開にし、腕に集中させてドダイトスの攻撃を受けるが、ルカリオの波導を持ってしてもドダイトスの攻撃は受けきれない。『リフレクター』による物理技威力軽減効果がありながらも、ルカリオは大きなダメージを受けた。

 

「エアスラッシュ!」

 

 同時に、ドダイトスの体を真空の刃が切り裂いた。ルカリオに一点集中で攻撃をしてきた影響で、トゲキッスはフリー。十分力を貯めて放った斬撃は、ドダイトスの残り体力を容易に消し飛ばした。

 ルカリオは吹き飛ばされつつ、空中で体勢を立て直してトゲキッスの隣に着地する。すぐに顔を上げたルカリオが見たのは、力尽きて倒れるピクシーとドダイトスの姿だった。

 

『ピクシー、ドダイトス戦闘不能!』

「お疲れ様ピクシー」

「よくやったぜドダイトス」

 

 労いの言葉をかけながらヒカリとジュンがポケモンを戻す。これで残りのポケモンが一体ずつのヒカリ・ジュンペアに対して、シロナ・カイムペアは二体。しかし、ルカリオの体力は四割、トゲキッスは三割で、控えのポケモンもダメージを受けている今、形勢としては五分と言えるだろう。

 

「厳しいわね」

「ああ」

 

 しかしシロナの呟きに、カイムは同意せざるを得なかった。

 現時点で、かなり理想的なゲームメイクができていると言える。それでもなお厳しいという評価になる理由は、理想的でありながらもこちらの体力が想定以上に削られているから。カイムのサポートとシロナの攻撃。どちらも想定通りに機能している。だがヒカリとジュンは卓越した反応速度と凄まじいほどの攻撃への嗅覚を発揮し、着実にこちらへダメージを与えてきている。

 

(目に行きやすいのはジュン君の超突撃型攻撃だけど、ヒカリちゃんがそこに合わせてきている。あれほどまで暴れ回るドダイトスの攻撃にここまで合わせられるのは…ジュン君への信頼もあるだろうけど、やはりバトルの流れに対する嗅覚ね)

 

 バトルは競技。そして競技である以上、試合の中で流れというものはある。そんなものは無いというトレーナーもいるしそこについては個人の主観であるため否定する気はないが、少なくともシロナは『ある』と思っている。どれだけ対応しようとも、相手がノリにノッている時は攻勢に転じることが難しい場合もある。シロナほどのトレーナーであっても、そういう時は凌ぐことに徹する場合もあるからだ。

 この試合でいえば、ルカリオの『コメットパンチ』をドダイトスが弾いたあたりからが該当する。あそこからルカリオが攻撃に転じてラッシュを始めた場合、こちらの被害はもっと少なかっただろう。

 だがそうなることをヒカリは本能的なのか思考したのかはわからないが察知した。ルカリオの攻撃を阻止し、とにかくこちらに流れを持って行かれることを防ぐ。サポートとしては十分すぎるほどの働きをしたと言えるだろう。

 

(タッグバトルになって意識配分に慣れていない…いや、そもそもあまり並列処理が得意では無さそうね。それでもなおここまでやれているのは、やっぱりバトルそのものの才能。盤面に合わせて、二人とも良い一手を打ち続けている。タッグバトル適性が異様に高いカイムがいてもなおこれ。凄まじいわね)

 

 カイムの地力は決して低くは無いが、ヒカリ、ジュンと比較するとやや見劣りはする。若干劣る地力をタッグバトル適性でカバーし、タッグバトルに慣れていない二人に僅かながらデバフがかかることでようやくイーブン。ムラはあるものの、やはり二人のポテンシャルはシロナをも上回るレベルだと改めて確信した。

 シロナは視線だけ隣に向け、カイムを見る。昨日と同じくらい集中しているが、消耗の度合いは昨日より少ない。恐らくメインアタッカーをシロナに任せているため、得意なカウンタースタイルをよく使えるからだろう。付け焼き刃ではないが、ジュンのようなガン攻めスタイルを得意とはしていないカイムからすると、思考のリソースの使い方的にもやりやすいが故だろうとシロナは判断した。

 

「平気?」

「ああ」

「ならよし」

 

 たったそれだけの短いやり取り。それだけで二人は互いに考えていることを概ね理解できた。

 そんな二人に対して、ジュンとヒカリは次のポケモンが入ったボールを手に取る。

 

