ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 アンケートの結果、クラスメイトと駄弁るだけのシチュ、9割近くの方が望んでたので書いてみました。箸休めとでも思ってください。


39.教室で奥沢美咲と駄弁るシチュ

 2年A組は俺の他に香澄、有咲、美咲といったクラスメイト達がいる訳だが、教室で一番よく喋るのは美咲だ。香澄や有咲とも当然喋る時は喋るが、あいつらは基本2人で話し合うか、課題をやり忘れた香澄を有咲が急かしてるかのどちらかなので、自然と美咲と話すことが多くなる。席も近いし、授業の合間にできる10分間の休み時間は大体こいつが相手だ。

 まぁ、当然話す内容なんて大したことないし、生産性など度外視だ。

 

 前の席の美咲がこちらを向き、後ろの席の俺が机に突っ伏しながら顔だけを美咲に向けて目を合わせる。これが普段の雑談スタイルだ。

 

「レンー。すっごい暇なんだけど」

「それな」

「そもそも10分って時間がダメだよね。何もしないでぼーっとするには長すぎるし、ぐっすり眠りに入るには短すぎるし・・・」

「アレだよなぁ。香澄みたいに課題をやり忘れて急ぎ足でやらなきゃいけないほど不真面目でもないけど、わざわざ授業の予習復習なんてやるほど真面目でもない奴ら特有の退屈」

「わかる。もうホントそれなんだよ」

 

 そりゃあ平穏に越したことは無いし、この何でもない退屈だって喜ばしいことなのだが、なまじ変に付き合いがいいお陰でガールズバンドの連中と忙しい日々を過ごす俺も、言わずもがな退屈とは無縁のバンドで活動する美咲も、刺激的な日々にある程度の慣れを持ってしまってる身だ。

 もう「普通の高校生らしい日常」の過ごし方が、逆によく分からないのだ。

 

「なぁ美咲。なんか面白い話とか無いのかよ?」

「「面白い話」て・・・。もうそれ対人コミュニケーションにおいてしりとりの次ぐらいの最終手段だよ?しかも振られた側がめっちゃ困るやつ・・・」

「仕方ないだろ。俺とお前で話すようなことなんて今更ないんだし」

「てかそうゆうのは男の役目なんじゃないの?目の前の女の子を退屈させない甲斐性ぐらいは見せて欲しいもんだけど」

「はぁ?なんでお前と話す時までそんな気の回し方しなきゃいけないんだよ。めんどくせぇ」

「なんだぁ?こいつ~・・・!」

「うおぉぉ。やめろっ。眉間をグリグリするな」

 

 美咲の人差し指が眉間に刺さるが別に痛くはない。俺の扱いには不満を持ってないようだ。

 美咲の場合は変に女の子扱いをされ過ぎる方が嫌だと思いそうな気がしたのでなるべく自然体で男子と絡む感じのノリで話すようにしている。嫌と言われればやめるつもりだが、結果的にその方が美咲の気が楽そうな気もするし、単純にこいつとはそんなノリで話す方がこっちも楽なのだ。

 同期の連中と話す時は基本的に砕けた話し方をしているが、美咲とは特にその辺の遠慮をしていない。せいぜい最低限の節度を守る程度だ。

 

「でも本当に無いのかよ。面白い話。なんなら面白くなくてもいいからなんかイイ感じの話聞かせろよ」

「無茶ぶりすら雑にするのやめなよ・・・。うーん。まぁ、無いことはないけどさ」

「あんのかよ」

「うん。まぁ、面白い話かって言われると微妙かもだけど」

「この際だから面白さは二の次でいいよ」

 

 そして美咲は少し間を置き、頭で話の内容を整理し、切り出した。

 

 

「薫さん、羽丘でウインク禁止になったって知ってる?」

「面白過ぎるだろ!なんだそのぶっ飛びエピソード」

「いや、なんでも学園内で失神者が続出したとかで」

「確かにファンの人みんな倒れるけど。どんだけ乱発したんだよあの人・・・」

「それで、生徒会に苦情が来て、珍しくあの日菜さんが真面目に注意したらしいよ」

「えっ!?あの日菜さんが?」

「うん。『薫くん、大変心苦しいんだけど、保健室のベッドって有限なんだよ?』って」

「薫先輩がぶっ飛び過ぎて相対的に日菜さんがまともになってる・・・」

「羽沢さん曰く『日菜先輩が頭抱えてるの、初めて見たかもしれない』とのこと」

「よほど深刻なクレームだったんだろうな・・・」

「そりゃあ保健室が病床不足って異常だもん。災害レベルの疫病が流行った時の病院とかじゃないんだよ?」

「なるほど。つまり薫先輩は災害レベルの危険分子だと判断された訳か・・・。難儀な生活してるよなぁ。あの人」

「だね~」

 

