ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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1.部活中に弦巻こころが乱入してくるシチュ

 花咲川学園、新聞部の活動内容は至ってシンプルなものだ。校内の掲示板に作成した記事を掲載する。ただそれだけ。記事の内容は学園側の連絡事項や近辺の他愛ない情報に加え、学園内の面白いネタを書いている。大した活動内容でもないが、問題があるとすればその面白いネタがそうそう転がっていないこと、そして

 

「まさか今年も部員が俺一人とは・・・」

 

 この圧倒的な人手不足である。相談できる先輩もいないし、共に切磋琢磨できるような同輩もいないし、一緒に作業を手伝ってくれる後輩も入ってはこなかった。放課後の殺風景な部室でPCに記事を打ち込んでいるのはいつも俺、『今井 レン』ただ一人だ。

 取り敢えず紗夜さんが風紀強化週間のお知らせの記事の依頼をしてきたからそっちを片付けることにしよう。生徒会側が全校生徒に渡すためのプリントはすでに用意されているからそれを参考に組み上げればすぐに終わるだろう。

 問題は記事のネタの方だ。去年の1年間の活動で大抵のことはネタとして取り上げてきた。刺激には事欠かない場所ではあるがやはりネタ切れ感は否めない。

 なんか面白いことでも転がりこんでこないかな・・・

 

「レーーン!!遊びに来たわよー!!」

「うるせえ後にしろ。お前は呼んでねえ」

 

 転がり込んできたのは花咲川の異空間こと弦巻こころ。突発的な言動と持ち前の明るさで周囲を楽しませてくれるトラブルメーカー。話はちょくちょく通じなくなったりするがとてつもなくいいやつではある。

 頭の栄養を胸と運動神経に吸い取られてしまったのではないかと、たまに心配になる。

 

「てか、本当に何しに来やがったんだ。バンドの練習はどうした?」

「今日はお休みだから、心配はいらないわ」

「休みなら美咲のとこ行けよ。お前らいつもセットだろうが」

「そうしようと思っていたのだけど、「レンが最近元気ないから笑顔にしてあげて」って美咲が言ってたの。美咲はミッシェルと2人で大事なお話があるから、せめてあたしだけでもって」

「あの女、押し付けやがったな・・・」

 

 てか、嘘ついてまで押し付けてくるとかどんだけ嫌だったんだよ。いや、美咲のことだし嫌とかじゃなくて、単純に一人の時間が欲しかったとかそんなところだろう。全幅の信頼をよせる友人とは言え、あのこころを毎日相手取っているのだ。そういう日だってあるだろう。まあ、作業妨害の火種を許す気にはならないが。

 

「でも、美咲の言う通りだったわね。本当に元気がなさそうじゃない。」

「いつも通りだよ」

「いつも通りならなおさらダメよ。そんな肩に重りを乗せたような顔をして」

「お前の相手するぐらいなら重り乗せながら作業した方がまだマシだよ。」

「あら、どうして?」

「ぜひ、胸に手を当てて聞いてみてくれ」

「ええ。分かったわ!」

 

 そう言うと、彼女は俺の隣の椅子に座り、こころに向き直った俺の胸の真ん中にドヤ顔で右手を置いた。

 

「・・・それで、どうしてかしら?」

「いや、こっちのセリフなんだけど・・・」

 

 なにが「ええ。分かったわ!」だよ。全然分かってないぞこいつ。やっぱ常識をどっかに忘れてきたんじゃないのか?なんでこんな笑顔で俺の胸触ってんだこいつ。

 

「いや、俺の胸じゃなくて、お前の胸って意味なんだけど」

「ああ、そっちだったのね。」

 

 そういうと、彼女は空いている左手を使い、自分の左側の乳房に手を置いた。

 

「いや、お前!ホント何考えてんだ!!俺の時は真ん中に当てただろうが!」

「柔らかいわね」

「そのまま揉むな!男の前で自分の胸をワシワシ揉むな!!ツッコミ無視して自分の胸のポテンシャルを確認するな!!」

「あら?レンの胸の鼓動が速くなってるわ。顔も赤いし、どうしたの?」

「あーもう、この女はあああぁ!!!!」

 

 この女、これ全部を天然でやっているのだから困る。正直こんなに可愛い顔をした女の子に正面からボディタッチされるだけでもヤバいのに、その女の子が自分の胸を揉みしだく光景なんてものは心臓に悪すぎる。さらにその女の子の胸は大きい。

 なにキョトンとした顔してんだこいつ・・・

 

「こころ!もう俺が悪かった。そもそも「胸に手を当てて聞いてみろ」って言われて本当に手を胸に当てようとした時点で間違いなんだよ。お前には難しい表現だったと思う。だからもうやめろ!」

「あら、そうなの?ちょっと面白かったのに。」

 

