新聞部の取材範囲は花咲川の外にも及ぶことが多くある。外部にある話題の物を花咲川の生徒に伝えるための記事も書くことが多いので、花咲川の人間だけが取材対象になる訳ではない。薫先輩なんかは本当によく取材させてもらっている。
今回は休日を返上して取材だ。姉さんが用意してくれた朝食で活力を得た後、俺は愛用しているカメラやレコーダーなどの荷物を取材用のバッグに詰め込み、取材場所へと足を運ぶのだった。
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チュチュのマンションはかなり大きい。ただでさえ広い生活スペースに、スタジオまであり、家具はどれも真新しい印象を受ける。
そして今回の取材にあたり、チュチュのマンション内で撮影用のスペースを設けてもいいと家主本人から申し出てくれたのだ。
今回の取材は撮影の方がメインになるので本当に助かる。家主の懐の広さに感謝をしつつ、俺は取材相手に向き直った。
「今日は取材を受けてくれてありがとう。」
「いえいえ。こちらこそ、遠い場所から来ていただいてありがとうございます。お茶、入れてきましょうか?」
「いや、お気遣いなく。早速取材したいから、撮影スペースまで案内してくれないか?」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
パレオ、RASのキーボードメイドであり、髪の毛をパステルカラーのツートンに染めたツインテール美少女だ。彼女は演奏もさることながら、ファッションセンスにも目を見張るものがあり、メンバーやファンからも絶賛の声を受けている。
そして、今回の取材ではそのファッションセンスに焦点を当て、彼女がどのような服装を着こなし、どのような点にこだわってコーディネートを行っているのか、それを撮影会のような形で取材していく。RASのファンは花咲川にも多く、パレオのような女の子らしく可愛さに振り切ったファッションに憧れを持つ生徒は多い。いい記事になる筈だ。
「そう言えば俺、肝心の家主に挨拶とかしてないけど、勝手に入っていいのか?」
「はい。チュチュ様は作曲があるので、撮影、取材は勝手にやっておけとのことです。終わったら報告するように言われていますが、これは取材後にパレオがやっておきますので問題ありません。レンさんは帰りにチャットで一言お礼のメッセージでも入れて頂けたら十分です」
「わかった。じゃあ、そろそろ取材を始めよう」
「はい。撮影して、着こなしのポイントやこだわりを答えて、また別の服に着替えて、撮影して・・・これの繰り返しですよね?」
「ああ。他にも別のことを質問したりするかも知れないけど、基本はそんな感じだ。」
「では、早速着替えてきますね。あっ!パレオの着替え・・・覗かないで下さいね?」
「覗かねえよ」
「とか言いつつそのカメラでパレオの無防備な下着姿を・・・」
「撮る訳ないだろうが!さっさと着替えてこい!」
「はーい♡」
まったく出鼻から調子が狂う。
それにしてもパレオの下着姿か・・・。やっぱり下着もパステルカラーなんだろうか?優しいピンクや水色なんかは彼女によく似合うと思う。デザインもきっと可愛らしい感じなんだろう。しかも彼女はスタイルが良い。パステルカラーのパンツから彼女の細い脚がスラッと伸び、可愛らしいデザインのブラが年相応の小振りながらも膨らんだ乳房を包む。高めの背丈に、整った顔立ちによる大人らしさのギャップもあり、背徳的で煽情的な・・・
バチンッ!!
