ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 「ポピパやロゼリアのメンバーの話が見てみたい」とのリクエストが感想で来たので試しに応えてみました。

 前回の有咲の話、個人的には手応え無かったんですけど投稿してから30人ぐらいお気に入りが増えてるんですよね。やっぱ需要ってわかんないっすわ。

 


6.湊友希那とお茶するシチュ

 休日になると、記事が仕上がっている場合に限り、俺はよく羽沢珈琲店に立ち寄る。家からも遠くないし、内装は綺麗で、食べ物も美味しい。店員さんの羽沢つぐみは天使のような笑顔を振りまいてくれるし、運が良ければ現役アイドルの若宮イヴの姿まで拝める。徹夜続きの俺にとってはこれ以上ない癒しだ。

 さらに、今日は贅沢なことにもう一人の美女が俺の連れとして正面に座っている。長い髪を靡かせたクールな美女である。

 そして俺はその正面の美女と・・・

 

「レン。もう食べ物届いてるわよ?」

「あ、はい。すいません」

「謝られても困るわ・・・」

 

 重々しい空気をひしひしと味わっていた。

 

 

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 湊友希那はお隣に住む幼馴染のお姉さんだ。最近までは疎遠になっていた人でもあるが、取材を通したり、CiRCLEのイベント関係の用事で関わるようになってからは低頻度で連絡を取れるようになっていた。ただ、逆に言うと取材やイベント以外の用事で話をすることは全く無い。

 つまり、大事な連絡事項の一つでもない限り、友希那さんとはまだ気まずいのだ。

 

「はぁ。そんな調子でどうするのよ。わざわざ休日に誘ってきたのはあなたでしょう?」

「いや、もう、本当にすいません」

「だから、私は謝ってほしい訳じゃないのよ・・・」

 

 姉さんとキャッチボールをした際、友希那さんが俺に会いたがっているというのは聞いていた。俺としても友希那さんといつまでも気まずいのは嫌だったので、昔のように、とまではいかなくても、軽い雑談が出来る程度には関係を戻したいと思って誘ったはいいが、全くうまくいかない。そもそもどうやって会話してたかも思い出せない。

 姉さんと一緒に来てもらうというのも考えたが、この件はどうしても俺一人で片を付けたかった。

 ・・・友希那さんから逃げたのは俺なのだから。

 

「それにしても、こうしてレンと食事をするなんていつ以来かしら?」

「確かに、大人数の打ち上げとかは何回かありましたけど、二人きりで行くことなんて無かったですからね」

「はぁ・・・」

 

 返事をすると友希那さんからため息をつかれた。何か気に障ることを言ったのだろうか。

 

「レン。いい加減、敬語を抜いてくれないかしら?」

「え?いや、でも、いいんですか?」

「あなたからここまでよそよそしくされるとこっちの調子まで狂うのよ。それに・・・」

「・・・」

「寂しいじゃない。昔はあんなに一緒に遊んだのに、こんな他人行儀な態度なんて嫌よ。あなたが誘ってくれて・・・ちょっと嬉しかったのに。」

 

 友希那さんは恥ずかしそうに目を逸らしてそう言った。

 そうだ。友希那さんだって俺に会いたがってくれてはいたのだ。この状況で俺から壁を作ってどうする。最近の話でも何でもいい。とにかく友希那さんに話しかけなければ。

 

「そうだな。さっきは悪かったよ友希那さん。せっかく休日なんだ。楽しい話をしよう」

「ええ。そうね」

「ああ、そう言えば最近の学校はどうなんだよ?姉さんから授業中寝てるとか聞いたけど」

「まったくリサったら余計なことを・・・赤点も追試もちゃんと回避してるわよ・・・。レンの方はどうなの?勉強、今も苦手なんでしょう?」

「要領が悪いのは相変わらずだからな。最近は有咲とか紗夜さんに見てもらってる。」

「紗夜に?随分仲がいいのね?」

「部活で絡むことも多いしな。教え方も分かりやすいし、頼れる先輩って感じ。」

「私とは気まずくなってたくせに、紗夜には勉強まで見てもらってたの?・・・なんか腹立つわね。」

「えぇ・・・」

 

 コーヒーに大量の角砂糖を入れながら、友希那さんはそうぼやいた。相変わらずブラックのコーヒーは苦手らしい。

 それにしても、敬語抜いたら随分話せるようになった気がする。友希那さんとの会話の感覚は確実に戻ってきている。

 

「そういえば、友希那さんが食べてるパンケーキ、結構美味そうだよな。」

「ああ、これ?確かに食べやすい味ね。コーヒーの苦みともよく合うし」

「あんだけ角砂糖ぶち込んどいてまだコーヒーに苦み感じてんのかよ・・・」

「うるさいわね。でもパンケーキ、気になるなら食べてみる?」

「いいのか?」

「ええ、元々多かったし問題無いわ。ほら、あーん」

「じゃ、遠慮なく」

 

