今回の話は、ガルパのイベントストーリー『あたしのためのカデンツァ』のネタバレ要素を含みます。
あの時のつくしちゃんが可愛かったから接待しました。
見せてやりますよ。9000文字を超える、私の全力接待をね!!
休日の昼下がり、特に目的も無く駅前を歩いていると、様子がおかしいつくしと遭遇した。
そう、まるで誰かから隠れるように電柱へ身を隠しているつくしと。
「何やってんだお前?こんな所で」
「あっ、お兄ちゃん。今、ちょっと大変だから後にしてくれない?」
「大げさな。全然そんな様子じゃないだろ。何が大変だって―」
「向こうで透子ちゃんとるいさんがデートしてるの!!」
「何ィ!?」
それは大変にも程がある。
俺は急いでつくしの後方へ身を隠し、ホシの様子を確認する。
「マジだな。手を繋いだりしてる訳じゃないけど、割と仲良さそうに歩いてるな」
「そうなの。私も最初に見た時はビックリしたよ。あの2人が休日に2人きりでお出かけなんて」
「あの2人、そんなに仲良しだったのか?俺の中のあいつらって、隙あらば言い争ってるイメージなんだけど」
「まぁ、同じバンドで上手くやってるし、険悪って訳じゃないけど、私から見てもそんなイメージなの。けんかの仲裁、いつも大変だし」
「仲裁って、いつもお前がやってるのか?」
「そりゃあ、リーダーだし」
「偉いな」
「ふふーん。じゃなくて、ほらあの2人、そのまま建物に入っていくよ」
「ショッピングモール?本当に何しに行くんだ?」
こうして俺はつくしの尾行にサラッと参加し、そのまま2人の行方を追い続けたのだった。
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「服屋さんに入っていったね」
「そうだな。見るからにちょっと良さげな店」
「うーん。2人は何を話してるんだろ?もうちょっと近づけたらいいんだけど」
「いや、多分これ以上近付いたらバレると思うぞ。障害物も多くないし」
「そうなんだよね・・・。うぅ。気になる」
「同感だ」
様子を窺っていると、2人はそのまま上着のコーナーで商品の物色を始めた。
何やら真剣な表情で話し合ってるのは分かる。
「大人っぽい上着・・・るいさんのを選んでるのかな?」
「でも、あの上着、ちょっと小さくないか?遠目だから分かりにくいけど、あの優等生のサイズじゃないと思う」
「確かに。よく見たら合わせてるのは透子ちゃんだけど・・・でも、透子ちゃんの趣味でもない気がする」
「「うーん」」
悩む俺たちを余所に、2人は商品を買い上げ、せっせと店を出て行った。
「デートの割に、あんまりイチャついてないな・・・」
「うん。多分だけど、お兄ちゃんが期待するようなことは無いと思うよ?さっきは『デート』って言い方しちゃったけどさ」
「いーや、まだ分からないぜ。絶対にこの後に手を繋ぐ展開ぐらいはある!」
「流石に無いって。私、メンバーだから分かるけど、あの2人、本当に隙あらば言い争ってるんだからね?」
「ふざけんな!他人がいる場所でいつも言い争ってる2人が、2人だけになった時に甘えたりイチャついたりするっていう、一番燃えるように萌える展開があるかもしれないだろうが!しかもそれが、やんちゃなギャルとクールな優等生の組み合わせで繰り広げられてんだぞ!?」
「お兄ちゃん。幻想と現実は違うんだよ?そんな都合のいい理想郷が存在するなんて、本気で思ってるの?」
「うるさい!夢を追い続けている限り、男はみんなコロンブスなんだよ!」
「訳わかんないって・・・」
こんな口論を繰り返しながら、俺たちは透子と瑠唯を後ろから追跡していった。
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次に2人が向かったのは、アクセサリーショップだった。
ここにはちょうど、前にもつくしの妹たちへのプレゼントを探しに行った場所でもある。店の棚の配置は分かるが、服屋よりも身を隠す場所が無いため、そのまま店外から様子を窺う形になっている。
あの2人はしばらくは店から出る様子もない。なので・・・
「つくし~。飯買ってきたぞ」
「あ、ありがと。どれどれ?」
「そりゃあ、尾行にはあんパンと牛乳しかないだろ。前に試した時も、かなり腹持ちが良かった」
「いや、腹持ちはいいかもしれないけど、これ張り込みじゃないんだよ?」
「張り込みみたいなもんだろ。それで、ホシの様子は?」
「ずっとヘアアクセのコーナーで話し合ってる。それ以外は特に無しかな」
「とか言いつつ?」
「お兄ちゃんが期待する展開も無かったよ。それも見張ってたけどさ」
「なるほど。お互いに『まだ』奥手なんだな」
「諦めなって・・・」
牛乳であんパンを流し込み、様子を窺うが、確かにつくしの言う通り、向こうにはあの2人の真剣そうに話し合ってる光景が見えるだけだ。
デートなのに・・・デートなのに・・・!
