おじさんがズレた原作知識で宇宙世紀を生き残るお話 作:ファットン
それに対して、豊富な人的資源を誇り、官僚国家である連邦は、軍備に合わせて人材の育成計画を策定する事で安定的で強大な軍隊を編成する事に成功していた。
〜UC0089当時の戦史教育において〜
防衛隊教育部の事務室にて
「彼の適正は衛生兵か、本人の性格や意思はどうなんだ。」
「衛生兵になるには十分な素養があるように見えます、本人も誰かを助けるのは嫌いじゃないとの事なので、衛生兵の教育過程に入れてあげて下さい。」
「安心しろ、衛生兵は幾らいても足りない、人的資源の少ないムンゾにとっては尚更だ。」
「彼は、宇宙船乗り希望です、適正検査の結果も良好、どうですか?」
「船乗りの適正も良いがそれ以上に技師適正が高い、性格診断も同じだ、優秀な技官候補を失うのは惜しい、本人の意思をそれとなく確認、いや誘導しておいてくれ。」
「了解です。」
新兵達の基礎教育過程が終わりに近づき、より専門的な過程への人員の割り振りのために、教育部隊の教官や防衛隊の人事系統の士官達は大忙しだ。
優秀な兵士を育てるのは時間と金がかかる、それを指揮するものを育てるとなれば尚更だ、かつての国家群を統合し、その後も長きにわたる平和の中で腐敗しながらも大規模な軍備を保有し、経験のある優秀な士官下士官を有する連邦軍と、発足したばかりで、政治活動家の民兵上がりのムンゾ防衛隊そもそもの基盤が違う、連邦との関係が悪化していく中で、限られた軍備事情をうまく切り抜けながら、大規模な軍備を整備する基盤を整えるには、かつて軍備を著しく制限されながら、短期間での再軍備に成功した中世の国家、ワイマール共和国に倣うのが1番である。
つまり軍のほぼ全ての構成員に階級以上の教育を施し、比較的少ない教育時間で養成が可能な兵士や若手下士官のみを育成するだけで大規模な軍隊を育てる手法だ。
ムンゾは重工業を担う事を計画して設計され、実際に各サイドの中でも隔絶した重工業生産能力を誇り、技術力も高い、しかし人口は比較的少ない、つまりいざ軍拡となれば各種兵器は早期に揃えることが可能だがそれを扱う兵士や、指揮する士官が足りるかどうかと言う問題が発生する。
つまりこの場で、どれだけ優秀な人材を、どれだけ多く抱えるかで将来的なムンゾ軍の編成がまるきり変わってしまうのである。
それゆえに、各職種での人材の奪い合いも時には発生した。
「コイツは将来の宇宙軍で引き取る!地上軍は手出しするな!」
「なんだと!まともな船も無いくせに人を抱えてどうするんだ!アヒルさんのボートにでも載っけるのか?」
「なにをぉ!」
「このやろう!」
陸でも宇宙でも潰しが効き、専門性が高い後方職種と違い、前線職種では“適正”は被る事もあり、陸か宇宙かで口論が頻発したのである。
宇宙も陸も前線指揮官を求める以上求める適正こそ同じであるが、教育を受けた後の完成系は全く別である。
士官の卵達は、優れた地上軍指揮官にも宇宙艦隊指揮官にもなれるが、一度どちらかのカラーに染まればもう後戻りはできない、両方に優れた能力を示す人間はいるかもしれないが、それは希少だ、なぜならば宇宙と地上では全く装備形態が違うのだ、陸でも宇宙でも活用できる“新規軸の兵器”が戦場を席巻し、その運用に精通していれば、様々な宙域や地形の特性を理解し、基礎的な戦術知識でマルチに活躍できる時代が来るかもしれないが、そんな夢のような兵器はディスプレイの向こう側の話でしか無い。
また宇宙か陸かで決まってもそこから、歩兵か戦車か砲兵か、宇宙船か宇宙戦闘機かで論争が始まる。
(全くどうにかならんものか)
防衛隊の教育部隊を預かり、日夜新兵の教育に携わるコンスコン少佐は頭を抱えた、だが口を出した所でどうしようも無い、誰も彼も自分の職種が1番なのである。
ならば自分も人材の確保に精を出すとしよう、尤も、こちらが求める人材はやや特殊なので運が良ければどこも唾をつけていない優秀な人材が手に入るだろう。
そう考えて新兵達の人事記録を見ていると、1人の新兵が目に止まった、他のサイドからの移住者で高い使命感を持っている、その上でヴァルター曹長の後援もある兵士、なによりも目を引いたのはこの一文であった「体力・技能ともに凡庸であるが、歴史の本を好んでよく読み、古代から中世にかけてのニホン史に明るく、物事を人に教えるのに長けた人材であり、兵士よりも学校の先生が似合うタイプである。」
(これだ!これこそが求めていた人材だ。)
コンスコンは、防衛隊に大きな影響力を持ち、ジオン・ズム・ダイクンを支えるザビ家の一員であるドズルから、ある依頼を受けていた。
将来的に発足されるであろう防衛隊士官学校の教官要員の発見、獲得
このイイダと言う隊員は、その士官学校において良い戦史教官要員になるだろう、なによりも体力面が凡庸なのも良い、陸の連中と奪い合いにならないで済む、宇宙船運用の適正もそこそこあるが宇宙の連中は陸との喧嘩で大忙しだ、このチャンス、活かすほかあるまい。
のちに将来的の戦史教官になれるかもと聞かされた飯田は感激した、彼ですらガンダムで本土決戦が行われない事は知っていた。
戦史教官なら安全に人生を終えられると安堵していた。
無論、その先にある大規模左遷イベントのことを彼は知る由もなかった。
正直コンスコンとドズルの関係については基本独自設定です、コンスコンがアレ程の階級と地位に上り詰め、ドズルからそれなりの信望を集めるのは、早い段階でから軍の成立に関わった事、ザビ家(ドズル)深い関係があれば説得力が出るのかな?と考えてみました。
また主人公の同期のホセくんは衛生兵、ミハイル君は晴れてシーマ様と同じ宇宙軍職種に転身できました。
次回以降はようやく主人公は軍務につきます、当然開戦はだいぶ先の話になってしまうのですが。