あと、ちょくちょく「読みやすい」という感想を頂くのですが、そんなに読みやすいですかね?なんか嬉しいな。
今回はリクエストのりんりんを書いてみました。
俺は勉強が得意ではない。要領が悪く、物覚えも悪い俺にとって勉強は苦行でしかない。なので俺は定期的に有咲や紗夜さんに図書室で勉強を見てもらうことがある。特に紗夜さんは勉強のやり方そのものまで教えてくれたりするので本当にお世話になっている。
今日も本当は紗夜さんに見てもらう予定だったのだが・・・
『レンさん、大変申し訳ありません。今日はどうしても外したくない用事ができたので、本日の勉強会は参加できません。代わりの人を寄越したので、ちゃんとその人の指示に従うこと。いいですね?』
とのことなので、図書室に紗夜さんは来ない。それにしても「外せない用事」ではなく「外したくない用事」か。・・・日菜さんとのデートだろうか?
そんなことを考えながら、俺は代わりの人を待ったのだった。
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「で、今日は燐子さんが来たと」
「うん。氷川さんからやる予定だった範囲は教えてもらってるから。問題集を解いて、答え合わせして解説、でいいんだよね?」
「はい。いつもはそんな感じです」
「そうだね。じゃあ、早速始めようか」
「了解っす」
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燐子さんの指示のもと、俺は問題集に取り掛かっていたのだが、あまり集中できずにいた。
要領が悪いのも理由の一つだが、今回はそうじゃない。寧ろ定期的に紗夜さんから基礎を叩き込んで貰っているお陰で問題自体はほとんど苦戦せずに済んでいる。紗夜さんのことだから、飛び入りで巻き込ませた燐子さんに負担がかからないように解説が要らないような範囲を選んだのだろう。
ではなぜ、俺の集中が途切れるのか。それは・・・
「・・・?」
可愛らしく首を傾げる燐子さんと、その顔の少し下を見て確信する。
「ふぅ・・・」
この人、ちょくちょく机の上におっぱいを置いて休憩しているのだ。
いや、大きいし重いんだろうけどさ・・・。もう少し自分の前にいる後輩の性別を意識して欲しい。有咲のお陰で耐性はついてるとは言え、有咲に匹敵する大きさの胸が机に置かれている状況に何も感じずにいられるほど、俺は悟った人間じゃない。あまり自分の先輩に対してこんなことを言いたくはないが・・・ちょっとエロすぎる。
「あの、レン君?あんまり集中できてない感じだけど、大丈夫?」
「いやっ、大丈夫っすよこんなの!いやー、手ごわい問題だなぁ・・・」
「その割に、解く時はスラスラ解いてる気がするけど」
「・・・気のせいっすよ」
「なら・・・いいんだけど・・・」
本当によく見てるなこの人。気を付けないと。まったく何をやっているんだ俺は。女子は視線に敏感だって有咲も言ってただろうが。
そもそも俺の頭の悪さが原因で巻き込んでるのにこんな集中の欠き方なんて失礼過ぎるだろ。わざわざ、放課後の時間まで割いてもらってるのに・・・。こんな問題集なんてさっさと片付けて、燐子さんを帰してやらないと。
そう思い、両手で頬を叩いて気合を入れる。燐子さんが驚いているのが見えたが気にしない。俺は再び問題に向き直る。
「レン君、解くスピード上がったね。やっぱり集中できてなかったんじゃ・・・」
「なんか調子上がったんです。それだけですよ。ホント」
「ふふっ。そっか・・・。でも、本当に勉強苦手なの?見た感じ・・・ちゃんと解けてるけど・・・」
「紗夜さんがしっかり教えてくれてるお陰ですよ。本来なら勉強みたいな細々した作業はやろうって気すら起きません」
「細々した作業が苦手なのに・・・新聞部に入ったの・・・?」
「まぁ、取材は楽しいですから。取材内容まとめる作業は今でも嫌いですけど。上手くいかないと徹夜だし。」
「でも・・・苦手なことにちゃんと向き合えるのは立派だよ。」
「そんなこと言ったら、あんたが生徒会長になった理由も似たようなもんでしょうが」
「今でも、無理してる部分はあるけどね・・・」
会話は弾むが、手のスピードは決して緩めない。静かな図書室には俺たち以外の生徒はいない。さっきの気の散り方が嘘のように集中できる。今なら何があろうと心を乱されない自信がある。
こうして、俺は今まで以上のスピードで問題集の問題を片付けていったのだった。
