なんでも屋アールグレイ-The Shadow Bullet-   作:「旗戦士」

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今回はあまり進まない回です。


order33.蒼き銃弾

<洋館・リビングルーム>

 

 

シノの全身から、血の気がサ―ッと引いていく。

彼女の倒れる様子がスローモーションのように映り、ヘルガは彼を庇うようにして倒れた。

 

ヘルガを撃った教団のメンバーはキッドの"コルトパイソン"によって頭を撃ち抜かれ、床に脳漿をぶち撒ける。

舌打ちしながらシンはその場を後にし、颯爽と屍を越えてリビングルームを出て行った。

 

「ヘルガ……ヘルガ!? 」

「おい、あまり揺らすな。背中を撃たれたんなら、応急処置してすぐに病院に連れてけば助かる」

 

「だが……!! 」

「だがも糞もねえよ白鞘。その女を死なせてぇのか? 死なせたくねえんなら言う通りにしやがれ」

 

キッドは撃たれたヘルガのセーターとコートを脱がし、シャツを破って傷を露わにする。

赤黒い銃創が大きく背中に空いており、シノとソフィアは思わず目を逸らした。

 

「おいガキ。死の芳香とハーヴェイを呼んで来い」

「えっ、でも」

 

「いいからさっさとしろ。死なせてぇのか? 」

「わ、分かりました! 」

 

言われるがままソフィアは先ほどの大広間へと戻る。

数十秒後にデイビッドに肩を貸されるグレイと、肩に包帯を巻いたハーヴェイが現れた。

 

「ヘ、ヘルガ……!? おい、誰がやりやがった!! 」

「そこで頭に穴が空いてる奴だ。白鞘を撃とうとしてな、それを庇って食らっちまったわけよ」

 

「今すぐ応急処置をしねえと……。傷の具合は? 」

「深刻だよ。傷口は消毒してねえ。ハーヴェイ、頼む」

 

「任せてください」

 

救急キットを取り出し、傷口をペットボトルの水で洗浄し、止血用のガーゼとパットを傷口に当てつつ包帯を巻く。

ヘルガの息が次第に荒くなっていくのを感じ、ハーヴェイは彼女を抱え上げた。

 

「急ぎましょう。辛うじてまだ息がある」

「シノ、車出してくれ。後部座席にヘルガを寝かせよう」

 

グレイの言葉にシノは頷き、洋館の門の前に"アウディA6"を停める。

長テーブルで即席の担架を造り上げ、ヘルガを車まで運んだ。

 

「へ、ヘルガさん……! 無事でいてくださいね……! 」

「デイビッド、ハーヴェイ、キッド。お前達はソフィアを頼む」

 

「任せときな、責任もって嬢ちゃんを送るぜ」

「俺ぁこの馬鹿を病院に連れてかなきゃいけねえ。後からついて行く、先に行け」

 

キッドはそう言いながらハーヴェイを彼の車に乗せ、デイビッドはソフィアを別の車に乗せる。

すまん、と一言告げ、シノ達はアンジュのいる聖フィリア総合病院までアクセルをフルスロットルにして向かった。

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<聖フィリア総合病院・集中治療室前>

 

 

 その後、急患としてヘルガは集中治療室まで運ばれ、グレイとハーヴェイは看護師に手当を受けるために普通の診察室へと消えていき、シノとキッド、デイビッドとソフィアのみが治療室の前で待たされる事となる。

精神的に参っているのか、シノは俯いてばかりであった。

 

「おい、白鞘。ちょっと喫煙室まで付き合えよ」

「……いい。お前一人で行って来い」

「連れねぇな、煙草吸わしてやるから来いよ。ほら」

 

キッドは無理矢理シノの腕を引き、喫煙室の扉を開ける。

幸い夜間なせいか、喫煙室には誰にもいなかった。

 

「一本やるよ。俺の特別製だぜ」

「俺は吸わん質なんだ……。心遣いは感謝する」

 

「ああもう、ごちゃごちゃうるせえ。とっとと吸え」

「……分かった。一本だけだぞ」

 

俯きつつシノはキッドから"アメリカンスピリット"を一本受け取り、口に咥える。

キッドは火の点いた金色のジッポライターを彼に手渡すと、煙を吐き出した。

 

「ゲホッゲホッ! こ、これはどうやって吸えば……? 」

「カカカッ、お前は本当に吸ったことねぇみてえだな。鬼のように恐ろしい白鞘が煙草の一本も吸えないとは。こりゃ面白い」

 

「……悪かったな。生憎俺は、自分の身体を徐々に傷つける趣味はない」

「そうかい。死の芳香にも言ってやんな」

 