「くそっ・・・じれってーな。俺、ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!!」
「ダメだってば!今から突然お兄ちゃんが現れても変な空気になるだけだから!」
「じゃあなんすか?あの2人は結局デキてないって言うんですか?」
「お兄ちゃんキャラ変わり過ぎだって。確かに珍しい光景だったから私も余計な勘繰りしちゃったけどさ。多分あの2人シロだよ。ただ仲良く買い物してるだけだって」
「いや、でも・・・うーん。そうだなぁ。服に、アクセサリーに、普通のJK同士の買い物でしかないし。・・・あーあ。結局時間の無駄だったな」
「でも、普段からけんかの仲裁してる身としては、仲良くしてる光景を見れただけでも、収穫かな」
「あー・・・。まぁ、それもそうだな」
結局、大した現場の目撃は出来なかったが、リーダーが納得したのなら、もう、それでいいだろう。
「尾行、もうここまでにしとくか」
「そうだね。もうすぐ夕方だし」
「よし。せっかくここまで足を運んだんだ。前に来た時のたい焼き屋でも行こうぜ」
「そうだね。あ、でもお金あったかな?」
「そんぐらい兄ちゃんが奢ってやるよ。気にすんな」
つくしの頭を撫でる。
やっぱり身長差があるからか、つくしの頭は撫でやすい。
「前に来た時も奢ってもらったけど、いいの?」
「いいよ」
「今日の分まで奢ってもらえるなんて、思ってもみなかったよ」
「ふぅん?」
「・・・」
「本音は?」
「正直、『たい焼き』ってワードが聞こえた時点で、8割ぐらい期待してました」
「こいつめ」
「えへへ・・・」
腹立つ。ちょっと可愛いのが尚のこと腹立つ。
まぁ、奢るんだけど。
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たい焼き屋の近くのベンチに座り、街並みに沈みそうな夕日を余所に、俺とつくしはたい焼きを頬張っていた。
「美味い」
「うん。この飾らない味が、一番美味しいんだよね」
「違いねえ。やっぱり安心感が違うんだよなぁ・・・」
夕方の少し肌寒い風が、俺たちの間を吹き抜ける。
「なんか今日、意味もなく時間を浪費しちゃった気がするなぁ。私が今日やったこと、友達の尾行して、お兄ちゃんとたい焼き食べただけだよ?」
「たまにはいいだろ。意味もなく時間を使うのも」
「そう?」
「つくしが一緒なら、そんな時間も悪くないかなって。俺はそう思ってる」
「・・・確かに。なんだかんだ楽しかったし」
つくしが、肩をくっつけてくる。
流石に人目が多いからか、これ以上のスキンシップはしてこないが、本人が気を許してくれてることは分かった。
俺からも、何かしようか。と、そう思った瞬間だった。
「あれ?ふーすけ!!それにレンさんも!!」
「「えっ?」」
急いでつくしと距離を取り、声の主を確認すると、さっきまで俺たちが尾行していた2人だった。
「透子ちゃん。それにるいさんも・・・」
「あれ?なになに?2人、もしかしてデートなの!?」
「そっ、そんなんじゃないってば!」
「あぁ。さっき偶然会っただけだ。そっちこそ珍しい組み合わせだけど」
「そうだよ!そっちこそデートだったんじゃないの!?」
「はぁ~~?あたしとルイが?」
「二葉さん。いくらなんでも心外よ」
「そこまで言わなくても・・・」
「じゃあ、なんで2人が一緒にこの場所で?」
そう聞くと、2人は少し歯切れが悪そうな顔をする。
あれ?もしかして・・・とも思ったが、そうではなかったらしい。
「ねぇ、ルイ。もう、ここで渡すのってどうよ?」
