今回はダブルバインド系のリクではなかったですが、やっぱRASとモニカは難しいですね。
私、リクエストの話書き終わった時は「リクエストありがとうございました」って精神なのですが、あまりにも書くのが難しかった時は「対戦ありがとうございました」のスタンスの方が強い気がします。
この話、面白く書けてるやろうか・・・?
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羽沢珈琲店の時間の流れは随分と穏やかだ。お客さんの話し声、注文を取って回るつぐみ達、店の外のかすかな物音、窓から入り込むちょうどいい日差し、そして素材の味を活かした美味しいサンドイッチ。
課題の締め切りや記事の締め切りなど、時間に追われやすい身としては、凄く落ち着く場所だ。落ち着き過ぎてウトウトしてしまうのは難点だが、やっぱり休日に余裕ができると来てしまう。
サンドイッチも美味しいし、眠気覚ましにコーヒーの一つでも頼もうかと思ったところで、
「お待たせしました。こちら、ご注文のカフェラテになります」
つぐみが飲み物を持ってやってきた。しかし、
「いや、俺、頼んでないぞ?別のお客さんの注文じゃないか?」
「いや、レン君の席で合ってるよ。このカフェラテは正真正銘レン君のものだから」
「それ、どうゆう・・・?」
「あちらのお客様からです」
「えっ?」
つぐみが指した場所を向くと、微笑みながら手を振るレイヤさん。
・・・いや、真夜中のバーならともかく、真っ昼間の喫茶店で普通これやらないだろ。
「ありがとう、つぐみ。もう行っていいぞ。あと、席移動していいか?」
「ああ、それならご自由にどうぞ。じゃあごゆっくり」
そして俺はつぐみが持ち場に戻るのを確認した後、絡んできたレイヤさんのもとへ向かったのだった。
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「不意打ちでカッコいいことしないでくださいよ。惚れちゃったらどうしてくれるんですか」
「ごめんね。せっかくレン君がぼーっとしてるからやってみようと思って」
この人、こんなにユーモアのある人だったか?
「で、何の用事です?仕事の依頼なら部活中にして欲しいんですけど」
「そうじゃないよ。単純にレン君とは落ち着いて話してみたかったんだ。RASが全体で揃ってる時に軽く話したことはあるけど、こうして2人で話す機会は無かったでしょ?」
「言われてみると、CiRCLE以外の場所で話したことは無いですね」
「それに、他のメンバーとは連絡取り合ってるぐらいには仲良いんでしょ?チュチュとは親子丼作ったって聞いたし」
「・・・確かに」
「だから、私も仲良くできればなって。レン君のことはどんな子か気になってたし。取り敢えず、敬語抜きで話してもらえる程度の関係にはなりたいかな」
「いやいや。俺、仲良くなっても年上には敬語使いますからね?」
「えっ・・・?」
「えっ・・・?」
場が冷風が通る感覚。少し俯くレイヤさん。
「私、二年なんだけど・・・」
「えっ!?タメかよ。大人っぽいから年上だと思ってた・・・」
「うん。よく言われる。あははは・・・」
ガールズバンドを追いかけている新聞部が大注目バンドのボーカルの年齢を間違えるという失態。自分のリサーチ不足を悔やみたいところではあるが、それより先にやる事をやるか。
「その・・・ごめんな?」
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レイヤさん、改めレイヤとの会話は実はタメだったことを知ってからは随分気軽なものになっていた。
せっかくの機会だ。今後RASに取材する機会があるかも知れない。そのためにも彼女のことはもっと知っておきたい。俺はスマホをテーブルに置いて、話を聞き出す体勢に入った。
それにしても・・・
「やっぱり・・・カッコいいな」
「そうかな?」
「そうだよ。何食ったらそんなにカッコよくなんの?」
「私は普通にしてるつもりなんだけど・・・」
「その普通がデフォルトでカッコいいから言ってんだって。お前アレだろ?女子でありながら女の子に告白とかされたことがあるタイプの女子だろ?」
「いやいや、さすがにそれは・・・」
「正直に答えろ。何人から告白された?」
「だから、それは無いって。女の子相手なんて――」
「ダウト」
「・・・・・・4人くらい、だったかな」
「ヤッバいなこいつ・・・」
「いや、待って!私としては本当にそんなつもりは無いんだよ?でもなんか普通に話してたら、いつの間にか向こうが好きになってて・・・」
「それ一番カッコいいパターンじゃねえか!ふざけんなよお前!!」
「「ふざけるな」って・・・本当に大したことはしてないんだよ?落とし物拾ってあげたり、ナンパされてるところを助けてあげたりしただけなのに」
「なんだよそれイケメンじゃん・・・」
