『体育館に来て欲しい。君たちに特別なショーを用意した。
今回はゲームや争いじゃないから、気軽に楽しんでいってくれ。
少しでも君たちの心身を癒すものになったら幸いだ。
怪盗ハロハッピー』
「これが……」
「ハロハッピーなりの、あたしたちへのお詫び、なのかな?」
体育館の扉を開けると前の方に2つのパイプ椅子が準備されていた。
疲れてたのでこれ幸いと椅子に腰かけた瞬間だった。
~~~♪♪
~~~♪♪
随分と楽しげでポップな演奏が流れてきた。
この雰囲気は……。
「2人とも~~~!ハッピー!ラッキー!スマイル~~!イェーイ!!」
「弦巻!?」
「怪盗さんからの挑戦状クリアと、2人の仲直りを記念したスペシャルステージよ!楽しんでいってちょうだ~~い!!」
「……あぁ、なるほど」
弦巻の掛け声と共に、ハロハピのメンバーが次々と現れてくる。
横の美咲が、随分と落ち着いた様子でそう呟いた。
「なるほどって?」
「マシーンといい、グラウンドの特別フィールドといい、やっぱりハロハピ絡み……というか、弦巻家絡みだったんだなって」
「そういえば、確かに1人で用意するには大がかりな仕掛けだったな。俺とお前が協力して戦ったように、怪盗もハロハピと協力していたんだろうな」
「(まぁ、その怪盗もハロハピのメンバーだからハロハピと協力って表現はおかしい気もするけど……というか薫さん、さっきまでハロハッピーの姿で捕縛されてたのにステージで何事もなかったかのようにギター弾いてる。泥だらけだったはずなのに。凄いなあの人。というか観客視点でミッシェルを見るのもなんか新鮮だな。中の人は黒服さんかな?)」
「美咲……?」
「いや、なんでもないよ。もしかしたら、あたしたちの仲があまりにも悪かったから、ハロハピが色々考えて、ハロハッピーが動いて、それであたしたちが協力しなきゃいけない状況を作り出して、2人で話し合う機会を作りたかったのかなって、そう思っただけ」
「協力しなきゃいけない状況?」
「最初の謎解き。あれがよく考えたら最初の布石だったんだ。仲の悪いあたしたちは最初から共闘なんてあり得ない。だから第三者が介入して仲裁できるタイプのゲーム内容だったんだ」
「確かに。日菜さんがいたから場の均衡は保たれてたわけだし、なんなら謎解きも得意だし」
「それに、あのクラスには他にもいるでしょ?あたしたちのケンカも仲裁できそうな懐の深い先輩がさ」
あぁ、そういえば居たな。
まずはハロハピ所属で美咲を抑えやすい薫先輩。そして……
「……姉さんか」
「うん。面倒見がいい上に、あんたの身内。あたしたちのケンカを仲裁するならもってこいの人物。あの時は運悪くリサさんはいなかったけど、取り敢えず仲裁されながら、あたしたちは謎を解いた。そして次のステージへ移動する頃には『一緒に行動することが当然』って空気にいつの間にかなってたんだよ。言い争いながらも、何故かあたしたちはお互いを排斥しようとはしなくなってたんだ」
……うわ、マジだ。言われてみると。
謎解きが得意な日菜さん、美咲を抑えやすい薫先輩、俺を抑えやすい姉さん。
後者の2人は不在だったが、揃っていたら侮れない布陣だ。
「そしてパンチングマシーンもそう。2人で協力しなきゃクリアできない条件にすることで、またもあたしらは協力した。それで最終ゲームも、勝つことが出来た理由は協力にあった」
「なるほど。共通の敵を持って協力する過程こそが、怪盗やハロハピの目的だったのかもな。もしかしてあの怪盗、そこまで悪いやつじゃなかったのか?」
「そうだね。本当に悪い人だったらりみもデータも無事じゃなかったでしょ。寧ろ感謝してもいいぐらいじゃない?あの過程が無きゃ、あたしらは自分達が最強のコンビだってことに気付けなかった」
「そこまで言うか?」
「うん。あたしもあんたもさ、お互いの顔を見るとイライラしてたじゃん?でもそれはイライラしてたんじゃなくて、普段出せないような自分が出せるぐらいに相性が良すぎたから、2人で一緒にいることで気が強くなって、そのエネルギーが2人の間でぶつかり合ってたんじゃないかって思うの」
言われてみると、ある意味コイツには何の気遣いも無く自分をぶつけていた。
「だから、そのエネルギーを協力して1つの目標にぶつけることが、怪盗を倒せた理由にも繋がったんじゃないかって。ほら、あたしたち、性格も結構似たもの同士じゃん?……考えすぎ?」
