ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 今よりもずっと後ろ向きで、今よりもずっと卑屈で、感情のコントロールも苦手で、今よりずっと友達がいなくて、心の余裕も持ち合わせていなくて、まだ荒れていて、でもそんな自分を変えようと足掻いていた頃のお話。

 過去編です。
 終章より短く、終章より気合は無く、終章よりふざけます。


【投稿数100話突破記念】過去の小話 ~最悪の2人編~
小話0.変化とドン詰まりとマイナスな心情


 

 高校に入ってから、俺の生活は随分と様変わりした。

 ただでさえ中学時代に不登校を拗らせていた俺が学校へ行くようになったのも大概な変化だが、その後も部活と勉学に励むようになり、バイトにも精を出すようになり、ずっと疎遠になっていた姉や幼馴染とも和解した。

 そして何より──

 

『夢に向かって突き進むガールズバンドを応援したい』

 

 根暗で無気力な俺に、生きる目的が出来た。

 

 

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 だが、だからといって、10年以上も拗らせてきた精神面が簡単に前向きになった訳もなく、人間は簡単には変われない。

 頭は悪いままで、不器用なのも相変わらず。

 今も、こうして教室の中で回らない頭を使いこんでメモ帳と睨み合ってばかり……。

 あぁ……またフラフラしてきた。頭ぼーっと……。

 やっばい。人間の頭って、こんな重かったっけ?

 

「レン君。朝からずっとそうしてるけど、体調とか大丈夫?」

「牛込……?」

「本当に無理そうなら、保健室とか──」

「要らない。気にするな」

「でも」

「大丈夫。誰にも迷惑はかけない。これ以上はな」

「レン君……」

 

 ただでさえ中学時代に荒れまくっていた以上、もうこれは決めたことだ。

 

「私はレン君の仕事とか、全然分からないけど、ちょっとは力になれると思うの。お手伝いとか、軽い相談だけでも──」

「気にするなって。ほら、ただ席が近いだけの俺なんかに構ってないで戸山のとこにでも行って来いよ。バンドなんだから一緒に雑談する時間も大事だろ?」

「そっか……。うん。邪魔しちゃってごめんね(追い出されちゃった……。やっぱり頼りないのかな。私……)」

「だから気にすんなって」

 

 俺の取材対象はみんな凄いやつだ。そんな凄いやつらに俺なんかが干渉しすぎてもいい事は無い。

 ただでさえ、普段からわざわざ取材を受けて貰っているのだ。それ以外で邪魔や迷惑はかけられない。

 俺なんかの都合で、彼女たちの時間を奪うのはダメだ。

 せめて俺の問題ぐらいは、俺だけで解決しなければ。

 

 周りの人間は優しい人ばかりなのは分かっている。

 俺なんかを友達として扱ってくれるのだから。

 中学時代に感じられなかった人の温かさは、確かにある。

 でも、だからこそ気後れしてしまう。

 あの優しい人達の絆に、俺が干渉して良くないことが起こってもいけない。

 

 俺なんかが輪に入っていいのか。

 ここは、俺なんかが居ていい場所なのか。

 俺がここに居る意味は?

 

 ……俺は、生きててもいいのか?

 時たま気落ちすると、惨めになってそんな思考がグルグルする。

 誰かと仲良くなればなるほど、俺なんかが関わっちゃいけないのではないかと思えてくる。

 

「いや、ダメだ。そういうのが嫌で、そういうのから変わりたくて、俺はコレをやってるんだろ……」

 

 せっかく新聞部の今井レンとして認められてきたのだ。

 何者でもなかった無能の俺が、この活動をしてる時だけは必要とされるのだから。

 そう思って、俺は何かから足掻くように、またメモ帳に目線を落としたのだった。

 

 どん底の自分から変わるためにも、俺はもっと頑張らないといけないのだから。

 

 

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 夜の自室、俺の手によって記事が作られていく。

 作業のペースは相変わらず。

 ……これは徹夜コースになりそうだ。氷川先輩からは日頃の睡眠はちゃんと取るように言われているが、締め切りに送れるわけにはいかない。

 エナジードリンクだって心臓の鼓動がおかしくなるから苦手だが、それも仕方ないことだ。

 

「・・・」

 

 上り調子だった俺のメンタルは、最近になってまたネガティブになってきていた。

 記事に載った取材相手を見ると、ふと思う。

 『この人は凄い人だ』と。

 そして、最近になって凄い人ばかりと関わるようになったせいで、捨てたと思っていた卑屈さが、また現れ始めた。

 比較して、自分のダメな所を突き付けられるような感覚を覚える。

 凄い人の凄いところを知れば知る程、自分はグズでノロマなダメな奴だと思い知らされる。

 友希那さんや姉さんと音楽の話になって、まるで付いていくことも出来なかった、あの頃のような感覚。

 