 取り敢えずこころの暴走は止まったが、作業は欠片も進んでいない。さすがにこれ以上はダメだ。「元気がない」なんて理由で作業の手を休めることはできない。締め切りだってあるし、最近になって掲載した記事を読んでくれる生徒も増えたのだ。一人でも楽しみにしてくれる人がいるなら妥協はできない。

 俺の体調なんて二の次だ。

 

「でも、元気が無さそうなのは本当よ。目の下にクマもあるし、あなた、ちゃんと寝てるの?」

「まあ、確かに作業が夜まで残るから満足な睡眠は確かにとれてないけどな。作業が終わらないのは俺の要領の悪さが原因だし、そこに不満はないよ」

「でも、やっぱり心配だわ。あなたの記事は学校中を笑顔にしているのに、肝心のあなたが浮かない顔してるなんて嫌よ」

「別にいいだろ。新聞部の活動自体は俺も好きでやってるんだ。まあ、体調が崩れようが精神を病もうが記事は仕上げてやるから安心しろ」

「もう。記事の心配なんてしてないわよ。あたしや美咲が心配してるのはレン自身のことなのよ?」

「それこそ別にいいだろ。それで倒れたって俺の自己責任だ。お前らには関係ない。」

「関係なくないわよ!!」

 

「こころ・・・」

 

「関係なく・・・ないわよ・・・」

 

 どうやら思ってた以上に心配をかけてしまっているらしい。明るい笑顔が持ち味のこころがこんなにもしょんぼりしている。さっきの胸に手を当てるやり取りだって、こころは俺を元気にしたかっただけなのだ。

 本当にこころは優しくていいやつだ・・・。さすが世界を笑顔にしようとしてるだけある。

 こころを突っぱねて作業を再開することも出来なくはないが、それも酷だろう。どうせ今日はバイトも無いし、今回はこころに付き合おう。なんだかんだ言ってこいつとの時間は楽しいのだ。楽しくあるべきなのだ。

 

「よし。もういい。作業はやめだ。」

「えっ?いいの?」

「まあな。こんな美少女ほっといて部活に打ち込むのももったいないしな。せっかく来てくれたんだ。何か楽しいことでもしよう」

「レン・・・ええ!そうしましょう!」

「元気なやつだな。」

 

 

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「と言っても、どうしようかしら。」

「「楽しいこと」ってのはざっくりしすぎたな。うーん。何か俺の好きなものでも挙げていけばいいのか?でも好きなことは部活なんだよな。」

「好きなもの・・・そういえばレンはおっぱいが好きなの?」

「なんだお前、いきなり答えにくい質問を。絶対答えないぞ。」

「でも、あたしやほかの女の子と話す時とか、ちらちら見てたりするわよね?」

「えっ。マジかよ。俺そんなに見てるのか?」

「ええ。そしてちょっと見たかと思えば、歯の間に鶏肉が挟まったような顔をして目を逸らすの。好きなものなのに顔や目を逸らしたりする・・・これってツンデレって言うのよね。」

「いや、それは普通に自分で見ちゃってることに気づいて申し訳なくなってるだけというか・・・そうか。今後は気を付ける」

「気にしなくていいのに・・・。でも、レンはどうやったら喜ぶのかしら。うーん。そうだ。膝枕はどうかしら?」

「膝枕?ああ、そういや寝不足な俺を心配してきたんだったな。誘いは嬉しいけどこの狭い部室にそんなスペースは無いぞ。」

「残念ね。あたし、ハロハピのベスト膝枕決定戦で2位に選ばれてるのに」

「お前らハロハピで集まってる時ちゃんと練習してるんだろうな?」

「ちなみに1位は花音よ」

「うわ、めっちゃ想像できる。絶対寝心地いいじゃん。花音先輩の膝枕」

 

 しばらく話してると瞼が重くなってきた。思っていたより俺の体は休みたがってたようだ。張っていた意地も捨てて隣に腰掛けるこころに体重の何割かを預ける。

 

「レン・・・?」

「肩借りるぞ。」

「レン・・・ええ、おやすみなさい。」

「おやすみ。重くなったら起こしていいから。」

 

 こころの人肌の温もりに寄り添いながら、俺の意識はあっさり落ちた。

 

 

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「なにも完全下校時刻まで寝かせなくてもいいだろうに」

「可愛い寝顔だったわ。」

「はぁ。まあいい。とっとと帰るぞ。外も暗いし家までは送ってやる。じゃあ俺、鍵返してくるから」

「ええ。先に外で待ってるわね」

「ああ、それと・・・」

「?」

 

 今日の作業は進みこそしなかったが、頭は随分すっきりしている。結局はこころのお陰だ。

 

「ありがと。来てくれて嬉しかった」

「・・・!どういたしまして」

 

 やっぱりこころは笑顔が似合う。彼女との楽しい時間を過ごしながら、俺は帰路につくのだった。

 ちなみに部室で寝すぎて、いざ夜になると全然眠れなかったのはまた別のお話。




 もしも読みにくいとか感想あったら下さい。待ってます。

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