ただただシロナさんとまったり過ごすだけの話   作:職業病

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こんなにカイムの結婚を祝ってくれるとは思っておらず、何故か泣きそうになる私がいました。
…また、三ヶ月⁈
しかも短編⁈

「何やってんだお前ェ!!!」

とは言わないでください。


ちょっとだけシリアスな話もある、小話詰め合わせです。


60話 カンナギタウン

 大会を終え、年越ししてから少し。

 二人はある場所を訪れていた。

 

「緊張してる?」

 

 シロナの問いかけにカイムは視線だけ動かす。視線の先にいたシロナは優しく微笑みながらカイムを見ていた。

 

「してる。そんなにわかりやすいか」

「ええ。波導の流れが硬いわ」

「そこみられたらどうしようもねぇよ」

 

 また波導使いとしての腕を上げていることに若干引きつつ、カイムは目の前の建物を見上げる。

 そこにあるのは、シロナの実家。今現在、二人はシロナの実家であるカンナギタウンに戻ってきていた。

 

 目的はもちろん、婚約の報告。

 事前に電話で報告だけはしているが、やはりこういうことは改めて直接報告すべきだと考え、訪問する旨をアイナ、クロナに伝えた。そして二人はその申し出を快諾してくれたため、シロナの実家を再び訪れることになった。

 

「本当はナダさんとタキさんにも直接報告したいんだけどね」

「さすがに遠い。すぐに行くってのはちと厳しい」

 

 カイムの実家はホウエン地方。距離があるため、直接訪問するには纏まった時間が必要となる。そのため、カイムの両親にも報告した際は日程を改めて相談し、後日直接報告するという運びになった。

 

「あ、お姉ちゃん。カイムさんもいらっしゃい」

 

 二人が来訪したことに気づき、妹のクロナが出てくる。

 

「早かったね。もうちょっと時間かかると思ってた」

「出発時間、言ったっけ?」

「カイムさんから連絡来たよ?どうせシロナは連絡しないだろって」

「カイム?」

 

 波導が鋭くなったシロナに見られ、カイムは目を逸らす。

 

「もう!」

「事実だろ。現にしてねぇじゃん」

 

 カイムの言葉にシロナはジト目を向けてくる。だがカイムは全く気にした様子はなく、肩をすくめた。

 

「大まかにはしておいたでしょ!」

「詳細を伝えて悪いこともあるまい」

「本当に細かいんだから!」

 

 シロナが波導を込めた手で叩いてくる。その手には、赤色の指輪。前は右手につけていたが、今は左手になっている。それを見てクロナはにっこりと笑った。

 

「ほら、新婚でお熱いのは結構だけど夫婦漫才は後にしてさっさと入って。二人の熱で冬を終わらせる前にね」

「漫才なんてしてないわよ」

「漫才かどうかはいいの。なんでもいいからさっさと入って。おばあちゃんも待ってるよ」

 

 それだけ言ってクロナは戻っていく。クロナに続くようにシロナとカイムも扉を開いて家に足を踏み入れた。

 

「ああ、来たね」

 

 奥の居間へと向かうと、そこにはアイナがお茶を飲みながら待っていた。その瞳は、どこか優しい。

 

「ただいまおばあちゃん」

「ご無沙汰してます」

 

 シロナとカイムの言葉に、アイナは笑いながら頷く。

 

「ああ。大会、おつかれさん」

「ありがと。見てくれた?」

「もちろんさ。孫が出る大会は全部見てるよ。それより座りな。そんなとこで突っ立ってちゃあ話もしづらいだろ」

 

 アイナに勧められ、二人派正面の座椅子に腰を下ろす。そこでクロナが湯呑を運んできて、シロナとカイムの前にお茶を置いた。

 

「ありがと」

「うん」

 

 短くやり取りをしてクロナも腰を下ろす。アイナは一口お茶を飲むと、手を組みながら二人に視線を向けた。

 

「さて、わざわざ後回しにする理由もない。まずは本題から入ろうか」

 

 突如、アイナの波導と視線が鋭くなる。シロナと同じ銀灰色の瞳はじっとカイムを射抜き、偽りを許さない空気を作り出した。

 

(…アイナさん、波導覚醒者じゃないよな。なんでこんな鋭い波導纏ってんだよ)

 

 波導を覚醒させているカイムだからわかるアイナの波導の強さは、体感ではジムリーダーの波導と遜色ない。シロナの言葉を信じるのであれば、アイナは波導について何も知らないはず。加えてポケモントレーナーでもない。だというのにこの波導の強さは少し、いやかなり異常だった。

 

「あたしから言ってもいいが、こういうのは自分から言いたい質じゃないかい?」

 

 口元のみニヤリと笑うアイナにカイムは苦笑する。

 そして姿勢を正すと、アイナの見定めるような瞳を真っ直ぐと見つめ返した。

 

「先日お伝えしましたが、改めてお伝えさせていただきます。私、カイムとアイナさんのお孫さんであるシロナさんとの結婚を認めていただきたく存じます」

「ふむ、仮にあたしが認めなかったら…どうするつもりだい?」

 

 波導がより鋭くなる。背中に冷や汗が流れるのを感じた。

 

「認めていただくまで、対話を続けるつもりです」

「対話をする気がなかったら?」

「無理にでも、時間をかけてでもお話しを聞いていただくまで粘ります」

 

 カイムの言葉にアイナはさらに視線を鋭くする。部屋の窓が軋むような音がした。

 

「ほう?そこまで時間をかけると?」

「無論です」

「何故そこまでする。あたしの許可なんぞなくとも、別にシロナと一緒になることはできるだろう」

「必要だからです」

 

 カイムの波導が強くなる。波導を覚醒させていないアイナですら、その波導の強さを気迫という形で感じた。

 

「アイナさんは、シロナの家族だ。その家族に認められることすらできない奴が、隣で歩くなんてことできないでしょう」

「…つまり、あんたのためかい」

 

 アイナからの圧力が強まる。圧力の強さはどことなくシロナを彷彿とさせた。

 

「いえ、俺とシロナのためです。俺はもちろん、シロナも家族に認められないという事実は…全員の間に何かしらの蟠りが残る。そんな状態で今後長い人生を、心のままに生きていくことは…難しい。俺とシロナのために、アイナさんから認められる必要があるんです」

 

 アイナは目を細める。カイムの瞳に宿る光は鋼の如き硬い意志が宿っているのがわかる。前に会った時から既に強い意志を感じていたが、今はさらに強い。先日の大会の他にも、何かしらカイムの心を強くする出来事があったことは想像に難くない。

 

「……改めて聞くよ」

「はい」

「シロナは、器用な子だ。家事以外の大体のことは一人でできちまう。だからか、一人で抱えちまうことが多い。しかも平気な顔してるから、誰も気づかないこともある。部屋は壊滅的なのにここだけは綺麗に隠すんだよ」

「おばあちゃん、部屋の話いる?」

 

 シロナのツッコミをアイナはスルーした。

 

「そんな時、お前さんはシロナの抱えたものに気づくことはできるかい?すぐ隣にいながら『気づかなかった』なんて無様なことを言うことはないと、今ここであたしに誓えるか?」

 

 嘘偽りは決して許さない。そんな空気を感じさせるような圧力だった。しかしカイムは怯むことなく、真っ直ぐアイナを見つめる。

 

「はい、誓えます」

「この子の隣を歩き、最後まで二人で歩いていく覚悟はあるかい」

 

 アイナの眼光が鋭くなり、波導が刺すような鋭さになる。これほどの圧力をトレーナーでもなんでもない一介の老人が出しているという事実に、カイムは内心で苦笑した。

 だがその目は決してアイナから逸らすことはしない。

 

「あります。俺の命が尽きて死ぬその時まで…隣で支え続けます」

 

 アイナの波導(覇気)に負けないほど強い気迫がカイムに宿る。その気迫の強さにアイナは思わず頬が緩みそうになるのを感じた。しかし状況を考え、その思いを封じ込めて表情を引き締める。

 

「……ならもう一つ聞こう」

 

 アイナの波導が様子を変える。

 

「人は、生きている限り誰かを傷つける。そんなつもりがあろうがなかろうが、人は生きる限り他者を傷つけてしまう。それは夫婦になろうとも同じだ。あんたがどんなにシロナを思い、大切にしていても…傷つけてしまうことは必ず来る。逆もまた然り。あんたはシロナを傷つけること、そして傷つけられる覚悟を持っているか」

 

 先ほどまで感じた試すような波導が一転、シロナがカイムを指導する時に近い波導に変化する。見定めるのではなく、理解を問う。そんな空気をカイムは感じた。

 

「傷つき、傷つけられる覚悟」

「そうだ。あんたは優しい。だからこそ、他者を傷(・)つ(・)け(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)こ(・)と(・)に(・)対(・)し(・)て(・)傷(・)つ(・)く(・)ようなタイプだと見た。なにしろ、シロナもそうだからね。あんたは多分、傷つけられる覚悟はある。だが、大(・)切(・)な(・)人(・)を(・)傷(・)つ(・)け(・)る(・)覚(・)悟(・)は(・)あ(・)る(・)の(・)か(・)い(・)」

 

 なるほどとカイムは少し目を細める。

 人である以上、生きている限り他者との関わりは必要。だがどんな形であれ、長くともにいれば傷つけてしまうことはある。大切な人を傷つけてしまう覚悟がカイムにあるのかと、アイナは問いかけた。

 

「共に生きる者を傷つけ、その自責に駆られて立てなくなる。そんなこともあり得るかもしれん。あんたは…その自責を乗り越えられるだけの覚悟はあるのかい」

 

 光のように真っ直ぐと射抜いてくる眼光を前に、カイムはほんの少しだけ躊躇うように口を開いた。

 