「よっし!まだまだ互角だ!次いくぜヒカリ!」

「うん!いくよエンペルト!」

「頼むぜヘラクロス!」

 

 ヒカリはエンペルト、ジュンはヘラクロスを繰り出す。フィールドに降り立つとともにガブリアスが撒いた『ステルスロック』でダメージを受ける。鋼タイプを持つエンペルトはほとんどダメージを受けないものの、ヘラクロスは多めにダメージを受けた。

 

「エンペルトにヘラクロスか。トゲキッスいるのに選出とはな。随分と自信があるみてえだぜ。どっちもアタッカーだろこれ」

「二人とも攻め気が強いからね。さっきのバトルからして、息を合わせてこられたらちょっときついわよ」

「違いねえ。ブラッキーのひかりのかべも切れた。リフレクターはもうちょいもつだろうけど、エンペルトの攻撃には警戒しねえとな」

 

 トゲキッスとエンペルトの相性は悪い。トゲキッスのタイプ一致技は鋼タイプに阻まれて通りが著しく悪いうえに、エンペルトからトゲキッスへの打点は多い。エンペルトへのカバーはルカリオが格闘タイプを持つため問題なくできるが、逆にルカリオはヘラクロスと相性が悪い。鋼タイプを持つためヘラクロスからのタイプ一致格闘技は大ダメージであり、虫タイプを持つため格闘タイプ技は半減。ルカリオの耐久力と残り体力では、そう何度も攻撃を受けることはできない。だが、ヘラクロスは飛行・フェアリータイプのトゲキッスに頗る相性が悪い。

 タイプ相性から、この対面はいかに互いをカバーし合えるかが鍵になる。ダメージを削り、強力な一撃を叩き込んでいく。そんなバトルになることを理解した。

 

「いくぜヘラクロス!かわらわりだ!」

 

 ヘラクロスが動く。狙いは当然、ルカリオ。

 

「(リフレクターを割りに来たな)ルカリオ、でんこうせっか」

 

 ヘラクロスの攻撃が眼前に迫った瞬間、ルカリオの姿が高速で消える。速度を維持したまま、ルカリオはエンペルトへと肉薄した。

 

「速いね!でも、見えてるよ!なみのり!」

 

 エンペルトの足元から巨大な波が現れる。波は大きく膨れ上がると、ルカリオを飲み込もうと覆い被さるように崩れてきた。

 

「トゲキッス、しんそく!」

 

 波がルカリオを飲み込む瞬間、トゲキッスが超高速でルカリオの体を掬い上げる。背中に乗ったルカリオは『なみのり』を回避しつつ、腕に波導を凝縮させた。

 

「はどうだん!」

 

 ルカリオは凝縮させた波導の弾丸をそのまま拳に纏わせ、エンペルトの真上でトゲキッスから飛び降りる。そのまま拳を叩きつけようとした瞬間、エンペルトをヘラクロスが守った。

 

「振り切れヘラクロス!」

「下がれルカリオ」

 

 『かわらわり』を維持したままだったヘラクロスは腕を振り切ってルカリオを貫こうとしたが、ぶつかり合った『はどうだん』の爆風を利用してルカリオは距離を取る。そしてルカリオと入れ替わるように、トゲキッスの『エアスラッシュ』がヘラクロスに向けて放たれた。

 

「エンペルト、ラスターカノン!」

 

 鋼エネルギーがトゲキッスの『エアスラッシュ』を貫く。

 同時に、ヘラクロスがルカリオへと肉薄する。

 

()()()()()ヘラクロス!10まんばりき!」

「テメェ10まんばりき好き過ぎだろうが!みきり!」

 

 高速で放たれたヘラクロスのツノの一撃を回避すると、ヘラクロスのツノを掴んで投げ飛ばす。ヘラクロスは空中で体勢を立て直すが、そこにすかさずトゲキッスの『エアスラッシュ』が再び放たれる。

 

「アクアジェット!」

 

 だがトゲキッスの攻撃は再び阻まれる。想定以上にカバーがしっかりしていることに少し驚きつつ、ルカリオは再びエンペルトに迫った。

 

「グロウパンチ!」

「ヘラクロス!」

 

 ルカリオの拳がエンペルトを庇ったヘラクロスに突き刺さる。効果は今一つだが、目的はあくまで『グロウパンチ』による攻撃力の上昇。再びルカリオの拳に鋼エネルギーが凝縮された。

