ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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2.倉田ましろと真夜中の散歩をするシチュ

 深夜徘徊をしたことはあるだろうか。別に悪い意味ではない。単純に徹夜作業の合間に夜食を買いに行くとか、そういう感じ。車の往来も無く、人とのすれ違いも無い。暗闇の中、ひたすら静かな道を歩く、微量の恐怖とちょっとした楽しさがある非日常な時間。

 ましてや知り合いに遭遇するなんてことは基本的に無い筈なのだが・・・

 

「あっ、レンさん。こんばんは」

「よう、ましろ。奇遇だな」

 

 夜食の買い出しは、真夜中の散歩になった。

 

「それにしても、こうやってしっかり話すのは久しぶりですね。」

「そうだな。しっかり話すのはガールズバンドのお花見会の手伝いの時に会った時以来か。CiRCLEのバイトの時にちょくちょく話すことはあったけど」

「ですね。この時間はよく出かけるんですか?」

「たまにな。徹夜作業が長引くと夜食とか買いに。まぁ、今回は夕方にがっつり寝たせいで眠れなくなっただけなんだけど。ましろは?」

「ああ、私もなんとなく眠れなくて・・・」

「あんまり良くないぞ。こんな時間に女子が1人なんて危ないだろ」

「そうですか?」

「そうだよ。襲われたらどうすんだよ。お前可愛いのに」

「ふえっ!?あっ、そうでしょうか。そ、それは・・・どうも・・・」

「照れるなよ・・・」

 

 でもお世辞抜きにこいつは可愛いと思う。髪はサラサラで綺麗だし、ふとした拍子に出てくる上目遣いや仕草、そして身長の割に大きく膨らんだ胸、俺がその手の悪い人だったら確実に襲っている。

 

「まあでも、最近頑張ってるよなお前。変わりたいなんて理由でバンド始めて、本当に変わっちまうんだから」

「そんなことないですよ。根暗だし、性格は後ろ向きだし、責任から逃げたくもなりますし、結局本質は変わってないんです。私」

「別にいいと思うけどな。むしろ周りに前向き過ぎる奴らが多い分、お前みたいに若干ネガティブなやつがいるとなんか安心できる」

「その捉えられ方は、それはそれで複雑なんですけど・・・」

「でも、お前みたいなやつが必死に頑張って、マイクを持ってステージに立ってると思うと、勇気が出るというか、「俺も頑張ろうかな」って思えるんだよな。」

「なんか、そういう感想をもらえるのは、私もうれしいです。ボーカル冥利につきますね。」

 

 それにしても、こうして話してみると本当にただの大人しい普通の女の子だ。そんな大人しい女の子が、ライブの感動に突き動かされて、バンドを始めて、挫折して、それでもなお音楽と向き合うことを決めたのだ。

 何かを始めること、挫折してもう一度立ち直ること、どちらもそう簡単にできることではない。音楽を通して彼女の中でどのような成長があったのだろう。

 倉田ましろという一人の人間に対して少し興味が出てきた。

 

「なあ、まだ帰るつもりが無いなら、そこの公園のベンチで話さないか?コーヒーぐらいなら奢ってやる」

「それは、構いませんけど・・・どうして?」

「もう少し、話をしたくなった」

 

 

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 ましろはおずおずと俺の隣に座りながらホットココアを飲み始めた。

 ・・・コーヒー、飲めないんだな。

 

「と言っても、何から話そう。話題とか全然考えてなかった。・・・好きなものとかあるか?」

「好きなものですか?えっと・・・」

 

 話に誘っといてこの始まり方は自分でもひどいと思う。甲斐性なしで本当に申し訳ない。

 

「夜とかは、好きです」

「・・・ほう」

「特に深夜が好きなんです。街を照らしてた太陽が忽然と姿を消して、そこら中にいた人がぱったりといなくなって、誰もいない場所に私だけが取り残されたような感覚。寂しいのにどこか安心して落ち着くような、そんな感覚がどうしても嫌いになれないんです」

「随分と詞的な表現をするんだな。さすがは作詞担当」

「え?わかりませんか?この感覚」

「夜は好きだけど「取り残されて寂しい感じが落ち着く」みたいに感じたことはあんまりないかも。誰もいない町は自由な感じがするから気楽なんだよな。信号無視しようが道路の真ん中を歩こうが誰も咎めないし、車も通らないから轢かれることもない。まあやらないけど。」