「……正直に、言います」

 

 カイムは視線を逸らすことなく、重々しく口を開いた。

 

「そこまで、考えられていませんでした。浅慮を恥じるばかりです」

「だろうね。だが、恥じる必要はない。あんたの年齢で、そこまで考えられる奴はそういないんだから。でもあ(・)ん(・)た(・)に(・)は(・)聞いておかなければいけない」

 

 アイナは目を細めながらカイムを見据える。

 

「あんたは、シロナを傷つけた時にその罪悪感を乗り越えることができるかい。どんなことをしても乗り越えるって気概は、今のあんたにあるかい」

 

 強い眼光は、本気になった時のシロナにそっくりだと心から思う。やはり血の繋がりがあるのだと、カイムは改めて実感しながらも自分の胸に手を当てた。

 

「…俺一人では、乗り越えられない可能性もあります。俺の性格的に、悪い方に考えがちな部分はあるので」

「ほう?ではどうする」

「助けてもらいます。シロナはもちろん、ポケモン達、親友、先輩、後輩…誰でもいい。俺だけでできないことは、誰かの手を借りる。そうして乗り越えていきます」

「お前さん一人では、乗り越えられないと?」

 

 ビリ、と肌を刺すような波導(殺気)。しかしカイムは波導に怯むことなく真っ直ぐと見据える。

 

「俺一人では、乗り越えられないことは必ずあります。それがアイナさんの言う…傷つけてしまったことに傷つく、所謂自責の念である可能性は…無いとは言えない。だから、助けてもらう。俺が持つ、たくさんの繋がりを辿って、立ち上がれるように」

 

 カイムの言葉にアイナはほんの少しだけ目を細めた。

 

「…ほう、繋がり」

「シロナと出会い、たくさんの繋がりを…俺は持つことができた。その繋がりに助けられたことも、逆に助けたこともある。自分一人でできることなんぞたかが知れてることはもう、俺もわかってます。だから、繋がりを辿ってたくさんの力を合わせて乗り越えます。時には俺が、他者への繋がりとして他者を助けます」

 

 

「シロナと出会ってできたたくさんの繋がりが、俺の持つ一番大きな力です」

 

 

 深い海のような瞳に宿る意志は、穏やかなれど決して砕けることのない金剛石のような硬さを感じる。

 

 暫しの沈黙が両者間に流れる。

 そして、アイナは表情を緩めてカイムに笑いかけた。

 

「さすがだね。ああ、本当に良かった」

「はい?」

「シロナと出会ったのがあんたみたいな子で、本当に良かったって思っているんだよ」

 

 先ほどまでとは打って変わって、とても穏やかな空気。刺すような波導の影はなく、穏やかな波導を纏ったアイナは優しく笑いかけた。

 

「試すような真似をして悪かったね。ただ、これは聞いておかなきゃならんことなんだ。特に、あ(・)ん(・)た(・)に(・)は(・)ね」

「そう、ですか」

 

 突然空気が緩んだことに戸惑いつつ、自分が否定されたわけではないと理解したカイムは緊張を緩める。そんなカイムを見て、アイナは笑った。

 

「結婚、おめでとう。あんたのような人なら安心できるよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 アイナの言葉を聞いてカイムは力が抜けるように息を吐いた。あまりの波導の強さに冷や汗が止まらなかったが、認められた事実を噛み締める。そしてそんなカイムの手をシロナが優しく握った。

 

「ほら、大丈夫だったでしょ?」

「…肝は冷えたがな」

「あっはっは!許しておくれよ。あんたほどの胆力ある奴が、あたし程度の気迫に負けるわけないって思っていたからこそさ!あたしの気迫に負ける程度で、シロナと過ごすことなんてできないからね!」

「おばあちゃん、私そんなにきつくないわよ」

 

 いやきついぞ、と口には出さずともカイムは思う。普段はともかく、バトルや考古学のことになるとシロナの気迫は凄まじい。怒鳴るも殴るも蹴るもしないが、理詰めによる正論パンチの連続は相当なもの。アイナの波導に少し疲弊した今は敢えて口にすることはなく、目を逸らすだけにとどめたが、妹のクロナはそんなカイムを見て何かを察して苦笑した。

 

「ま、そんな話はいい。今日はめでたい日だ!ご馳走を用意しないとね!」

「なら、何か作りますよ」

 

 率先して調理を申し出るカイムにアイナとクロナは苦笑する。主役が率先してやることではないだろうと思うのと同時に、これだけ色々やろうとする人なら家事が壊滅的なシロナでも問題ないなと安心もできた。

 

「主役が何言ってんだい!今日はもてなされな!せっかくだ。出前でも取ろうかね!食べたいものは何でも言っていい。好きに食べな」

「…いいんですか?」

「いいんだよ。むしろ、そうさせてほしい。それだけ、嬉しいってことなんだからね」

 

 シロナに目を向けると、優しく頷いてカイムの手を握る。シロナの表情を見て、ここは素直に厚意を受け取るべきだと判断したカイムは素直に頷いた。

 

「…じゃあ、お言葉に甘えます」

「そうしな。しかし、年越ししたばかりだってのにめでたいねぇ!」

「本当は年越ししてからのつもりだったんですが、色々ありましてね」

 

 色々の中に含まれる言葉をカイムは簡単に説明する。

 シロナとの賭け、ダイゴの偶然の気遣いが重なった結果、年越し前になった。当初の予定では、シロナの誕生日に合わせて出すつもりだったのだが、良い意味想定外になり、こういった形になった。

 

「へえ、そんなことが。お姉ちゃんの自爆だったんだ」

「自爆じゃないわよ!」

「その賭けとやらはお前から仕掛けたんだろう?知らなかったとはいえ、自爆以外の何者でもないよ」

「……うるさいわね!」

 

 アイナの言葉にシロナは不貞腐れたように口を尖らせる。

 知らなかったとはいえ、自分の言葉がそうなるように仕向けた。自爆と言われても反論はできない。

 

「あんたは良かったのかい?プロポーズの段取り、決めてたってことだろう?」

「タイミングとしてはどちらでも良かったです。誕生日でも最終日でも。どっちにしろ、渡すことは決めてたんで。ま、悩みは少ししましたけど」

 

 さすがに相談できる相手も時間もなかったため、自分なりに調べて出した結論だった。プロポーズ直前、カイムは敢えて雑談を挟むことで時間稼ぎをした。あれは想定外の状況になったため、せめてシチュエーションを少しでも良いものにしようと花火が上がるまでの少しの間、雑談で時間を稼いだ。かつてシロナに想いを告げられた時も、カイムが改めて想いを告げた時も花火が上がっていた。あの状況でカイムが準備できる一番のシチュエーションはあれだけだった。

 

「あんなシチュエーション…準備してたわけじゃないの?」

「違えよ…お前の賭けで急遽変えたんだ」

「急遽で、あんな素敵なシチュエーションにできたの?」

「偶然だ。まあ、色々とタイミングが良かった」

「ふふ。偶然でも、あんな素敵なシチュエーションでプロポーズされるなんて幸せ者ね」

 

 幸せそうに笑うシロナを見て、カイムは目を逸らして肩を竦める。そんなカイムを見てシロナは左手を取り、薬指についた青い指輪を優しく撫でた。

 

「…そんな良いものじゃねえ。花火を待ったのも…結局、俺の都合だ」

 

 アイナとクロナはその言葉の真意を見抜くことはできなかったが、シロナだけは理解できた。カイムが花火を待ったのは、シチュエーションを待つためだけではない。

 

『時間稼ぎだ』

 

 この言葉は普通に聞けば花火が上がるまでの時間を待つため、というものに聞こえる。ただこれは花火だけでなくカ(・)イ(・)ム(・)の(・)決(・)心(・)を(・)待(・)つ(・)た(・)め(・)の(・)時(・)間(・)でもあった。

 シロナはあの時、慌ててしまった。だがあの時、カイムも決心まで少し時間が必要だった。同じ心を持っていたという事実を嬉しく思ったシロナは、カイムの手を優しく撫でる。

 

「ふふ。じゃああの時、私たちは同じ心だったってことね」

「ほっとけ」

「嬉しいわ。私だけ慌ててたって、ちょっと恥ずかしかったから」

「ちょいとそこの新婚。息を吸うようにいちゃつくのはやめてもらえるか良い。仲睦まじいのは大変結構だが、時と場合を考えな」

 

 アイナの呆れた言葉にシロナは頬を赤くし、カイムは頭をがしがしとかく。その耳はほんのりと赤く染まっていた。

 

「全く…前の時から思っていたが、どうしてあんたらは普段は常識的なのに時折二人だけの世界に入るんだい?」

「そ、そんなこと…」

「あるから言っているんだろう⁈というか、このやりとり前にしたじゃないか!変わってなくてある意味安心したけど、もうちょっと見せられる側にもなりな!他の人の前でもそうじゃないだろうね⁈」

 

 シロナとカイムは揃って目を逸らす。本人達からしたらそこまで言われるほどのことだろうかとも思うが、こうして言われている以上は気をつけなければならない。ただ、本人達に違和感がないため、どこまで意識で変わるかはわからないが。

 

「はぁ…まあ今はいい。ただ、子供ができた後とかは気をつけな。親の普段の態度って、子供に影響を与えるものだからね」

「は、はあ…」

 

 曖昧な肯定にクロナは首を傾げる。

 

(もしかして、カイムさんの親はこんな風に普段からイチャついていたのかな?)