 

「コメットパンチ!」

「かわらわり!」

 

 ルカリオとヘラクロスの攻撃がぶつかり合い、()()()()()()()()()

 

(弾かれた⁈技のタイプ相性はあるが、攻撃力三段階上がった攻撃だぞ⁈)

 

 ルカリオの攻撃力は既に三段階上がっている。技同士のタイプ相性があるとはいえ、純粋な威力はルカリオの方が遥かに高い。だというのに弾かれたのはルカリオ。この事実に、シロナは即座に答えに辿り着いた。

 

「特性『根性』!カイム、接近戦はまずいわ!」

「それで()()()か!ルカリオ!」

「逃さないわ!エンペルト、早業・みずのはどう!」

 

 ルカリオが下がろうとした瞬間、ルカリオの体が水で押し流されて体勢が崩れる。その瞬間、ヘラクロスがルカリオに肉薄した。

 

「早業・インファイト!」

 

 ヘラクロスの強化した拳が連続でルカリオに叩き込まれる。早業により高速で放たれた技を避ける暇もなく、ルカリオは拳を受けた。ルカリオの耐久力と残り体力ではまず受け切れないと踏んでいたが、ルカリオはバックステップでヘラクロスから距離を取る。ルカリオは、まだ立っていた。

 

「なんでまだ戦えんだ⁈」

「なんでだろうなぁ!ラスターカノン!」

「なみのりよ!」

 

 ルカリオが放った『ラスターカノン』はエンペルトの『なみのり』に当たり、弾ける。エンペルトの波も弾けるが、全てが吹き飛んだわけではない。残された余波がルカリオに迫るが、ルカリオの体をトゲキッスが掴んで飛び上がる。

 

「ヘラクロス!ロックブラスト!」

 

 ルカリオを乗せて飛んだトゲキッスに向けて、岩石の弾丸が連続して放たれる。トゲキッスは卓越した飛行技術で弾丸を回避するが、一発だけ避けきれずに掠ってしまう。

 その隙をエンペルトは見逃さない。

 

「アクアジェット!」

 

 水を噴出した推進力を使って飛び上がり、空中のトゲキッスに突撃。威力は低いものの、空中のトゲキッスの体勢を崩すには十分。体勢が崩れたトゲキッスに乗るルカリオの体勢も崩れた。

 

「そこよエンペルト!ハイドロポンプ!」

 

 エンペルトから放たれた水流はルカリオに迫る。これを受ければルカリオが落ちることをシロナは瞬時に理解した。

 

「ルカリオ!飛んで!」

 

 カイムではなくシロナがルカリオに指示を出す。ルカリオはトゲキッスを踏み台にし、トゲキッスから飛び降りた。トゲキッスもルカリオに踏まれた反動を利用して反対方向に弾かれ、エンペルトの攻撃を回避した。

 

「ヘラクロス!スマートホーン!」

 

 弾かれたトゲキッスに向けてヘラクロスが狙いを定め、突撃する。

 

「しんそく!」

 

 だがその攻撃をルカリオが受け止めた。速度を利用しヘラクロスの攻撃をずらし、卓越した体術でダメージを最小限に留める。

 

「そいつは自殺行為だぜ!かわらわり!」

「そうか?」

 

 振り下ろされたヘラクロスの拳をルカリオは白刃取りで止める。そのままヘラクロスの拳を受け流すと、カウンターで『コメットパンチ』をヘラクロスに叩き込んだ。

 ヘラクロスはツノでルカリオの拳を弾く。そのままツノを振り下ろしてくるが、ルカリオは回転しながら回避すると、ヘラクロスに回し蹴りを叩き込んだ。

 

「(やっぱ体術レベルは向こうが圧倒的だな。ここで競っても勝てねえ。なら連続で技を出して、速度で潰す!)ロックブラスト!」

「バレットパンチ!」

 

 岩石の弾丸をルカリオが砕くが、岩石の影からエンペルトが飛び出してくる。

 

「みずのはどう!」

「ムーンフォース!」

 

 ルカリオに向けて放たれた攻撃を、トゲキッスのフェアリーエネルギーが相殺。僅かに『ムーンフォース』が貫通してくるが、鋼タイプを持つエンペルトへのダメージは少ない。

 

