ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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83.湊友希那&今井リサ&今井レンが果たすべきことを果たすシチュ

 

【CiRCLEの自主練終わりにスタジオの鍵を受付へ返しに来た友希那とリサ】

 

「あ、友希那ちゃん、リサちゃん、ちょっと頼まれてもらっていいかな?」

「はい。いいですけど、どうしたんです?」

「いやー、実は今、端っこの小さなスタジオでレン君が自主練しててさ。6時には出ていくって言ってたんだけど、全然出ていく気配無くってさ。今ちょっと手が離せないから、代わりに見てきてもらえないかな?多分また夢中になって時間忘れちゃってると思うからさ」

「まったく本当に。手のかかる弟ね」

「こーら友希那の弟じゃないでしょ?」

「似たようなものでしょう」

 

 

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 ~~♪~~♪~~♪

 

 沈み込む。

 冴えた頭で、俺はどこまでも沈み込む。

 

「すぅぅ……ふぅ……」

 

 ~~~♪♪♪

 

 弾けるようになった複雑なフレーズと俺の呼吸音だけが、このスタジオを支配している。

 

「ふーっ……!」

 

 ~~♪♪~~♪♪

 

 刀剣の如く研ぎ澄まされた思考、それでいて高揚感と全能感によって昂った様相も見せてくる感情。そこから繰り出されるアップテンポの演奏。

 そうやって俺はのめり込み、沈み込む。

 どこまでも、どこまでも……。

 

「ふぅ──」

「ていっ!」

「うあぃ!!」

 

 ビックリした。

 自主練中、あまりにも調子が良かったので没頭していたら、横からチョップでも食らったのか、いきなり俺の演奏は妨害された。

 

「痛ってぇ!何すんだ!」

「何すんだじゃないでしょ!呼びかけても全然反応しないし、アタシたちの声を無視するなんてレンのくせに生意気だぞ」

「えっ……あれっ?姉さんに友希那さんも、なんでここに?」

「なんでも何も、予定の時刻直前なのにあなたがスタジオから出てこないからまりなさんから呼んでくるように言われたのよ。ほら、時計見てみなさい」

「えっ?うわっ、マジかよ。もうこんな時間。急がねえと!」

「レンってばどうしたの?そんなに慌てて、用事でもあったの?」

「急ぎじゃねえけどそんなところだ!40秒で支度しろ!」

「支度すんのはあんたでしょ」

 

 演奏が終わって早々、俺は2人に急かされながらCiRCLEを後にしたのだった。

 

 

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 CiRCLEから出た後、俺は用事を果たすために駅前まで向かっている。

 せっかくなので2人も着いてきて、そのまま歩きながら雑談タイムに入った。

 

「それにしても、レンってば夢中になったらあんな感じになるんだね。誰の声も届かないぐらいに集中するなんて、誰にでも出来ることじゃないよ」

「そうね。聞いた話だけど、酷い時は息するのも忘れるんでしょう?」

「ねぇレン、いつもあんな感じで大丈夫なの?集中できるのはいい事だけど、ギターに夢中で周りが見えなくなるなんて異常だよ?」

「うるせぇな。姉さんだって友希那さんに夢中で周りが見えてない時あるだろうが」

「待ってよ!今はそんなことないもん!」

「昔は……あったのね……」

 

 まぁ、相変わらずの通常運転、最近の俺たちはいつもこんな感じだ。

 ……この『いつも通り』を取り戻すのには、かなりの時間を使ったが。

 

「さてと、着いたな。じゃあ、今日はここまでだ。俺は用事があるから。またな」

 

 それだけを言って俺は荷物を下ろす。

 ギターケースのみならず、これだけの機材があると結構重たかったのだ。

 