 

 シロナとクロナに親はおらず、祖父母によって育てられた。だがカイムはそうではない。つまり、カイムは普段からこのようにイチャついている両親を見ていたからこそ違和感を感じないのかもしれないとクロナは思った。

 尤も、それがシロナも平然とイチャつく理由にはならないのだが。

 

「はぁ…ま、今は不問にしよう。せっかくのめでたい日だからね。大目に見てやるよ。それより、ご馳走の用意だ。クロナ、今日は出前にしよう。あたしの秘蔵の酒、持ってきな」

「はーい」

「シロナ、カイム。二人は好きなもん選びな。ただ、カンナギタウンは見ての通りど田舎だ。なんでもあるわけじゃない…が、ある中なら何でもいいよ」

 

 それだけ言って、アイナは立ち上がる。そして、どこか意味ありげな視線をシロナ達に向けると、口を開いた。

 

「ああそれと…シロナとクロナ。晩御飯の後、あたしの部屋に来な。話がある」

「え?ああうん」

「それじゃ、好きに選びな。あたしはちょいと出掛けてくるよ。何、すぐに戻る」

 

 それだけ言ってアイナは出て行った。

 話しとは何だろうとシロナはクロナを見るが、クロナもわからないと言うように首を振る。なんだろうと思いつつも、考えても答えは出ないことはわかっていた。そのため切り替えて、カンナギタウンで取れる出前を調べ始める。

 

 尤も、その調査はカイムがこの僅かな時間で既に終えていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 

 パーティーとも思えるような食事が終わり、カイムはブラッキーと共に縁側で空を眺めていた。酒による暑さとシンオウ地方の厳しい寒さが打ち消し合い、心地よい空気を感じている。

 

「はあ…」

 

 吐いた息が白い。空に浮かぶ月に照らされた白い息は、夜空に溶けるように消えていく。

 

「…まさか、一升瓶空けるとはな」

 

 先ほどまでの時間を思い返し、カイムは苦笑する。

 夕食は出前の寿司だった。カンナギタウンに古くからある老舗の店であり、味はアイナが保証した通り絶品と言って差し支えないものだった。そこで出てきたのが、アイナが用意したシンオウ地方で作られた清酒。相当良いものらしく、後で値段を調べてカイムの表情が引き攣るレベルだった。そしてその値段相応の味をしており、これまで飲んだどの酒よりも美味いと言えるものだった。

 そこまでは良かった。別段悪いことがあったわけではない。ただ予想外だったのが、アイナ、シロナ、クロナの三人で一升瓶を空けるまで飲んだことだろう。シロナの祖父はカイム同様あまり強くないのかそこまで飲まず、カイムも強くないためグラス二杯程度に納めた。だが女性陣はかなり飲んだにも関わらず、全員平然としていた。シロナが強いことは知っていたが、まさかアイナとクロナもここまで強いとは思っておらず、一升瓶が空いたことは驚くべきことだった。

 

 そして今、食事も終わり一息ついたところで、シロナとクロナが呼ばれていった。何の話題なのかはわからない。だが、このタイミングで告げるということは、何かしら意味があるのだろうと考え、カイムは酔いを覚ますために一人で寛いでいた。

 

「あ、いた」

「ん?」

 

 声がした方を見ると、クロナがいた。

 

「よお。話は終わったのか?」

「うん。カイムさんのことお姉ちゃんと探してたんだよ」

「俺を?」

「そう。おばあちゃんが呼んでるよ」

 

 そう告げたクロナの波導はどこか普段とは少し違うように感じられる。何か衝撃を受けたような雰囲気ではない。だが、何かしら思うところがある内容を伝えられたかのような、そんな雰囲気を感じる。

 

「おばあちゃん、部屋にいるよ。行ってあげてね」

「ああ、わかった」

「じゃあ私お風呂行ってくるから」

 

 それだけ言ってクロナは去っていった。

 様子がおかしい、とまでは思わなかったが違和感はある。ただ呼ばれていたということは本当なのだろうと考え、カイムは立ち上がりアイナの部屋へと向かった。とてとてとブラッキーもついて来ていた。

 

「アイナさん、カイムです」

「入りな」

 

 アイナの返事が聞こえて、カイムは障子を開く。アイナは座布団に座したまま、眼鏡を外してカイムに向き合った。

 

「座りな。足は崩していいよ」

「失礼します」

 

 カイムは勧められた座布団に正座で腰を下ろす。崩していい、と言われたにも関わらず正座で座るあたり、真面目なカイムらしいとアイナは小さく笑った。なお、ついてきたブラッキーは全く気にする事なくカイムの膝に頭を預けて横になっていた。

 

「さて、呼び出してすまないね。あんたに話しておきたいことがあったんだ」

「はい」

「気負わなくていい。あんたとシロナが結婚することに、あたしはなんの不安も感じていないんだ。さっきみたいな、試す話じゃないよ」

 

 そう言うアイナの表情はどこか迷いがあるように思える。先ほどの試す時とは大きく異なる、どこか不安が混じった表情を見て、カイムは少しだけ意外に思った。

 

「話というのは、あたしの…そしてシロナの、この場合は血族に関することの話だ」

「血族…?」

「そう。ただこれもどこから話すか、ちょいと難しくてね。正直、迷っている」

 

 迷い。そう聞いてカイムはより意外に思った。

 

「…迷い、ですか」

「なんだい。意外に思ったかい?そりゃ、人(・)の(・)倍(・)生(・)き(・)て(・)い(・)る(・)と言っても人である以上、迷うものさ」

 

 それもそうか、とカイムは納得する。どれだけ歳を重ねようとも、人でる以上は迷うことはある。当たり前のことだ。

 

「それもそうですね」

「まあ一つずつ話していくしかないね」

 

 アイナは一度息を吐くと、少し長い話になると前置きを置いてカイムを真っ直ぐ見据えた。

 

「あんた、古代シンオウ人は知っているね?」

 

 意外な名前が出て来たことに驚きつつ、カイムは頷く。当然だろう。未熟ながらもカイムはシンオウ地方で考古学を研究する者。知らないはずがない。

 

「ま、シロナの下で考古学やってんなら知らないはずないね。シンオウ地方がヒスイ地方と呼ばれていた頃よりさらに昔…この土地に住んでいた民族さ」

「ええ、そうですね」

 

 

 

「あたしはその末裔さ」

 

 

 

 しれっと言われた事実にカイムは目を見開く。

 

「そして、あたしの孫であるシロナとクロナもそうなる」

「そ、う…でしたか」

 

 驚きはある。だがそれだけだった。凡人以外の何者でもない自分ですら、血筋は流星の民に連なるものであるのならば、特別であるシロナがそのような血筋であったとしてもおかしくない。そう思っていた。

 

「…なんだい、あんまり驚かないね」

「ええ、まあ…そういうこともあるかと」

「そうだね、そういうこともある。ただ、あたしが話したいのはここからさ」

 

 アイナは自分の隣にある将棋盤に視線を向ける。

 

「古代シンオウ人は、ずっと昔にこの土地で生きていた民族。だが、その結末はわかっていない。なにか未曾有の災害にでもあったわけでもなく、痕跡だけを残していなくなった。どうしてかわかるかい?」

「いえ…俺の研究テーマであるレジポケモンを神として崇めていた古代人と何かいざこざがあったのはわかりますが、それ以上は…」

「あたしも全てを知っているわけじゃない。あんたの言う古代人と宗教絡みでいざこざがあったのも間違いないが、それで滅びたわけじゃないことは確かだ」

「では、何が…」

 

 もしかしたら、ここでその滅びの要因を聞けるのかも。そんな思いが湧き上がり、カイムの心拍数が少しだけ上がった。

 だがそんなカイムに対して、アイナはとても冷静で落ち着いた目を向けてきた。

 

「繁栄しなかった。それだけだよ」

「…はい?」

「古代シンオウ人は文化の繁栄を目指しはしても、民族としての繁栄はしなかった。だから滅びたんだよ。後に続く者がいなくなった。それだけさ」

 

 アイナの話がよくわからず、カイムは首を傾げる、

 文化の繁栄と民族の繁栄。これらは本来なら、イコールに近い関係性になる。ここで言う古代シンオウ人の文化とは、シンオウ神話とも置き換えられる。このシンオウ神話の普及を古代シンオウ人が目指していたということは、カイムも容易に理解ができる。何せ現代のシンオウ地方にはその痕跡が非常に多く残されているからだ。

 では民族の繁栄はどうだろうとカイムは思考する。民族の繁栄は、早い話人口が増えること。シンオウ地方に残された痕跡を見る限り、古代シンオウ人は人口面でも十分繁栄していたと言えるはず。故に、アイナの言葉がいまいちよく理解できなかった。

 

「その顔はあまりわかっていないようだね」

「え、あ、はい」

「無理もない。じゃあ、一つずつ話していくよ。古代シンオウ人は、どういったきっかけかはわからないが…原初の神を信仰する民だった。始まりについては、あたしもよく知らん。古代人と古代シンオウ人のどちらが最初にいたのかもね。でも、宗教絡みの対立は古代シンオウ人が勝った。そしてシンオウ地方は古代シンオウ人が長らく支配…というのかねぇ。とにかく、古代シンオウ人の土地だったのさ」

 

 そこまではカイムも把握している。始まりはともかく、古代人と古代シンオウ人の対立はカイムの研究テーマでもある。

 

「古代シンオウ人は、シンオウ地方の全域に信仰する神々の神話を広め、そして文化を残した。シロナやあんたが研究しているのは、まさにこれだろう。ここからが本題さ」

「……」

「古代シンオウ人は、その後滅びる。その理由は、種(・)族(・)の(・)繁(・)栄(・)を(・)し(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)さ」

 

 そこがいまいちわからない。それ故に、カイムはアイナの言葉の続きを待った。

 

「…種族の繁栄をしなかった。これは、子孫を増やさなかったということさね」

「……なにか、理由があるのですか」

「ある…のだとは思う。すまないが、あたしもあまり詳しくは知らない。ただ、あたしは古代シンオウ人の寿命が関係していると思う」

 