 でも、薫先輩だって悪気があってウインクをした訳じゃないだろう。いや、そもそも悪意を持ってウインクする奴の方がいないと思うけど。それでも・・・

 

「ちょっと、可哀想じゃないか・・・?」

「仕方ないよ。保健室が埋まるのは流石にね・・・」

「でも薫先輩だって、ただファンの子に喜んで欲しかっただけだろ?失神者の続出はあくまで結果論だ」

「その結果が無視できないレベルになってるからそうなってるんだよ。実際に羽丘以外でも迷惑かけちゃうことだってあるし、それこそライブハウスなんかもその筆頭だよ?レンだってハロハピのライブで運営手伝ってくれてる時に、失神したお客さんの応急処置したりするじゃん。大変でしょ?」

「大変じゃねえよ。5回目あたりからCiRCLEのスタッフみんな慣れてんだよ。舐めんじゃねぇぞ」

「あーーー!そうだった!いつもお世話になってます!」

「ちなみにハロハピのライブ前日、まりなさんと一緒に応急処置のおさらいをするのはスタッフの間では恒例になっているぞ」

「うっわ。何それ本格的に頭上がらないやつじゃん・・・」

 

 まぁ、失神の処置自体は大して難しくない。そもそも数十秒とか数分もあれば倒れた人も復活する。ただしばらく安静にさせとかなきゃいけないだけだ。その場で放置とかしない限りは問題ない。

 ・・・正直、わざわざ保健室まで連れて行かなきゃならない程のものでもないのだ。ライブ中なんかは客席が熱狂的になってて危険だから、その場から引っ張り出す必要があるが、学園内であればよほど酷い気絶をしてない限り、その場に座らせて深呼吸でもさせておけば復活する。

 それでも保健室が埋まるのは、たぶん周りの人間が失神して倒れるというのが、そもそも非日常であり、対処も分からない人が多いからだろう。

 

「失神の応急処置マニュアル、羽丘の人用に作ってもいいかもな。『急に頭を上げるな』とか『起きても10分とか20分ぐらいは休ませろ』とか」

「あぁ、それいいかも。なんなら今度ハロハピで講習会でも開こうかな?失神の原因、そもそもうちのメンバーだし」

「まぁ、薫先輩のことを抜きにしても、この手の応急処置は覚えてて損はないだろうしな」

「そうだねぇ。ただ禁止されるだけじゃ、薫さんもファンの子も不憫だし・・・」

 

 それにこうして応急処置のやり方が全生徒に普及すれば、ファンの子たちも安心してぶっ倒れることが出来る。

 ・・・俺と美咲の間で、1つのプロジェクトが立ち上がった瞬間だった。

 

「あたし、今度こころに相談してみるよ」

「わかった。俺もマニュアルの掲載、日菜さんに掛け合ってみる」

「問題は内容だよね。もし講習会もマニュアルの掲載もOKが出たとしたら、大まかな内容は統一したい」

「だよなぁ。順序も要点もほぼ同じようになるとは思うけど、万が一食い違いがあってもダメだし・・・」

「これもまた後から決めていく感じになりそうだね」

「よし、じゃあ今からでも決められそうなことは――」

 

 作戦会議も温まってきた頃、2人してがっつり話の内容にのめり込んでいた、まさにその時だった。

 

「奥沢さん!!今井君!!」

「「うあぃ!!!」」

 

 いつの間にかすぐ傍に詰め寄っていた数学の教師からお叱りを喰らった。

 時計を見るともう授業の開始時刻。どうやら話に夢中になり過ぎたらしい。騒がしかったクラスメイト達も、知らぬ間にみんな着席して静まり返っている。

 

「大変殊勝な心掛けの話だとは存じますが、もう休み時間は終わっています」

「「はい。すいませんでした・・・」」

「次やったら課題増やしますからね?」

 

 最後に脅しをかけた後、数学教師は教卓に戻っていった。

 でも夢中になったのは仕方ないと思う。話の内容が内容だったし、そもそも「瀬田薫、羽丘でウインク禁止」とか誰でも引き込まれる話題じゃないか。つまりこれは・・・

 

「美咲のせいだ」

「いや、それは意味わかんないでしょ」

「あんな面白過ぎる話するから・・・」

「あんたが『面白い話しろ』って言うからお望み通りしてやったんじゃん!文句なら受け付けないよ」

「・・・今度の記事で『こころとデキてる』って誤報流してやる」

「いくらなんでもゲスすぎるでしょあんた・・・」

「へっへっへ。この際だから見せてやるぜ。ジャーナリストのちか―」

 

「今井君!!本当に課題増やしますよ!!」

「えっ!ちょっと待ってくださいよ!なんで俺だけ!?」

 

 その後、俺の課題はなんとか増えずに済んだ訳だが、先生の視線は授業の終わりまでずっと痛かった。




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