もう確信犯だろこいつ。私服もクール系だし・・・。
「一体何がお前をそこまでカッコよくさせるんだ。もう単純に気になる」
「どうだろう?でも、バンドを組んでからは意識が変わったかも。RASのボーカルになった以上、カッコ悪いところは見せられないしね」
「なるほど。確かにRASってカッコよさ全開のバンドだもんな。そもそもバンド名にRAISE A SUIREN(御簾を上げろ!)って。カッコいいにも程があるだろ・・・」
「そうだね。やっぱりチュチュは凄いよ」
「バンド名、チュチュが考えてたのか」
「バンド名だけじゃないよ。私たちのアーティストネームだってチュチュが考えてくれたものだし、RASの音楽の作詞作曲も全部チュチュがこなしてる訳だから」
「嘘だろ。RASのカッコよさの構成要素の大部分ってアイツの働きだったのか。マジでセンスの塊だな・・・あのチビ。プロデューサー名乗ってるだけはある」
「さっきのレン君みたいに、ファンのみんなは私をカッコいいって言ってくれるけど、私がカッコよく在れるのは、チュチュやRASのみんなのお陰なんだ」
「そうか・・・」
「うん。RASのみんながいるから、私はレイヤでいられるの」
そう語るレイヤの顔は、本当に嬉しそうだった。自分のバンドに対する思い入れの強さが、嫌でも伝わってくる。
「レイヤにとってRASって何?」
「自分が自分らしく在れる場所、かな。だからこそメンバー全員が本気でぶつかり合える。私以外のメンバーもそう感じてると思うよ」
「確かに。ますきも似たようなこと言ってたな」
まったく、随分いい話が聞けたものだ。
「なんだか、こっちから一方的に語っちゃったね。私がレン君のことを知りたいって思って声を掛けたのに・・・」
「大丈夫だよ。俺もレイヤのことを知りたいと思ってたからな」
「それならよかった。やっぱり今井さんの弟なだけあって、聞き上手というか、すっごく話しやすかったんだよね」
「うん。だってそう仕向けたんだもん」
「えっ?」
俺はそう言いながら、「録音アプリを停止させた」。画面には録音完了の文字が浮かんでおり、俺はそれをレイヤに見せた。
「これって・・・」
「俺は取材をする時にこだわりがあってな。取材をする時は「取材らしくしない」ようにしているんだ。形式じみた質問なんて論外。自然体で聞いた方が相手も自然体で返してくれるし、聞いてないことでも勝手に喋ってくれる」
「え?でもこれ、取材じゃないよね?話しかけたのは私からだし・・・」
「確かにこれは取材じゃないけど、RASの記事を書いて欲しいってリクエストは多かったんだ。いずれチュチュに話をつけようと思ってた案件だったし、せっかくだから仲良くなるついでに面白い話を聞けたらなって思ったんだ。結果は大成功」
「すごいや。気付かないまま完全に乗せられた・・・」
「あ、でも完全に無許可で聞いた話だし、録音だってそっちが嫌なら消すぞ」
「いや、それなら遠慮なく使ってよ。花咲川の子たちに私たちを知ってもらうチャンスにもなるからね」
「やったぜ☆」
さて、ここまでいい話が聞けた以上、RASへの取材も本腰を入れて考えていく必要が出てきた。
どんな記事にしよう?今日の会話を活かすならレイヤをメインに構成を練っていけばいいものが書けるかもしれない。
『RAISE A SUIRENボーカルの素顔に迫る! ~RASのみんながいるから~』
・・・うん。我ながら良いタイトルだ。
「じゃあレン君、そろそろお店を出ようか。これ以上長居しちゃうのも悪いし」
「そうだな。あ、さっきご馳走になったカフェラテいくらだった?流石にその分は俺が出すよ」
「え?カフェラテ代だけ?ついでに私が食べてたパンケーキの分も払って欲しいんだけど」
「はぁ?なんで俺がそこまで—」
「取材料金♡」
「・・・・・・ホントいい性格してるよ。お前」
本人は冗談のつもりだったらしいが、無許可で会話を録音した負い目はあったし、かなりいい話を聞けたのは事実だったので、会計時には俺がレイヤの分までしっかりと払った。
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家に帰った後、「やっぱり情報に目が眩んで会話を録音したのは失礼すぎたか。これからレイヤといい関係を築きにくくなることをしてしまったのではなかろうか」とちょっとした不安を掛けていた頃、レイヤから画像と共にチャットが届いた。
『何日か前に撮ったものなんだけど、これ、ソファで居眠りしちゃったチュチュの寝顔の写真。送ったこと、本人には内緒だよ?』
・・・いい関係、割と築きやすいかもしれない。
対戦、ありがとうございました。
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反映できるかは不明ですが、確認はします。応えられなかったら「すいませんでした」ってことで・・・。