集計時間45時間
倉田ましろの『お兄さん』呼びを―
【受け入れる】………65人 43%
【受け入れない】……86人 57%
俺は、ましろの呼び方を受け入れない…!
「ましろ。申し訳ないけど、お前にその呼び方をさせることは出来ない」
「・・・どうして、ですか?」
「俺は兄として、妹を泣かせる選択は取れない」
「レンさん・・・」
ましろの腕の力が弱まる。俺はましろの腕を解き、自由になった手をましろの頭に乗せる。
「でも勘違いするなよ?ましろが嫌だとか、そういう理由で言ってる訳じゃないからな」
「それは・・・」
「今まで通りに絡んでくれていいし、頼ってくれていい。話ならいくらでも聞くし、困ったことがあったら駆けつけてやる。でも、その呼び方だけは譲れそうにない」
「・・・」
「だから、本当にごめん」
傷つく・・・という程でもないが、それなりに落ち込んだ様子を見せるましろ。俺は、なけなしの優しさで頭を撫でることしか出来ない。
「所詮、俺も家に帰ったら弟だからさ。2人も3人も・・・なんてのは無理なんだよ。妹は1人で精一杯だ」
「そうですか・・・なら、仕方ないですね。『お兄さん』呼びは諦めようかな」
「ましろ・・・」
「これからも、優しいレンさんでいてくれますよね?」
「あぁ。それは約束する。ましろとはこれまでのようにするし、呼び方以外は全部受け止めたいと思ってる」
「なら、充分です」
「・・・よかった」
「でも、あんまりつくしちゃんとベタベタしないでくださいね?せめて私の前では」
「それは、悪かった」
「私にも構ってくれなきゃイヤですよ?」
ましろは冗談めかして笑う。選択は拒絶だったが、ましろのことは深く傷つけずに済んだらしい。
「じゃあそろそろ、そこでボーっとしてるつくしちゃんを起こさないと、ですね」
「・・・ホントだ。なんで固まってんの?」
「いや、レンさんが『妹を泣かせる選択は取れない(キリッ)』とか言った辺りからずっと放心状態でしたよ?」
「そのセリフ掘り返すんじゃねえよ。恥ずかしい。おーい、つくし?」
ペチペチ・・・
「あっ、はいっ!大丈夫です生きてます!」
軽く頬をペチペチすると、慌てた様子でつくしは手を離した。
・・・やっと両腕が自由になった。
「どうしたんだよ?」
「いや、思い返すと恥ずかしいことやったなって・・・」
「あぁ。確かにつくしちゃん、好き好き言いまくってたもんね。「優しいレンさんが好きで」から始まり・・・」
「うっ・・・!」
「しまいには店中に響く大声で「世界で一番お兄ちゃんが大好きー」って・・・」
「あーーー。待って。言わないでぇ・・・」
「お客さん、みんな聞いてたよ。つくしちゃんの愛の告白」
「違うってぇ・・・。そういうのじゃないじゃん・・・」
自分の行動を掘り返されてつくしの顔も真っ赤になっている。・・・可愛い。
「うぅ・・・。レンさんも何とか言ってくださいよ・・・。」
「なんで?俺は普段聞けないつくしの本音が聞けて嬉しかったぞ?」
「へっ・・・!?」
「つくしがこんなに俺のことを好きでいてくれるなんて、知らなかったから」
「ち、違。そうじゃなくて・・・」
「じゃあつくしちゃんは、そうじゃないのにあんなこと言ったの?」
「ま、ましろちゃん・・・」
「『世界で一番大好き』なんだもんね?」
「~~~ッ!お願いだから、その部分掘り返さないで~っ!」
ましろのやつ、絶対楽しんでる。
「レンさん」
「ましろ?どうした」
「いえ、私、レンさんと過ごしてる時間って好きだったんです。『お兄さん』って呼びたくなるぐらいでしたから。でも・・・」
ましろは爽やかに続ける。
「今はそれと同じぐらい、つくしちゃんをイジるのが楽しいです♪」
「ちょっ、ましろちゃん!?」
「お、なんだ。お前もからかいの妙ってもんが分かってきたようだな」
「レンさん!?」
「「ニヤニヤ」」
俺とましろは目を合わせて笑い合う。