途中で思考が犯罪者みたいになりそうだったので自身で両頬をぶっ叩いた。
「何考えてるんだ俺は。相手は中学生なんだぞ・・・」
「レンさん!お待たせしましたー!」
「ん?おぉ・・・!」
振り返ると、そこにいたのはキャラクターの描かれたシャツにピンクのパーカーを羽織り、フリフリのミニスカートを着こなしたパレオだった。
「お前・・・可愛いな」
「マッスーさんみたいなこと言わないで下さいよ。でも、良かったです。お気に入りなので」
「ああ、早速撮影に移ろう。」
撮影は凄く順調に進んだ。あらかじめポーズは何パターンも考えてくれていたらしく、パレオはモデルさながらの手際で悩殺必至のポーズを決め込んできた。
この中学生、カメラ慣れし過ぎだと思う。
「なぁパレオ、その着こなしのポイントとかってあるか?」
「はい。今回はいつもよりもあざとい感じを演出してみたんです」
「あざとい感じか。確かにピンクのパーカーってそんな印象あるな」
「色合いだけじゃありませんよ?大きさももワンサイズ上のものを着ていますから」
「それ、いいのか?サイズ合ってないんだろ?」
「着る分には問題ありませんよ。それにダボッとした上着を着るだけで小柄で小さい印象を与えることができますから。更にあざとい感じが出ます」
「なるほど、上着1つでここまで計算されているのか・・・」
「そして最大の利点がこちらです。」
パレオはそう言うと長い袖を更に伸ばし、その手を軽く握りながら口元に近づけた。そう、萌え袖×ぶりっ子のポーズだ。俺はすぐさまシャッターを切った。
「お前、なんだその反則的なポーズは!あざとい!あざと過ぎるぞ!」
「あら?お嫌いでしたか?」
「大好きに決まってんだろ!」
カメラに対して上目遣いやウインクまでサービスしてもらい、上機嫌でシャッターを切りまくった。なんだろう、モデルさんの撮影とかやってるプロのカメラマンがハイテンションでシャッターを切る気持ちが今ならわかる気がする。
「パレオ、他に工夫したところはあるか?」
「後は、ミニスカとニーソックスの長さですね。その狭間から見える太ももがどれだけ露出されているのかも、しっかり考えていますよ」
「ああ、それなら知ってるぞ。俗に言う絶対領域ってやつだな?」
「はい。そして、その絶対領域をどれだけ見せるのかもしっかり計算されているんですよ」
「どれだけ・・・って、出してりゃ可愛いって訳にはいかないのか?」
「はい。絶対領域を使いこなすためには、スカート丈、露出された絶対領域、膝から上のソックスの比率がそれぞれ、4:1:2.5になっていなければなりません」
「これ、そんな緻密な計算されてたのかよ・・・!」
「まぁ、ケースバイケースではありますが。やっぱりこの比率が理想だと言われています」
「じゃあ、今もその比率になっているのか?」
「はい。あぁそうだ。今から・・・測ってみますか?」
そう言うと、パレオはスカートの裾をたくし上げるような動作をして俺の目を見つめてきた。
太ももの露出がさっきよりも増える。心臓に悪い光景だ。ここで「測る」と言えば、メジャーを彼女の太ももに当てて、今よりも近距離で彼女の絶対領域を拝めるだろうか・・・?
「いやっ、測らないからな!後で写真とか確認したらわかるし!」
「あら。紳士なお方♡」
「頼むから年上の男をからかうのはよせ」
この後も、パレオのコーディネートのポイントを答えてもらい、他の服に着替えて貰って同じようなことを行い、それを何度か繰り返した。取材中、アクセサリーの選び方やバッグの配置などの話を彼女は楽しそうに、活き活きと話してくれた。
細かい部分にまで配慮を怠らず、ストイックにオシャレと向き合うパレオ。取材の最後になぜここまで余念なくこだわり続けるのか、個人的な興味を抱きながら聞いてみた
「「可愛い」の追求に終わりはありませんからね。極めれば極めるほど限界が無いのが「可愛い」というものです。」
「だから、女の子はどこまでも可愛くなれるんです!」
そう語る彼女の笑顔は、今日の取材で撮影したどの笑顔よりも眩しかった。
