ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 前回の作品を読んでお気に入りにしてくれた人、前回の作品を読んで★9に投票してくれた心優しい人、ありがとうございます。

 嬉しいです。


3.奥沢美咲に罰ゲームをしてもらうシチュ

 俺のクラスである2年A組は基本的に平和なクラスだ。香澄と有咲がいちゃついていたり、美咲目当てでこころが遊びに来る光景が見られたりする、そんなクラスだ。男子は少ないが、話し相手には困らない。このクラスでは基本的に穏やかな気持ちで過ごすことができる。

 爽やかな朝の時間、そんな穏やかな教室の片隅で俺はというと

 

「さて、落とし前をつけてもらおうか」

「穏やかじゃないセリフだなぁ・・・」

 

 クラスメイト、奥沢美咲への報復に勤しんでいた。

 

「というか、何が落とし前なのさ。確かにこころは作業の邪魔しちゃったんだろうけど、結局こころに肩枕してもらってぐっすり寝落ちしたんでしょ?男としてそれなりにいい思いした挙句、寝不足までケアできたんだから責められる筋合いなんて無いじゃん。寧ろ感謝して欲しいぐらいなんだけど」

「ぐっすり眠って寝不足が軽減したのは認める。男としていい思いをさせてもらったのも事実だし、なんなら役得だとも思った。ただ、その話とお前がアポなしで勝手にこころを送り込んできたのとは話は別だ」

「いや、仕方ないじゃん。こころに内緒で済ませておきたい用事とかあったんだよ。」

 

 美咲側の事情は知らなかったけど、サプライズの企画でもあったのだろうか。

 

「まぁ、悪意があったとは俺も思ってないけど、でもアポなしで突撃されて不都合があったのは事実だ。今言った通り落とし前はつけてもらう。罰ゲームだ。」

「まあ、そっちの都合も考えずに勝手にやったことに関してはあたしも悪かったと思うし、こころの相手してくれたお礼も兼ねてお昼ご飯ぐらいは奢らせてもらうから」

「わかった。取り敢えず猫耳メイドさんの刑な」

「うんなるほど。ちょっと待って!?」

「今から授業サボって衣装買ってくるから待っとけ。やっぱ裾の短いやつがいいよなぁ~」

「いや、ちょっ馬鹿!!ほんとふざけんな!何なの猫耳メイドの刑って!!」

 

 美咲の顔がこれ以上ないくらい赤くなってる気はするけどそんなことは知らない。

 

「言葉通りだよ。お前が猫耳メイドさんになって俺に写真を撮られるんだ」

「罰ゲームの度合いを明らかに超えてるよ!なんであんたの娯楽に巻き込まれなきゃいけないの!」

「別に俺だけの娯楽にするつもりはない。然るべき手順で生写真にした後、きっちり全校生徒に配布する」

「そういう問題じゃない!寧ろもっとタチ悪くなってるから!」

「『奥沢美咲、心も体も癒します』っと」

「メモるな!写真のタイトルに使えそうな案を書き留めるな!」

「10枚ぐらいプレミアで美咲のサインを書いてもらうのもアリだな・・・」

「わかった!1週間分、いや、1か月分お昼ご馳走する!これで勘弁して!」

「問題は撮影場所だよなぁ。背景が世界観を壊すのは避けたいし・・・」

「ああもう、こうなったら奮発してやる!1年分だ!」

「いや待て。そんなに嫌か?」

 

 半分冗談だった手前そこまでしっかり拒絶されるのも困る。美咲の猫耳メイドさんコス、絶対可愛いだろうに。

 

「とにかく、あたしの猫耳メイド姿を全校生徒に晒すなんて絶対に嫌」

「美咲、重要なことだからこれだけは言っておくぞ?」

「何?」

「・・・猫耳メイド『さん』な?」

「どうっでもいい!!猫耳メイドへの敬称の話なんか心っ底どうでもいい!!」

 

 こころとの関わりでその辺りのことにも寛容になったと思っていたが、やはり美咲のガードは堅い。でも、ちょっと楽しくなってきたな。

 

「ねえ、もっと別のものは無いの?メイドよりマシなやつ」

「あるぞ。というか最初からこっちをやってもらう予定だった」

「なんだよかった。それで、内容は?」

「今ここで、こころの好きなところを5個挙げてもらいます」

「・・・ほう」

「ハロハピの取材をすることも増えたからな。メンバー内の絆の一部を見ておこうかと」

「いや、メイドよりマシなだけじゃん。普通に恥ずかしいんだけど。」

「聞き捨てならないな。お前にとってこころへの好意は『恥ずかしいもの』なのか?ハロハピで培ってきたお前とこころの絆を『恥ずべきもの』で片付けるのか?まぁ、『恥ずかしくても仕方ないよな』あの常識外れのこころの好きなところ、なんて」

「いや、そうじゃなくて、単純に照れくさいんだよ。友達の好きなところとかそういうの。」

 

 目を逸らしてそんなことを言った美咲だったが、すぐに鋭い目つきで俺を見据えた。

 

「・・・でも、さっきのあんたの言い方はムカついた。言ってやろうじゃん。こころの、・・・大好きなところ」

「いいねえ」

 

 これもやってくれるか不安なものだったが、ちょっと煽ったらすぐに乗ってきた。やっぱりこころのことになると弱いんだよな。こいつ。

 そうしてると、またもや顔を赤らめながら話し出した。うん。恥ずかしいよな。こういうのって。

 

