なんでも屋アールグレイ-The Shadow Bullet-   作:「旗戦士」

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コラボ回第三話。
結構終盤です。


order30.Jack Pot

<シカゴ郊外・3番地倉庫>

 

 

 バンから投げられるように地面に叩きつけられ、戒斗とグレイは無理やり倉庫の中に有った鉄パイプ製のイスに座らせられる。

 

戒斗の方は押し黙ったままで、チンピラたちの問いかけに応じないせいか何度か殴られた跡があった。

グレイはグレイで、それ以上に全身を殴られたりしている訳だが。

 

「よお。また会ったな、"執行者"様に"死の芳香"さんよぉ? 」

「おっ、あんたはうちのソフィアに銃弾ぶち込まれてたギャングのオッサンじゃねーか。あの美少女から撃たれてさぞ気持ち良かったよな? 」

 

瞬間、リーダー格の男の拳がグレイの頬を的確に捉える。

しかもその男はメリケンを仕込んでおり、殴れられた彼の口から血がぼたぼたと落ちた。

 

「……何やってんだか」

 

隣で戒斗は呆れ返るようにグレイを見つめる。

だが未だにグレイは不敵な笑みを崩さず、肩で息をしながらリーダー格の男にこう言い放った。

 

「……へ、へっ、へっへっへ。メリケンで一発、顔への殴りが4発……」

「あぁ? 何言ってやがんだテメェ。不気味に笑いやがって」

 

「勘定だよ。俺にアンタらがやって来たこと、そっくりそのままお返ししてやろうと思ってなぁ。その事を思うとニヤケが止まんなくて……くくっ」

「おいおい……本気でイカれてやがんな……」

 

「おいハイスクールボーイ。聞こえてんぞー」

 

その瞬間、リーダー格の男がグレイの胸倉を掴む。

 

「俺はテメェみてえないけ好かねぇ野郎が大嫌いなんだ。いつもそうやって澄ました顔見せて、適当にあしらって……。でもよぉ、逆に俺ぁそいつらの死体ばっかり見てきたんだ。俺が殺してんだからな! 」

 

「うわー、すっげえなー震え上がっちゃうなー。なあハイスクールボーイ? 」

「……あぁ。思わずちびりそうになった」

 

彼は顔を真っ赤にして二人の顔を殴り飛ばす。

笑いが堪え切れなかったのか、戒斗もグレイの冗談に乗ってきた。

 

「そこで首長くして、せいぜいお仲間が殺されるのを見てなアホ共! 」

「はっ、B級映画以下の台詞回しだなおい」

 

吐き捨てるようにリーダー格の男は見張りを残して立ち去っていく。

屈強な男二人がグレイと戒斗の周囲に立っている。

 

「……なあオッサン。なんで俺を庇うような真似したんだ? 」

「オッサンじゃねえって言ってんだろー? 別に、庇うような真似しちゃいねえよ」

 

「つくづくアンタも不器用だな。あの鉄砲店のシエラの名前を出された瞬間、アンタはなりふり構わず連れて行かれる事を望んだ」

「……関係ない奴は巻き込む質じゃないんでね。つっても、今回はお前を巻き込んじまったがな。いや、本当に悪いと思ってる」

 

「急に素直になんなよ、気持ち悪い」

 

そう吐き捨てる戒斗を見て、グレイは笑った。

 

「"先輩"は"後輩"を守んなきゃいけねーからさ。ったくよ、世話の焼ける後輩君だぜ」

「俺からしたらアンタの方が世話の焼ける先輩様だよ」

 

「おい。うるせえぞ、静かにしなきゃ殺す」

「おー、怖い怖い」

 

大人しく静かになる二人。

悔しいが、手足を縛られているこの状況では従うしかない。

 

「頼みの綱はあいつら、か……遥、琴音……頼んだぜ」

 

戒斗の声が、夕暮れに染まる倉庫の中に響いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<3番地倉庫・入り口>

 

 

 時間が経つのはあっという間で、約束の午前0時を迎える。

夕暮れはすっかり沈み、月明かりと薄暗い裸電球だけが倉庫内を照らしていた。

 

「シノ、遥両名。3番地倉庫の入り口に到達した」

『了解。ヘルガ、準備するよ』

『準備は万端。いつでもOK』

 