「いいのかよ。最強コンビの相手が俺なんかで。所詮俺なんて、ヒーローにもヒールにも染まれなくて、結局何者にもなれなかった半端者だぜ?」
「卑屈になって予防線張ろうとするのもあたしそっくりだね。まぁ、確かにあんたはヒーローじゃない。白馬の王子様でもなければ、漫画の主人公でもなくて、全てを動かすカリスマでもない」
そんな俺に対して、それでも美咲は笑って続ける。
「でもレンは……いい奴だ」
「……!」
「ヒーローじゃなくてもさ、あんたはあんたでいればいいんだよ。あたしはそれでいい。寧ろそれがいい」
「……そうかよ」
「だからもっと自信持っていいんだよ。あんたは色んな人から必要とされる器なんだからさ」
「そんなことないよ。まだ迷惑だってかけるし……まだ俺はそこまで自分を信じちゃいない」
「仲間なんだから迷惑ぐらいかけなよ。そっちが必要としてくれなきゃ、こっちだって頼れないじゃん」
「……!」
「あんたがこれからどう成り上がっていくかは分からないけど、自信が欲しいならもっと色んな人と関わりな。人の絆は
「俺なんかに頼られても、みんな嫌な気持ちになるだけだろ……」
こんな性格だから俺は孤独になりやすいのだが、それでもこの陰鬱さは簡単には消えない。
「……恥ずかしいからあんまり言いたくないけど、作戦会議で『半分力貸せよ。相棒』って言ってくれた時あったじゃん?」
「あったな」
「あの時あたし、めちゃくちゃ嬉しかった」
「……!」
「誰かに必要とされて悪い気なんてしないって。必要とされる人間になりたいなら、あんたも他人を必要とするべきだよ。自分が必要とされない寂しさは、あんたが一番分かってるでしょ?」
「そうだな……」
そう言った辺りで、美咲に背中を叩かれた。
「胸張って生きてりゃいいんだよ。あんたが欲しがってる自信なんて、後でいくらでもついてくる。忘れそうならあたしが思い出させてあげる。それでいいでしょ?」
「……お前、ホントいい奴だな」
「ふふっ、そうなの。凄いだろ」
あぁ、自分自身が誰かに認めてもらえるのは、やはり嬉しいものだ。
「(もしかしたら薫さん、あたしたちの仲だけじゃなくて、自分に自信が持てなくて、誰にも頼れなくて部活に依存するしかなかったレンの状態も、どうにかしようとしてたりしたのかな?りみ辺りの相談だったら乗ってそうだし、肉親のリサさんともクラスメイトだし……なんて、考えすぎか)」
「美咲?」
「ごめん。なんでもないよ」
美咲が笑って応えてから、ステージが更に大きな盛り上がりを見せていた。
「さ、折角の特等席だし、今はライブを楽しもうよ。至近距離で聞くこころの歌声は……ちょっと凄いよ」
「そうだな。音楽の難しい話はよく分からないけど、せっかくだし楽しませてもらうとするか」
普段はステージ裏で見ることがほとんどのライブだが、やっぱり客席から見るのはとても楽しい。
そして、横に知った顔がいる状態で見るライブは、もっと楽しいものだった。
「なぁ、美咲」
「んー?」
「俺と友達になってくれよ」
「やだね」
・・・・・・
・・・
「あたしたち、とっくに友達じゃん」
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ハロハピのライブを楽しんで体育館を出ると、日は既に沈みかけて夕方に差し掛かろうとしていた。
今は外の空気を吸いながら、いつの間にか元に戻ったグラウンドを、ただぼーっと眺めている。
雨上がりの空は澄み渡っていて、見てるだけでも気持ちが良かった。
「終わったな。ようやく」
「そうだね」
「今度、取材させろよ。ハロハピのこと」
「いいよ。今まで邪魔して悪かったね」
「いいや。俺こそ今まで酷いこと言いまくって悪かったよ」
何もなくなったグラウンドを夕焼けが赤く染め上げていく。
これ以上は、暗くなってしまって良くないか。
「じゃあ、そろそろ帰るか。せっかくだしこのあと寄り道してラーメンでも食おうぜ」
「その前に花咲川まで戻って荷物取らないとでしょ?手ぶらでここまで来ちゃってるんだから」
「忘れてた……」
「あと泥だらけの制服もどうにかしなきゃだし、ラーメンはその後だね。心配しなくてもあたしはどこまでも着いてくよ。ゲームに引き続き、ね?」