「(ペース上げてきてやがる!こっちに狙いを定めたな!)ルカリオ、じしん!」

 

 トゲキッスの攻撃によりできた一瞬の隙。この隙を利用してタメを作ったルカリオの攻撃がフィールド全体を揺るがす。ヘラクロスは地面に向けて『メガホーン』を放つことで威力を削ぎ、エンペルトは咄嗟に『なみのり』を放つ。『なみのり』により威力は削られたが、完全に相殺しきることはできない。ルカリオとエンペルトは互いにダメージを受けた。

 

「ルカリオはもう限界だ!一気に落とすぜヘラクロス!メガホーン!」

 

 ヘラクロスは地面に向けて放った『メガホーン』を維持した状態でルカリオに肉薄する。そのままツノを振り下ろすが、ルカリオは『コメットパンチ』で迎撃した。

 技同士がぶつかり合い、衝撃波が走る。瞬間的に鍔迫り合いのように拮抗した状態になるものの、即座にルカリオがヘラクロスのツノを受け流した。

 普通ならそこで体勢が崩れる。だがヘラクロスは天性ともいえる反応速度でルカリオの受け流しを読み切り、強化したツノを横薙ぎしてルカリオを攻撃した。ルカリオは防御体勢でツノを受けるが、カウンター気味に入った一撃はルカリオの体を浮かせるには十分な威力だった。

 

(やっぱ崩しきれねぇか!)

「トゲキッス!しんそく!」

 

 ヘラクロスの更なる追撃が来ると察したトゲキッスが即座に動く。超高速でヘラクロスに迫り、連撃を叩き込んだ。

 

「効かねえよ!スマートホーン!」

 

 だがヘラクロスはトゲキッスの連撃をガードすることで体勢を崩すことを防ぎ、トゲキッスへと即座に照準を定めた。

 

「ルカリオ!」

 

 再び、ヘラクロスのツノとルカリオの拳がぶつかり合う。ギリギリと鍔迫り合うが、ヘラクロスはルカリオの腕を掴んだ。

 

「投げろ!」

 

 ヘラクロスがルカリオの腕を掴んでそのまま投げようとしてくるが、ルカリオはヘラクロスの腕を弾き拘束から抜け出す。

 

「(やっぱ体術はすげえ!でも…)ヒカリ!」

「早業・ハイドロポンプ!」

 

 抜け出した動きをした瞬間、ルカリオに向けて強烈な水流が放たれる。抜け出した反動を利用してギリギリで直撃は避けたものの、ルカリオの体は確かに水流を受けた。全身を波導で強化しギリギリ体力は残ったものの、もう波導強化を使っても耐えることは不可能なほどギリギリだった。

 

「畳みかけろヘラクロス!かわらわり!」

「トゲキッス、カバー!」

 

 トゲキッスがヘラクロスの拳を受け止める。同時に展開されていた『リフレクター』が砕かれ、トゲキッスにダメージを与える。飛行・フェアリータイプのトゲキッスには大したダメージはない。だがここまで蓄積したダメージもあり、トゲキッスの体力も二割程度。いつ落ちてもおかしくない。

 だが互いのカバー能力が高い。それ故に、決定打に欠ける印象があった。どれだけ攻めてダメージを与えても、ギリギリで耐えられる展開が続いている。ひとえにカイムの凌ぎ、シロナの戦闘レベルが高いのもあるが、やはりお互いの息を完全に把握している連携が強い。どれほどの才能があろうとも、連携だけは即座に習得することはできない。

 だから、ヒカリは選んだ。

 

「エンペルト、()()()()!」

 

 突如、エンペルトが下がる。何事かとカイムは警戒するが、その手に握られているものを見て顔を顰めた。

 

(ここでもか!)

 

 ヒカリの手にあるのは、『スペシャルアップ』。特攻を二段階上げる瞬間強化アイテムだった。二回戦でも使っていたため可能性としては考えていた。だがこのタイミングで来ることは全くの予想外だった。

 

「ルカリオ!」

 

 ルカリオが足に波導を集中させ、一気にトップスピードでエンペルトへと肉薄しようとする。だがヘラクロスがルカリオの前に立ち塞がった。

 

「行かせねえ!相手はオレだ!」

 

 ヘラクロスの強靭な足がフィールドを踏み抜く。衝撃波がルカリオの足を止めさせ、さらにヘラクロスが追撃へと移った。

 

「かわらわり!」

「コメットパンチ!」

 

 拳がぶつかり合う。同時に、ルカリオは足を振り抜きヘラクロスの胴体に叩き込んだ。しかしヘラクロスの体勢は崩れない。ヘラクロスが蹴られた場所には、波導が集中していた。

 

(こいつ、波導の使い方を見様見真似で!)