3番地倉庫の近くにある大型クレーンに登り、"T-76 RongBow"を構えるヘルガと、彼女の反対側に位置する空きビルの屋上にその腰を落ち着けるリサがシノの声に応答する。

リサは"ウィンチェスターM70/Pre64"のスコープを覗き込み、倉庫の天井窓から中の様子を窺った。

 

『倉庫内の入り口から約145m離れた先に、"死の芳香"とカイトがいる。ヘルガ、そっちからはどうだい? 』

『二人を確認。倉庫内には二階もある、おそらくそこに敵が潜んでいると推測』

 

「了解。琴音、"オペレーター"にはなんと表示されている? 」

『うーんと……。敵数およそ36人で、各々コンテナの後ろや二階に隠れてる。シノさんの言った通り、確実に罠に嵌めに来てるわ』

 

そう、と彼女の言葉を聞いて頷く遥。

彼女は次に装備の点検の入念に行なった。

 

「いい刀だ。銘は? 」

「"陽炎"と"不知火"。そちらは? 」

 

「"日秀天桜"だ。お互い、いい刀匠に恵まれたようだな」

「違いない」

 

おそらく遥の気を楽にするために聞いたのだろう、シノは少しだけ口元を吊り上げた。

遥もそれに応えて少しだけ笑顔を見せる。

 

『お二方、お願いします。貴方がたが交戦を始めたようなら、すぐにこちらも裏口から参りましょう』

「ありがとう、お爺さん」

『ほっほっほ。遥さんのような方にお爺さんと言われて、ジジイは幸せ者です』

 

和やかな声と共に、シノは倉庫の入り口を開けた。

天井から腕を吊るされたグレイと戒斗が裸電球の下で照らされており、彼らを守るようにギャングたちが大勢取り囲んでいる。

 

「やぁやぁやぁ! これはこれは! わざわざ引き取りに来てくれるなんて有難い限りですよ! 」

「……シノ、お前……」

「すまん、しくじった」

 

倉庫に入ってくる遥やシノの姿を見て、二人は苦虫を噛み潰したような表情を見せた。

全身は痣だらけにされ、おそらく手厚い歓迎を受けたのだろう。

 

リーダー格の男は気さくに二人に歩み寄り、遥とシノを彼らの元まで案内する。

彼の下っ端たちは二人を射殺すように睨み付けるがそんな視線も相手にせず、グレイと戒斗の元まで歩み寄った。

 

「……なんで来た……」

「どうせお前の事だ。シエラを人質に取られて退くに退けなかったのだろう」

 

「ご名答だよ、"白鞘"。このオッサン、自分の身を挺して彼女を守りに行ったのさ」

「なっ、テメェ言うなって! 」

 

そして戒斗とグレイの縄を縛っている縄をシノと遥が解こうとした瞬間。

チャキ、と銃を構える音が二人の耳に入った。

 

「……何の真似? 」

「おいおい、言わなくても分かるだろ? 俺達が大人しくにアンタらを帰すと思ってんのか? 」

「へへへっ、そうだよ。そこの女男はまだしも、そこのガキはまだ使えそうだからな。娼婦として」

 

汚い笑いが倉庫中をこだまする。

グレイだけが不敵にニヤリと笑い、戒斗は気まずそうな顔を見せた。

 

「……誰が、女男だって? 」

「あぁ? そりゃあテメェに決まってんだろ。そんな女みてえな髪して、俺達の事誘ってんのか? 」

 

パチリ、と刀袋の留め具を外す。

遥の方も背中に背負った高周波ブレード"陽炎"と小太刀"不知火"に手を掛け、通信端末に口元を当てた。

 

「Fire」

 

瞬間、シノの"日秀天桜"が唸りを上げて数人の腕を食いちぎる。

彼の背中をカバーするように遥が投げナイフを投げ、目を潰す。

 

それと同時にグレイと戒斗の腕を縛っていたロープを、リサとヘルガが撃ち抜いた。

直後裏手から武装した琴音たちが呆気に取られるギャング達を強襲し、グレイ達の元へと辿り着く。

 

「退け!! 」

「はいっ! 」

 

琴音とソフィアはグレイと戒斗の身体を引きずり、安全なコンテナの陰に隠れた。

それを確認したマスターは、彼女たちを守るように銃を構えるギャング達の前に立ち塞がる。

 

「今夜ばかりは……バーのマスターは休業としましょう」

 