「もう!なんで2人の方が仲良さそうにしてるの!?妹は私なのに!!」
「「へぇ・・・?」」
「あれ、なんで私の方を見てニヤニヤするの?2人とも?」
そんな可愛いセリフを言われて、俺たちがスルーする訳ないだろうに。
「ましろ、今からつくしを挟もう」
「そうですね。お兄ちゃんを取られた妹さんがヤキモチ妬いちゃってますから」
「待って!やっぱりいいから!今のましろちゃん隣に置きたくない!」
「じゃあ、そのままでいいの?お兄ちゃん取られちゃうかもよ?」
「それは・・・」
イヤなのか・・・。
ましろは既につくしの隣に移動していた。俺たちは2人掛かりでつくしに詰め寄る。
「つくしちゃん、意外と独占欲強いんだね」
「そんなこと、ないし・・・」
「お兄ちゃん取られると思ったの?」
「違うって言ってるでしょ・・・」
つくしは赤くなって縮こまる。
「そんなつくしも可愛いよ」
「もう、レンさんまで―」
「んー?」
「お、お兄、ちゃん・・・」
可愛い。
「ねぇ2人とも。もうやめよ?本当に恥ずかしいから・・・」
妹が涙目で懇願してくる。
俺はつくしの頭を撫でながら、ましろとアイコンタクトを取る。
「大丈夫だよ、つくし。心配しなくても・・・」
「私たちが時間いっぱいまで可愛がってあげるからね♡」
「ちょっ!2人とも~~~!!」
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俺はつくしと2人で公園に来ている。店を出てからは3人で帰るつもりだったが、「今ぐらいは兄妹水入らずで・・・」と言われ、2人で帰っていたところに公園を見かけて、そのままつくしに連れ込まれた。
「で、なんで俺は連れ込まれたの?」
「もう少しお兄ちゃんと一緒にいたくて・・・ダメ?」
「ダメな訳ないだろ」
最初は恥ずかしがっていた呼び方も、今となっては板についてきた。2人きりになったら敬語だって抜ける。もう開き直ったのだろう。
「私、2人だけじゃない時でも、お兄ちゃんのこと「お兄ちゃん」って呼びそうになるの。やっぱり染みついちゃったのかな?」
「気を付けろよ?今はましろしか知らないけど、こんな呼び方してる関係なのは秘密なんだから」
「うん。でも『ヒミツの関係』って、なんかドキドキしない?」
「・・・どうだろ」
誤魔化したけど、ドキドキはしている。冗談や遊びの呼び方とも、呼べなくなってきたから。
つくしは振り返って、俺を見つめてくる。
夕暮れ時の公園には誰もいない。俺とつくしの2人きり。
「今井、レンさん」
手を後ろで組んだ小柄な少女は、真面目なトーンで語りかけてくる。少女の顔が夕暮れに染まる。
吹き抜ける風に、少女のツインテールが揺れる。
「私を、『妹』にしてください。
『お兄ちゃん』に、なってくれますか?」
冗談や遊びじゃない。
俺の目の前に立つ女の子は、本気で『兄』としての俺を求めている。
・・・こんな求められ方をされて、誰が断れようか。
俺も、『妹』としてのつくしを求める。
俺は、二葉つくしを『妹』にする。
「こんな俺でよければ。喜んで」
「・・・!」
「ほら、おいで」
つくしは真っ直ぐ俺の胸に飛び込んで来た。飛び込んでくる『妹』を、俺は全力で抱きとめる。
「お兄ちゃん!好き・・・!大好き・・・!」
「つくし、ちょっと落ち着いて」
「ダメ!もう我慢できない!好き。好き!好き・・・!!」
「つくし・・・!」
堰を切ったように、妹が想いをぶつけてくる。こんなにストレートに色々と言われるのは苦手だ。本当なら落ち着かせたり離したりするのだが・・・。
「(まぁ、これも『お兄ちゃん』の役目かな)」
俺はつくしの言葉を最後まで聞き続けた。
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しばらくすると、つくしは落ち着いた。恥ずかしくなったのか、今は少し離れている。
