『もし明日、時間があるなら私の部屋に来て欲しいの。誰にも内緒で』
来週分の記事を書き終えた俺のもとに、友希那さんから突如としてこんなメッセージが届いた。予定なら空いているが、『誰にも内緒で』と来たか。姉さんにも相談できないような悩み事なのだろうか・・・?
俺は幼馴染の腹の内を考えながら、部屋に行く時間を伝えたのだった。
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久しぶりに訪れた湊友希那の部屋は相変わらず音楽の要素で溢れている。自分の姉とは違ってあんまり女子女子しておらず、幼馴染の部屋だということもあってか、どこか安心する。
俺は友希那さんのベッドに腰掛けながら特に緊張することなく過ごしていた。
「で、なんで内緒で来なきゃいけなかったんだよ。姉さんとか誘っちゃまずいのか?」
「リサには・・・ある意味頼みにくいことではあるわね」
「頼み・・・」
「実を言うと、最近疲れが取れないのよ。1日中、作曲のことばかり考えてしまって・・・」
「それ大丈夫なのかよ。ちゃんと寝てるのか?」
「そこなのよ。私、いつも作曲って寝転がりながらしてるから、ベッドに入ったら頭が作曲のモードに切り替わってしまって・・・」
「で、寝不足気味になってるってことか?」
「そう。お陰で日中は頭が上手く働かないし、授業中でリサに起こされたりするし・・・」
そう語る友希那さんは今も眠たそうだ。本当に寝不足が酷いらしい。しかし・・・
「その理由で、なんで俺が呼ばれたのかがわからないんだけど・・・」
「そうね。だからつまり・・・」
友希那さんは俺の手をそっと握り、俯きながら、少し恥ずかしそうに答えた。
「その・・・添い寝、して欲しいんだけど・・・」
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俺は今、友希那さんとベッドで横になっている。「添い寝して欲しい」と言うものだからてっきり俺が寄り添う形になるかと思っていたがそうではない。今の俺は友希那さんに後ろから抱きつかれており、寧ろ俺が添い寝してもらっているような体勢だ。
「あの、友希那さん」
「ゆき姉って呼びなさいよ」
「いや、これ添い寝じゃなくて抱き枕だよな?」
「何よ。悪い?」
「なんか・・・思ってたのと違うと言うか・・・」
そもそもこれで本当に寝れるのだろうか?
「抱き枕ならもっと良い人いただろ。姉さんとか」
「嫌よ。恥ずかしいし、「眠れないから一緒に寝て欲しい」なんて言ったら絶対からかってくるわ」
「俺なら恥ずかしくないのかよ」
「いいのよ。弟みたいなものだし、少なくとも頭が作曲のことで一杯になったりはしてないから」
「俺、男なんだけどな」
「知らないわよ」
「知っとけよ頼むから・・・」
俺の言葉を意にも介さず、友希那さんは腕の力を強める。体も密着し、お互いの体温が伝わってくる。
「ねぇ、もう少しこっちの方に向いてくれないかしら?あなたの背中、腕が回し辛いのよ」
「やだよ。恥ずかしい」
「・・・」
「わかったよ。仕方ないな」
そう言って正面を向いたはいいが、やっぱり彼女の顔を直視することはできない。幼馴染とはいえ、美人の顔が至近距離にあるというのはやはり男としては心臓に悪いものがある。
しかし友希那さんは俺を意識してないのか、容赦なく俺を抱き締めてくる。
「なぁ、こんなんで睡眠不足がどうにかなるのか?顔とか近いような・・・」
「すぅ・・・・・・・・・っ!!えと、何かしら?」
「ちゃんと安眠効果出してんの腹立つな」
「ええ。本当に助かってるわ。温かいし」
「本当か?」
「本当よ。あぁでも、心臓の音がうるさくて若干気が散るから、今すぐに止めて頂戴」
「死ねってのか?」
というか心臓に関してはあんたのせいだろうが・・・
「そんなに意識するほどのこと?小さい頃はリサも含めて昼寝とかしてたじゃない」
「今まで疎遠だったんだから仕方ないだろ。知らないうちに可愛くなりやがって・・・」
「あなただって知らないうちに大きくなってるじゃない。身長、もう私より高いでしょ?」
「胸だって体に当たってるし・・・」
「ここまでくっついてるんだから当たり前よ」
「顔とか、もうキスできるぐらい近いし」
「したいの?」
「いやっ、そ、そうは言ってないだろ!」
「初心なんだから」
落ち着くわけがない。年頃の男女が同じ布団の中なのがそもそもマズいのだ。