 

 ポケモン達は波導をタイプエネルギーという形に変換して使う。それ故に、波導という概念は知らなくとも、ポケモン達は波導の扱いについてはある程度無意識に行うことができる。しかし、波導という概念を知らないと、ルカリオのように波導を集中させて瞬間的に耐久力を上げたり、ガードの硬さを上げることは難しい。

 ジュンもヘラクロスも、波導については知らない。だが、ルカリオとの対峙により、タイプエネルギーを体の一部に集中し耐久力を上げるという技法を見破り、そしてぶっつけ本番で会得することに成功した。

 

「エアスラッシュ!」

 

 真空の刃がルカリオとヘラクロスに向けて降り注ぐ。危険を察知したヘラクロスはルカリオを弾くと同時に反動で自分も下がった。

 

「いわなだれ!」

 

 ヘラクロスは着地と同時に地面を叩く。衝撃と共にヘラクロスの周囲に岩タイプエネルギーが凝縮された岩石が無数に現れ、ルカリオ達の頭上から降り注いできた。

 

「ラスターカノン!」

「はどうだんよ!」

 

 降り注ぐ岩石の雨に向けて、二つの弾丸が放たれる。弾丸は雨の中に穴をあけ、トゲキッスが通れるくらいの穴になった。

 トゲキッスは穴からヘラクロスの攻撃を抜ける。しかし攻撃を抜け出した瞬間、目の前に水の弾丸が迫っていた。

 

「みずのはどう!」

 

 道具によるブーストを終えたエンペルトの攻撃がトゲキッスを穿つ。特攻が二段階上がったエンペルトの攻撃は、耐久力のあるトゲキッスにも致命的。残り多くなかった体力が一気に削られ、二割を切った。

 さらにそこへヘラクロスが追撃する。

 

「トドメだぜ!スマートホーン!」

 

 狙いを定めた一撃がトゲキッスに放たれる。

 だがヘラクロスのツノはトゲキッスに届くことはなかった。直前で降り注ぐ岩石を足場に登ってきたルカリオがトゲキッスへの攻撃を防ぐ。

 

「コメットパンチ!」

 

 ルカリオの拳に再び鋼のエネルギーが凝縮される。硬化した腕をヘラクロスに向けて叩きつけたが、ヘラクロスはルカリオの拳にツノをぶつけることでダメージを抑えつつ、ルカリオの攻撃を受け流した。空中で攻撃を受け流されたことでルカリオの体勢は完全に崩れる。

 

「今度こそトドメだ!かわらわり!」

 

 その一瞬の隙が、致命の一瞬だった。

 ヘラクロスは空中に長時間留まることはできないものの、ホバリング程度なら可能。空中で体勢を崩さないヘラクロスは、動けないルカリオに対して的確に攻撃を叩き込んだ。

 ルカリオは地面に叩きつけられ、フィールドを転がる。しかし力尽きる最後の一瞬で、自分の残り波導を凝縮した弾丸を作り出した。

 

(来る!)

 

 ヒカリはエンペルトに向けて攻撃が来ることを察知。最後の一撃である以上、回避すればルカリオは力尽きる。ここは回避を選択しようとした瞬間、ヒカリの背筋に嫌なものが走った。

 

「エアスラッシュ」

 

 真空の刃がエンペルトを切り裂く。鋼タイプを持つエンペルトに対して、効果は今一つ。だが、真空の刃に切り裂かれた瞬間、エンペルトの体が硬直した。この硬直がエンペルトの回避を潰し、ルカリオの最後の一撃は的確にエンペルトを穿つ。

 最後の一撃がエンペルトを貫いたのを見て、ルカリオは完全に力尽きた。

 

「ロックブラスト!」

 

 ルカリオのダウンを見届けたヘラクロスがトゲキッスへと狙いを移す。岩石の弾丸はトゲキッスに向けて何発も放たれるが、トゲキッスは傷ついた翼を駆使してヘラクロスの攻撃を回避した。

 だが次の瞬間、目の前にエンペルトが迫ってきていた。

 