「そうね。ちょうど2人、せっかく目的が目の前にいるのだし、その方が効率的ね」
「「?」」
話が見えないままの俺たちを余所に、透子は紙袋を漁り始めた。
「じゃあ、まずは、さっさと終わるレンさんの分から」
「・・・俺?」
「はい。トーコレの宣伝とか、ありがとうございましたってことで」
「えっ?トーコレの宣伝、レンさんにも頼んでたの?」
「あぁ。花咲川の生徒に向けに、記事書いて告知してくれないかって頼まれたんだよ。別にお礼なんていいのに」
「いえいえ!あの時はマジで人手も足りなかったですし、重い機材運ぶのに男手があったのはマジで有難かったんで!」
「え?現場にも居たの?」
「まぁ、アレは『女子高生の為のイベント』だったからな。目立たないようにしてたんだよ。ほぼステージ裏に籠りきりで、他のブースに行ったりもしてなかったし」
「いや~、ふーすけにも見せたかったですよ!あの時のレンさん、マジで有能だったんで!」
「いや、掘り返さなくていいから」
「いーやダメです!これはちゃんと語り継がないと!」
「おい。ちょっと待―」
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【放課後、新聞部 部室】
「レンさん。これがトーコレでやろうとしてることの一部なんですけど、そして、これからも更にやる事が増えるかもなんですけど・・・」
「随分、直前に駆け込んできたな。この情報量のイベントの告知をすぐ記事にって。結構めちゃくちゃなこと言ってるぞ?せめてもっと早く教えろよ。まったく・・・」
「そうなんです!それは分かってるんですけど・・・」
「悪い知らせだ透子。この情報量を記事に落とし込んで宣伝するには、少なくとも4日はかかる」
「そんな・・・じゃあ良い知らせは!?良い知らせは無いんですか?」
「良い知らせ?あぁ、もちろんある」
ニヤリ。
「俺なら一晩で片付く」
「レンさん・・・!」
「あと、ライブの運営とか設営。なんならそれも手伝えると思う。野外ライブなら、重い機材の運搬もあるだろうし、男手としても力にはなれる。その日はバイトも無いし」
「設営って、そんなことまで?」
はぁ・・・
「俺を誰だと思っている?我CiRCLEのスタッフぞ?」
「レンさん・・・!あっ、でも、イベントで集まるの、女の子ばっかりだし、その、レンさんがいると、その・・・」
「なるほど。でも、男子禁制ってハッキリ言ってる訳でもないんだな?」
「はい。言ってないですし、人員も猫の手を借りたい状況ですけど・・・」
「じゃあ、俺がJKの為のイベントでも目立たない状態であれば、問題無いんだな?」
「それは、どういう・・・?」
「なーに。ちょっとばかし男のプライドを捨てるだけだよ。後は透子が秘密にしてくれればいい」
「まさか・・・」
「体格を隠すようにダボダボのパーカーにロングスカートを合わせて、顔を隠すように帽子とメガネをつけた、妙に口数が少ないショーヘアの女が居れば・・・それが俺だ」
「いいんですか!?そんな・・・」
「めちゃくちゃ嫌だけど、ガールズバンドの女の子が全力出して成し遂げたいことがあるなら、例外なく全力で支援することにしてるんだ。もしもライブ運営に人員不足が出るようなら、俺を使えばいい」
「そんな。宣伝だけでも迷惑かけるのに、ライブの運営まで、しかも女装で・・・」
「『花咲川に宣伝する』、『女装でのライブ設営も手伝う』。「両方」やらなくっちゃあならないってのが、「先輩」のつらいところだな」
「やっぱり負担が大きすぎますよ!ただでさえレンさんは―」
「おい」
「・・・!」
「もう一度言うぞ」
・・・!!