「ッ……!」

 

 その感情から目を背けるように、作業に没頭する。

 バイトや記事の作成に集中している時だけは、そんな感情も忘れられる気がして。

 俺は逃げるように、自分を追い込むようになった。

 明らかに過労もいいところだが、生きる目的も無くなって死んだように生きるよりマシだ。

 こうやって命を削ってる時だけは、生きてるって実感できる。嫌なことも忘れられる。

 

「レン、今いいかな?」

「姉さん?……何か用か?」

 

 遠慮がちに、姉さんが扉から顔を覗かせた。

 

「ちょっと、頑張り過ぎじゃない?」

「いくら頑張ってても足りないから大丈夫だ」

「大丈夫じゃないって。無理しないでよ」

「無理でも何でもやらないと、俺みたいなヤツはみんなと同じ場所には立てないんだ。死ぬ気でやって、身を削りまくってやっとトントンなんだ」

「そんなことないよ。そもそもレンは1人で頑張り過ぎなんだよ。そうだ。何かあったらアタシが手伝うよ。取材とか話聞くのも──」

「ふざけんな!!」

 

 気が付けば、立ち上がって壁に拳を打ち付けていた。

 

「コイツは俺の問題だ!この仕事まで奪われたらもう俺に居場所なんか無えんだよ!」

「奪うって、アタシはそんなつもりじゃ──」

「そんなつもりじゃなくてもそうなるんだよ!死ぬ気で縋り付いてる存在意義を!俺より何でも出来るからって踏みにじるな!」

「そうだとしても頑張り過ぎだよ!」

「頑張ってなきゃ俺に価値なんか無いだろうが!あんたには一生かかっても分かんねえよ!頑張ってなきゃ誰からも必要とされない奴の気持ちなんて!」

「レン……」

「もう嫌なんだよ!誰からも認められずに目的も無く生きる孤独なんて!やっと周囲から認められてきたんだから邪魔すんじゃねえよ!」

「……」

 

 姉さんの悲しそうな表情を見て、ハッとなった。

 

「悪い。姉さん、待ってくれ。俺は……」

「アタシこそ、ごめん。お茶入れてくるよ。そのぐらいならいいよね?」

「そんなの自分で──」

「いやいや、アタシもキッチンに用事あるし、ついでだよ。ついで」

「……ごめんなさい」

 

 姉さんは扉を閉めて出て行った。

 せっかく最近になって話せるようになった姉さんに、突き放すような言動を取ってしまうぐらいに心には余裕が無かった。

 あぁ、また迷惑かけてる。

 

「相変わらず最低だな。俺……」

 

 夜は更けて、そのまま日が昇るまで、俺は作業を続けた。

 窓から入る光を確認して、『こんな生活してたら、身長とか伸び悩むんだろうな……』なんてことを考えながら、俺はPCを閉じて、俺は朝の支度を始めた。

 寝る暇は無かったが、授業中に寝る訳にもいかない。

 休み時間にちゃんと寝られるかがカギになりそうだ。

 

 誰にも迷惑をかけてはいけない。

 

 ただでさえ、底辺の人生を送ってきた以上、あの場所で存在したければ、底辺の人間であることを悟られてはいけない。

 自信なんざ無くても、せめて誰かから必要とされたい。

 誰からも必要とされない地獄は、もう嫌なのだ。

 やっと手に入れた存在意義を、俺はもう手放したくない。

 人と深く関わることに気後れはするくせに、俺は誰とも関われなくなる孤独が、たまらなく怖かった。

 

 そんな自分の弱さから逃げるように、俺は飲み損ねていたエナジードリンクを飲み干し、途絶えそうな意識を気合だけで繋ぎとめて、家の扉を開けたのだった。

 

「この居場所を守るためなら、俺はなんだってやるぞ……。ドブ水だってすすってやるし、誰よりも強くなる……」

 

 みんなの友達でいられるような、そんな相応しい人間に変わりたいのに、俺の心は、いつも何かに追い詰められたままだった。

 

 

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『大雨の中、ひとりの旅人は、屋根の下から止まない雨を見ていた。』

 

『もうひとりの旅人は、大雨に濡らされながら、雨空の隙間に差す、一筋の陽光を見ていた。』

 

 ……俺はどっちだ?

 





 いきなり始めます。しばらくお付き合いください。
 自己満で、あらゆる読者の思いやりや配慮を無視してやりたくなりました。
 あらゆる場所に散りばめられた他作品ネタとジョジョネタを、君はどれだけ見つけられるかな?

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