 寿命。その言葉を聞いて、カイムは細める。

 

「寿命、ですか」

「ああ」

 

 アイナは一度息を大きく吸い込むと、意を決してカイムを見た。

 

 

「古代シンオウ人は、悠久の時を生きる民族だったんだ」

 

 

 想像を絶する言葉に、カイムは思わず目を見開いた。

 

「悠久…?長寿だったということですか?」

「長寿…ああそうだね。ただ、あんたが思う比喩としての悠久ではない。真の意味で『悠久』だ」

「は…?」

「ああ。彼らに寿命はなかったんだよ」

 

 あまりに突拍子のない話にカイムの思考が固まる。

 人であろうとポケモンであろうと、必ず終わりはある。ポケモンの中には長寿なポケモンもいるが、それでも永遠に生きられる存在はレジポケモンのような限られた例外を除いて存在しない。人間であれば、その限られた例外すらなくなるだろう。だがアイナは、限られた例外が存在すると言った。その意味をうまく理解できず、カイムは混乱する。

 

「寿命が、ない?」

「正確にはあるかもしれん。ただ、それはまだ訪れていない。だから今のところ無いに等しい」

「いや…え?そんなこと、あり得るんですか?」

「最初に言ったが、古代シンオウ人は原初の神を信仰する一族だった。恐らくだが、これはその原初の神による祝福(呪い)によるものなのだろうね。尤も、祝福を与えたのは唯一神の方か三柱の神の方かは知らないが」

「…では、古代シンオウ人は…」

「寿(・)命(・)に(・)よ(・)る(・)死(・)が(・)な(・)い(・)一(・)族(・)だよ」

 

 理屈はわからないし、とても信じ難い話ではあるが、だがアイナが決して嘘や冗談を言っているような態度には見えない。カイムは、今はただ黙ってアイナの話を聞くことを選んだ。

 

「原初の神の祝福(呪い)は、当時生きていた全ての古代シンオウ人が受けていた。その祝福(呪い)を受けたことがきっかけか、それとももっと別のことがきっかけかはわからない。あたしはこの祝福(呪い)が原因だとは思っているがね」

「祝福が、寿命が原因で?」

「…彼らはね、寿命が無限に近くなったことで、ほぼずっと若いまま生きていられる。ただ、無限になったことで…人口のサイクルが生まれなくなった。生殖機能は残されていたが、寿命が無限なら人は増える一方だ。その結果、人口の飽和があったんじゃないかと思う。そしてその危惧からいつしか子を成すこともなくなり、そのまま衰退していき滅んだ。あたしはそう考えているよ」

 

 確証は何もないけどね、と付け加えてアイナは小さく息を吐いた。

 多少飛躍はあるかもしれない。だがアイナの予想は決して矛盾はしていない。何よりカイムにはそれが正しいか否かを判断する術がない。ならば今は、そういうものだった可能性がある程度のことで納得するしかなかった。

 そして、古代シンオウ人に寿命がないのなら、その末裔であるアイナはどうなのか。その問題があり、恐らくアイナが話したいこともそれだろうとカイムは考えていた。

 

「…では、アイナさんも?」

「あたしには寿命あるよ。見ての通り、ちゃんと老いているからね。あたしは、所謂ハーフさ。古代シンオウ人の血と、当時の別の民族の血が半々のハーフ。悠久の命は、純血の古代シンオウ人のみさ。別の血が混ざっているあたしは、人間離れした長寿でこそあるだろうがちゃんといつか死ぬ。それは間違いない」

「じゃあ、言っていた人の倍生きてるというのは…」

「比喩じゃないよ、あたしが生まれたのは、まだここがヒスイ地方と呼ばれより前の時代だ。一度あたしはこの地を離れている。戻ってきた時には、コトブキ村とやらができていたよ。今ではコトブキシティだね」

 

 シンオウ地方がヒスイ地方と呼ばれていた時代は150年近く前の話。とても人が生きていられるような長さではない。

 

「…それじゃあ…」

「悪いが、正確な年齢は覚えていない。120を超えてからはもう数えてないからね」

 

 年齢を聞いたことはなかったが、アイナの見た目や動きは80代程度に見える。まさかそこまでの年齢だとは、カイムも考えてはいなかった。

 

「あたしがいつ死ぬかはわからん。だが、あと10年は生きるだろう。あんまりにも長くなりそうなら、あたしはどっかで姿を消す。あまりにも長く生きてると、さすがに誤魔化しが効かないかもしれないからね。だが、いつかは死ぬ。それは間違いない」

「……純血の古代シンオウ人は、まだいるんですか?」

「いる。今どこにいるかは知らないがね」

 

 アイナは断言した。つまり、何かしらの心当たりがあるのだろう。それ以上言わないところを見るに、本当に今どこにいるのかは知らないのだろうとカイムは考えた。

 一度息を吐いたアイナは、再びカイムを見つめる。

 

「あたしが言いたいのは、ここから。シロナとクロナは間違いなくあたしの孫さ。だがそれは同時に古代シンオウ人の血を引いていることになる。つまり…」

「シロナの寿命も、また長いと」

 

 アイナは頷く。確かに老いてきてはいるものの、アイナはまだ生きる。あとどれくらい生きられるかはわからないものの、あと10年近くは生きるだろう。人外の寿命であることに違いはなく、シロナもまた同じように長く生きる。シロナはアイナと比較して古代シンオウ人の血は薄くなっているためアイナよりは短いはずだが、それでも長く生きるだろう。カイムはそれをどう捉えるか、とアイナが視線を向けると、カイムはいつも通りの無表情だった。

 

「そうでしたか」

「……それだけかい?」

「?」

「いや、あたしからするとそれなりに大きな発表だったんだが…」

「そういう人種もいるでしょう。いろんな存在がいますから」

 

 カトレアのように生まれつきサイコパワーを扱える人間もいれば、Nのようにポケモンと話すことができる者もいる。寿命が存在しない不滅のポケモンもいる以上、寿命が非常に長い人間がいたとしても不思議ではない。

 そこまで考えて、カイムは内心で苦笑する。あまりにも許容範囲が広すぎる自分にやや呆れを覚えながらも、決してそれが悪いものではないことであると思えたことが少し嬉しかった。

 

「……そうだね、いろんな存在がいる。そういうものだ」

 

 人の倍を生きてきたアイナは、たくさんの人やポケモンを見てきた。良くも悪くも、多種多様。そんな中でカイムは間違いなく目立たない存在だろう。だがそれがシロナには良かったのだろうと思う。普通で、平凡なカイムだが、心に宿る光はとても暖かい。

 

(きっと、あんたの隣ならあの子は安心して眠れるんだろう)

 

 そう考えて、アイナは優しく笑った。

 

「カイム」

「はい」

「あの子を頼むよ」

 

 あとどれだけ生きられるかはわからない。長く生きるようであれば、アイナは姿を消すつもりでいる。そんな中、シロナと連絡が取れるかはわからない。ア(・)イ(・)ナ(・)の(・)母(・)も今となってはどこにいるのかわからない。自分もそうなる可能性がある以上、隣に立つカイムに全てを任せるしかない。

 ただ、任せられる確信だけはあった。

 

「はい」

 

 こんな真っ直ぐな心を持つ青年なら、きっと大丈夫。

 アイナは心の底からそう思えた。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

 夜も更け、元々静かなカンナギタウンはより一層静かになる。アイナの部屋を出た気温差に、カイムは思わず息を吐いた。

 

「寒いな」

 

 家の中とはいえ、暖房がない廊下は気温が低い。寒さに弱いカイムは少しだけ身を震わせると、与えられていた部屋へと足を向ける。突き当たりの角を曲がると、一層寒さが厳しくなるのを感じた。

 視線の先にはシロナがいた。縁側に座り、空を見上げている。

 

「こんな寒い中、何してんだ」

 

 カイムの声に、シロナはゆっくり振り返る。答えることはなく、シロナは微笑んで手招きだけした。カイムはその誘いに応え、シロナの隣に腰掛ける。

 暫しの間、二人は黙ったまま空を見上げていたが、シロナが口を開く。

 

「カイムも聞いたのよね。おばあちゃんから」

「ああ」

「そういうことみたいよ」

 

 シロナも自身の血族について聞いた。古代シンオウ人の末裔であり、自分の寿命はおそらく人よりも長い。カイムよりも、長く生きるということ。

 

「私、長生きみたい」

「らしいな」

 

 いつも通りのカイムに、シロナはほんの少しだけむっとする。

 

「それだけ?」

「他に何言えと?」

 

 カイムの言葉にシロナは『確かに』と呟いて肩を寄せる。仮に逆だとしても、きっとシロナは多くのことを言わない。二人にとっては、それにより何かが変わるわけでもないから。

 

「あなたより長生きするのかぁ」

「不満か?」

「うーん…あなたがいなくなった後の世界が、想像できないかな」

 

 自分がどれほどの長寿なのかはわからない。祖母のアイナが既に150近い年齢であることを考えれば、おそらく100年は生きる。人間の寿命は概ね90年前後。カイムも特殊な血筋ではあるが、古代シンオウ人のような寿命はない。必然的に、シロナはカイムのことを看取ることになり、カイムがいなくなった後も生きることになる。

 

「どんだけ生きるんだろうな」

「そうねぇ…おばあちゃんが大体150歳でしょ?それでなんとなくだけど普通の人で言う70〜80くらいに見えるし、おばあちゃんは倍くらいかしら?私はどうなんだろう」

「少なくとも120くらいは生きそうだな」

「ないとは言えないわね」

 