「お兄ちゃん」
「何?」
「お兄ちゃんからも、私に何かしてくれていいんだよ?」
「俺から?」
「私ばっかり受け止めてもらってる気がするもん」
「それじゃ、ダメ?」
「そりゃあ、妹はお兄ちゃんに甘えて頼るものだけど、兄妹って支え合うものでしょ?私ばっかりなのは、やっぱり違うと思う。だから、お兄ちゃんにも私を求めて欲しい」
「『求める』か・・・」
「うん。『兄妹』になるって、そういうことだと思うから。『お兄ちゃんだから上』とかじゃなくて、もっと対等な関係が兄妹だと思うし・・・」
俺が思ってる以上に、つくしはこの関係を真剣に考えていた。
「せめて「好き」って言うぐらいはして欲しい。私はあんなに言ったのに、お兄ちゃんの口から聞いてないし。ましろちゃんには言ったくせに・・・」
「それは、確かにな」
兄妹なら、その言葉を交わすぐらいはしてもいいだろう。でも、せっかくなら俺の気持ちがしっかり伝わる方法で伝えたい。つくしがあんなに精一杯伝えてくれたのなら、その分ぐらいは返すべきだ。
俺だって、つくしのことが好きなのだから。
「つくし、実は1個、したいことがある。ちょっと踏み込んだことだけど」
「踏み込んだこと?」
「うん。身長差あるとやり辛いんだけど。まぁ、俺が合わせたらいいか・・・。ちょっと、そこでじっとしてて欲しい」
よく分からないのか、つくしは首を傾げている。
俺は、つくしのすぐ近くに歩み寄る。
「目、閉じて」
「・・・?」
つくしは目を閉じて無防備になる。後は、俺がつくしへの想いを伝えるだけ。
俺は―
chu…
つくしの頬へ、唇を押し当てた。
「へっ・・・!?」
「大好きだよ。つくし。愛してる」
「はわわわわわわ・・・!」
取り敢えず、俺の気持ちは全て伝えた。あまり恥ずかしがらずに済んでいるのは、つくしがそれ以上に赤くなっているからだろう。
でも・・・。
「踏み込みすぎたかな・・・?」
「だだだだだ大丈夫だよこんなの!」
「大丈夫じゃないだろ」
「い、いや、本当に大丈夫だから。こんなの、兄妹なら普通だよ」
「普通なのか?」
「私の妹は、してくるし・・・私だって妹にするし。ス、スキンシップだよこんなの!」
「俺からしといて言うのもアレだけど、本当にいいのか?」
「いいの。兄妹なら、普通。兄妹なら・・・!」
自分を誤魔化してるようにしか見えないが、許されたのだろう。でも、今日はここまでにして解散しよう。日も沈んで暗くなってる。
「つくし、そろそろ帰ろう。送るよ」
「そう、だね。これ以上は私もキャパオーバーしそうだし・・・」
やっぱり恥ずかしかったのか、限界はすぐそこだったらしい。
しかし、つくしを連れようと思うと、裾を引いて止められた。
「お兄ちゃん・・・」
「何?」
「もし次にすることがあったら、私からも、その、ほっぺに、ちゅ・・・ってして、いい?」
「・・・いいよ。俺も、して欲しい」
「そっか・・・」
つくしは上目遣いで俺を見つめてくる。この子は、俺の妹だ。
「お兄ちゃんの唇、柔らかった・・・」
「お前だって、柔らかかった・・・」
「そりゃ、頬っぺただし・・・」
公園を出るまで、俺たちの間には変な空気が流れ続けた。
・・・バイト上がりの夕暮れ。俺に1人の妹ができた。
【カフェテリア内、メガネを掛けてPCを開いた大学生の独り言】
「なるほど。こんな結果になったか。ましろちゃんの『お兄さん』呼びを見たい人、多いと思ったんだけどなぁ。つくしちゃんへの良心でもあったのかな?割と拮抗してた方だとは思うけど。まぁ、これが読者様の選択なら従いますよ」
「で、どうだった?みんなが望んでた修羅場シチュだった訳だけど、こっちは書いててそれなりに辛かったよ。原作キャラをギスギスさせたりする地獄、考えたことある?」
「いや、文句ではないですよ。筆はサクサク進みましたから。まぁ、思うところがあれば、また感想お願いしますってことで、それじゃ・・・」