咥えた煙草を右手で持ち、そのまま放置するシノ。

 

「お前、あの女がそんなに心配か? 」

「当たり前だ。彼女は俺の……俺の大切な人間の一人だからな」

 

「俺にゃ、まあ腕の立つスナイパーぐらいにしか思えねえけどよ。ま、そんなに大切ならしっかり腹据えて待ってやれや」

 

キッドは煙草を吸い、煙を吐き出す。

 

「そんなによ、急かしちまったら女は逃げちまうぜ? 」

「……あぁ、そうだな」

 

シノはもう一度煙草を吸い、煙ごと吸って咳き込んだ。

 

「そろそろあの馬鹿どもの治療が終わってるだろ。行くぞ、白鞘」

「俺に命令するな」

「へいへい」

 

二人は短くなった煙草を灰皿に捨て、再び集中治療室の前にあるベンチへ座る。

そこには肩を包帯で吊ったハーヴェイと松葉杖を立て掛けているグレイが既に腰を落ち着けており、彼らを含めたソフィアたちは二人の姿を見るなり自嘲気味に笑った。

 

「こりゃしばらく仕事できねえな。悪い」

「気にするな。俺の方こそ……彼女を……」

 

「シノさん、貴方は悪くありません。キッドから状況は聞きましたが、相当な手練れと貴方は戦っていたのでしょう。その場面の中で、周囲に気を配るのは至難の業だ」

「だが……」

 

グレイが立ち上がり、シノの肩を叩く。

 

「ヘルガなら大丈夫さ。アンジュは腕がいい。きっと上手くやってくれる。だからシノ、お前も胸をもっと張れ。せっかく生きてたのに、愛しのナイトがそんな悲しい顔しちゃダメだぜ? 」

「そうですよ。ヘルガさんは強い人ですから」

「…………すまん。男が人前で泣くものじゃ、ないのにな……」

 

シノは肩を震わせた。

拳を握り、静かに涙を流す彼の肩を、グレイとソフィアは優しく叩いてやる。

 

「おいおっさん、アンタの方は何ともねえのか? 」

「あぁ。そちらのハーヴェイとグレイの兄ちゃんのおかげで、五体満足と言ったとこだ」

 

「そりゃあめでたいこった」

「しかし、グレイの兄ちゃんを散々追いかけ回してたあんたがここまで味方するとはねぇ。正直、おっさんは驚きよ」

 

「はっ。俺ぁあいつと殺し合いてえだけだ。その為にゃまずはあいつが生き残らなきゃな」

「くくくっ、素直じゃないねえ」

 

なんでも屋アールグレイの三人を見つめながら談笑するキッドとデイビッド。

その瞬間、集中治療室の扉が開き手術着姿のアンジュが出てくる。

 

「アンジュ! ヘルガは、ヘルガは無事なのか!? 」

「銃弾は貫通してたし、傷も縫合できた。なんとか一命は取り留めたわよ」

 

彼女の言葉に、その場にいた全員が安堵のため息を吐く。

ただ、とアンジュは付け加えた。

 

「一つ、問題があるの。覚悟して聞いてちょうだい」

 

シノは無意識に息を呑む。

 

「彼女の右腕は、もう銃を握れないわ」

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<シカゴ郊外・地下教会>

 

 

 一方で、銃弾を摘出し終えたミゲルは拠点となる地下の教会へある人物を招いていた。

松葉杖を駆使し、椅子に座る男の元へ彼は歩み寄る。

 

「お待ちしてました、ラインハルトさん」

「これはこれは。一体どこの誰にやられたのかな? 」

 

灰色のスーツ姿のラインハルトは、今の彼の姿を見るなり驚いたように両手を広げた。

 

「いえ、まあ面倒な連中と一戦交えまして。しかし、あなたが気に掛けるようなことではありません」

「そうか。では、椅子に座るといい」

 

ミゲルは言われるがまま松葉杖を置き、ラインハルトの向かい側に座る。

 

「では、改めて。今回は我々"パンテオン教団"に投資いただき、誠にありがとうございます」

「いやいや。君たちのような裏社会のゴミを掃除するような方々に巡り合えて、私も嬉しいよ。我が"組合"も投資できて光栄だ」

 

二人はお互いに笑い合う。

 

「では、今回はどのようなご要望ですか? 」

「ふむ、そうだね……」

 

ラインハルトはアゴに手を当て、数分間考え込む素振りを見せた。

そして子供のように無邪気な声で、視線をミゲルに向ける。

 

 

「"なんでも屋アールグレイ"の連中、またはその関わりがある人間は誰でもいい。殺してくれ」





スナイパーキャラ、追加枠ありそうです。
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