「俺を誰だと思ってやがる?」
神はいる。そう思った。By.桐ケ谷透子
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「ってことがあって、イベント中もライブの運営とか、重い機材の片付けとかやってくれたし、テントの準備まで手伝ってくれてすっごい有能だったの!」
「おい透子!俺が今世紀で一番カッコつけた部分までピックアップするんじゃねえよ!」
「でも、全然気づかなかった。あそこに紛れてたなんて・・・」
「まぁ、あのイベントのグループチャットにも入ってなかったからな。俺のことを知ってたのは、主催の透子と人員の管理をしてた瑠唯だけだったし。あと、当日に俺をメイクした姉さんもか」
「でも、プライドを捨てて女装してたのはいいとして、声とかでバレなかったの?無言を貫くのは流石に無理でしょ?」
「姉さんの声マネで乗り切った。喉に負担かかるから、乱用は出来なかったけど」
「出来るの?そんなこと」
「まぁ、男女の違いはあれど、体の構造は遺伝子レベルの近さだし。ちょっとウインクしながら『ゆーきな☆』ってやれば」
「うわ。本当だ。ちょっと似てる・・・」
「まぁ、遊びに来てる知り合いにも会わないようにしなきゃだし、大変だったけど、でも楽しかったよ」
というか、他の連中にはバレてないよな?当日は片付けの時以外はステージ裏からほぼ動いてないし、その場に遊びに行った姉さんにも口止めはしたけど、なんか不安なんだよな。
「で、その時のお礼がこれです!」
「・・・ヘアピン?」
「はい。レンさんの髪って長めだし、PC作業中とかに前髪抑えたりとか」
「あぁ。確かに使えそう」
「それに、せっかくならオシャレにも使ってもらえたらなって。例えば、サイドの方をかき上げたりして・・・」
透子に髪をいじられる。結果・・・。
「お、イイ感じ!」
「男子でヘアピンって、変じゃないか?」
「そんなことないですって!ピンについた星形のアクセも可愛いし!」
「かわ・・・まぁ、いいや。ありがとな」
「はい!」
これで、俺の番は終わりらしい。
「次は二葉さんの番ね」
「私?」
「えぇ。私たちの本命は、あなたへのプレゼントだったから」
「えっ、なんで?私、何かした?」
「いや、あたしとルイが言い争ってる時とか、いつもふーすけが仲裁してくれるだろ?いつも迷惑かけてるし、多分これからも迷惑かけるだろうから、せめて、日頃の感謝ぐらい伝えないとなって」
「桐ケ谷さんからそう言われて、私も一緒に選ぶことにしたのよ。桐ケ谷さんが一方的に絡んでくるからとはいえ、私も思うところがあったから」
「おい!なにサラッと自分のこと棚に上げてんだよ!」
「ちょっ、2人とも・・・」
仲良いなぁ・・・。
「じゃあルイ、あたしがふーすけを改造するから、レンさんの目隠し頼んだ!」
「えぇ。了解したわ」
「「へっ?」」
疑問を抱くと同時、瑠唯に背後を取られ、両手で俺の目が覆われる。
何も見えない。
「改造ってことは・・・つくしへのプレゼントも、俺みたいに身に着ける系?」
「・・・まぁ、そんな所です」
「ねぇ透子ちゃん。なんでレンさんの目を塞いで、私は上着を脱がされてるのかな?」
「そりゃあ、イメチェンのために決まってるっしょ?丁度レンさんがこの場にいるし、ふーすけの大変身を楽しんでもらわないと」
「なんで、レンさんが関係あるの?」
確かに、わざわざ俺が目隠しをされる理由も分からないし。
「そりゃあ、ふーすけがレンさんに懐いてるからじゃん」
「えっ!?いや、懐いてなんかないもんっ!」
「それはないでしょ~!バンド練習の休憩時間も隙あらばレンさんがレンさんが~って」
「そんなに言ってないもん!!」
「・・・言ってるのか?」
「言ってます」
「隙あらば?」
「そうですね。頬を緩ませながら・・・。特に倉田さんとはよく話してます」
「恥ず・・・」
瑠唯の両手は、まだ俺の両目に当てられたままだ。
「上着、ちょっと大人っぽ過ぎない?」
「まだまだ。これからもっと大人っぽくなるよ。髪もアレンジするし、リップも新しいの使うから」
「ふぇぇ・・・」
「なぁ、気になるんだけど!もう良くないか!?もう目隠しイヤなんだけど!」
「ダメです」
「どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!!」
「違うでしょう?」
「違うけどどけろ!」
「ダメです」
「ぬぅぅぅ・・・!」
気になる。つくし、どんな感じになってるんだ・・・?