「そういえばレン。あなたの用事って何だったの?」

「路上ライブ」

「「路上ライブ!?」」

「おう。結構色んな曲が弾けるようになったって、おたえにマウント取ろうとしたら路上ライブとかいいんじゃないかって言われてさ。せっかくだし挑戦してみるのも悪くないかなって。ほら、ちゃんと許可証も取ってるぜ」

「レンが路上ライブなんて……!」

「信じられないわね。あのレンが、それほどまでに弾けるようになってるのも、自分からライブをしようとしてるのも……」

「ヤバい友希那。アタシ、ちょっと泣きそう」

「待ってくれ。俺そんなに変なこと言ってるか?」

「「言ってる」」

「えぇ……」

 

 そんなに俺って音楽のイメージ無いんだろうか?

 時間あるときはセッションとかしてたのに。

 いや、最近は2人が忙しかったからしてなかったっけ?

 ライブも、『The CiRCLE』でやったあの1回以来か。

 

「ていうか、やるんならなんでアタシたちに言ってくれなかったの?」

「だってこれ、度胸試しみたいなもんだし、知り合い呼ぶのも違うだろ。前触れなくゲリラで始めるのがいいんだし」

「まぁ、言いたいことは分かるけど……」

「ほら、分かったら行った行った。そろそろしっかり準備するから」

 

 アンプ良し、マイク良し……。

 なんて確認をしていたが、2人は一向にその場を離れない。

 

「ねぇ、レン。良かったらなんだけどさ……」

「何?……もしかして見たい?俺の路上ライブ。自分で言うのもアレだけど、そんなに上等なもんじゃないぞ?」

「いや、見るのもいいんだけどさ……」

 

 そう言って姉さんは続ける。

 

「アタシも参戦したいって言ったら……どうする?」

「どうするって……いや無理だろ。プロがそんな簡単に路上ライブなんて、そもそも俺と一緒なのもマズいんじゃないのか?」

「いや、でもさ……」

「そうよリサ。何を言ってるの」

「そうだよ。友希那さんも言ってやってくれよ」

「私も混ぜなさい」

「友希那さん!?」

 

 気付いたら2人が俺の準備を手伝い始めていた。

 それどころか自分たちが自主練で使っていた機材までセットし始めた。

 

「待て待て待て待て……!」

「あぁ、そうだったわね。まだあなたのセットリストの確認をしていなかったわ。ほら、さっさと見せなさい」

「そうじゃないだろ。いいのかよプロが一般人と、それも同年代の男とこんなことして」

「何言ってんのさ?そんなのレンが女の子だったら解決する話じゃん」

「……なんて?」

 

 とか言いつつ、もう俺には察しがついていた。

 このバカ姉貴がどうしてカバンをゴソゴソし始めたのかも。

 

「じゃじゃーん!『どこでも女装セット』~~☆」

 

 ダッ!(レン、逃走開始)

 ザッ!(立ちはだかる友希那)

 

「どけよ友希那さん」

「お断りよ」

「『ゆきちゃん』って呼ぶぞ」

「呼んだらいいじゃない」

「くそっ、だったら力ずくでも退かせるからな。非力なあんたがパワーで俺に勝てると思うか?」

「そうね。確かに男子のあなたにそれをされたら打つ手は無い。でも、今回は絶対にダメよ。勝ち目が薄いからって、逃げる訳にはいかない」

「どんだけ女装させたいんだよ」

「別に女装をさせたくて止めてるんじゃないわよ。これはリサのため」

 

 攻防を繰り返してると、姉さんが申し訳なさそうに割って入った。

 

「ねぇレン、ライブしちゃダメ?」

「うっ……。その目はやめろ」

「アタシ、レンが音楽を好きになってくれて嬉しかった。セッションしたりして、あの頃みたいに3人で仲良くすることができて、今でも夢みたいな気持ちなの」

「姉さん……」

「レン。だから、あともう少しだけ、夢を見せてくれないかな?あの頃の夢の続き。『この3人で』ライブしたいの。この3人じゃなきゃダメなの。アタシたちはもうすぐで卒業しちゃう。それ自体は別にいい。でも、これからのアタシたちはプロとして更に時間は取れなくなる。だから卒業していない今、この瞬間にライブしたいの。

