おじさんがズレた原作知識で宇宙世紀を生き残るお話 作:ファットン
〜旧世紀の防衛組織のラッパの替え歌?〜
ムンゾ防衛隊、UC0062の独立宣言に合わせて創設された組織である。
防衛隊といえば聞こえはいいが装備は連邦軍のお下がりの払い下げ、まともな機甲戦力や航空戦力もなく、戦車は世代遅れの型落ちで台数も少なく、装甲車や迫撃砲などは一応連邦軍と同世代ではあるが進化の袋小路に入った50年選手だからであり当然防衛隊に回されるのは耐久年数の近い中古品ばかりである(因みにそれらの装備を提供した連邦軍は新型や新品を渡されるのでホクホク顔である)。
数だけは、駐留する連邦軍にある程度近いものがあるが、高度に機械化された、豊富な航空戦力を保有する連邦軍に比べれば軽歩兵主体の防衛隊はあまりにも頼りない。
その分教育は気合が入っている。
「貴様ら!何だそれは!それが不動(気をつけ)の姿勢かぁ!」
教官の下士官の怒声が響く。
軍事組織においてまず受ける教育、それは格闘でも射撃でも戦術でもなく、基本教練、歩き方や敬礼の仕方、不動の姿勢等の各姿勢の取り方である。
「右向け!右!」
号令に合わせて右を向く新兵たち、その動き方はまだぎこちなく、タイミングもややバラバラだ、その中で数名、号令があったにもかかわらず、姿勢を変えない新兵たちがいる、教官は姿勢を変えない新兵でなくその他の新兵に対し怒鳴った。
「貴様らぁ!徒手の時の号令は!右向けーー右だろうがぁ!」
そんなのすぐ覚えられるかよ!
心でそう毒づきながら教官の怒声を聞き流す。
幸いにも動かず怒鳴られなかったがそれは号令を聞き分けたからではなく教官の号令が早口過ぎて追いつけなかっただけである、おそらく他の新兵だって半数は号令が聞こえなかっただけでキチンと聞き分けたのは少数だろう。
「次は行進だ!ミハエル2等兵前へ!」
「はい!ミハエル2等兵!」
「ミハエル2等兵基準!」
「基準!」
最大限の大声で叫びミハエル2等兵は拳を高く掲げる。
「4列縦隊!あつまれ!」
その号令を聞き新兵たちが隊形を組む、先ず最右翼の列が前ならえをして、左の列が右に合わせる。
「前へーー進め!」
教官の号令に合わせて前進する。
「右!左!右!左!」
整列して歩く、一見して簡単に思えるがそれは学校教育で慣れてる一部の地域の考えだ、一見簡単な行動も先ず訓練して叩き込まなければならない、なぜならばそれが軍隊の各種行動の基礎になるからだ。
そして、日常生活も訓練になる、陸軍は海軍や空軍と違って活動拠点を基地(ベース)ではなく駐屯地(キャンプ)と呼ぶ、文字通り基盤となる地ではなくあくまで屯(たむろ)する場所である、速やかにその場所から移動し時に別の部隊に場所を申し送る必要があり、そのために清掃は強く言われる事がある。
今日は営内点検の日だ、新兵たちは自分たちの住む営内をこれでもかと清掃をして教官達の点検に備える、そして教官達が部屋に入ってくる、手には新品の白手袋をつけている、姑かな?
「何だこの清掃要領は!やり直せ!」
コンセント周りの埃(※1)を拭って教官が叫ぶ、野球部の監督と生活指導を担任する、体育教師の西田先生だってもう少し優しいぞ。
そう思いながらも素直にハイ!と叫ぶ。
服装だって煩い。
「何だそのシワは、アイロンキチンとかけたんか!」
それどう考えても朝服を着てからついたものでは?
新兵達の疑問をよそに教官が怒鳴る。
その近くでより大きな罵声が飛ぶ。
「指摘事項!ブーツのシワ!」
「「「??!?!」」」
新兵達はキョトンとする、教官達もドン引きしている、近くで行われている特殊潜入教育の服装点検だ。
「流石にブーツのシワは言わんからな。」
毒気を抜かれた教官がそう言った。
「貴様ぁ髭剃ったのか!」
「剃りました!」
「嘘を言うなぁ!」
毛深さに定評のあるホセ2等兵が怒られている、朝ガッツリ髭を剃ってたのを周りの新兵達は見ていたが、怖くて何も言えない、すまないホセ、後で売店でお菓子奢るから、そう心の中で謝罪してやり過ごす。
三日後ホセ2等兵の髭が指摘される事はなくなった、あまりの毛深さと伸びの速さを教官達が認知してくれたからだ。
そしてある日の事、比較的緩めの訓練日程で、早めに部屋に帰る事ができる日があった、金曜日にこれはいいねと和気藹々と営内に帰ると。
そこは修羅場だった、原型を留めないベッド、布を詰め込まれて直立する迷彩服、別の部屋には誰が持ち込んだのか、ダッ○ワイフが戦闘服を着てモデルガンを持っている。
そこへ教官がやってきて言った。
「大変だ!敵の特殊部隊がこの部屋を荒らして罠を仕掛けたらしい!この部屋を元の状態に復旧して安全化するまで外出はできないぞ!」
敵の特殊部隊は勿論教官達だ、言うまでもない、台風というやつか、従兄弟の自衛官が最近はないと言ったが遥かに未来のはずの宇宙世紀にあるぞ。
部屋を片付けてると青い顔をした教官が入ってきた。
「ヤバい!教育隊長がきやがった、俺たちも手伝うから急いで片付けるぞ!」
どうやらこの教育隊の隊長が観に来るようだ、確か名前はコンスコン少佐だったかな?恰幅の良い、優しそうな人だった気がする。
急いで片付けたが無論間に合わずコンスコン少佐(※2)には営内の状況を完全に観られた、ダッチ○イフのポーズやメーカー等を大声で説明させられている教官を見た時には、流石に可哀想だという気持ちとザマァという気持ちが混在したいた、後日教官に
「俺らの部屋も荒らさた。」
と写真を見せられた時には思わず笑ってしまった、やってしまった思ったが教官の大爆笑だったので多分これはその人の素なのだろうと思えた。
兵士の本領行軍訓練もある、20kgの背嚢を背負って20kmの距離を歩くのだ。
45分歩いて15分の休憩で1工程、3工程ほど歩いたら40分の中休止、飯時には60分の大休止がある、行軍といえば延々と重いものを背負って休みなく歩くイメージがあるが、行軍とは目的地への移動であり、そこからの攻撃ないし防御があることを考えれば、体力を維持した状態で移動する事が重要なのである。
そして訓練集大成の攻撃訓練だ。
敵の陣地に逐次火力支援と地形を利用して前進し、攻撃する。
教官曰く時代遅れな攻撃だが、各種基礎動作を一度に訓練できるからやるそうだ、今流行りの実践的な行動をするにも基礎能力が低い新兵には意味がないし、何より新兵達が実戦をする時にはそれも時代遅れになるだろうとの事だ、誰も今、連邦とやり合う事は考えてない。
(※1)コンセントの挿し口のカバーのところ、意外と埃が溜まりやすいので気になる人は周りの挿し口を調べてみよう。
(※2)本編時の年齢や階級、外伝作品のアシナガ描写、士官学校長をやっていたドズルの懐刀であった事などから、教育畑にも縁があったのでは?という人選。