 古代シンオウ人の寿命が無限(暫定)である以上、血が薄まったシロナとはいえ長く生きることは違いない。それこそカイムが言うように120歳くらい生きてもおかしくないだろう。

 

「あなたが仮に80まで生きたとして…そこから40年?長いわね」

「40年か。今の俺らの人生よりも長い時間となると、長いな」

「そんな長い時間を一人で生きるのね」

 

 その声に悲哀はない。ただ淡々と事実のみを伝える声だった。

 

「カイム」

「ん?」

「私、きっと一人でも生きていけるわ」

 

 シロナの言葉にカイムは『だろうな』と呟く。前にも同じ話をしたことを思い出しつつ、本当にシロナは一人でも生きていけると思った。

 

「でもね、あなたを失うことは怖い。怖いって、思えた。先の話だとしても、いつか来る別れを怖いって思えたの」

 

 シロナは仮にカイムと出会わなくとも立派に生きていただろう。だがそれはそれとして、カイムという最愛の人に出会えたことは本当に幸運だと思っている。同時に、そんな最愛の人ともいつかは別れがくることを『怖い』と思えた。明確な恐怖ではなく漠然としたものだが、それでも失うことの恐怖はやはりある。

 それが嬉しかった。失うことが怖いと思えるほど大事な人が、こうしてこの先の人生を共に歩んでくれる。その事実はシロナにとって何よりも大切に思えた。

 

「それくらい大切な人に出会えたことが、嬉しいの」

「そうか。そうだな」

 

 シロナは肩を寄せ、頭をカイムの肩に乗せた。互いの体温と波導が強く感じられ、心が安らいでいく。

 

「あなたの側は、落ち着くわね」

「そらどーも」

 

 ぶっきらぼうに言うカイムだが、そんな言葉にも安らぎを覚える。ここまで心底愛している事実と、同じくらい愛されている実感。たったこれだけのやり取りでそれがわかることが、とても嬉しかった。

 

(ここまで…心から愛せる人に会えるなんてね)

 

 シロナにとって恋愛とは物語や他者にのみ当てはまるものだった。幼い頃から歴史とポケモンバトルに熱中していたが故に、シロナは同年代の子と同じような青春らしいことはしてこなかった。当然、恋愛事にも縁がなく、その手の話についていけないこともたびたびあった。物語や他者から知る恋愛というものは、たくさんの形があった。ただどの話を聞いても、自分にはうまく実感できないものばかりだった。

 

 だからだろう。カイムへの恋心を自覚するための時間が、とても長かったのは。

 

 最初は、ただ安心するというだけだったと思う。普段は家族とポケモン以外に弱音を吐くことなどほとんどしない自分が、本当にポロッとカイムの前で弱音を吐いたことがある。当初は何も思わなかったし、カイムも何も言わずただ黙って聞いてくれた。しかしそれが、少しずつ多くなっていることを自覚したのは、カトレアに言われてからだろう。

 

『シロナさんがそういうことを言うのは珍しいわね』

 

 そう言われて初めてカイムに弱音を吐く自分がいることに気づいた。その時はカイムが優しく、そしてどんな小さいこともいつも真摯に向き合ってくれるため、安心するからだろうと思っていた。

 だが気づけば、その安心感の他に嬉しさが混ざっていた。これを自覚したのも、カトレアに指摘されてからだった。

 

『最近のシロナさんは、カイムのことをよく話すわ』

 

 そう言われてもなお、弟子として共にいる時間が長い故だとしか思わなかった。長い時間を共に過ごすなら、それに応じて話題も多くなるのは当たり前だろう、と考えていた。間違ってはいないし理屈は通る。だがそれだけではないことを、この時のシロナは気づかなかった。

 

(自覚したのはいつだったかしら)

 

 思い返しても、いつだったかはわからない。ただ、同棲に誘った時はもう自覚していた…はず。

 

(付き合ってもいないのに同棲に誘うって、今考えると何やってるのかしらね)

 

 同棲に誘った理由は、実は勢いだった。カイムへの恋心を自覚し、そこから色々不器用ながらアピールしたりしていたが、堅物(鋼タイプ)のカイムには効果がなかった(実際は効いていた)。そこでやきもきしたシロナが勢いで言ってしまい、半ば自棄になって頼んだったなとシロナは苦笑する。

 この提案をカイムが受けてくれた時、本当に嬉しかった。まだ付き合ってもいないというのに同棲するという歪な形ではあったが、それでも側にいられる時間が増えたことが嬉しかったことをよく覚えている。

 

「はあ〜…」

「どうした?」

「んー?眠くなってきちゃった」

「このクソ寒い中でか?どうなってんだ」

「あなたのせいよ」

「はあ?」

 

 シロナの言葉にカイムは首を傾げるが、それは事実だった。多分シロナは、カイムの隣であればどこでも眠れる。どれほど騒がしくとも、眠ることができるくらい彼の隣が安心するから。

 

 きっと、この人の隣ならずっと安心していられる。

 家が、今まで以上に安らぎの場になる。

 

 そんな確信があった。だから、この先の人生を共に歩むことができる事実は、シロナにとって何よりも安心できる。

 

「あなたの隣は、落ち着くの」

「……俺もだ」

 

 寄りかかってくるシロナの肩を抱く。安心感が二人の境界線を溶かし、互いの存在を強く感じるようになった。

 

「この先、私たちの人生はまだまだ困難が待ち受けている。でも、あなたとなら…必ず乗り越えられるわ」

「お前とじゃなきゃ難しい」

「ふふ、そう?あなたもなんだかんだで一人でも生きていけそうだけど、そう言ってもらえるのは嬉しいわね」

 

 雪が降るカンナギタウンは寒い。だが、二人でいればその寒さも無いように思えた。

 

「こんなまったりした時間が、少しでも多くなるといいわね」

「ああ。きっと過ごせる」

「そうね」

 

 この先もこんな穏やかな時間が増えればいいと、シロナは思う。同時に、二(・)人(・)だ(・)け(・)で(・)は(・)な(・)い(・)時(・)間(・)も(・)過(・)ご(・)せ(・)た(・)ら(・)とも思い、ほんの少しだけ頬を赤く染めた。

 

「カイム」

 

 シロナに呼ばれて視線を向ける。その瞬間、二人の影は重なった。

 

「愛してる」

「…ああ、愛してる。これまでも、これからも」

 

 短いやり取りで、互いの思いを伝え合う。

 そして、二人の影は再び重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

side episode

カトレア、観戦する。

 

 

 シンオウ地方某所、一軒の豪邸の一室でモニターを操作する少女と紅茶の準備をする執事の姿があった。

 

「カトレアお嬢様、紅茶の準備ができました」

「ありがとうコクラン」

 

 執事のコクランがカトレアの前に紅茶を置く。カトレアはティーカップに注がれた紅茶の香りを楽しみつつ、一口飲んで微笑んだ。

 

「美味しいわ。今日の茶葉は少し風味が違うわね」

「ええ。此度はカイム様の故郷であるホウエン地方の茶葉を使っております」

「あら、この場にぴったりだわ。一緒にどう?」

「遠慮なく」

 

 そう言ってカトレアはモニターに目を向ける。そこには現在シンオウ地方で行われている『スタータッグトーナメント』の試合が流れていた。コクランは自分のカップにも紅茶を淹れると、カトレアの隣に腰掛ける。

 

「シロナさんとカイムの試合は次かしら」

「ええ。お二人の試合はこれからになります」

「ふふ、楽しみだわ。二人はどんな試合を見せてくれるのかしら」

 

 楽しそうに笑うカトレアの隣でコクランも紅茶を飲みながらモニターに目を向ける。

 珍しいタッグバトルのトーナメント。しかも主催はシロナであり、公認トレーナー以上のトレーナーしか参加していないというかなり異例のルール。縛りも多くすることで公平性はよく保っているが、バトル自体の縛りは少ない。実力は発揮させつつ、公平になるように調整したシロナの手腕が窺えるものだった。

 

「お嬢様は、タッグバトルの経験はありますか?」

「ほとんど無いわ。数回遊びでやったことはあるけど、大会の経験はゼロね。コクランは?」

「似たようなものです。ほんの数回程度ですね」

 

 そんな会話をしているうちに、シロナ達の試合が始まろうとしていた。シロナとカイムはスーツのような服装であり、いつもと違う雰囲気を纏っていた。

 

「スーツ姿でのご登場とは。なかなか様になっていますね」

「さすがはシロナさんだわ。どんな服も着こなしてみせるけど、こういうかっこいい服装は本当によく似合うわね」

「カイム様もとても良い。服装もさることながら、気迫が画面越しにも伝わってきますね」

 

 普段とは違う雰囲気ではあるが、二人とも緊張している様子はない。ただただ、相手をどう超えるかだけを考えているのがわかる。

 

(…カイム、随分と気迫が強いわ)

 

 ただ中でもカイムの気迫が目に見えて大きいことをカトレアは感じる。シロナと共に戦えるが故かとも思ったが、それだけとも思えない。何かしら思うところでもあるのか、それともカトレアが想像できないような理由があるのか。

 

「あくびが出るような、退屈な動きはしないでね?カイム」

 

 カトレアの呟きと共に、試合が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから三日に渡り、カトレアとコクランはシロナとカイムの試合をリアルタイムで視聴した。年末故にバトルフロンティアもなく、イッシュ地方のポケモンリーグもオフである故、二人は全ての試合をリアルタイムで視聴した。初日にはシロナと話すこともできた。

 

 見ている間、カトレアとコクランの間に会話はほとんどなかった。ただひたすら、シロナとカイムのバトルを食い入るように見て、自分ならどうするかという思考を巡らせていた。