マスターが腕を振り下ろすと、その場にいたギャング達の足が綺麗に切り落とされた。

何が起こったのか理解できない彼らは、彼の手によって肉塊と化す。

 

「"暗器魔ギルベルト"、復活と致しましょうか」

 

そんな中混戦になりつつも、ヘルガとリサは高所から琴音とソフィアの援護を欠かさない。

だがマスター――ギルベルトの名前を聞いた瞬間、一瞬二人は動揺した。

 

「おいおい、暗器魔ギルベルトって……」

「CIAのトップエージェント。まさか近くにいたとは……」

 

その動揺が、一瞬だけ敵の接近を許す。

二人に応急処置を施すソフィアと琴音の背後に、一人ギャングが忍び寄った。

 

「ちっ、おい琴音! 後ろだ! 」

「えっ!? 」

 

「ソフィア! 銃貸せ! 」

「間に合いませんよっ! 」

 

咄嗟にソフィアはホルスターを抜き、忍び寄ってきたギャングの胸を撃ち抜く。

 

「……ふぅ」

『すまん、無事か? ソフィア』

 

「なんとか。引き続き援護をお願いします」

『任せて』

 

度胸の据わった様子を見せられたグレイは、彼女を見てフッと笑った。

まさかここまで心強い味方になってくれたとは、と内心彼は思う。

 

「すまん、ソフィア、琴音ちゃん。もうすっかり良くなった。俺達もまだ動けるから、とりあえず銃を貸してくれ」

「やられっ放しは性に合わねえからな」

 

「分かりました。琴音ちゃん、腰にあるそれ貸してもらっていい? 」

「うん。私たちはこれで応戦するから」

 

グレイと戒斗にそれぞれ"シグ・ザウエル P226"と"S&W 1911DK"とそれらの予備マガジンを4、5個手渡すと、琴音は"ベレッタARX-160"を、ソフィアは"SIG SG552"を構えてコンテナの陰から出た。

 

「オートマチックは好きじゃねえが……。ま、この際文句は言えねえか」

「リボルバーよりかはよっぽど扱いやすいとは思うがな」

 

「俺ぁあっちの方が好きなんだよ」

「はいはい、そうだろうな。オッサンだし」

 

二人がコンテナの陰で会話していると、こちらへ向かってくる足音が幾つも聞こえる。

初めから分かっていたのか、二人はマガジンをセットしスライドを引く。

 

振り向きざまに4発放ち、脳天を貫かれたギャング達はその場で倒れた。

 

「行くぜ、"戒斗"」

「そうだな、"グレイ"」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<倉庫内二階>

 

 

 一方、即座に自分たちの周囲にいたギャング達を殲滅したシノと遥は、更なる敵を求めて二階へと上がっている。

既に作戦変更の合図はしてあり、グレイと戒斗も動ける事から殲滅作戦へと移行していた。

 

「禊葉一刀流、紫電」

 

二階にある細い道にいたギャングを両断し、怯えながらも反撃する他の連中の撃った弾を斬り捨て、シノはまた一人地獄へと叩き込む。

 

「ち、畜生! この化物め! 」

 

"ミニウージー"から放たれた幾多もの弾丸を真っ二つにするシノ、その隙をカバーするように遥が"不知火"で腕ごと斬り捨て、"陽炎"でトドメを刺した。

 

「見事だ。型にはまらない剣術、俺も参考にするとしよう」

「これでもまだまだ未熟。貴方の禊葉一刀流は洗練されている」

 

「まだ奥義を取得して間もない身だ。互いに精進するとしようか」

「……御意」

 

背後からやって来た追手を、"グロック17"と"XDM-40"の弾丸で屠る。

シノの方が若干命中精度が悪いのに対して、遥の方が命中率が高かった。

 

「銃の腕は、まだまだの様」

「……そうだな、俺の負けだ」

 

フッと笑って二人は二階の小部屋に入る。

そこには恐れをなして逃げたリーダー格の男が銃を構えて立っており、その手は震えていた。

 

「もう降参しろ。お前も終わりだ」

「う、う、う、うるさい!! 元々、依頼を失敗した執行者と邪魔したあの野郎が悪いんだ! 俺はただ仕事してただけなのになぁ! 」

 

「……こんな小物がリーダーとは、死んだ者も救えない」

「全くだ」

 