もう出て行ってしまおうかと考えたあたりで、友希那さんの手が俺の頭に乗せられた。
「何すんだよ?」
「撫でてるだけよ。昔はよくやってたでしょ?」
「やってないだろ」
「そうだったかしら?レンが怖い夢を見た後に泣きついてきた時—」
「わかったもういい。やってもらった。やってもらったからこの話は止めよう」
「そう」
そう言って友希那さんは俺を撫で続けた。さっきまで散々文句ばかり言っていたのに、こうされてちゃんと眠気が来てしまうあたり、やっぱり俺は単純なんだと思う。
「こんなことしてていいのか?そっちが寝れなくなるだろ」
「あなたが寝た後で寝るから大丈夫。寝ない弟をあやすのは姉の役目だし」
「姉じゃないだろ。あとあやすって言うなし」
「それにあなた、こうしてしまえばすぐに寝ちゃうもの」
「・・・確かに」
「ほら、あなたも普段忙しいでしょ?ゆっくりお休み」
「・・・ゆき姉」
「何?」
「抱き返していい?」
「甘えん坊なんだから。ほら、おいで」
「ありがと」
頭も働かなくなり、眠くなって甘えた口調になってしまっていると気付く前に、俺たちはお互いの温もりに包まれながら眠りについた。
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目を覚ますと、時間は既に夕方だった。目の前で寝顔を晒している歌姫は上着をはだけさせて、ノースリーブから肩を露出している。・・・ホント綺麗だな。この人。
そんなことを考えながら頭を撫でていると、友希那さんは目を覚ました。
「・・・レン?」
「起きたかよ。寝坊助」
「ええ。久しぶりによく寝たわ」
「じゃあ、そろそろ帰っていいか?」
「いや・・・」
「わかったよ」
珍しく向こうから甘えモードになっているので、俺はこのまま頭を撫で続けた。
・・・可愛い。普段は大人っぽくて綺麗な人をこうして撫でることができるようになるギャップは正直たまらない。こうして触れて見ると顔は小さいし、髪だってサラサラだ。
「ねえレン」
「んー?」
「好きよ」
「・・・俺もだよ」
「ふふっ・・・」
寝起きなのをいいことに、抱き合い、時には頬ずりをしたりして、俺たちは2人で甘い時間をひたすらに味わった。
そしてこんな時間が永遠に続けばいいと思った矢先・・・
Prrrrrrrrr・・・・・・
俺の携帯が音を鳴らした
「うるさいわね」
「姉さんからだ」
「リサから?」
俺は寝ころんだまま通話を開始した。
「何の用だよ?」
『ああ、レン?今どこにいる?』
「ゆきね・・・友希那さんのとこ」
『ああ、友希那と一緒か。ちょっとスピーカーにしてくれる?』
「?まぁ、いいけど」
『ねぇ友希那。元気してる?』
「してるけど・・・何の用?」
『いやー、大した用でもないけど、忠告的な?』
「忠告?」
『まぁ、簡単に言うとさ・・・』
『カーテン、ちゃんと閉めた方がいいよ?』
「カーテン?」
聞いて、ふと思い出した。そう言えば、この部屋と姉さんの部屋の立地って・・・
「「はっ!?」」
ガバッ!っと起きて窓の外を確認すると、耳に携帯を当て、ウインクをしながらこちらに手を振る姉がいた。
『いやー、2人がちゃんと仲良くできてるようでよかったよ~。さっきはお楽しみだったね☆』
「おたっ・・・軽く寝てただけよ!」
『あれぇ?さっきうちの弟に頬ずりしてたのは誰だったの?』
「うっ・・・」
『アタシも誘ってくれたらよかったのに。リサちゃん寂しい~!』
「その、ごめんなさい」
『いやいや、面白いもの見れたから大丈夫。あとレン、帰ったら詳しい話聞かせてね』
「えぇ・・・」
『じゃ、そろそろ夕飯の時間だから、またね~☆』
通話が切られ、部屋から出ていく姉を見送り、俺たちはかなり大きなため息をついた。
「レン・・・本当にごめんなさい」
「いや、俺も油断してたし・・・」
「夕飯もあるだろうし、今日はもう帰りなさい」
「・・・帰りたくねえ」
「ダメよ。訳なら私からも話すから」
「・・・わかった」
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そうして俺は家に帰った後、ニヤついた姉からの質問攻めを受けたのだった。
「アタシも友希那と添い寝したかったなぁ。友希那の抱き心地はどうだった?」
「そこまでは答えなくていいだろ!」
追及は遅くまで続いた。
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