「アクアジェットからのラスターカノン!」

 

 早業と『アクアジェット』による高速移動。さらに技を使いながらも別の技をチャージするという高等技術をフル活用し、エンペルトはトゲキッスに迫る。攻撃を回避したばかりで次の行動に移れないトゲキッスは、エンペルトの『ラスターカノン』に貫かれた。

 なんとか耐えようとしたトゲキッスだが、もはや空中に浮く力も残されていない。そのままトゲキッスは地面に倒れ、ダウンした。

 

「よっし!完璧!」

 

 ガッツポーズを決める二人に、シロナは笑い、カイムは顔を歪めた。

 

「やるじゃない…!」

「んのやろう、強えな」

 

 バトルは最終局面を迎えようとしていた。

 

 

 




Cパート


「じゃあ、色々聞かせてもらうわね」

 ()()()()()()()()()を向けられたシロナは背中に冷や汗が流れるのを感じる。身の危険、というより、見透かされているかのようなイサナの瞳に対して、なにか嫌な予感がしたからだ。

「あ、その前に一つお礼を改めて」

 だがそんなシロナの予感の出鼻を挫くかのようにイサナは改まってシロナに頭を下げてきた。

「えっ」
「ありがとう。アタシの弟を助けてくれて」

 突然の言葉にシロナは何も言えない。まさかそんな言葉から入ってくるとは夢にも思わなかったからだ。

「いじっぱりだし細かいし小言ばっかりだけど、大事な弟なの。今のアタシにとってたった一人の肉親。助けてくれて、ありがとう」
「そんな…当然のことをしただけです。それに、こちらの方が色々助けてもらったので」
()()()()()。でも、シロナちゃんが助けてくれなかったら始まらなかったから、ありがとう」

 イサナの礼と同時に言われた少し違和感のある言葉。聞いてもいいのかと少しだけ考えたシロナを見透かすように、イサナは笑う。

「色々まだ聞きたいでしょ。ちゃんと答えるわ。まず気になっているであろう時渡りについて」

 イサナは手を翳すと、ピンク色の光が現れる。光はゆっくりと形になり、一体のポケモンとなった。

「この子は…」
「セレビィ。時渡りの力を持つ子よ」

 シロナもセレビィは知っている。しかし、目の前にいるセレビィは色が違う。本来なら黄緑色のセレビィはピンク色になっており、通常のセレビィとは全く違う色合いになっていた。

「色違い個体よ。そのせいかどうかはわからないけど、この子の時渡り能力は極めて高いものだったの。そんで、アタシはこの子の力を高め、コントロールする巫女」
「コントロール?」
「セレビィは時空ホールを開くことはできても、時空ホールの先がどの時代になるかはかなり大雑把にしか調整できない。本来、どこかの時代にピンポイントで飛ぶ能力じゃないしね。だからアタシがその目標を細かく制御する役目を持っているの」
「そういう意味での、巫女」
「うん。ついでに、飛ばした人の様子を見ることもできる。いつでもどこでもってわけじゃないけど、ある程度任意で見られるわ」
「だから私がカイムを助けたことを知っていたんですね」
「そゆこと」

 話している中で所々でこちらのことを知っているような空気があった。その理由がこれなのだろうとシロナは納得した。
 そして同時に、左目が虚な理由にも察しがつく。

「…あの、イサナさん。間違っていたら、すみません。左目って…」
「あ、気づいた?そ、見えてないの。代わりに時渡りをさせた人の映像は、左目に映されるわ。カイムと、ダイゴとNのことは左目で見てた」
「どうして…」
「代償、と言うべきかな。コントロールするだけとはいえ、人間には過ぎた力だもん。なんの代償も無しに得られる力じゃないから」

 時渡りの力は人が扱えるようなものではない。力を得る代償として、イサナは左目の視力を失った。同時に、視力を失った左目は時渡りさせた人物のことを見られる目へと変質した。

「それで、カイムのこと見てたの。だからあの子が記憶を無くしたことは割とすぐわかったわ。そんで、シロナちゃんのことも見えたの」
「そうだったんですね。確かに、カイムは私の時代に来てから結構私と長い時間を一緒に過ごしましたから」
「だよね。いつ見てもシロナちゃんいたもん」

