なんでも屋アールグレイ-The Shadow Bullet-   作:「旗戦士」

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「小説家になろう」さんで掲載されている黒陽 光さんの「黒の執行者-A Black executer-」とのコラボ回です。
本人に許可は取得済であり、この回も本編として扱います。



order28.黒の執行者

<シカゴ国際空港・ターミナル>

 

 

 約10時間のフライトを経て、シノは荷物を受け取ってからターミナルの出口へと向かう。

グレイのツテを頼りに荷物を運搬したので、"日秀天桜"を持ち出す事は容易であった。

車に寄り掛かっているウェーブがかった茶髪の男を見つけると、シノはその男の元へと歩き出す。

 

「グレイ。久しぶりだな」

「ようシノ。日本はどうだった? 」

 

「相変わらず飯が美味かった。後で土産も用意してある」

「そりゃあ助かるぜ。最近ローストチキンしか食ってなくてな」

 

グレイは車の後部座席を開け、シノを招き入れた。

荷物をトランクに入れ、彼も運転座席に乗り込む。

 

「しかしまあ、大層な袋に包んで持ってきたもんだな。新しく作ってもらったのか? 」

「あぁ、古い知り合いに刀鍛冶がいてな。月日を掛けて打ってもらった」

 

シノは刀袋から"日秀天桜"を取り出し、美しい白塗りの鞘から銀の刀身を少しだけ抜く。

車のライトに反射して光り、その美しさをより一層際立たせた。

 

「……素人目から見ても分かるぜ、相当な一品だな」

「うむ。有難く使わせてもらう事にした」

 

車はターミナルの停留場から高速道路へと移動する。

既に時間は夜の10時。

交通量も少なく、市内へはおおよそ30分で到着する予定だ。

 

「シノ。帰国早々悪いが、仕事の話だ」

「……ふむ。休暇はもう終わりか? 」

 

「そういう事。ソフィアにも連絡してある。時間は明後日の夜9時からで、取引の護衛だとさ。報酬もたんまり入る」

「了解した」

 

シノは頷き、自然と外の景色に眼を向ける。

 

「そうそう。お前、"黒の執行者"って知ってるか? 」

「"黒の執行者"? 一体誰だ? 」

 

グレイはハンドルを握り、視線を前方に向けたまま話し始めた。

 

「ハイスクールの生徒にして、裏業界で仕事してる"傭兵事務所"さ。事務所つっても、その本人しかいないんだがな。本人はこの二つ名をひどく嫌ってるらしいが、まあ腕は超一流。黒ずくめの格好で標的を必ず殺す事から"黒の執行者"っていう名前が付いたらしいぜ」

 

「……その、"黒の執行者"がどうかしたのか? 」

「俺達の次の仕事場に現れそうなんだと。さすがに俺も、少し緊張しちゃうねぇ」

 

緊張している素振りなど見せず、グレイは淡々と言い捨てる。

だが、グレイがここまで言う人物なら相当な実力者なのは間違いない。

 

「俺達は俺たちの仕事をこなすだけだ。そうだろう? 」

「よく分かってるじゃん。とりあえず帰ったら一杯やろうや。土産話も聞きたいしな」

 

「いいだろう。またこの前みたいに酔いつぶれるなよ」

「へっ、俺も強くなったんだから見とけよ~? 」

 

そのまま車は高速道路を降り、シカゴ市内へと向かって行った。

 

「あ、シノ。言い忘れてたけど、メリークリスマス」

「あぁ。メリークリスマス」

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<依頼日当日・シカゴ郊外>

 

 そうして迎えた依頼日当日。

グレイは二日酔いの頭を無理やり叩き起こしながら、指定されたシカゴ郊外にある倉庫へと車の進路を進めていた。

 

「あー……頭痛い……。ウォッカをショットなんてしなきゃよかったぜ……」

「ほんとにグレイさんは自制しないんですから……」

 

「やれやれ。長い間会ってなかったと思ったらこれだ。介抱する身にもなれ」

「へいへい……って、着いたぞ」

 

グレイの言葉を合図に、3人は車から降りてトランクへと向かう。

トランクを開け、中を覆っているカバーを剥がすとアサルトライフルやサブマシンガンなどの銃器が姿を現した。

 

「ほらよ、ソフィア。SIGで良かったよな」

「はい。私も練習して使えるようになったんですから! 」

 

えっへんと胸を張るソフィアを一瞥し、グレイは彼女に"SIG SG552"を手渡す。

シノも隣で刀袋から"日秀天桜"を取り出しつつ、右もものホルスターに"グロック17"を差し込んだ。

 

二人が装備したことを確認すると、グレイも左胸のポケットに愛銃の"M586"を仕込む。

ついでにスローディングナイフを両腕の袖に仕込んでおき、彼も準備が完了した。

 

「あー、失礼? この度依頼を請けてあんたらの護衛に就いたもんだけど」

「おう、入りな。もう取引は始まってるぜ」

 

「んじゃお言葉に甘えて。不審者らしき影は? 」

「今の所いねえな」

 