果たすべきだったこと、果たしたかったこと、それでいて果たせなかったこと、アタシはここで果たしたい。それは多分、高校生である今のうちにやらなきゃダメなことだと思うから」

「リサ……」

「それでもダメ?」

 

 夢か、夢と来たか……。

 

「姉さん」

「何?」

「メイクは頼んだぞ」

「レン……!」

 

 そう言われては仕方ない。

 そんな夢はさっさと現実にしてやろう。

 そんなことも出来ずして何が弟か。

 

 

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 マイクの準備を終えた辺りで、予定以上に見物客が集まっていた。

 まぁ、それも当然だろう。ここに居るのは最近になって名を挙げてきたRoseliaのボーカルとベース、そして……。

 

「あの子、誰なんだろう?」

 

 Roseliaと何の関りも無い、謎の短髪少女X。まぁ俺なのだが。

 

「それにしても俺がやろうとしてた曲、2人ともマスター済みとはな」

「やっぱり血も繋がってたら音楽の趣味も似るもんだよね。まさか全部やったことある曲だとは思わなかったけど」

「あなたこそ、こんなにも楽曲を習得しているなんて思わなかったわ。まだギターを始めて1年も経っていない筈でしょう?」

「これでもまりなさんやチュチュに鍛えられてるからな。ゾーンに入れば物覚えは早いぜ」

「本当にとんでもない変わりようね……」

 

 そして、そうこう言っている間にチューニングも完了した。

 

「つーか、本当にいいのか?女装してるとはいえ、天下のRoselia様が素人とこんなことして、怒られない?」

「私はRoseliaのボーカルとしてここに居るんじゃない。今の私は、あなたの幼馴染である、ただの湊友希那よ」

「アタシだって今はただのお姉ちゃんだし、気にしなくていいよ。まぁ、簡単に大目玉くらうこともないでしょ」

「ならいいけどさ……」

 

 いつも通りの空気感のまま、友希那さんをセンターとして、姉弟がその後ろで並び立つ。

 あまりにもあっさりと、名も無いバンドが結成された。

 

「いや、名も無いというのはダメね。せっかくあなたとライブをするんだもの」

「そうだね。Roseliaじゃないアタシたちとしての本気を、ちゃんと見せつけてやらなきゃだし」

「まぁ、その辺はそっちに任せるよ。バンドの結成はそっちが言い出したことだ」

「そうね」

 

 ライブで手を抜こうだなんてことはいかなる時も考えたりはしないが、今回は友希那さんと姉さんが隣に立つ訳だ。

 生半可な演奏は出来ない。

 しかし、不思議とプレッシャーで押しつぶされるような感覚は無い。

 寧ろ、出来ると思ってなかったこの2人とのライブが実現するとなって、楽しみな気持ちがかなり強い。悪くない緊張感だ。

 

「それじゃあ──」

 

 これは、Roseliaとしてじゃない2人の、もう1つの姿。

 これから始まるのは、そんな青薔薇の別側面。

 

 

「『Another Rose』、ライブスタートよ!」

 

 

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「それでは聞いて下さい。一曲目、『レジェンド』」

 

 『Another Rose』。そんなバンド名の名乗りから、このライブは始まった。

 見せつけてやるとしよう。

 これから実現する、もう1つの夢の姿を。

 Roseliaとしてじゃない、もう1つの青薔薇の姿を。

 

『行こうぜ 行こうぜ 未来の向こうまで 好奇心という羅針盤のまま』

 

 つーか友希那さんの歌声、演奏側で聞くと本当にヤバいな。

 音圧で俺のギターが負けそうだと思っちまう。

 このままだと……いや、違うな……!

 

