クソ雑魚メンタル皇帝   作:ウマ娘二次増えろ

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 完全見切り発車。好評なら続きます(ハーメルン構文)


第1話 皇道の始まり

 ウマ娘。

 

 それは、走る為だけに生まれてきた存在。

 別世界の華やかしく、名誉に彩られ、時に数奇な運命に翻弄された者達の名を受け継ぎ、この世界に根付いた少女達。

 

 彼女達の物語は、まだ誰にも分からない。

 

 

 □

 

 某年某日、千葉県、成田市。

 そこで、一人のウマ娘が生まれた。

 

 理想主義の社会的実力者夫婦の間に産まれた少女は、一言で言えば天才だった。

 才気に溢れ、その道のプロならば慧眼で以てこの少女を大器と断言すること間違いない。それほどまでの逸材だ。

 

 そのウマ娘の元に、日本トレーニングセンター学園でトレーナーを務める東条ハナは出向いていた。

 

「政治家と資産家の間に生まれたサラブレッド、ね。気性の荒い子じゃなければ良いけど⋯⋯」

 

 ウマ娘と言えど、本能とでも呼ぶべき勝利欲求を除けば、その精神面は人間と差程変わらない。

 甘やかされれば相応に育つ。聡明にも、暗愚にも。

 

 兼ねてより理事長が目をかけてトレセン学園に入学するという話ではあったのだが、問題が発生したために迎えに行って欲しい、というのが理事長の頼みであった。

 

 東条ハナは、これまで徹底した指導と情報戦によってウマ娘達を鍛え上げ、大きくはなくとも着実に実績を積み上げてきた辣腕トレーナーだ。

 そして、その努力の甲斐あって今回、トレセン学園理事長が入れ込むほどの原石の指導を任されることになったのである。

 

「御足労ありがとうございます。貴女が、うちの娘のトレーナーを務める東条ハナさんで相違ありませんね?」

 

 屋敷に着いて早々、母親であろう妙齢のウマ娘に出迎えられたハナは、客賓室に通されて母親と担当することになる少女を待った。

 政治家である父親は今日は居らず、母親のみの対応であることを謝罪された時は、そのあまりの貞淑さと厳格さに狼狽えてしまったが、この様子ならその娘である当の少女も心配は要らないだろう。流石に楽観的に過ぎる気もしたが。

 

 ふと、何の気なしに窓の外を見た時、

 

 

「⋯⋯っ!?」

 

 東条ハナは、そこに絶対(・・)を見た。

 

 

 草原と見紛う庭、トレーニングウェア姿で走る一人の少女。

 フォームは徹底されておらず、まだまだ発展途上の肉体ではある。

 しかし、その風格は既に一流のウマ娘にも届き得る何かを感じさせた。

 風を裂き、加速し続ける。ビルドアップ走をしているのだろうが、トレセン学園入学前のあの歳のウマ娘とは考えられない程に、その速度は速い。それどころか、まだまだ全開には至っていないようにも見えた。

 なんという少女だ。ハナは、空いた口が正しく塞がらなかった。

 

 堪らず駆け出す。

 あの少女こそが自らの担当することになる逸材であると、東条ハナは悟った。

 

 庭に出て、少女が大きく一周して戻ってくるタイミングを見計らって声を掛ける。

 

「ねえ」

「っ!? は、はひっ!?」

 

 綺麗な長髪を後ろで一本に縛った鹿毛の少女は、おっかなびっくりといった風に身構えて警戒を顕にした。

 走っている時の堂々足る様とはまるで別人のように思えるが、そういうウマ娘も世の中には沢山いる。

 

 問題は、この少女がその有象無象とは一線を画す存在であるということ。

 

「貴女、名前は?」

「⋯⋯シンボリルドルフ(・・・・・・・・)、です。あ、貴女は?」

 

『シンボリルドルフ』と名乗った少女は、所在無さげに垂れた三日月形のメッシュを指先で弄りながら、東条ハナを見詰める。

 臆病な性格のようだ。悪い子ではない。それが東条ハナからの印象であった。

 

「私の名前は東条ハナ。貴女の担当になるトレーナーよ」

「トレーナー、さん?」

「ええ、そうよ」

 

 差し出した手をおずおずと握り返したシンボリルドルフに微笑みかけると、ようやくハナを警戒するのを辞めたようだ。

 すると、二人の元へと母親のウマ娘が駆け寄ってくる。

 

「ルナ、ここに居たのね」

「お母様⋯⋯」

「もうご挨拶は済んだようですね。この方が、これから貴女を指導してくださる東条ハナさんよ。失礼の無いように」

「はい」

 

 シンボリルドルフと母親、二人の関係は容易に察せられた。

 臆病で引っ込み思案な娘と、厳しい母親。似た者夫婦なら、父親も彼女の教育にはうるさい質だろう。窮屈な思いをしているのは間違いない。

 だが、それに口を挟むのはトレーナーであり、教職員でもある東条ハナには出来ない。

 

 それに、トレセン学園は一部例外はあるが全寮制だ。

 これから先、家ではできない経験はいくらでも出来る。彼女にとっては良い刺激になるはずである。

 その才を潰すことだけは避けなくてはならないが、彼女たちならばきっと大丈夫だ。

 

 東条ハナは、これから先、シンボリルドルフとの栄光を目指す日々を想起して、柔らかく微笑んだ。

 

 彼女を日本一、何れは世界でも輝く存在にする。そう固く決意した。

 

 

 □

 

 ⋯⋯決意したのだが、

 

 

「む、無理ですっ!? 私に競走なんて、絶対に無理ぃ!」

「ルドルフ! 貴女、ここまで来たのに駄々こねないの!」

 

 

 制服姿で校門にしがみつくシンボリルドルフと、それを引き剥がそうとする東条ハナの姿が目撃されるのはその翌週のこと。

 

 ハナは、あまりにもあまりなシンボリルドルフの態度に、早くも決意が揺らぎかけるのであった。

 

 

 ───未来で無敗の三冠、そして往く往くは七冠を達成するはずの皇帝とトレーナーの物語は、こうして幕を開けるのであった。




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