「よし、これで終わりっと。ふーすけ、どう?今、こんな感じだけど」
「ねぇ、やっぱり大人っぽすぎるよ。似合ってないって・・・」
「似合ってるって!いつもとは違うふーすけ、見せてやんなよ!」
「大丈夫なの?」
「あっ、忘れてた。最後にこのヘアピンを・・・」
「えっ、ちょっと待って!このヘアピンって・・・」
「もういいか?」
「二葉さんの覚悟が決まるまで、もう少しお待ちを・・・」
「おう・・・」
そのやり取りからすぐに、俺の正面から小さな足音が聞こえた。
多分、つくしだ。
「じゃあ、目隠しの解除まで、3.2.1・・・」
・・・
「ハイッ!」
視界が開けると、つくしが居た。・・・ツインテールを捨て、髪を下ろした状態のつくしが。
・・・誰この美少女!?
「あの、レンさん・・・」
「つくし、その恰好・・・」
「その、やっぱり似合ってないですよね?小っちゃいくせに、背伸びしなんかちゃって―」
俺から出た感想は、自信を失くしている後輩を気遣ったものじゃない。
本当に、気付いた頃には、俺の口から飛び出していた。
「可愛い!!」
「へっ・・・?」
「綺麗だ。凄く良い!!」
「ちょっ・・・」
近くに透子や瑠唯が居ることも忘れて、つくし本人が困ってることも気付かず、暴走気味な俺は、思わずつくしに詰め寄り、両手で彼女の小さな手を握りこんだ。
「下ろした髪、大人っぽくて本当に綺麗だ!」
「いや、その・・・」
「リップの色も上品な感じがして、今の上着とも似合ってる!」
「レンさんってば・・・!」
気づいたら、顔を真っ赤にして恥ずかしがるつくしがいた。
「近いよ・・・」
「ごめん」
「でも、嬉しかった」
「そっか。じゃあ最後に、そのヘアピン・・・」
「これだよね?今のレンさんがつけてるヘアピンと、同じ星形のヘアピン」
「・・・お揃い、だな」
お互いに恥ずかしくなって、2人仲良く大人しくなった辺りで、端っこで透子と瑠唯がハイタッチを決め込んでいた。
「どうだ?ふーすけ。レンさんとお揃いだぞ?」
「むぅ。私にこんなことする為だけに買い物してたの?」
「いいえ。偶然よ。私たちが二葉さんの恩返しにヘアピンを買って、レンさんにも恩があったから、ついでにその恩も返しただけよ。たまたま二葉さんと同じヘアピンでね」
「嘘だ。絶対からかいたかっただけでしょ・・・」
「じゃあ、ヘアピン返してくれてもいいよ?買ったのあたしらだし?」
「意地悪・・・」
「冗談だって」
カラカラと笑いながら、透子は瑠唯を連れて踵を返した。
「じゃ、邪魔者のあたしらはクールに去りますかね」
「そうね。目的は達成したし」
「じゃあレンさん。ふーすけのこと、ちゃんと送ってやって下さい。夜道にJKが1人は危険ですから」
「わかった。そっちも気をつけてな」
「はーい!」
2人は去った。
目の前には、精一杯のおめかしをした美少女が、恥ずかしそうに、モジモジしながら佇んでいる。
さっきまで街を彩っていた夕日はすっかり沈んで、今は夜の暗がりが街を包んでいる。
「あの・・・お兄ちゃん」
「何?」
「さっきは、たい焼き食べたら、このまま帰ろうかって感じの雰囲気だったよね?」
「そうだな」
「ワガママ、言っていい?」
「ワガママ?」
「あのさ・・・。よかったら、このまま私と―」
「ダメ」
「えっ・・・?」
「・・・」
「どう、して?」
つくしが分かりやすくショックを受けた表情をする。
でも、そのワガママをつくしに言わせる訳にはいかない。
だって、そういうことは・・・
「そこから先は、俺から言いたい」
「へっ・・・?」
「こういうのは、男の役目だろ?」
俺はさっき離したつくしの手を、もう一度、両手で優しく握る。
「つくし。これから俺と、デートしてください」
さっきとは打って変わって、嬉しそうに目を見開くつくし。
分かりやすい妹だ。
「はい・・・!」
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とは言っても、デート開始は日没の後。
つくしの門限もあるし、あまり長いこと遊ぶことも出来ない。
帰るタイミングを掴みやすい場所、となると、限られていて。
「公園かぁ・・・」
「夜の公園ってのも、たまにはいいだろ?誰も居なくて、なんか特別感もあってさ」
「そうだね。ドキドキする」