二人はため息を吐き、ゆっくりと男を追い詰める。

手に握った"スタームルガー P85"から銃弾が吐き出されるが、その弾は遥によって斬り落とされ、シノに銃身を真っ二つに斬り捨てられた。

 

「はっ、は、はひぃ」

「来い」

 

シノは怯えて何も言えない男の首根っこを掴み、遥はその背後で奪われた戒斗とグレイの武器を持って小部屋を出る。

辺りを見回すと既にリーダー格の男以外全滅しており、血飛沫が周囲に散っていた。

幾つもの屍を越え、二人は全員の待つ倉庫の真ん中へとたどり着く。

 

「よっ、おかげさんで無事解放されたぜ。ありがとうよ」

「ここまで阿呆だと逆に哀れになるな」

 

「たっ、た、助けてくれ! 俺は上から命令されただけなんだ! 」

「偉そうにふんぞり返ってたのに自分が危ないと結局これかい。情けないねぇ」

 

やれやれ、とリサは肩を竦める。

そんな中グレイは男の前に座り込んだ。

 

「ま、別に生かしてやってもいいぜ? 」

「ほ、ほ、本当か!? なんだってやるぞ! 」

 

グレイに縋りつく様子を見て、戒斗はため息を吐く。

 

「今まで俺にやって来たツケを返して貰ったら、だけどな」

「へっ? ツケ? 」

 

「あぁ。言ったろ? "そっくりそのままお返しする"ってな。そこの後輩君はそん時俺の事をイカレ野郎だと言ったが、俺は大真面目だったんだぜ」

 

男の顔がだんだんと青ざめていく様子は実に滑稽であった。

遥はグレイに"M586"を投げ渡し、戒斗には"ミネベア・シグ"を手渡す。

 

「その様子だと払えそうにないな。戒斗」

「ん? あぁ」

 

二人は銃口を男に向けた。

 

「ジャックポット、大当たりだ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<シカゴ郊外、3番地倉庫出口>

 

 

 シノとギルベルトに肩を貸してもらいながら、グレイと戒斗は倉庫を出る。

外にはグレイの黒塗りの愛車"アウディ A6"と戒斗の赤塗り愛車"シボレー カマロZL1"が停めてあり、アウディの中からシエラが飛び出してきた。

 

「ぐ、グレイっ! 」

「どわっ!? シエラ、なんでここに!? 」

 

彼女は傷だらけのグレイを見るなり抱き付き、周囲を驚かせる。

二人を知っていた戒斗もグレイとシエラの関係に驚いたようで、肩を貸していたギルベルトにおそるおそる尋ねていた。

 

「マスターがあたしを連れて来てくれたの。最初に狙われるかもしれないのはあたしかもしれないから、って」

「あんた……。ったく、余計な気を遣わせたな」

 

「いえ、お気になさらず。私としてはお二人が幸せになってくれるのが一番ですから」

「そりゃどうも」

 

シノは組んでいたグレイの肩を離し、シエラに彼を渡す。

礼をシノに言うと、気にするなとシノはグレイの肩を叩いた。

 

「……シエラ。悪いが俺は、お前をこんな危険な目に遭わせたくない。今後こういう事は控えてくれ。シエラの身に何かあったら俺は、今度こそおかしくなる」

「ご、ごめんグレイ。でもつい心配で……」

 

今度こそ、という言葉に戒斗とリサは不審に思う。

過去に何かあったのは確実だが、今それを聞くのは野暮というものだろう。

 

「シノ。私たちも是非抱き合いたい」

「……止せ、ヘルガ。俺が恥ずかしくて死ぬ」

 

「い、いいなぁ……。私も恋人とああいう事したいなぁ……」

「あたしもか、戒斗と……。って何言わせんのよ! きゃーっ! 」

 

「痛ぇ!? 急に何すんだお前! 」

 

周りを気にせずイチャつく彼らを見て、ギルベルトとリサは呆れながら笑った。

 

「ほっほっほ。若いというのはいいものですなぁ」

「全くだよ。ま、帰るとしますか」

 

先に車へ歩き出すグレイ達に感化され、ギルベルトとリサも歩き出す。

こうして、"なんでも屋アールグレイ"と"戦部探偵事務所"の共同戦線は終わりを告げた。




マスター強くし過ぎた感が否めません。
イメージはウォルターです、ヘルシングの。
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