 ~~~♪♪

 

「「……!」」

 

 簡単に置いていけると思うなよ歌姫サマ。

 気合だけならチュチュさんのお墨付きだ!

 

「(やるじゃない……!)」

「(あんたこそな!)」

 

 そうだよな。俺たちの音楽にお気遣いなんて要らねえよな。

 あんたはこうやってぶつかり合いながら、突き進んできたんだもんな。

 こうして一緒に音を重ねている今なら、よく分かるよ。友希那さん。

 

『やろうぜ やろうぜ 無謀な夢だって 新たな真実(リアル)にしようぜ

 新たな伝説始めよう』

 

 ボルテージを上げに上げたまま、1曲目が終了する。

 リハーサルすらやってないのに俺たちの息は完璧に合っていた。

 幼馴染だからか、それとも2人のレベルの高さ故か。

 

「ふぅ……!」

 

 それにしても流石Roseliaサマだ。まだ一曲目なのにこんな飛ばし方すんのかよ。

 

「あなたたち」

 

 ボーカルが振り返って、ギターとベースに一言。

 

「へばってないでしょうね?」

「「舐めんな」」

「OK.それじゃあメンバー紹介、行くわよ」

 

 休む間もなく観客も盛り上がりを見せてきている。

 

「まずはボーカル、湊友希那。そしてベース、今井リサ!」

 

 ~~~♪♪~~~♪♪

 

 えげつねえスラップベース、うちの姉がヤバいのは知ってたが、やっぱり隣で聞くとより凄みが伝わってくる。

 何が『ブランクあって初心者に近い』だよ。いい加減に無理あるだろ。

 こんなことされたら……。

 

「ギター、今井レン!」

 

 進化してるのはお前らだけじゃないってことを見せつけてやらねえとな!

 

 ~~♪♪~~♪♪~~~♪♪

 

「(それ、紗夜がライブで使うフレーズじゃん!いつの間に!?)」

「(教えてもらってるのが勉強だけとは言っていない!)」

「それじゃあこのまま2曲目、行くわよ!」

 

 まったく困ったお嬢様だ。

 俺はあんたのメンバー紹介で名前を呼ばれて、あんたと肩を並べてギターの演奏が出来てるだけでも、認めてもらえた気がして凄く嬉しいってのに、その幸せを噛み締める暇は無いらしい。このまま駆け抜けようってか。

 ヤバいな。超楽しい。

 面白くなってきやがった……!

 

『心を 全部 焼き尽くすような 絶望の隣で』

 

 こうして演奏していると、姉さんのベースの上手さもよく分かる。

 主張こそ激しくないが、抜群の安定感でリズムが支えられている。

 友希那さんが遠慮なく突き進める理由は、こういうところにもあったのか。

 ますます負けてられないな。

 

『白く 白く 真白(まっしろ)な未来が たったひとつ 僕達の希望

 今の僕には 闇雲なこのきもちしか ないけど』

 

 不思議なものだ。

 ついこの間まで微妙な仲だった3人、たった1人で音楽にのめり込んだボーカル、音楽から離れてしまったベース、音楽そのものを理解すら出来なかったギター。

 そんな3人が、ここでは確かに音楽で繋がっている。

 

『正解なんてひとつじゃない

 僕だけの明日を探してる ずっと』

 

 繋がる感覚。

 やっぱり、音楽は楽しい。

 

「すぅぅ……ふぅーっ……!」

「ちょっとレン、大丈夫?」

「あぁ、頭がドクドクして、みんなの音が鮮明に聞こえてくる。近年稀に見るベストコンディションだ」

「ふふっ、そうこなくちゃ困るわ。ただでさえあなたは、妥協無しの私達に食らいついてもらわなくてはいけないのだから」

「いいのかよそんなこと言って。そのまま食っちまうかもしれないぞ?」

「かかってきなさい。勝てると思うのならば」

「こーら2人でギラギラしないの……なに勝手にアタシのこと忘れてんの?」

 

 バチバチしてきた。だがこれがいい。

 昔馴染みによる遠慮無し、気遣い無しのぶつかり合い。

 よし、友希那さんの水分補給は完了したようだ。

 

「「「……」」」

 

 準備が終われば余計な言葉は交わさない。

 ボーカルが後ろを振り返って、また客席に目線を戻す。

 

「……☆」

「……☆」

 

 ベースのウインクに、そのままウインクを返して息を合わせる。

 立ち止まる暇など与えない。最後まで駆け抜けてやる。

 

 ~~~♪♪♪♪

 

『大義名分に痺れ切らした 苦渋の闇 怒号の渦の中

 始まりに孤独はつきものさ』

『Oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh』

 

