クソ雑魚メンタル皇帝   作:ウマ娘二次増えろ

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 好評につき続きました。最後、アンケートあります。


第2話 未来の皇帝と未来の怪物

「ルドルフ、どうしてそんなに嫌がるの?」

「⋯⋯それは⋯⋯」

 

 トレセン学園入学式から幾日か経ったある日の放課後のこと、場所はチームリギルの部室。

 

 そこに肩を落として俯くシンボリルドルフと、彼女を説得しようと頭を働かせる東条ハナの姿はあった。

 入学式から今まで、ハナから逃走を続けていたシンボリルドルフはとうとう待ち伏せにハマって連行されたのである。

 心做しかルドルフの三日月のメッシュはここ数日で最も撓垂れていて、もはや三日月の形を成していない。

 彼女のコンディションはメッシュの撓垂れ具合で大体分かるということをここ数日で理解したハナは、今のルドルフがどれだけ嫌がっているのかも分かっていた。

 

「走ることは嫌いではないでしょう?」

 

 しかし思い出すのは、先日、ルドルフの実家へと赴いた時の疾走姿。

 あれだけの速さを持ったウマ娘が走ることが嫌いなどとは考えられない。

 何より、ウマ娘は走ることを第一に尊ぶようなそんな存在だ。少なくとも、これまでハナがトレーナーとして育成してきた娘たちは何れもそうであった。

 

 メッシュの毛先を指で摘んで弄っていたルドルフは、真っ直ぐに見詰めてくるハナの真剣な眼差しに手を止めて、観念したように口を開いた。

 

「⋯⋯確かに、走るのは嫌いじゃないです」

「なら「でも、競走するのは⋯⋯嫌いです」」

 

 ウマ娘なのに競争するのが嫌いだなんて今日日聞いた事のないハナは、その言い分に困惑を極める他なかった。

 そんなハナを他所にルドルフは付け加える。

 

「流されてここまできちゃいましたけど、元はと言えばトレセン学園に入学するお話だって乗り気じゃなかったんです⋯⋯」

「ルドルフ⋯⋯」

 

 そのハッキリとした物言いに、これは重症だと額に手を当てて天を仰ぎたい気持ちに駆られるが、ハナとてトレーナーの端くれ。こんな逸材を、はいそうですかと手放すことは出来ない。

 何より、彼女がいくつものG1を制し、歴史に名を残す様をこの目で見みたいと、その一助になりたいと切望すらしている。

 

 まずは彼女のメンタルを根本から⋯⋯は無理でもどうにかして競走できるくらいには強くしたい。

 何か良い策は無いか、そう思って思考を巡らせていると、

 

「ハァイ、トレーナーちゃん」

「マルゼンスキーか、どうした?」

 

 部室のドアを開けて、華やかな雰囲気の鹿毛のウマ娘が現れる。幾分か大人びて見えるが、歳の頃はルドルフと同じくらいか。

 マルゼンスキーと呼ばれたそのウマ娘は、首にかけていたタオルで汗を拭いながら口を開く。

 

「今日の分のトレーニング終わらせたわよ」

「お疲れ様、マルゼンスキー。調子はどうだ?」

「そうねえ⋯⋯まずまず、かしら。この感じなら今度の校内レースも行けそうよ」

「それなら良かった」

 

 彼女もまた、今年度からトレセン学園に入学したウマ娘の一人。

 今年度はシンボリルドルフ、マルゼンスキー、他にも数名のウマ娘がハナの指導するチームリギルへと加入することとなった。

 今、目の前で縮こまるシンボリルドルフ含め、何れも本格化前から素晴らしい素質を垣間見せる逸材ウマ娘達だ。

 特にマルゼンスキーは、入学間もないこの時期から既にトレーニングを始め、今度の校内レースにも呼ばれている。現在のトレセン学園生徒会会長である流星の貴公子(テンポイント)も出場するこのレースだが、ハナはマルゼンスキーを勝たせるつもりで調整している。

 マルゼンスキーもまた、それに応えようとトレーニングに励んでいる辺り、もう既に担当トレーナーと担当ウマ娘としての仲は構築されてきているのは間違いない。

 

「⋯⋯マルゼンスキー、手を貸してもらえるか?」

「何かしら?」

「⋯⋯?」

 

 来週からのマルゼンスキーのトレーニングメニューについて思考を向けたその時、ハナはシンボリルドルフ矯正の為の良案を思い付くのであった。

 

 

 □

 

「あ、あれ? あの、トレーナーさん⋯⋯?」

「走れ、ルドルフ」

「ふふ、なるほどねぇ⋯⋯」

 

 翌日、トレセン学園校内グラウンドにて、戸惑った様子のシンボリルドルフと、それとは反対に納得した顔のマルゼンスキーは体操着姿で並び立っていた。その横では、ストップウォッチ片手に二人の様子を見守る東条ハナの姿。

 当のシンボリルドルフは放課後、隙を伺って寮に帰ろうとしていたところで、唐突に麻袋を被せられて更衣室で着替えさせられ、そのままグラウンドに運び込まれた次第である為、まるで状況を呑み込めていなかった。

 

 そんなシンボリルドルフのことなど関係無しとばかりに、マルゼンスキーは準備運動を続ける。

 隣に立つ強敵に対して全力で戦えるように。

 

「シンボリルドルフ、だっけ? 貴女も結構やるみたいね」

「え、いや、私は別に強くなんて⋯⋯」

「そんな可愛らしくしゅんっとしてもダメよ。だって貴女───」

 

 

 ───負けるつもりないじゃない。

 

 

 そう言って、マルゼンスキーは闘志を垣間見せる。

 彼女が見据えるのは、臆病な少女のガワではない。

 本人の無意識下で武者震い(・・・・)として現れ出る、底知れない勝利への渇望のみ。

 

「⋯⋯え?」

「だから、私も最初から全力で逃げるわ。貴女に追い付かれないように」

 

 その会話を横から聞いていた東条ハナは、シンボリルドルフのしゅんっとへなる耳とは対照的に、しっかりと三日月の形を取るメッシュ(・・・・・・・・・・・・)を見ながらほくそ笑む。

 

 今ここに、将来の皇帝と怪物の初戦が幕を開けようとしていた。




 感想、誤字脱字報告、アドバイスたくさんください(直球)

続くなら?

  • ガッツリスポ根(長編)
  • あっさりテンポ良く(中編)
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