「ある意味王様気分ですね。でも、人によって感じ方ってこんなに違うんですね。なんだか不思議な感じ」

「ましろの夜の捉え方は性格が出てていいな。俺はお前の考え方、好きだぞ。」

「私も好きですよ。レンさんの考え方」

 

 やっぱり不思議な少女だと思う。俺とは全く別の世界を生きているようで、俺に近しいものも持っているような気がする。

 

「そういえば私、レンさんのことをあまり知らないです。」

「俺のこと?まあ確かに詳しく話すようなことは無かったけど」

「はい。レンさんが花咲川で新聞部をやってることや、CiRCLEでバイトをしてること、その関係でガールズバンドの人たちと仲がいいことぐらいしか知らないんです。レンさんと深く関わる機会は無かったので。」

「というかCiRCLEでバイトしてるのも、ガールズバンドの取材のためだったんだけどな。ガールズバンドが熱い時代になって、花咲川にもバンドが新しく出来たりして。だから少しでも近い場所でその世界を見ようと思ったのがきっかけ」

「そうだったんですか。やっぱりレンさんの記事はガールズバンド関係のものが多いんですか?」

「どうだろう。多分それなりの割合は占めてると思う。やっぱり流行りに乗ったバンド関連の記事はみんなよく見てくれるんだよ。機会があればお前らの取材もするかもな」

「いいんですか?私たち、花咲川のバンドじゃないですけど」

「大丈夫だよ。みんなガールズバンド好きだし、薫先輩の記事とかすげー人気だぞ?花咲川のファンにとってあの人は羽丘まで行かないと会えない存在だからかなりの量の感謝の言葉が飛んでくるよ。掲示板の横に置いてある記事の縮小コピーだって朝のうちに消し飛ぶし」

「そ、そんなに人気なんですか。あの人・・・」

「仕方ないよ。そこらの男よりイケメンなんだもん。あの人」

 

 しかも、あんなに大多数のファンに囲まれておきながらその一人ひとりに真摯で誠実に対応するのだ。誰かを蔑ろにしたりはしない。まあ、それこそがファンが多い理由なんだろうとは思うが。

 

「さて、時間も遅いしそろそろ帰るか」

「そうですか?私はまだ帰る気分じゃないんですけど」

「・・・真夜中に年下の美少女から「まだ帰りたくない」って言われること自体は男としてすごく嬉しいけど2時半はまずいだろ。ほら、送ってやるから。」

「はい・・・そうですよね・・・」

 

 なにちょっとしょんぼりしてるんだよ。可愛いなこいつ。

 

「ましろ」

「はい」

「薫先輩みたいな王子様じゃなくて申し訳ないけど」

 

 呼びかけて、右手を差し出す。知り合いの王子様な先輩を必死に真似て、自分に似合わないセリフを夜のテンションに任せて紡ぎ出す。

 

「エスコートは任せろ。お姫様」

「・・・!はい。喜んで」

 

 不格好な誘いにも、ましろは笑顔で応えてくれた。

 

「ちょっと、恥ずかしいですね。これ」

「たまにはいいだろ。誰も見てないんだから」

「ふふっ、そうですね」

 

 俺とましろはお互いに恥ずかしがりつつも、しっかりと手をつないで公園の外へ出たのだった。

 そうして俺たちは知り合って間もない間柄であることも忘れて、恋人たちのデートのように、帰り道という真夜中の散歩へ駆り出すのだった。

 

 

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 その後、冷静さを取り戻した時にお互い恥ずかしくなって途中から手を放して歩いたのは言うまでもない。

 やっぱり深夜テンションは恐ろしい。「エスコートは任せろ。お姫様」なんてセリフは少なくとも素面で言えていいセリフではない。

 

 向こうがどう思っているかはわからないが、個人的に気まずいのでましろとはしばらく会いたくない。




 もしも読みにくいとか感想あったら下さい。待ってます。

 女の子と手をつなぐのってドキドキしますよね。細くて冷たい指先、妙に手汗が気になったりとかしちゃったりして。お互いにしかないものを絡め合う。
 そう考えると手をつなぐっていうのは、ベッドインと同等かそれ以上にえっちなことなのかもしれませんね。
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