「ありがとな。よし、いい加減腹も減ったしさっさと戻って──」
「そこの2人!少し止まりなさい!」
「「うあぃ!?」」
景気よく帰ろうとしたその時、すぐ後ろから呼び止められた。
そして振り返ると、そこに居たのは教師と思われる大人と……。
「姉さん?」
「やっほー☆来てるんなら言ってくれればいいのに」
「いや、あの時は姉さんいなかったし……」
「ところでリサさん、いきなり呼び止めて、何か用事ですか?」
美咲がそう聞くと、姉さんの隣にいた教師は冷静に言い放った。
「あなたたちですね?2年A組の教室の扉を入室許可も無く破壊したという、花咲川の制服を着た2人組の生徒というのは」
「「あっ……」」
「レン~。アタシ、クラスの友達みんなから『リサの弟ヤバ過ぎない?』って問い詰められてすっごい大変だったんですけど~?」
「いや、だってそれは怪盗が……」
「そもそも蹴り壊したのはレンだからあたしは関係無いっていうか……」
「言い訳無用です。話は職員室で詳しく聞かせ──」
「だが断るッ!」
ダッ!
こうなったら取るべき行動は1つだ。
「逃げるんだよォ!美咲──ッ!!」
「ああっ、なんだこの男ーー!」
ダッ!
とか言いつつちゃんと自分もダッシュで逃げようとする辺り、やっぱり美咲もいい性格してると思う。
「ああ!こら待て弟!まだ説教は終わってないぞ!」
「あなたたち、止まりなさい!!」
「止まれと言われて止まるバカがいるかってんだ!ずらかるぞ美咲ィ!どこまでも着いてこーい!!」
「もうあんたになんか二度と着いてくかぁ──ッ!!」
この日、街中には羽丘の生徒と教師に追いかけ回される花咲川の仲良しコンビが各地で目撃されたらしい。
ちなみにこの事件は花咲川の方へきっちり連絡が回ったらしく、しばらくして俺たちは羽丘の方へ土下座することになった。
「すいませんでした(おのれ怪盗ォ……!!)」
「すいませんでした(なんであたしまで……)」
そして扉は弦巻家が直してくれたらしいので、そっちの方にも土下座することになったのは、また別のお話。
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もちろん俺は光を見続ける。
大雨の中でそれがどんなに眩しすぎるものであっても、俺は恐れず進みたい。
進める自分でいたい。
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「レン君、おはよう」
小柄な体躯の『友達』が、俺に朝の挨拶を交わす。
だから俺も、目を見て真っ直ぐに挨拶を返す。
気後れや遠慮なんてものは、コイツには要らない。
「よぉ『りみ』。朝から元気だな。ちょっと取材で手伝って欲しいことがあんだけど、昼休みは暇か?ちょっと今回は人手が要るんだよ」
「……!」
そう言われて相手はちょっと面食らった表情をしている。
俺が誰かを頼るのは、そんなに珍しいのか?
しかし、その表情はすぐに明るいものへ戻った。
「うんっ!いいよ!ポピパの子たちも呼んでいい?」
「うぉっ、マジかよ。助かるぜ!そんじゃあ早速──」
怪盗騒動が終わると、平穏な日常が訪れた。
日常は特に変わり映えしなかったが、俺から周囲への関わり方は変わった。
ここから始まるのは、そうやってガールズバンドと関わっていく話。
俺はみんなと、少しだけ仲良くなった。
遠慮がちにしか話せなかったみんなと、初めて友達になれたような気がした。
まぁ、こんな感じで、現在の、余裕のある優しいレン君になっていくんですね。
ルパン3世のテーマとリコリス・リコイルのEDを聞きながら執筆してたらあんな感じの終わり方になりました。
どうでしたか?上手くまとまったかどうかは読者様に決めて頂くとして、私はふざけ倒したので結構楽しかったです。逆に言うと私しか楽しくなかったと思います。
おふざけを入れ過ぎて話の深みが薄味になったのは反省ですが、自己満足で好き勝手に書いてる作品なので、まぁ、ご容赦を。
初めて描かれた大荒れ期のブチギレン君はどうだったでしょう?
皆さんは、私のおふざけをいくつ、見つけられたでしょうか?
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