見張りの黒人に礼を述べると、グレイ達は倉庫の中へと入っていく。

薄暗い明かりの下に黒いバンが数台停まっており、ボンネットの上で麻薬の塊と金を広げているギャングが数人と、その周りに武装したギャング達が数十人はいた。

 

「これで何も無きゃいいんだがな」

「お前がそう言うと必ず何かが起こるんだ」

「冗談は止せよ。人を疫病神みたいに言いやがって」

 

瞬間、銃声が倉庫内に響く。

 

「ほら、な? 」

「……嘘だろおい」

 

「そんな事言ってる場合ですか!? 早く加勢しないと! 」

「ああくそっ! 言われなくてもなァッ! 」

 

身を隠していたコンテナを駆けあがり、懐から"M586"を引き抜いて一番近くのギャングに銃弾を浴びせた。

撃たれた男の持っていた"UZI"からは銃弾が吐き出されることなくそのまま床に落ちる。

 

「で、出やがったな! 奴を殺せ! "なんでも屋アールグレイ"だ! 」

「毎度どうも、っとぉ! 」

 

続けざまに二発放ちながらグレイは違うコンテナの陰に隠れた。

彼を追うように他のギャング達が殺到するが、その間を銀の影が通り抜ける。

 

「禊葉一刀流、"雪雅"」

 

瞬く間に辺りは血の海と化し、シノは死体を一瞥した。

同じようにソフィアが転がり込んでくる。

 

「ははっ、お前も板についてきたじゃねーか、ソフィア」

「伊達に何度も死に掛けてませんからね! 」

 

「ちぃっ! あのチビもやりやがる! おい! 奴を呼べ! 」

「チビって言うなぁっ!! 」

 

ソフィアが激昂して飛び出そうとした瞬間、彼女の頬に銃弾が掠めた。

小さな悲鳴を上げながら、ソフィアは戻ってくる。

 

「……それで、ここら辺の連中を全員殺ればいいんだな? 」

「ああそうだ! 高い報酬払ってるんだから頼むぜ! 」

 

後方に日本人訛りの英語が聞こえた。

その男が来た途端、グレイの依頼主たちは沈黙する。

 

「悪く思うなよ、こっちも仕事なんでね」

 

その瞬間、軽い発砲音が聞こえたと思ったら一度に2人のギャングが地に伏していた。

グレイが事態を確認するために恐る恐る視線をコンテナの外に向けると、黒ずくめの若い青年が拳銃ひとつでギャング達を相手にする光景が目に入る。

 

「おいおい……。あいつが例の"執行者"様かよ。日本製の"ミネベア・シグ"なんて粋な銃使ってるじゃねーの」

「言ってる場合か! このままだと押し負けて死ぬぞ! 」

「ま、先輩として手厚く歓迎してやるとしましょうかぁっ! 」

 

銃声が止んだと同時に飛び出し、"執行者"の周りにいたギャング達を片付けた。

すかさず執行者は"ミネベア・シグ"を構えるが、同じようにグレイも"M586"を構える。

 

「アンタ……"死の芳香"か? 」

「ご名答。そういうお前は"黒の執行者"だな? 」

 

グレイがニヤリと笑った瞬間、二人の姿が揺らぐ。

互いの背後にいた敵の脳天を撃ち抜き、執行者とグレイは再び銃口を向けた。

 

「やるじゃん高校生? 」

「うるせーよおっさん」

 

「なっ!? 俺結構若い方なんだがなぁ……」

「知るかよ。それより、とっとと死んでくれるか」

 

「嫌だ、って言ったら? 」

「力ずくで――――」

 

直後、寒気がするほどの鋭い殺気に貫かれる執行者。

本能的に体を逸らし、迫り来る銀の刃をギリギリで躱しきる。

 

「……何だと」

「へぇ、シノの刀を躱すとは本当に将来有望だなぁ」

 

「ちっ、余裕綽々ってか……! 気に食わねぇ……! 」

「ま、これで形勢逆転だ。どうする? 高校生? 」

 

地に膝を着いた体制を逃すはずもなく、グレイは執行者に"M586"の銃口を突き付けた。

グレイの背後ではギャングの一員とソフィアが執行者の依頼主達を翻弄している。

執行者が諦めかけた、その瞬間であった。

 

「ッ!? グレイ、伏せろっ!! 」

「どわぁっ!? 」

 

ヒュン、と何かが風を斬る音が聞こえた瞬間、執行者に銃口を向けていたグレイがシノによって無理やり押し倒される。

執行者の眼前には和服のような忍者装束を纏った少女が映っていた。

 

「いつもいつも、私が訪れると危険な目に戒斗は遭っている。これは偶然? それとも必然? 」

「さあな。まあ助かったぜ、遥」

 

「おいおい、うちのサムライに続いて、今度はニンジャかよ。ジャパニーズカルチャーが一度に二回も見れるなんてお得なツアーなこった」

「冗談はいい。あの娘は俺が相手する。グレイは執行者を頼むぞ」

 

「お前ロリコンだったの? 引くわ」

「後で叩き斬る」

 