 四面楚歌でも壁をぶち破る。

 声を重ねて、音を重ねて。

 

 ~~~♪♪♪

 

 咲け、青薔薇……!!

 

『Shiny sword my diamond!悲しみと願いの結晶体に

 僕ら使命を誓う それぞれの光を目指していく』

 

 ダイヤのように強く、気高く、美しく、それでいて決して手折られない青薔薇。

 『Another Rose』となろうとも、彼女たちの在り方は変わらない。

 

『何度だって立ち上がって僕は今日まで来たんだ

 It‘s time 一個の祈りが 革命の確証 さぁ輝け

 今を輝け Oh……!』

 

 ライブの最後の曲が終了した。

 彼女たちにとって、これは何の生産性も無いライブだ。

 音楽の頂点とこのライブは、何の関係性も持ち合わせていない。

 だが……。

 

「うっわ。凄い拍手されてる」

「当然よ」

「アタシら、最強だもんね☆」

 

 満たされた達成感が、そこにはあった。

 頂点とは違う、もう1つの夢が現実になっていた。

 

 アナザー・ローズ。

 3人の中で、小さな青薔薇が咲いた。

 

 

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「「「「アンコール!アンコール!」」」」

 

 撤収しようとしたら、観客からこんなことを言われた。

 

「予想外……」

「じゃないでしょ?ちゃんとライブ前にアタシたちで打ち合わせしたじゃん」

「そうよ。まさかレンがあの曲を習得してるとは思わなかったけど」

「そうだな。俺も今日がお披露目になるとは思わなかったよ。でもこれがベストタイミングだったんだと思うよ。紗夜さんと『交渉』した甲斐がある」

「交渉って?」

「スコアを譲ってもらう代わりに、つぐみの寝顔ショットを引き渡した」

「あなた、ちゃんと羽沢さんに謝るのよ?今度でいいから」

「分かってるよ」

 

 チューニングを済ませて、改めて2人を見る。

 

「ねぇレン、信用してないって訳じゃないんだけど、本当に弾けるの?」

「逆に聞くけど、ギターも歌も出来るようになった俺が、あの曲に手を出さないなんてこと、本気で思ってたのか?」

「それは……」

「前奏とかバカ難しかったけどな。正直言うと、ずっとやりたいと思ってたんだよ。あの曲カッケェから」

「不思議な気分ね。あなたとこの曲をやるなんて」

「そっちこそ大丈夫なのか?この曲やっても」

「さっきも言ったでしょう?今の私はRoseliaの湊友希那じゃなくて、あなたやリサの幼馴染としての湊友希那なの。だから……やらせて頂戴」

「同じく、アタシだって今はただのお姉ちゃんだからね」

 

 ならば、もう反対理由もあるまい。

 俺と姉さんがギターとベースを構え、友希那さんが観客に向き直る。

 

「それでは聞いて下さい。『LOUDER』」

 

 ~~♪ ~~♪♪ ~~~♪♪♪

 

 始まる。

 やっぱり俺は音楽が好きだ。

 この血液が沸騰するような感覚!

 音をぶつけ合って繋がる鼓動の高鳴り!

 

『いまだに弱さ滲むon mind未熟さを抱えて

 歌う 資格なんてないと背を向けて

 

 色褪せた瞳 火をつけた

 あなたの言葉』

 

「(友希那!)」

「(友希那さん!)」

「(行くわよ。2人とも……!)」

 

『Louder…!You're my everything

【You're my everything】

 輝き溢れゆく あなたの音は私の音でtry to……

 伝えたいのI'm movin' on with you

【movin' on with you】

 届けたいよ全て』

 

 声高に、歌う。

 これが、俺たちの音楽なのだと。

 

『あなたがいたから私がいたんだよ

 No more need to cryきっと』

 

 

 果たすべきことは、今度こそ果たされた。

 

 

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 ライブは終わり、帰り道は汗に濡れまくった肌に風が吹き抜けて気持ちよく、火照った体には丁度良かった。

 散々歌いまくったし、もうこれ以上の音楽はこりごり……なんてことはなく。

 寧ろ姉弟2人は熱気も収まらずに調子に乗っていた。

 

「『いつも通りの朝が』」

「『うわっ面で笑う』」

「『正体不明のままに』」

「『惹かれあう Mystery』」

「『はじまりも言わず』」

「『じっと潜んでる』」

「「『この町のどこか』~♪」」

 

 ♪ ♪ ♪

 

「「『だけど今日もジョジョに~♪ 文句なんか言いあって~♪』」」

「……」

「「『日常を踊る~♪ Crazy Noisy Bizarre Town~~♪♪』」」

「あなたたち、仲が良いのは勝手だけど、住宅街でしっかり歌うのはやめなさい」

「「あっ、ごめんなさい」」

 

 ちょっと調子乗り過ぎた。

 

「でも、そうしたくなる気持ちも分かるわ。私も今日は……本当に楽しかったから」