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パレオの手際が良かったのもあり、取材は予定よりもずっと早く終わった。今はパレオのご厚意に甘え、早めのお昼として作り過ぎたジャーキーおにぎりを片手で頂きながら、もう片方の手で記事の構成を練るべく、手帳にボールペンを走らせている。
それにしても美味いな。このおにぎり。
「それで、いい記事は書けそうですか?」
「ああ、思ってたよりずっとな。今日は本当にありがとう」
「いえいえ。花咲川のRASのファンのためでもありますし、私自身も楽しかったので」
「それならよかった。・・・っと、そうだ。報酬をまだ渡してなかったな」
「ほっ、報酬だなんてそんな!滅相も無い!」
「まぁそう言うなって」
そして俺は取材用バッグの中から茶封筒を取り出した。思ってたよりもいい取材内容になったのだ。本当はもっと用意しても良かったぐらいだが・・・
「あの!流石にそれは違いませんか!?パレオは金銭が目的でレンさんの取材を受けたわけではありませんよ!!こんなものは受け取れません!!」
「ばーか。もうちょっと確かめてから物言えよ。俺に札束出せるような甲斐性なんてあるわけ無いだろ」
「・・・?確かにお札にしては細長さがないですね?それにどこか硬いような・・・?」
「中、見てみ?」
「はい。どれどれ・・・なぁっ!!ななな・・・これはっ!この写真は!!」
そう。俺が用意したのは生写真だ。それも、『花咲川の中庭で木漏れ日に照らされた彩さんの寝顔with千聖さんの肩枕』だ。そしてそれを始めとするとするパスパレのオフショット達である。
「レンさん、あの、本当にいいんですか?これ・・・」
「彩さん達からはちゃんと許可貰ってるから大丈夫だ。パレオに渡すってことも伝えてある。不用意に周囲へバラまいたりしなければ問題ない」
「バラまきませんよこんな貴重品!ああ、何という可愛さ・・・無防備な寝顔を晒す彩ちゃん・・・彩ちゃんに肩を貸しながらカメラ目線で人差し指を口に当てる千聖ちゃん・・・はわわわ・・・」
「ちなみにそれの次の写真は剣道着で素振りしてるイヴがいるぞ」
「マジですか!?」
夢中になって写真を見ては悶えるパレオ、どうやら報酬はお気に召したらしい。
「それにしても、どうしてレンさんがこのような写真を?」
「簡単な話だよ。いつ面白いことが起きてもいいようにカメラは常に携帯してるんだ。だからなのか、花咲川のガールズバンドの連中からオフショットの撮影とかをよく頼まれるんだ。香澄とかこころは特によく頼んでくる」
「なるほど。それだけでこれほどの写真が?」
「後は取材した時に撮ったやつが殆どだな。大量に撮っても全部の写真が使える訳じゃないから。ボツになったやつはこうやって記事になったものも含めて誰かの手に渡ったりしてる。薫先輩の写真とかはりみやひまりへの交渉材料にもなるしな」
「なるほど。日菜ちゃんや麻弥ちゃんの写真はそうやって撮られたものなんですね」
「で、なんだっけ?さっき言ってたこと・・・「こんなものは受け取れない」だっけ?」
「そんな殺生な・・・(泣)」
「冗談だよ」
こうしてパレオに報酬をきっちりと渡し、次に取材する機会があればまた協力してもらえるように約束を結び、俺はチュチュのマンションを後にした。
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パレオの記事は、思い切ってファッション雑誌のような構成を参考に、パレオの特集を組んでみると、かなり良い反応が学園中で見られた。要望が強ければ、ファッションにこだわりを持った別の誰かで第2弾を組んでみてもいいだろう。
ちなみに、女性用のファッション雑誌を参考にするためにコンビニで買ったものをそのまま部屋の机に置いてしまったため、部屋の掃除に来た姉さんに女装への目覚めを疑われたのはまた別の話。
「ねえレン。本気でやりたいなら・・・アタシ協力するよ?」
「だから誤解だって何回も言ってるだろうが!」
「なんなら服選びやメイクだって・・・」
「やめろおぉ!!!!」
「読みにくい」や「良かった」などの感想や意見があれば受け付けていますので、気軽にお願いします。
後、「この話が一番好き」などの感想も待ってます。参考にしたいので。
感想、一言でも書いてくれたら嬉しいです。待ってます。