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「うん。ちょっとしたケアレスミスはあるけど、これなら大丈夫そうだね」
「そりゃどーも」
なんだかいつもよりも頭を使ったせいか、どっと疲れた気がする。
「時間余っちゃったし、お話でもしようか。」
「ですね。なんかゆったりしたい気分です」
「じゃあ、そんなレン君にはホットココアをあげちゃいます。頭を使った後は、糖分を取らないとね」
「・・・いつの間に」
買ってから時間が経ってるのか、少しぬるくなっている。いつもは遠慮の一つぐらいはするが、今回はありがたく頂く。
机の上にぐでっと突っ伏しながら脳に糖分を送っていると、燐子さんが口を開いた。
「ねぇ、レン君・・・」
「何です?わからない問題ならありませんよ。」
「いや、違うの・・・。そう言えば気になってることがあったのを思い出してね」
「気になってること・・・?」
「そう。レン君のことについて」
「はぁ・・・」
「レン君って最近・・・」
「・・・」
「女の子の胸を見なくなったよね?」
「・・・別に、普通でしょ」
燐子さんには申し訳ないが、今更この類の追求で俺の精神は揺らいだりしない。こころが気づいていたり、有咲にバレていたりして耐性はついたのだ。優雅に渡されたココアを味わう余裕もちゃんとある。
「下心が無いのはわかってるし、見ないように努力してることもわかってた。でも最近は、まず見てすらいないように思えて・・・」
「そもそも俺って小柄であざとい感じの子がタイプなんですよね。子供っぽくて妹感がある感じの・・・。だから、お姉さん系の象徴たる大きな胸なんて、もう逐一見たりなんかしないって言うか・・・あくまで視界に入ってるだけですよ」
まぁ、小柄な女子がタイプなのは事実だし、即席の言い訳としてはかなり上出来だろう。俺はココアを飲み終えて空き缶を置いた
「じゃあ、どうしてさっき私の胸を見てたの?」
「えっ・・・?」
「レン君は私の胸から目を逸らす時、バツの悪そうな顔で、顔がちょっと赤くなるの。気付いてない?」
「赤くなってるのは・・・知らなかったです」
「さっきもそうだったから分かりやすかったよ?」
「・・・あの、もう、ほんっとすいません」
「いや、いいんだよ。寧ろ前よりそれが減ったから気になったの」
「減った理由は言えません。取り敢えず、心の変化があったとだけ」
有咲の立場もあるし、女子の胸に耐性がついた詳しい理由は伏せる。しかし、有咲にあそこまでやってもらったのに燐子さんに気付かれる始末。もう、俺の意思じゃ限界があるのかもしれない。仲のいい人をそんな目で見たくはないのだが・・・
「燐子さん、俺はもうダメかもしれません」
「レン君・・・?」
「俺だって頑張ってる方なんだ。だってそうでしょう?そもそも男は本能として女性を求めてしまうものなんです。それも人類が二足歩行を始めるよりも前からプログラミングされてずっとだ。この何万、何億年に渡って築き上げられてきた強大なものを俺はずっと敵に回してるんだ。
確かに俺はさっきあなたの胸に目を奪われた。それはもう変えようが無い事実だ。でも、その後の数分は見向きもしなかったんですよ?あのたった数分の間、俺は確かに人類が築き上げた強大な摂理に抗ったんだ。ここ最近なんてもうずっと抗い続けている。でも、だれも理解なんてしてくれないんだ。俺が変態なのはもう変えようの無い事実だ。
でもこれだけは言わせて欲しい。俺は・・・いや、女性の胸への視線をセーブする全ての変態たちは、「変態」というレッテルを背負いながら、それでも勝ち目が無い強大な敵に挑み続ける・・・
哀しくも孤独な
涙ながらに、俺は真剣な表情で言い訳を並べる。正直「本能」なんて単語を持ちだした時点で言い訳でしかないのだが、もう色々限界だった。いつの間にか大きな胸に目を奪われて、そんな自分に気付く度に罪悪感を抱いて・・・。
女性陣が妥協して割り切ってくれているのは有咲から聞いているが、やはり全く気にせずにいられる訳じゃない。
「レン君・・・」
「燐子さん、さっきも言いましたが俺はもうダメです。俺は——」
「レン君・・・イイコト、しよっか・・・?」
「はい?」
そう言って燐子さんは向かいの席から俺の隣に移動した。普段は弱々しい印象のある人だが、今は有無を言わせぬ圧を感じる。
「背中、向けて」
「・・・はい」
俺は背中を向ける。なんだかゾワゾワして怖い。