「友希那……」

「心残り……という訳でもなかったけど、この3人でライブが出来て、なんだかスッキリした感覚があるの。だから、本当にありがとう」

「友希那さん……」

 

 そんなの……

 

「お礼を言うなら俺の方だろ。俺も、このメンバーでライブが出来るなんて夢にも思ってなかったから」

「そんなこと言ったらアタシだって!いきなりワガママ聞いて貰ったんだし!」

「待ちなさいリサ!今は私が感謝を──」

 

 なんというか、3人でいつも通りにやろうとすると、どうにもしんみり出来ないんだよな。

 

「ふふっ、相変わらずだな。ゆき姉も、姉ちゃんも」

「えっ……?」

「待ってレン!今なんて──」

「さーてライブが予定外に長引いたせいでもう夕飯時になっちまった!クタクタで腹も減ったし、さっさと帰ろうぜ!」

「ちょっ、レン!ホントに待ってよ!」

「確かに、そろそろ帰らないと暗くなってしまうわね。久しぶりに家まで競走でもしましょうか」

「友希那まで!?そんなキャラじゃなかったじゃん!」

「そんじゃあ、よーいドン!」

「待ってってば~~!!」

 

 夕暮れに染まる住宅街。

 その片隅では、いい年した高校生3人が、子供みたいに仲良く走り回る姿があった。

 

 2人はいずれ卒業する。

 高校生でもなくなった彼女たちは、忙しくなって時間も無くなるのだろう。

 姉さんも、目の前に迫りつつある卒業に対して思う所はあるらしい。

 

 でも、大丈夫だ。

 今になっても、こうして追いかけっこが出来る繋がりの強さが俺たちにはあるのだから。

 一度離れたのに、俺たちはまたこうして集まれたのだ。

 この繋がりは、いつまで経っても変わりやしない。

 

 せめて今日のライブが、姉さんの心に残った何かを少しでもスッキリさせたことを祈るとしよう。

 たかが弟の俺に出来ることなんて、せいぜいその程度だ。

 

 ……応援してるからな。お姉ちゃん。

 

 

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 ちなみに3人の競走は、友希那さんが途中で盛大にすっ転んだことによって決着はお流れとなり、後は姉弟2人で友希那さんを家まで送ることになった。

 送り届ける際、久しぶりに友希那さんの親父さんとも話すことが出来たので。

 諦めたギターを再開したことや、今日のライブでLOUDERを演奏したことも、たくさん話すことが出来た。

 

「久しぶりに会えたと思ったら、こんなにも成長していたとは。背丈もすっかり大きくなって……。色々と嬉しく思うよ。ところで、今の服装も、その成長の過程で獲得した趣向なのか?」

「えっ?あっ!ヤベェ、女装してるってことすっかり忘れてた!2人ともなんで教えてくれなかったんだよ!……おい、違うからな!これはライブしたかったから仕方なく……っておい!やめろよ!理解のある目線で俺のこと見てくんじゃねえよ!」

「大丈夫。無粋に君を否定したりはしない」

「待ってくれよ!マジなんだって!本当に違うんだって!信じてくれよおっちゃん!!」

 

 今日という日は、本当に色々と心に残る1日となった。

 





 投稿数100話目、到達。
 そして今日は10月25日。リサ姉の弟くんの命日でもあります。
 後で黙祷を済ませておきましょう。

 前みたいに作者として会いに行ってもよかったのですが、まぁ、2回も3回も会いに行くものでもないですしね。
 100話目を飾るなら、やっぱりこの2人しかいないかなと、前のアンケートでも、リサ姉の話を見たい人が一番多かったですしね。

 ところで、Another Roseが歌っていた3曲、全て分かった人はいるでしょうか?
 全て分かったなら、あなたは相当作者と趣味が近いと思います。
 時間があれば友達になりましょう。

【お願い】
 せっかく100話目まで到達したので、今までに投稿した話の中で一番好きな話や、一番好きなシチュ、一番好きなシーンがもしあれば感想欄で教えてください。
 普段は感想を書かないって人も、今回だけでも書いてくれたら嬉しいです。
 無いなら無いで、話の感想だけ書いてくれても構いません。
 ちゃんと返信はするので。
 待ってます。

【ガルシチュこそこそ裏話】
 Another Roseに歌わせた3曲は、作者が個人的にRoseliaにカバーして欲しい曲を厳選した3曲。

 少し前に、TwitterのDMで読者様からつくしちゃんのお泊り会のシチュで出したアリゴのベーコン巻きを作ったという連絡が届きました。
 なんか嬉しかったです。

【感想欄】非ログインの方もどうぞ↓
 https://syosetu.org/?mode=review&nid=253491

【リクエストBOX】気軽にどうぞ↓
 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=264721&uid=303404

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