 そして、最強のチャレンジャーであるヒカリとジュンを下して、二人はこの大会の頂点に立った。その瞬間、カトレアは興奮のあまり立ち上がってしまい、少しだけ恥ずかしそうにしたのはコクランのみしかしらないことだ。

 

「素晴らしいバトルでしたね、カトレア様」

 

 コクランの言葉にカトレアは一瞬だけ反応できなかったが、即座に再起動して頷く。

 

「…ええ、本当に素晴らしかったわ」

「カイム様があれほどの動きを見せるとは思いませんでした」

「そうね。サポーターとして動いたらあれほど厄介になるなんて」

「あれほどの動きをされるとなると、我々ですら警戒せざるを得ないですね」

 

 そうね、と肯定しながらカトレアは紅茶を飲む。カトレアも四天王を務めるだけあり、シロナほどでは無いにしろトレーナーの才能を見抜く目を持っている。しかし、そんなカトレアでもカイムの才能を見抜くことはできなかった。

 そして、カトレアの目から見てもカイムのバトルは異様かつ厄介だった。ブラッキーのサポート能力は言うまでもなく、バシャーモのパートナーに合わせたアタッカーとしての動き方も決して侮れない。他のポケモン達の能力も個々の能力よりもパートナーとの動きに合わせた最高の動きをしてくる。

 

「……シロナさんに聞いていたけど、あんな才能があるのね」

「シングルバトルでは決して表に出てくることがない才能です。私も何度かバトルさせていただきましたが、カイム様にこのようなバトルができるとは思いませんでした」

「ダブルバトルでもなく、タッグバトルだからこそって印象が強いわね。複数の人とポケモンが入り混じる混沌…それらを的確に見抜く俯瞰の目をカイムは持っているのかしら」

「カトレア様もそう思われましたか。恐らくですが、カイム様はフィールド全体を俯瞰して見ることができる視(・)点(・)をお持ちなのではと考えました」

「俯瞰…カイムらしいわね」

 

 物事を冷静に見ることができるカイムらしいと思い、カトレアは笑った。元からあった才能なのか、何かしらの修練を積んだのかはわからない。だがカトレアにはできないことであるため少し興味を持っていたが、特に口に出すことはしなかった。

 

 カトレアが画面に視線を戻すと、閉会式が執り行われていた。その中でシロナとカイムがトロフィーを贈呈されている姿が映されている。シロナは笑顔でトロフィーを掲げてながらカイムの手を取って空に掲げ、カイムはいつも通りの無表情でされるがままになりつつ歓声に応えていた。

 

「まったく…こんな時くらいもう少し愛想良くすればいいのに」

「それがカイム様の味とも言えませんか?」

「否定はしないけど、どうなのかしらね。シロナさんのおかげで多少マシになったけど、相変わらず表情筋が仕事しないじゃない」

 

 ブラッキーを見習いなさいと小言を言う姿にコクランは思わず笑ってしまい、そんなコクランにカトレアは首を傾げた。

 

「アタクシ、そんなに面白いこと言ったかしら?」

「いえ、小言の言い方があまりにもカイム様に似ていたもので」

「っ⁈」

「カイム様(お兄ちゃん)の真似をするカトレア様は、まるで妹のようですね」

 

 揶揄うように笑うコクランに、カトレアはただプルプルと震えるしかできず、むすっと表情を歪めるとサイコパワーでコクランの頭を小突いた。

 カトレアにとって、シロナは友人であり姉に近い存在であり、カイムも同じように友人であり兄に近い存在だった。優しく頼りになる憧れの姉と、面倒見が良く小言は多いがなんだかんだで気楽な兄。そんな二人のことがカトレアは大好きだった。シロナは人としてもトレーナーとしとも憧れが強いが、カイムは気楽で親しみがある分、より兄妹に近い感情を向けていた。

 ただそのことを言われると、カトレアはどうしようもなく恥ずかしさを覚える。勝手に思っていることであり、それに気づくような人物はほとんどいないのだが、それでもごく稀に言われることはある。何故ここまで恥ずかしく思うのかカトレアはわからなかったが、それでも恥ずかしくはある。

 

「……何か問題でも?」

「いいえ?私から見ましても、カイム様の姿は兄としての側面…というか、兄らしい動きが多いように思えます。カトレア様に限らず、誰に対しても。そんな立ち振る舞いがカイム様の素の姿である以上、事実歳下であるカトレア様が兄のように慕うのも納得できますから」

「…そう。だからカイムが悪いの!」

(……そういう話ではないとは思いますが…)

 

 二人の関係が微笑ましいなと思いつつ、コクランは紅茶を一口飲んで視線をモニターに向ける。選手達がそれぞれスタジアムから去り、エンディングがスタートしていた。

 

「カトレア様は、どの試合が一番見応えがありましたか?」

 

 見るべきものは見終わった。それ故の感想戦、とまでは言わないが、カトレアにとってこの特殊なバトル大会はどう映ったのか。それが聞きたくてコクランはカトレアに問いかける。

 カトレアは少しだけ驚いた顔をしながら、微笑む。

 

「そう聞いてくるってことは、コクランは決めているのね」

「ええ。どの試合も大変見応えのあるバトルでしたが、私はやはり決勝戦を選びます。あれほど若くありながらもシロナ様にも勝るとも劣らないバトルができるのは、とても素晴らしい。タッグという特殊な環境でありながらも全てを出し切るだけの才能は、見ているだけで心が揺さぶられました。あのお二人は互いの100%を出し切る。そんなバトルをタッグバトルの中で貫き通した。ですが、そんな最高峰の才能を相手にシロナ様とカイム様はまた違ったアプローチでバトル運びをした。それはすなわち、シロナ様の能力を最大限以上に発揮させること。カイム様の能力を、シロナ様を活かすことへ最大限費やすことで上回る。そんなバトルの新たな可能性を見せてくれたシロナ様とカイム様のバトルを私は選びます」

 

 フロンティアブレーンとして活動するコクランはわかる。あのバトルは、コクランにはできないと。シングルとダブルならばコクランの実力は世界的に見ても上澄み。だがそんなコクランでも、あの極まった才能のタッグバトルを乗り越えられる保証はなかった。未熟な部分こそあれどその場の空気とシロナ達に当てられることでテンションが最高まで上がっていた若き挑戦者達は、タッグバトルという特殊な条件下であっても強い。例えコクランとカトレアが組んだとして、シロナ達のように乗り越えられるかどうかはかなり際どい。

 そんなバトルをシロナ達は乗り越えた。リーグではないが、頂点に立つ者とそれを支える者。バトルの凄まじさは言わずもがな、二人で頂点を守り切るという美しい構図はコクランとしては見ていて心動かされるモノがあったと言える。

 

「…そうね。コクランの言う通り、決勝戦は素晴らしかったわ。アタクシも思わず手に汗握る思いだったもの」

「……その言い方ですと、カトレア様は別の試合をお選びに?」

「ええ。アタクシは…二回戦を選ぶわ」

 

 二回戦。スモモ・スズナペアとのバトル。メガシンカを戦略として取り入れたスズナと、新たな戦力を加えたスモモとのバトルに、敢えてカイムが前衛に回ることで相手の意表を突いたバトルだった。

 

「二回戦!あのバトルも大変素晴らしいものでした。カトレア様は何故、二回戦をお選びに?」

 

 コクランとしてもあのバトルが素晴らしいものだったことに異論はない。だがバトルの組み立て、両者の意思のぶつかり合い、そして異なるバトルへのアプローチが際立っていた決勝戦と比べたらと言われると、やはり決勝戦を選ぶ。それ故に、コクランはカトレアが二回戦を選んだ理由が気になった。

 カトレアは柔らかく微笑みながら答える。

 

「カイムも、あんな顔をするのねって思ったからよ」

 

 あんな顔。それがバトル中に珍しくカイムが激昂した時のことを言っているとコクランは理解した。

 

 

『人が死ぬ思いで身につけた技を…一回見ただけで使えるようになってんじゃねえぞ天才がぁ!』

 

 

 カイムが感情をここまで露わにすることはほとんどない。少なくとも、カトレアは見たことがなかった。

 

「カイムは…小言は多いけど怒ることってアタクシは見たことないの。だからカイムが怒るところが見れたことが、特に印象的だったわ」

「確かに、カイム様は落ち着いてらっしゃいますからね。私もあのように怒る姿は初めて見ました」

 

 カトレアは一度小さく息を吐くと、エンディングを眺めながら呟く。

 

「…あれがカイムが抱えていた闇(嫉妬)なのね」

 

 サイコパワーの影響でカトレアは感情が稀に色として見える。時折、シロナやカトレアがバトルしている姿を見て、たまに混ざる暗い色があった。それこそがあの激昂なのだろうと、カトレアはあの一瞬を見て理解した。シロナに弟子入りしてすぐはこの色が時折見えていたが、弟子入りしてしばらくした時にはもう見えなくなっていた。

 あんな暗い色(感情)を心に抱えていたのかと驚くと同時によくあんな心を抱え続けられたものだと感心した。サイコパワーは感情に深く結びつく故、心の起伏の制御がうまくいかずにバトルを禁じられていた過去を持つカトレアからすると、あれほどの感情を抱えながらも制御しきっていたことを驚かずにはいられなかった。そして、そんな心を抱えながらもここまで素晴らしいバトルをできるようになったカイムの成長が見られたことが、師匠とは言えないながらもバトルの腕を見ていたカトレアとしては印象深いものだった。

 

「人の心には、光と闇がある。普段我々が見ているのがカイム様の光だとすれば…あの叫びは、カイム様が抱えていた闇なのでしょうね」

「ええ。それは、アタクシもよくわかるわ。人の心は移ろいやすく、良いモノばかりではない。どんなに良い人でも…闇を抱えている。アタクシはもちろん、シロナさんにもね。そんな一面を知ることができた二回戦が、アタクシにとって印象深かったの」