 イサナの言葉にシロナさ目を逸らす。

「それでさ、初対面のシロナちゃんに聞くのもアレかもしれないけど…敢えて聞くね」


「シロナちゃん、カイムのこと好きなの?」


 茶化した雰囲気など一切ない真剣な表情。その表情を見て、シロナは頷いた。

「…はい。私は、カイムのことが好きです」

 嘘偽りない心からの言葉だった。今のところ、誰にも告げたことのない言葉が口から溢れ出てきたことにシロナは驚く。
 シロナの言葉を聞いたイサナは嬉しそうに、そしてそれ以上に悲しそうな表情で頷いた。

「…多分、そうだろうって思った。そっか、やっぱりか」
「すみません…大切な弟さんなのに…」
「おっと誤解しないで。アタシは嬉しいの。弟がこんなに素敵な人に想われていることが、嬉しい。でも、敢えて言わせてもわうね」


「あの子はやめておきなさい」


 イサナの声は冷たいが、どこか思いやりを込めているように響いた。

「カイムは、いい子なの。本当に。表情が動かないことと小言が多いのが玉に瑕だけど、どこに出しても恥ずかしくないいい子よ。それに、シロナちゃんとの相性も…多分いい」
「じゃあ、どうして…」
「だからこそよ。これ以上、あの子への想いが大きくならないうちに、離れておくべきだと思うわ。()()()()()()()()()()()()素直に祝福してあげられたんだけどね」

 こんな状況。
 どういう意味だろうと頭を回すも、時間が壊れたこの世界の状況のことを言っているのだろうかとしか思いつかない。

「…もう一度言うけど、アタシはシロナちゃんのことが嫌いとか、あの子を信用していないとかそういうのじゃないよ。人の想いのことだしどうこう言う資格はないんだろうけど、アタシなりの善意で忠告。聞くかどうかは、シロナちゃん次第」
「どうして、ダメなのですか?時間が壊れたこの世界だからですか?」
「んあ?ああそうか、そりゃ知らないよね」

 イサナは意外そうな表情をするが、シロナはその言葉の意図がわからない。知らない、と言った。つまり、イサナ達しか知らない未来の何かがあるのだろうとシロナは察する。

「知らないって、何をですか?」
「んーとね、アタシを含めたこの時代の人間、ポケモン全てに共通するんだけど…アタシらは…」
「シロナ!」

 突如、部屋の扉が開く。どう見てもまだ治療途中のカイムが焦ったような様子でシロナの元へ駆け寄った。

「大丈夫か⁈」
「え、ええ。どこも怪我してないわ」

 むしろカイムの方が遥かにボロボロ。心配される側であるはずのカイムが心配している現状にシロナは苦笑するしかなかった。
 だがそんなシロナの気持ちと裏腹に、カイムは本当に安心したように息を吐く。

「…よかった」

 その姿があまりにも安心した様子で、シロナは目を丸くする。そしてすぐに柔らかく微笑むと、カイムの肩に手を置いた。

「心配してくれてありがとう。でも、まずは自分の治療を終えてからね」

 そう言ってシロナが振り返ると、そこには呆れた様子のダイゴとNがいた。ダイゴが治療をしていたのだが、カイムが治療を抜け出してここに来たため治療はまだ終わっていない。

「心配してくれるのは嬉しいけど、まずは自分のことをちゃんとしなさい」
「……ああ」

 バツが悪そうに頷いたカイムに軽めのデコピンをすると、シロナは立ち上がった。

「ダイゴ君、治療手伝うわ。その間に色々聞かせて」
「助かります。じゃあ行きましょう。ほら、カイムも」
「わかったよ…」

 二人に連れられてカイムは部屋を出る。
 残されたイサナとNはそんなカイムの背中を見送りながら、どことなく真剣な表情をしていた。

「…話さなくていいのかい?」
「N、あんた勘が良すぎるわ」
「イサナのことだし、先にシロナに話しておくと思ったからね。ただ、シロナの様子を見た感じ話した様子もない。だからまだなのかなって」
「ホント、勘がいいんだから」

 イサナは疲れたように息を吐く。

「…話しておくべきだとは思うわ。絶対、シロナちゃんのためにならないもん」

 でも、と付け加えてイサナは続ける。その表情は優しさと悲しみが混ざったような、とても複雑な表情だった。

「でも、カイムがここまで想っていて…シロナちゃんもあそこまで想っている。そんなの見せられたら、言えなくなっちゃった」
「……その優しさは、後々響くよ」
「わかってるわよ。どちらにしろ、あの二人が一緒になることは…不可能なんだから。アタシらが成功しようが失敗しようがね。ただ、今はやめておくわ。色々情報詰め込まれたばっかなのにここでそんな残酷なこと伝えたら、シロナちゃんの協力が得られなくなる可能性もあるから」