2人でベンチに座りながら、辺りを見渡す。
それにこの公園は、前にも来たことがある。
「前に来た時は、つくしに連れ込まれたんだっけ?」
「そうだね。お兄ちゃんが、私を『妹』にしてくれた時」
「つくしが求めて、俺が受け入れて・・・」
「お兄ちゃんからも、私を求めてくれたよね?」
「『求めて欲しい』って、つくしが言ったんだぞ?」
「うん。そうだったね・・・」
つくしの方を向くと、随分と大人びた横顔がそこにあった。
髪を下ろして、本当に綺麗になった。
「お兄ちゃん。1つ聞いていい?」
「何?」
「確かに私はあの時、自分が甘えてばっかりな気がして、『お兄ちゃんからも求めて欲しい』って言ったけどさ・・・」
つくしも、上目遣いで俺のことを見つめてくる。
整った顔立ちで、真剣な眼差しを向けて。
「あの時、なんでキスしたの?」
「『頬っぺたに』をつけろよ。語弊すごいぞ」
「答えて」
「・・・」
そんなことを言われても困る。あの時の俺は、つくしが伝えてくれた『好き』という気持ちを、ちゃんと返したかっただけだ。
その方法に、どうして俺がキスを選んだかなんて、もう俺自身が聞きたいぐらいだ。
それでも、強いて言うなら・・・。
「あの方法が、一番伝わると思ったからだよ。その、『好き』って気持ち」
「・・・そっか」
お互いに、恥ずかしくなる。
後でこんな風になるなら、もっとマシな方法でも使うんだった。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「何?」
「キスしたい」
・・・!
「その・・・頬っぺたに?」
つくしは無言で頷く。
まったく。主語ぐらいつけろ。紛らわしい。
・・・その気になったらどうするんだ。
「まぁ、前に約束してたからな。つくしからも、してくれて構わないって」
「うん」
「なら、さ・・・」
俺は自分の頬を、隣の少女に向けて、少し近づける。
「・・・いいよ」
今日のつくしは、やけに積極的だ。
許可を出してからすぐに俺の手を握り、そのまま顔を近づけてきた。
・・・でも、予想された感触は、訪れないままだった。
「つくし。やるなら、早くしてくれると助かるんだけど・・・」
「だって、恥ずかしいから・・・」
つくしの顔を見ると、暗がりでも分かるぐらいに赤くなっている。
「可愛い」
「むぅ。私、これでも困ってるのに・・・」
「うん。そうやって恥ずかしがってるのが、凄く可愛い」
「いきなり、何?」
「何でもないよ」
俺はつくしの手を、そのまま握り返した。
つくしの肩が少し跳ねる。
「こうしてると、安心しない?」
「・・・する」
「緊張も、ちょっとは解けると思うんだけど」
「それは・・・まだダメ」
見た目は大人っぽいが、中身はいつものつくしのままらしい。
恥ずかしがり屋の、可愛い女の子だ。
「無理しないでいいぞ?」
「お兄ちゃん。私は、気持ちを伝えたいとか、そんな理由でキスしたいんじゃないからね?」
「・・・そう?」
「うん。好きって気持ちとか、大好きって気持ちが収まらないから、我慢が出来ないから。だから、したいの」
「・・・そっか」
「お兄、ちゃん・・・」
俺は再度、自分の頬をつくしに近づけ、目を閉じた。
「つくし。じゃあ、その気持ちも全部受け止めるから」
・・・
「キス、して」
「・・・!」
chu-♡
つくしの唇は柔らかくて、リップのしっとりした感触が残った。
我慢の効かなくなった少女の、ちょっと乱暴な初々しい口付け。
デート終わりの夜。俺は『妹』にキスをされた。
完全に、読者のことも考えず、自分のためだけに書きました。反省も後悔もありません。
あと、アンケート結果。
【誰との距離感が好きか】
1位、リサ姉
2位、美咲ちゃん
3位、ましろちゃん
4位、つくしちゃん
5位、友希那さん
6位、彩さん
だった訳ですが、意外と美咲ちゃんが上位に食い込みましたね。
美咲ちゃんで甘々なシチュは書いたりしてなかったですし、この作品の読者様は、甘々なシチュが好きな人が多い印象だったので、もう少し下かと思ってました。
美咲ちゃんと主人公の距離感は私も好きなので嬉しいのですが、やっぱ需要って分かりませんね。
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