「なるほど、納得いたしました」

 

 カトレアは微笑むと、眠そうに小さくあくびをする。眠るのにはまだ少し早い時間だが、試合を興奮しながら見ていた故に疲れが出たのだろう。

 

「少しお疲れですか?」

「ええ。すごい試合を見たからかしらね」

「そうでしょうね。もうお休みになられますか?」

 

 それもいいかもしれないとは思うが、トレーナーとしてはもう少しタッグバトルという特殊なバトルについて話したいという思いがあった。それ故に、カトレアは首を振る。

 

「せっかくいいバトルを見たのだもの。もう少し、バトル談義をしたいところね」

「では、アーカイブを見返してみましょう。お二人の試合以外も見返してみましょうか」

「ええ」

 

 その日、カトレアは珍しく夜更かしをした。

 次の日の朝がよりしんどくなりカイムに文句のメッセージを送ったのだが、何故文句を言われたのかわからないカイムは首を傾げるしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

side episode

祭典の幕引きと、対話

 

 

 タッグトーナメント終了後のスタジアム屋上に、一人の男がいた。男は後夜祭を見下ろし、先程まで行われていたバトルを思い返していた。

 

「……」

 

 技と技、意地と意地のぶつかり合い。そこから生まれた心の煌めき。それらを目の当たりにし、物思いに耽っていた。

 

「…心か」

 

 かつて己が消し去ろうとしたモノ。それらの煌めきを見せつけられ、男はかつての己の選択が正しいか否かを考えていた。

 答えは出ない。今でも心は移ろいやすく不完全なものであるという思いは変わらない。だが消し去るべきものなのかどうかは、わからない。そんな思いを考えていると、ふと背後から気配を感じた。

 

「あら、まさかいるとは思わなかったわ」

 

 聞こえてきたのは、良い思い出のない声。

 

「……何の用だ」

「何やら記憶のある気配がしたから見にきたのよ。また悪さしようとしてないか確認も含めてね」

 

 声の主…シロナは男にそう言って男に鋭い視線を向ける。

 

「悪夢の気配…かなり弱くなっているとはいえ、まだ使えるのね」

「私に蓄積された悪夢の力は相当な量だ。大規模に展開することはできないが、私個人で使う程度なら無限に近い」

「随分と素直に話すわね」

「隠す必要もない。何より、ここでお(・)前(・)達(・)と事を構える気はない」

 

 男の言葉にシロナは意外そうに目を見開く。ここで何かをやらかすとは思っていなかったものの、事を構える気がないとまで言うとは思っていなかったからだ。

 シロナは男の姿を見る。男は黒いコートに赤いマフラーをしており、フードを目深に被っている。そして、悪夢の力によって存在を限りなく薄くすることで、人目を避けていた。悪夢の力はダークライから得たモノだが、今の男にダークライとの繋がりは感じられない。

 

「ダークライとの繋がりは…もう無いのね」

「…わかるのか?」

「なんとなくね。私も一度、ギラティナと繋がったからかしら」

 

 悪夢の世界に落ちたカイムを探すためにシロナはギラティナと繋がり、同じくクレセリアと繋がったヒカリと共に悪夢へと潜った。その際に繋がりを持った影響か、他者とポケモンの繋がりもぼんやりと感じられるようになっていた。

 

「そうか」

「それで?わざわざ何しに来たの?」

 

 シロナに良い印象のない男が、シロナの主催した大会をわざわざ見に来る理由がわからなかった。

 

「………貴様に答える義理があるのか?」

「答えないならそれでもいいわよ」

「チケットも購入している。貴様にどうこう言われる筋合いはない」

(え、チケット買ったの?)

 

 大会のチケットは倍率が凄まじかった。それ故に、わざわざ男がチケットを購入しようとしていたことも驚いたが、当選したことにも驚く。

 

「チケット買ってまで大会を見にきたなんて…何が目的?」

「……ふん」

 

 男は人がいなくなったスタジアムに目を向ける。

 あの場で行われたバトルは、シングルバトルよりもより多く、強い意志のぶつかり合いだった。バトルが心と心のぶつかり合いであることは男も理解している。故に、心を否定した己は見るべきだと判断した。

 

「心の在り方を説いたお前が開いた大会だ。お前が言った心の美しさと醜さ…それらを目の当たりにできる可能性があると考えたまでだ」

 

 男の計画が破綻した時、別れ際に言われた言葉。心の美しさと醜さ。それらを見るためだと男は言った。

 

「私は、今も心は不完全なものだと思っている。そして不完全で悲劇を生む要因にしかならない心を消すことで、完全なる世界を創ることができると思っている。完全なる世界は、美しいはずだと」

 

 その思いは変わらない。やはり不完全なものを消すことで完全なる世界を創ることができる。そう考えている。

 

「だが…」

 

 しかしこの大会を通して、別の考えも浮かんでいた。

 

「お前が開いたこの大会で見せつけられた世界は…美しかった」

 

 男の言葉にシロナは驚いたように目を見開く。

 

「心は悲劇の材料になる。それは間違いない。だが、悲(・)劇(・)だ(・)け(・)を(・)生(・)み(・)出(・)す(・)わ(・)け(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。それを見せつけられた」

 

 心があるから、世界に悲劇が訪れる。なら心なき完全なる世界に悲劇はなく、誰もが完全なる行動しかしない幸福な世界だと、男は今でも考えている。

 だがその世界で、目の前で繰り広げられた光景を再現できるかと問われれば、不可能だろう。あの美しい光景は、心と心のぶつかり合いから生まれるもの。ならば心なき世界では、あの光景を再現することはできない。

 

「お前が言った美しさと醜さ。それらをまとめて見せつけられ、それらを美しいと思った」

「美しさを見せつけた自信はあるけど、醜さはどこ?あまり心当たりが無いのだけれど」

「あっただろう。嫉妬という闇に塗れた激昂が」

 

 嫉妬。それを聞いて何のことかシロナは即座に理解した。

 宝石(天才)を羨んだ石ころ(凡人)。捨て去ったはずの羨望が息を吹き返し、心の底から湧き上がってきた衝動。そのことを男は言っていた。

 

「ああいう闇が、悲劇を生む。闇を抱えた者がいつも世界を悪しき方向へと導くのだ。そんな者を消し去るための術は、心を消す以外ないだろう」

「……カイムが、世界を悪い方に向かわせるって?」

「奴のような闇を抱える者は他にもいる。だが…」

 

 男は誰もいないスタジアムから後夜祭の方へ目を移す。ジュンと共に後夜祭を回るヒカリの姿が目に入った。

 

「必ずしも、そうであるということはないのだろう。奴のように強い闇を抱えながらも他者の心と繋がることで闇を律し、光の道を歩む者もいる。なるほど、心の強さと繋がりは…悲劇だけを生むわけではないのだな」

「そうよ。あなたの言うように、悲劇は確かにある。でも、それだけではない。こうした美しい光景も、心があるからこそ生まれるの。あなたがやろうとしていたことは、悲劇もこの光景もなかったことにする…全てをゼロにしてしまうこと。どれだけのことをしようとしていたかようやくわかったみたいね」

「勘違いするな。私は今もなお、心は不完全で悲劇の材料になるものだという考えは変えていない。だが…」

 

 男は一度言葉を切ると目を空に向けた。

 

「お前達のような人間がいる限り、この世界はもう少しマシな方向へと進めるのだろうな」

 

 世界は不完全で醜い。だが、そんな不完全な中でも、心をぶつけ合い、対話を重ね、競い合い、そして繋がることで生み出される美しい光景が存在する。どれほど強い闇を抱えようとも、この中で生まれた繋がりは闇を律し、光の道を歩むことができる。無論全ての人がそうであるわけではない。繋がりによって生まれた光があれば、同時に闇も生まれる。シロナと男はまさに繋がりによって生まれた光と闇。そしてカイムは間違いなく闇側の人間だったが、シロナの存在により光の道を歩むことになった。そしてカイムもまた、誰かを光の道へと導くことができる存在になったのだろうと、男は目を伏せる。

 

「ああ、認めよう。私の負けだ」

 

 心は不完全で消し去るべきもの。だが、消し去ることでこれらの美しい光景が消されてしまうことを、男は許容していいものかと迷った。そして迷ったということは、この光景に価値を感じたということ。心を不完全で悲劇だけを生み出す無価値なものだと考えていたが、価値を感じてしまった。

 

 証明されてしまった以上、認めるしかなかった。

 

「…戻って来る気はないの?」

 

 男は今、姿を消して闇の中を生きている。戻ってきて罪を償えば、表の世界で生きていくこともできるだろう。何より男の部下達は今でも男のことを尊敬して、捜索を続けている。彼らのためにも戻ってくる気はないかと問いかけたが、男は首を振った。

 

「戻る気はない。お前達が見せつけた心の価値は認める。だが、これだけが世界の全てではない。私は早計だった。世界を知らなさ過ぎた。心の美しさと醜さ…それらの一部を知ったからこそ、それらの本質を知らねばならない。世界を見て周り、私なりの決断を下す。心を消し去るべきか、今の世界こそがあるべき姿なのかを」

「……」

「私は人より優れた頭脳を持って産まれた。ならば、持って産まれた強者として、世界はどうあるべきかを論ずる」

「本当の強者は、世界を書き換える力は持たない。ヒカリの言葉よ」

「ああ。強者である私に必要なのは、後に続く者だ」

 

 男の言葉に、シロナは笑う。

 

「そうね」

 

 それだけ言って、シロナは男の横に並ぶ。後夜祭では誰もが笑顔で笑い合う美しい光景が広がっていた。

 