 達観したように、悟るように言うイサナの言葉にNは何も言わない。決して正しいとは言えない選択だろうが、今だけはまだ残酷な現実に向き合わず、愛する人と過ごせる時間を大事にしてほしい。そんな願いを込めて、Nは帽子を深く被り直すのだった。





今回のバトルのBGMはいくつかあり、今回は『終点(ver.スマブラX)』です。





シロナ
今回の衣装はノースリーブトップス、ショートパンツ、ロングブーツの上にロングコート。カラーは黒がメインで金の装飾。イメージは『崩壊:スターレイル』飛霄の服装の色違い。こういうロングコート+戦闘服みたいな見た目がシロナさんに似合うと思ったので。なお、カイムは背中オープンワールドしてることに苦言を呈したが、全く聞き入れられなかった。
この作者、ハイネックノースリーブ好きすぎだろと思ったそこのお前!
君のように勘が良く癖が合う読者は大好きだよ。


カイム
服装のイメージは『キングダムハーツ』のテラの色違い衣装にジャケットを合わせたものになります。
大会は誰と組んでも決勝まで行ける。シロナさんが上記のうちの誰かとペアを組んだ場合は優勝できないが、そうでないなら確実に優勝できるくらいタッグバトル適性が高い。スモモ、トウガン、ヒョウタあたりだとより盤石になる。


ヒカリ
コンテスト用衣装のドレスで参戦。単純な実力はジムリーダーレベルだが、瞬発力と閃きによる爆発力は現存するシンオウリーグトレーナーの中ではトップであり、シングルバトルならシロナにもその牙が届き得る。タッグバトルだと生来の優しさが邪魔をしてペアに合わせようとしすぎてしまい、事故る可能性もある。優勝するにはシロナ、カイム、ジュンの誰かと組む必要がある。


ジュン
ポケモンレンジャーの隊服で参戦。ヒカリほどではないが、実力にムラがある。ハマった時は四天王レベルの実力まで跳ね上がるが、タッグバトル適性は低い。自分のやり方を押し付けるタイプのトレーナーであるため、対戦相手にもペアにもそのスタイルを強制させるタイプ。
カイムのことはぶっちゃけ舐めてる。舐められてることも本人は理解してるし、シロナと比較したら舐められるのも当然だと思ってる。


作者
また三ヶ月以上更新しなかった愚か者。最近忙しさが限界突破して砂糖を自己補給できなくなり、二ヶ月に一回くらいの頻度で体調を崩して死にそう。ただ今回、ようやく思い描いていたシーンをかけて少し復活傾向。


主人公、ライバルのバトルの感覚・理論派閥(第八世代まで)
感覚派
レッド、ヒビキ、ユウキ、ジュン、トウコ、ベル、ミヅキ、ユウリ

両立派
リーフ、ハルカ、ヒカリ、トウヤ、セレナ、ハウ、シロナ

理論派
グリーン、シルバー、ミツル、コウキ、チェレン、カルム、ホップ、カイム


シロナ・カイムペア
ガブリアス Lv.89 特性『鮫肌』 持ち物『ヤチェの実』
トゲキッス Lv.85 特性『天の恵』 持ち物なし
ブラッキー Lv.75 特性『シンクロ』 持ち物『食べ残し』
ルカリオ Lv.70 特性『精神力』 持ち物なし

ヒカリ・ジュンペア
ピクシー Lv.73 特性『マジックガード』 持ち物なし
エンペルト Lv.76 特性『激流』 持ち物『???』
ドダイトス Lv.76 特性『深緑』 持ち物なし
ヘラクロス Lv.74 特性『根性』 持ち物『火炎玉』
瞬間強化アイテム『スペシャルアップ』使用。
デフォ持ち物として『神秘の雫』、『火炎玉』で1pt、『スペシャルアップ』で2pt。合計3pt。

リクエストにあったディアンシーの映画編を執筆してるのですが、密林プライムからなくなりました。また復活してほしい…


明日明後日くらいまでにまた更新します。


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