「まず、・・・えっと、可愛いところ?うん、こころの可愛いところが好き」

「初手から抽象的だけど大丈夫かお前。まぁ分かるけどさ」

「うん。服装もおしゃれだし、髪も綺麗だし、女子として憧れる部分はあるかな。」

「で、2つ目は?」

「じゃあ、放課後になると一緒に帰ってくれるところ、とか?」

「確かに。お前らいつも一緒だもんな」

「そうなんだよね。いつもいの一番に「美咲美咲ー」って飛びついてくるの。あたしと一緒ならどんな場所でも楽しいんだってさ。まぁ、そんなあたしもこころが一緒なだけで楽しいんだけどさ」

「いきなり惚気出したなこいつ・・・で、3つ目は?」

「前向きなところ、かな。どんなに周りがネガティブな空気でも、こころはその周りを巻き込んで楽しい空気に変えちゃうの。こころがいると、こっちまで何でもできちゃいそうな気がしてくるんだよね。まぁ、本人としてはただ楽しいことをやってるだけなんだろうけどね。」

「確かに、こころのポジティブに救われてるやつは多いだろうな。取材先でもよく耳にするし」

「その話、こころが聞いたら喜びそう」

「じゃあ、その勢いで4つ目も頼もうか」

「そうだなぁ。こころと言えば、やっぱり笑顔でしょ」

「最初照れまくってたくせにすげーいい顔で話すじゃん」

「いやいや、仕方ないよ。もう、理屈抜きで好きなんだもん。こころの笑顔。こっちまで笑顔になっちゃうし、ハロハピ関係でそれなりのハードワークこなしてる筈なのに、こころが楽しそうに笑ってくれるだけで、疲れが吹っ飛んじゃうんだ。ハロハピとして世界を笑顔にしようって気は当然ちゃんとあるけど、最近はこころの笑顔が見たいからやってる部分もあるかも」

「思ってたよりアツアツな想いでちょっとビックリしてるんだけど、そんなに好きなのか」

「そうだよ。あたしはこころの笑顔が好き。大好きなこころの笑顔があればいくらでも頑張れる。これは偽りない本心だよ」

「・・・(からかい半分で聞いた手前、想像以上の思いの丈を聞いて申し訳なくなってる)」

「じゃ、5つ目で総括しようかな。こころの存在そのもの、って言うとスケールが大きすぎるけど、でもこころの生き様というか、在り方というか、そうゆうところがやっぱり大好きなんだ。誰よりも素直で、元気で明るくて、そんなこころが突っ走ってくれるから私はハロハピでやっていけるんだと思うし、あの子の力になりたいって思う。・・・これからも、仲良くしたいな」

「・・・」

 

 気づいたら無言で小さく拍手していた。美咲のこころやハロハピに対する愛情に対して、ここまで感銘を受けてしまうとは

 

「はぁー、思ってたより熱く語っちゃったな。で、これで満足?」

「いやいや、これ聞いて満足かを判断するのは俺じゃないだろ。なあ?こころさん?」

「は?」

 

 そうして俺が美咲の背後にいた人物に話しかけると、不自然な動きで美咲は後ろを確認した。

 

「美咲!あなた最高よ!」

「ちょ、待って。抱き着いた挙句に頬ずりをするな!というか、いつから聞いてたの?」

「あたしの可愛いところが好きって言ってくれた辺りかしら」

「最初からじゃん!もう、なんでこんなタイミングで私の後ろにいるのさ」

「だってレンにチャットで呼ばれたんだもの。物音を立てずに美咲の背後に忍び寄って欲しいって」

 

 もう美咲は完全に手で顔を隠してしまっている。そして目の部分だけ指を開いてこちらを睨みつけてきた。

 

「こころがいるなんて聞いてないんだけど」

「罰ゲームの内容は『今ここで、こころの好きなところを5個挙げてもらう』だから、こころの存在は関係ない。「こころがいない」なんて言ってないし、そのことを確認もされてない」

「このゲス男!!」

「そもそもこれは罰ゲームなんだ。ただ語らせるだけじゃ意味ないだろう」ピコンッ!

「待って。何今の小気味の良い電子音?・・・あんたまさか・・・」

「美咲さんの本音、無事に録音完了しましたー」

「うわああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 まぁ、録音はこころに送ってからさっさと消すんだけど。

 

「ねぇ美咲、いつまで顔を隠しているの?そろそろ笑顔を見せてほしいわ」

「そうだぞ美咲、こころを困らせてやるんじゃねえ。こころの笑顔のためにハロハピやってるんじゃなかったのか?」

「次そのいじり方したら本気で殴る」

 

ピコンッ!(美咲の録音データ再生)

『こころの生き様というか、在り方というか、そうゆうところがやっぱり大好きなんだ』

 

「あーもう!あんたたちなんか知らない!授業サボって帰る!!」

「おい美咲!・・・ちょっとからかい過ぎたな。」

 

 

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 この後、俺とこころでなんとか美咲を連れ戻し、全力で謝った。

 

 許してはくれたがしばらく俺とこころに口をきいてくれなかったのは言うまでもない。

 ・・・いや、俺はともかく、こころには口をきいてやってもいいだろうに。

 




 「読みにくい」や「良かった」などの感想や意見、また「このキャラを出してほしい」などのリクエストがあれば感想にお願いします。

 
 感想、一言でも書いてくれたら嬉しいです。待ってます。




 「好きだ」という気持ち、「嫌いだ」という気持ち、どちらもほいほい人にぶつけるようなものではありませんが、たまにはぶつけるのも大事ですよね。
 ちゃんとぶつけ方を考えられるなら、の話ですが。

 後書きの最後に本文書いてて思ったことを書くやつ、やめた方がいいですかね?

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