「悪く無いでしょ?」

「…ふん」

 

 認めてはいる。だが気に食わないシロナの言葉に対して素直に頷くのも癪であるため、頷くことはしなかった。

 そこでシロナは一つの気配が近づいてくることに気づく。その気配が世界で一番愛おしいものであることにはすぐに気づいた。

 

「…奴か」

「わかるの?」

「悪夢の気配がある。微弱とはいえ、悪夢の気配を持つ者は奴くらいだろう」

 

 男の体から悪夢の力がにじみ出る。ここから去るための術だとシロナは即座に気づいた。

 

「行くのね」

「もう会うこともないだろう」

「それ、前の時も言ってたわよ」

「確率はゼロではない。会わないよう心がけるつもりだ」

 

 律儀ね、と言いながらシロナは肩を竦める。

 そして男を見ると、小さく笑った。

 

「じゃあね、アカギ」

「最後まで気に食わない女だな、シロナ」

 

 そう言ってアカギは空間に開いた悪夢の穴に吸い込まれるように消え、僅かな気配を残して完全に消えた。

 

「良い旅を」

 

 それだけ言ってシロナは後夜祭に目を落とす。

 アカギが見る世界が、こんな美しい光景が多いことを願いながら、カイムのことを待つ。

 

 

 

 その数分後に来る心から嬉しい未来のことなど、この時のシロナは全く予想していなかった。

 

 

 

 




Cパート

「時限の塔に、プラズマ団…星の停止ね。情報量が多すぎる」

 一通り未来についての説明を聞いたカイムは、重々しく息を吐いて呟く。かつての仲間であったと言われるイサナ、N、ダイゴがゲーチスへのレジスタンスをしており、そして自分もその一味であったということ。記憶を無くしていたカイムにとって情報量が多過ぎた。

「とりあえず、信じてくれたようだね」
「…信じられんっちゃ信じられん。だが他に情報もないし、色々と腑に落ちるところもある。一旦信じるしかあるまい」
「さすが。記憶がなくとも、カイムはカイムだね」

 笑うダイゴに、カイムは呆れたようにため息を吐く。Nとダイゴは現代に来ていたため、最低限顔は把握していた。この二人の顔を見てもなお記憶は戻らないが、それでも体が違和感を覚えない。記憶はなくとも、肉体は何かを覚えているのかもしれないとカイムは考えた。

「さて、それであんたはどうする?」

 ひと段落ついたところで、イサナはそう言った。

「…姉貴、でいいんだよな?」
「うん。あんたのお姉ちゃんよ〜」
「……だる。まあいいや。どうするってのは?」
「そりゃ決まってるじゃん。あんたとシロナちゃんはこっちにつくのか、プラズマ団につくのかって話よ」

 時の救助隊につくか、プラズマ団につくか。現代から来たシロナと記憶を無くしたカイムは、厳密にはどちら側でもない。故に、イサナとしてはどちらの立場を取るか聞いておく必要があった。

「…ここまでの話しで、プラズマ団につく理由はないと思うのだけれど」

 だがシロナの心は決まっていた。世界を我が物にせんとするために動くゲーチスにつく理由などない。時間が破壊され、時が停止した未来など受け入れることはできない。変えられる可能性があるのなら、そのために動くべきだと言った。
 そしてその言葉にイサナは優しく笑う。

「一応よ。こういう意思確認はちゃんとしておかないと。シロナちゃんは過去の人だし、カイムも全部忘れてる。なら厳密にはどちら側でもない。だから立場をハッキリさせておかないとね」
「ええ。私たちは、時の救助達の味方になるわ」
「ありがたい。正直、アタシらだけじゃ手詰まりだったから」

 イサナは立ち上がると、傍にいたセレビィを優しく撫でる。

「これからアタシらがやるべきことを改めて説明するね。アタシらの最終目標は、星の停止した現状を変え、時が流れる世界に戻すこと。それを達成するためには、時限の塔に全ての時の歯車を納めないといけない。でもその時限の塔が、この時代では既に壊れている。だから過去の世界で時の歯車を納め、星の停止を防ぐ。これが目標達成に必要なこと」
「目標達成に関係する障害は?」
「一番大きな障害はゲーチス。奴は一番強い時空ホールを作れる場所を抑えている。そこが抑えられている限り、過去へいく時渡りができない。前回は不意打ちでなんとかできたけど、二回目はさすがに警戒されてるしハードルは上がるわね」
「他に時空ホールを作れる場所は?」

 シロナの問いかけにイサナは肩を竦める。

「無いと言えば嘘になる。でも時空間が一番安定している時空ホールは、ゲーチスが抑えている場所なの。時渡りって、なんだかんだで相当危険で制約が多い。下手な場所で時空ホールを作り出したら、ホールが弾けて時渡りしようとした人も作り出した人もまとめて時限の狭間行きよ」
「…事実上、ゲーチスの突破以外はないってことね。勝算は?」
「チャンピオンレベルが二人いればかなり上がるけど、それでも五割あればいい方ね。それくらい、向こうの力は強い。ゼクロムが完全に抑えられている以上、力の差は歴然ね」
「ゼクロムを完全に…?どうやって」
「キュレムってポケモンがいてね。そいつがゼクロムと同化することで力を無効化できるのよ」

 キュレムとゼクロムは元々同じ存在であり、同化することができるのだとか。そして同化した際の主導権は肉体の抜け殻であるキュレムにあり、キュレムは完全にゲーチスの支配下にある。故に、ゼクロムによるゴリ押しの突破も不可能だった。

「正面からやれば、キュレムがいる向こうが勝つ。ならどうするか?」
「頭数を減らす」
「さすがN、正解。正面から誰かが気を引いて、その隙に裏から誰かが襲撃する」

 イサナはホワイトボードに図を描いていく。

「正面から二人、時空ホール前に突っ込む。待ち構えてきていることは間違いないから、そこでまず戦闘。その隙に裏から頭数を減らす。ゲーチス以外は大したことないけど、頭数がすごいからそこで持ち堪えられる人が必要ね」
「ならボクとシロナさんは確定だね。Nはゼクロムを縛られるし、裏方の方がいいと思う」
「ええ。あと可能なら、カイムがほしいわ」

 シロナの申し出に、カイム以外の全員が驚いたような表情になる。そんな全員に対して、シロナは強気な笑顔を向けた。

「カイムは俯瞰の視点を持っているし、サポート能力が高い。特に多数相手の時はすごいの。モンスターハウスも容易に切り抜けられるくらいね」
「…そいつは言い過ぎだろ。だがまあ、確かに得意ではあるが」
「へえ…」

 イサナは意外そうに目を見開き、笑った。

「あんたやるね。そんな才能があったのね」
「しょうがねえだろ…俺も知らなかったんだから」
「ふふ、まあいいわ。んじゃ、細かいところ詰めてさっさと過去に戻ってもらうわよ」

 セレビィを優しく撫でながらイサナは言い、全員はイサナの言葉に頷くのだった。




Q.古代シンオウ人って寿命長いの?
A.無限かどうかまでは断言しかねますが相当長いと思います。コギトさんのポエムに『悠久の時』との記載があり、ウォロさんもまだ生きていることを仄めかす描写があるため、通常の人間の比にならないレベルの寿命ということにしてます。滅びた要因は、寿命が無限でも事故や病気にならない保証がなく、生きている間に事故やら病気やらオヤブンポケモンにやられるやらで数を減らし、気づけばウォロとコギトだけになった、と考えています。異論は認めます。
同時に古代シンオウ人の血が流れている人も一(・)般(・)人(・)よ(・)り(・)は(・)長い寿命にしてます。祖母のアイナさんはハーフなので超長寿ですが終わりがあるためウォロ・コギトと比べたら短い。シロナさんもハーフ未満ではありますが、古代シンオウ人の血が流れているため長寿です。そのため、カイムがシロナさんより長く生きることは(他殺・事故を除いて)ありません。
ちなみに、シロナさんの両親についてはあまり深く考えていないので聞かないでください。

Q.古代シンオウ人ってなんで滅びたの?
A.原作では描写されていませんが、本作では緩やかな衰退ということにしてます。アルセウスの祝福(呪い)により、古代シンオウ人の寿命は非常に長いものになりましたが、その結果『種族の繁栄』という本能が薄くなり、結果として数を減らしていったという感じです。葬送のフリーレンとかにもありましたが、長寿の種族は繁栄への意識が薄いというイメージからこうなりました。

Q.シロナさんはコギトさんの血筋?
A.そう考えてます。コギト→アイナ→両親どちらか→シロナの順です。ただ、直接的な血の繋がりがウォロ、コギトの間であるかはわかりませんが、親戚くらいの繋がりはあると思っているため、ウォロの歴史への探究心は部分的にシロナさんに受け継がれ、なんなら容姿も含めて受け継がれました。隔世遺伝みたいなものです。

Q.エッチなことしたんですね?
A.してません。この場では。


シロナ
研究対象がまさかのご先祖。かなりの長寿になることが確定し、カイムのことを看取ることも同時に確定。

カイム
流星の民の末裔だが、寿命は一般人レベル。

クロナ
妹。寿命は長く、シロナと同じくらい生きる。

アイナ
本当の意味で人の倍生きてる。

カトレア
大会は最後まで見た。タッグバトルに興味も持ち始めた。

コクラン
執事。カイムへの評価は高い。

アカギ
世界を見て回る旅に出た。


いつも感想ありがとうございます。
前回、多くの方が感想を下さいました。感無量です。返信は近いうちにします。
本編の終わりは近づいていますが、本編後も何話か考えています。忙しさ天元突破で錐揉み回転してますが、更新は続けていきます。

次回はダイゴ視点です。
また、意味深なアンケートに答えていただけると嬉しいです。

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