「じゃあ・・・失礼するね」
その言葉の後、俺の背中を二つのふにっとした柔らかい感触が襲った。燐子さんは俺の背中に胸を押し当て、そのまま俺にバックハグを仕掛けたのだ。
「あの、・・・まずいですって燐子さん。俺なんかにこんな」
「・・・嫌だった?」
「最っ高です」
胸の感触もだが、俺を包む全てが柔らかい。心が温かくなる。
「レン君は女の子に気を遣おうとし過ぎなんだよ。レン君が女の子をやらしい目で見てくるような人じゃないのはみんな知ってるよ?私はもっと自然体なレン君とお話がしたいな」
「・・・そう、ですよね。結局、無駄な努力だったんでしょうか」
「ううん。気持ち自体は嬉しいからちゃんと受け取るよ。このハグはそのご褒美だから」
「ご褒美・・・ですか。ハグだけのつもりなら申し訳ないですけど、胸、当たってますよ?」
「当ててるんだよ?ああ、それとも・・・」
燐子さんは俺の耳元に口を近づけ、そっと囁いた。
「もっと・・・押し当てて欲しい?」
「・・・!」
「どうして、欲しい・・・?」
脳が溶かされる。そんな感覚が確かにあった。
「燐子さん」
「どうしたの?」
「ぎゅって・・・して欲しいです。燐子さんの温もりをもっと感じたいです」
「ふふっ。いいよ・・・」
そう言って燐子さんは抱く力を強めた。胸はさらに押し当てられ、燐子さんとさらに密着する。
抱き返すことは出来ないが、首に回された燐子さんの腕をそっと握ることは出来た。
「贅沢なご褒美ですね。気遣いの気持ちだけでここまでしてもらえるなんて」
「まぁ、実を言うとそれだけでやってる訳でもないんだよ?レン君には日頃からお世話になってるし」
「そこまでのこと、燐子さんにしましたっけ?」
「してくれてるよ?生徒会の仕事を手伝ってくれたり、ライブのお手伝いをしてくれたり、後は・・・私と仲良くしてくれたり」
「燐子さんと仲良くしてるのは俺だけでもないでしょ」
「確かにそうなんだけど、ここまで砕けた話し方が出来るのはあこちゃん以外だとレン君だけだよ?」
「流れがそうだっただけでしょう。姉さんと被るから「レン」って呼んでいいってなった後、年下だから敬語も要らないって言って、それで・・・」
「うん。そして仲良くしてくれて・・・一緒に買い物に付き合ってもらったこともあったっけ?とにかく、そうゆうことも含めた感謝のハグだから」
燐子さんはまた俺を抱く力を強めた。
「面と向かってだと恥ずかしいから、なかなか言えないんだけど・・・」
「この状態も結構恥ずかしくないですか?」
「顔を見られないなら、まだマシかな」
「そう、ですか」
「うん。だから、いつもありがと・・・」
そして燐子さんは、また俺の耳元に口を近づけて囁いた。
「大好きだよ」
鏡は無いが、俺の顔が一瞬で赤くなったことは分かった。
「レン君、心臓すごく鳴ってる・・・」
「燐子さん、顔、見たいです」
「やっ、今は・・・恥ずかしいからダメ・・・」
「さっきの、もう一回言って欲しいです」
「もうっ。ホントに恥ずかしいからダメ・・・!」
俺はそのまま、帰る時間になるまで燐子さんのバックハグに拘束され続けたのだった。
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「思ってたより、遅くなっちゃったね・・・」
「ですね。もう暗いですし、早く帰りましょう」
「うん。じゃあ、またね」
「はい、また明日」
帰り道の分岐から、燐子さんの後ろ姿を見送る。・・・いや、そう言えば忘れていた用事が一つあった。そう思い立って、俺は燐子さんを呼び止めた。
「燐子さん!」
「レン君?どうしたの?」
すぐに振り向いてくれたので、さっさと用事を片付ける。
「大好きです!!」
「ほあっ!?」
バックハグという体勢のせいで拝めなかった燐子さんの照れ顔をバッチリと確認し、俺は家路についたのだった。
「読みにくい」や「良かった」などの感想や意見、また「このキャラを見てみたい」、「このシチュが見てみたい」などのリクエストがあれば受け付けていますので、気軽にお願いします。
もう既に出してるキャラのリクエストでも構いません。ただ、未登場のキャラがいれば優先順位は若干下がります。
後、「この話が一番好き」などの感想も待ってます。参考にしたいので。
感想、一言でも書いてくれたら嬉しいです。待ってます。
恋人じゃない距離感で言う「大好き」って、付き合って相手のありがたみが薄れた状態よりも破壊力ありますよね。