ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 今回の章はあの子との過去編です。


小話1.朝と事実と最悪の2人

 

 あたしの高校生活は、バンドを組んでからかなりハチャメチャなものにはなったが、環境そのものは至って穏やかだ。

 1年A組の可愛い友人との関係だって上手くいっている。

 

「りみ、いる?ノート返しに来たんだけど」

「あ、美咲ちゃん。わざわざ朝一で来なくてもゆっくりで良かったのに」

「いやいや、こういうのはしっかりしないとでしょ。だから、はい」

 

 帰されたノートを笑顔で受け取るりみ。

 可愛い。いつもこころやはぐみに振り回されて疲れているあたしにとってりみの小動物みたいなスマイルは癒しだ。

 あたし、もしかしたら自分のクラスよりA組の方が落ち着いて──

 

 ガラッ

 

 いや、やっぱりそんなことはなかった。

 開かれた教室の扉の方を見ると、この教室の平和な雰囲気には似合わない男子生徒が現れた。

 

「げっ、新聞部の不良男」

「あぁ?なんでここにハロハピの地味女が」

 

 今井レン。

 目の下のクマも相まって目つきの悪い不良。

 周りの子たちは悪い人じゃないとか言ってるが、あたしは騙されない。

 こいつは新聞部に所属してはいるが、ガールズバンドしか追いかけてない時点で下心が丸見えのやらしい奴だ。

 みんな女の子なのに、危機感も警戒心も無さ過ぎる。

 

「あたしはりみにノート返しにきただけだっての。それなのになんであんたの顔なんか」

「こっちだって朝っぱらからテメェの顔なんざ見たくねえよ。事あるごとに取材の邪魔してきやがって」

「ハロハピの細部まで踏み込ませる訳ないでしょ。あんたみたいな野蛮な奴に」

「はっ。記事のネタにもならない地味女の分際で偉そうに。ただのお手伝い如きが調子乗ってんじゃねえぞ」

「そもそも、こころや他のメンバーはあんたみたいな不良と違って、みんな本当にいい子なの。あんな人を疑うことも知らないような優しさにつけ込むって言うならそうはさせない」

「あぁ?」

 

 こんな奴、ハロハピに近づける訳にはいかない。あたしが守らないと。

 あとシンプルにこいつと話してるとイライラしてくる。

 

「チッ。お前ホント、喋れば喋るほどシンプルにうぜぇな。面白みもねぇしよ」

 

 ただでさえ喋ってるだけでも野蛮な奴だが、コイツの蛮行は知っている。

 中学の頃の話だが、駅前のファミレスの前で不良生徒4人とコイツが言い争っていたのを見たことがある。1人だけ制服も違って目立っていたからよく覚えている。だから高校に入って最初にコイツと話してからこのことはすぐに思い出せた。

 そして最近でも、バイト先のライブハウスで、客を相手に『なに笑ってんだ』などと言いがかりをつけて怒鳴り散らしたという噂も耳に入っている。バイト中にこんな暴れ方するなんてハッキリ言って頭おかしい。

 それで実の姉や幼馴染にも避けられてると聞く。

 

「ホント、こんな人間性でリサさんの弟とかありえない」

「テメェ、次その言い方しやがったら女相手でも本気でブチのめすぞ。俺は百合に挟まる男と、会話で姉貴を引き合いに出してくる奴が一番嫌いなんだ」

「したきゃすれば?」

「上等だよ。吐いた唾飲むんじゃねえぞ」

「ちょっと2人とも!喧嘩はダメ!」

 

 お互いにヒートアップしてきた辺りで、大人しくなっていたりみが割って入った。

 これ以上はやめよう。この子に飛び火してもよくない。

 

「……命拾いしたな」

「は?まさかホントにブチのめそうとか思ってた訳?これだから不良は野蛮でイヤなんだよ」

「はっ。骨無しチキンが」

「やっぱ買おっかな。この喧嘩」

「レン君!美咲ちゃんも!」

 

 あぁ、ダメだ。危ない。巻き込まないって決めたばっかりなのに。

 

「分かった。今日は気分悪いし帰る。りみ、ノートありがとね」

「うん。それじゃあね」

「二度と来んじゃねえぞ」

「あんたに指図される覚えはない!」

 

 最後までムカつくアイツの言葉を最後に、あたしは扉を閉めて出て行った。

 朝から早速疲れた。

 出会った以上、あいつとは必ず言い争いになる。

 おかしな話だ。確かにあたしは不良は苦手だが、わざわざ争ったりはしない。寧ろ怖がったり避けたりしそうなものだが、何故だかアイツだけは許せないのだ。

 事あるごとにアイツは取材だのなんだの言ってハロハピに近付いてくるし、同じ空間に居るだけでイライラする。

 言い争っては止められて、睨み合っては何も解決せずに離れる。

 相互理解など不可能。唯一分かり切った事実は一つ。

 

 あたし、奥沢美咲と今井レンは、花咲川でトップクラスに仲が悪かった。

 

 

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「なんだったんだよあの女。お陰で朝からストレスの嵐だ」

「レン君、なんていうか、その……相変わらずだね。美咲ちゃんとは」

「ハロハピのお手伝いだかなんだか知らねえが、記事のネタに出来るほどの面白みも無いくせに部活にまでケチつけてくる時点であいつはもう害悪なんだよ」

「そんなに言わなくても……美咲ちゃん、いい子だよ。仲良くできない?」

「ホントに『いい子』ってやつならそもそも『不良』だなんて言いがかりつけて喧嘩なんて売ってこないんだよ」

 

 まぁ、中学の経歴とかも振り返ってみたら不良なのは普通に事実だが。

 

「とにかく、あんな暴言女と仲良くなんて絶対無理だ」

「暴言だったらレン君もだよ。せめて謝るぐらいは──」

「あんな奴に頭下げるぐらいなら舌嚙んで自害する方が500倍マシだってんだよ!」

「レン君……」

 

 牛込の前の席に座りながら、説得を振り切り、ため息をこぼす。

 朝から精神に悪いことが起きて参ってしまいそうになる。

 奥沢美咲、アイツは俺の敵だ。

 事あるごとにアイツは突っかかってくるし、同じ空間に居るだけでイライラする。

 

 俺とあの女は分かり合えない。その事実だけが分かり切っていたことだった。

 

 

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【とある怪盗の独り言】

 

「まったく、こころにも困ったものだ。いや、困った子はあの2人の方なのかな?まぁ、我が好敵手の頼みならば仕方ない」

 

 ・・・

 

「さぁ行こうか。仕事の時間だ」

 

 大切なものを盗み出すべく、怪盗は動き出す。

 

「受け取りたまえ。怪盗ハロハッピーからの予告状だ!」

 

 

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 これはまだ、2人が学園中で『花咲川最悪のコンビ』と言われていた頃のお話。

 





 次の更新は明日。

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