そう言いつつシノは遥と呼ばれた少女に斬りかかり、互いに鍔競り合いながら倉庫の奥底へと消えていく。

気を取り直して立ち上がると、再びグレイは銃口を向けた。

 

「やっと二人きりになれたんだ、先輩が後輩君にレクチャーしてやるよ。まずはレッスン1。"先輩は敬え"」

「これでも十分尊敬してるさっ! 」

 

コンテナの陰に隠れつつ戒斗は"ミネベア・シグ"をグレイに向けて3発放つ。

その銃弾を難なく躱し、グレイは全弾倉の弾を撃ち切った。

 

(リロードしてるのか……。だがこっちはまだ6発あるし、向こうはリボルバー。勝てる要素はある! )

「そうら、こっちだ! 」

 

グレイは敢えて戒斗の姿が見える位置に移動し、2発続けざまに放つ。

コンテナの壁に跳ね返って火花を散らしたと同時にミネベア・シグが火を噴いた。

 

「うおっ!? あっぶねー」

「今の避けるとは、さすが先輩だな」

 

その言葉を聞き流してグレイと戒斗は互いの距離を詰める。

銃弾が彼らの腿や肩を掠めるが、構わず拳をぶつけ合った。

 

フェイントの動作に、反撃速度の速さ。

どれをとっても一流の戒斗に、グレイは内心舌を巻く。

 

「よそ見してる場合かよっ! 」

「ぐぉっ!? 」

 

横殴りに襲う蹴りを受け止めきれず、グレイはコンテナの壁に叩きつけられた。

口の中に血が滲み、彼はすかさず血を吐き捨てる。

 

「……へっ。時間切れみてーだな」

「何? 」

 

戒斗は周囲を見回す。

敵対していたギャング達の姿は、すでにそこにはいない。

 

「ソフィア! シノ! 撤退だ! 」

「なっ、てめっ――――」

 

一瞬の隙を突いてスモークグレネードを投げ、辺りが煙で覆われた。

戒斗に有無を言わせずにグレイは倉庫からいち早く出る。

 

「……どうする? 俺のオーナーはこう言っているが」

「……無益な殺生と見た。もう一人の女の子を連れて逃げるといい。琴音と交戦中」

 

「情報提供、感謝する。では、"また"」

「えぇ。また」

 

遥と交戦していたシノも刀を納め、いち早くソフィアの元へ向かった。

 

「ソフィア。撤退命令だ。退くぞ」

「は、はい! 琴音さん、さようなら! 」

 

「うん、じゃあねソフィアちゃん! 」

「いや、なんで仲良くなっているんだ」

 

微妙な空気になりつつも、シノはソフィアの身体を片手で持ちあげる。

そのまま倉庫の出口へと二人は出た。

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<倉庫内・戒斗視点>

 

 

 「……くそっ。あのおっさん、存分に撃ち込んできやがって。何が先輩だ」

「戒斗、そっちは大丈夫? 」

 

「かすり傷が幾つもやられた。琴音の方は何も問題ないか? 」

「何にも。あたしソフィアちゃんって子と仲良くなっちゃった」

 

「アホかお前」

 

琴音の頭にチョップを叩き込む戒斗。

その様子を遥は一瞥し、負傷している依頼主の元へと急ぐ。

 

「……傷の方は? 」

「な、なんとか治りそうだ。応急処置はしてある」

 

彼女が依頼主の元へ向かったのを見て、戒斗と琴音も彼の元へ向かった。

 

「よう。仕事はミスったから、報酬は指定した金の半分でいい」

「半分でいい、だと? こっちは依頼主だぞ! そんな偉そうな態度が通用するとでも思ってんのか!? 」

 

「じゃあ三分の一だ」

「1セントも払うかよ! 」

 

「じゃあテメェの命だ」

 

戒斗は座り込む依頼主にミネベア・シグを突き付ける。

周囲のギャング達は解き放たれたように"AK-47"や"UZI"を彼に向けるが、それを依頼主は制した。

 

「……ちっ、分かったよ。指定の口座に振り込んでおく」

「それでいい。それと、依頼を果たせずすまなかった」

 

「失せろ。謝罪の言葉なんていらねぇ」

「あいよ。今後とも、戦部探偵事務所をごひいきに」

 

そう言いつつ、戒斗は琴音と遥を連れて倉庫を出る。

ちっ、と舌打ちをすると戒斗はミネベア・シグを懐のホルスターに仕舞った。

 

「さて、そこに停めておいた車で帰るかね」

「了解。戒斗、運転お願い」

 

「へいへい。お姫様二人をお送りしますよっと」

「お姫様だなんて。照れる」

 

「も、もう! やめてよ戒斗! 」

「……はぁ。そういう事にしといてくれ」

 

運転席に乗り込みエンジンを掛けると、戒斗は公道へ出る。

 

「……"死の芳香"、ね」

「ん? 何か言った? 」

「いいや、別に」

 

グレイの顔が、彼の脳裏に妙に残っていた。




というわけでなんでも屋初めてのコラボ回となりました。
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