 そう言って差し出されたフォークからパンケーキを頂く。昔はこうやって姉さんや友希那さんから美味しいものを分けてもらったものだ。「あーん」をする時、友希那さんはいつも優しく微笑んでくれる。それは今でも変わらないようで嬉しい。まぁ、いい年をして幼馴染からの「あーん」を抵抗なく受け入れてしまえる自分のことは少し問題だとも思うが。

 いや、それにしても美味いなこのパンケーキ。

 

「本当に美味しそうに食べるわね。さっきのより大きいやつ、もう一切れあるけど食べる?」

「マジで?そっちもくれるのかよ。超欲しい」

「まったく、慌てないの。ほら、あーん」

「あむっ」

 

 そうしてまたパンケーキを口に入れる。もう生地そのものが美味しい。程よくかかったハチミツも良い味を出している。ここまで美味しいと頬が緩んでしまいそうになる。

 

「成長したレンを見て、大きくなったとか、昔はあんなに可愛かったのにとか、色々考えていたのだけれど、食べる姿が可愛いのは相変わらずなのね」

「・・・姉さんもちょくちょくそうゆうこと言うけどさ、俺は別に可愛くないだろ」

「そんなこと無いわ。パンケーキ1つでほっぺをあんなに大きく膨らませて、すごく幸せそうに食べるのよ?見てるこっちまで幸せになりそうだわ」

「なあ、俺はあんたの息子か何かなのか?そんな慈愛の笑みで言われたって困るんだけど」

「息子と言うより、弟かしら。実際そんな風に接していた訳だし、リサの弟だったら私の弟も同然よ」

「友希那さん。少なくとも俺、あんたを姉だと認識したことないんだけど」

「そうだったかしら?昔は「ゆき姉」って呼んでくれたじゃない」

「まーた懐かしい呼び方だなおい」

「そうね。確か少し成長して、「ゆきちゃん」って呼ぶのが恥ずかしくなったのよね。」

「友希那さん。そろそろやめよう。俺の黒歴史を暴露する流れになってる」

「昔のレンは本当に可愛かったわ。いつも私たちの後ろにくっついてきて、「ゆきちゃん大好きー」って」

「あの、この間の姉さんと同じ場所を掘り返すのやめてもらっていいですか?流石に外でこの話されるの拷問なんですけど」

「お祭りで私と迷子になった時なんか」

「友希那さあぁぁぁぁん!!!!!?????」

 

 

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 しばらく話し込んでいると、既に夕方になっていた。今は退店し、羽沢珈琲店の入り口から少し歩いたところで留まっている。

 友希那さんとの話すのは楽しかったが、油断すると俺の恥ずかしい話が始まりそうになるので少し疲れた。

 

「レン。今日は誘ってくれてありがとう。久しぶりにあなたと楽しく話せた気がするわ」

「ああ。俺も楽しかったよ」

 

 二人でそんなことを言いつつもお互い帰ろうという雰囲気にはならない。多分、俺も友希那さんも名残惜しいのだ。あまりにも気持ちよく話せたものだから、もっと一緒に居たくなっているのだ。

 

「・・・」

「・・・」

 

 時間稼ぎの会話もできなくなった。

 まぁ、今回は俺から誘ったんだし、別れの挨拶ぐらいは俺がやろう。友希那さんが満足して帰ってくれそうな挨拶は思いついている。

 俺のことを気にかけてくれて、俺にパンケーキを分けてくれて、会計で財布を出そうとした俺に「私がお姉さんなのよ?」と言いながら俺の分まで払ってくれた、幼馴染のお姉さんへの感謝ぐらいはちゃんと伝えよう。

 

「今日は会ってくれて本当にありがとう。じゃあな。『ゆき姉』!」

 

 挨拶を聞くとゆき姉は驚いた表情をしていた気がするが、気にせずに早歩きで帰り道を急ぐ。結構恥ずかしかったが後悔はしていない。

 しかし、ゆき姉は空気を読まずに走って追い付いてきた。

 

「ちょっとレン。待ちなさいよ」

「何の用だよ。結構恥ずかしかったんだぞアレ」

「何の用も何も、私たち帰り道一緒じゃない。忘れたの?」

「あっ・・・」

「ほら、お隣だし」

「・・・帰りますか。一緒に」

「ええ。そうね」

 

 帰り道は当然ゆき姉に呼び方のことで弄られた。そして店員だったつぐみからはゆき姉とのやり取りの一部始終をばっちりと目撃された。

 

 

 前言撤回。恥ずかしかったし、後悔もしている。

 




 「読みにくい」や「良かった」などの感想や意見、また「このキャラを出してほしい」などのリクエストがあれば感想にお願いします。

 
 感想、一言でも書いてくれたら嬉しいです。待ってます。



 おしゃれやと感じるからなのか、みんな喫茶店行く時に「お茶する」って言い方しますよね。お茶を飲むわけでもないのに。
 コーヒーを飲むぐらいの誤差ならわかりますが、最近やとマクドナルドで友人たちとハンバーガー食べに行く時にすら使われてますからね。

 着飾ることを意識した結果として本質を見失う。人間もこうゆうとこありますよね。

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