ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 今回はリクエストの六花ちゃん。
 でも、リクエスト通りに甘々な絡みを書くことは出来ませんでした。
 リク主さん、誠に申し訳ない。私の文才が足りぬばかりに。


 あとは、これを読んで欲しい。
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65.ロックと夕食を食べるシチュ

 

 新聞部には部員が俺1人しかいないということもあり、帰りが遅くなることも珍しくない。部の仕事が多いのに加え、俺以外の部員が居ないせいで部の部長が生徒会に出す書類だって書かなければならない。そうやって更に帰りが遅くなる。

 そして夜も更けた頃に、疲れた体を引きずりながら帰っていると、河原の橋の上で黄昏る後輩の姿が見えた。

 

「ロック・・・?」

 

 だが、今日は少し様子が変だ。

 表情はいつもより明らかに暗い。よく見ると、彼女の目尻には涙が流れていた。

 

「・・・?」

 

 夕日に照らされる橋の上で、状況が掴めずに立ち尽くしていると、ロックは足元に自分の鞄を置いた。

 鞄を置いたロックは、虚ろな表情で橋の手すりに手を掛け、そのまま川の方へ身を乗り出して―

 

「ロック!!」

 

 気が付くと俺も鞄を放り投げて走り出していた。

 このまま見殺しになんて出来る訳ないだろアホが!

 

「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」

「えっ、先輩・・・。どうしてここに―」

「させるかあぁぁぁ!!!」

「ゴフッ!!!」

 

 俺は無我夢中でロックに体当たりを叩き込み、そのまま抱きつきながら自分の体を地面の方へ回した。

 俺の体をクッションにして、ロックがそのまま倒れ込む。

 

「痛・・・。先輩?どうしたんですかいきなり」

 

 ロックは倒れ込んだ状態のまま呑気にそんなことを聞いてくるが、もうそれは俺の耳に入ってはこなかった。

 そのぐらいに怒っていたから。

 

「バカ!自分の命ぐらい大切にしろよ!こんなことして何になるってんだ!」

「へ?」

「勝手にくたばろうとしてんじゃねえ!お前が死んじまったら何人悲しむと思ってる!」

「先輩?何の話を・・・?」

 

 そう言うと、ロックは自分が立っていた場所を見つめ、そして・・・

 

「いや、先輩!待ってください!誤解です!私、全然そんなつもりじゃないですから!」

「あ?誤解・・・?」

「私、死のうだなんて思ってませんっ!」

「え・・・?」

 

 

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「だから、その、ちょっと落ち込んでただけで、さっきも、ちょっと川を覗こうとしただけだったんです」

「なんっだよもーーー。焦らせんじゃねえよ紛らわしい。マジビビったんだぞ・・・」

「すいません。お騒がせして」

「いや、俺も早とちりして悪かったよ」

 

 橋の上で訳を聞き、鞄を持ち直したはいいが、このまま帰るのも気が引ける。

 流石にもうロックが自殺をするとは思ってないが、こいつが落ち込んでたことは事実だし、目尻にはまだ涙の跡が残っている。

 

「ロック、何があったんだよ?そこまで落ち込んでたなんてさ」

「別に、大したことじゃないです。内容も、恥ずかしいというか、情けないものなので・・・」

「大したことないならこんな場所に居ないだろ」

「お願いですから察してくださいよ先輩。情けないから聞かれたくないんです」

「察してるから聞いてんだ。ほっとける訳ないだろ」

 

 ・・・

 

「・・・長話になりますよ?こんな寒空の下で立ち話したら風邪引いちゃいます」

「そっか。なら仕方ないな」

「え?」

「ロック、今日の晩飯の予定は?」

「今日は、特に・・・」

「じゃあ飯行くぞ。後輩」

 

 ロックが戸惑っている気もしたが、無視する。

 

「あの、行くのは構いませんけど、今日の私、食欲無いですよ?」

「・・・」

「あの、どこへ行くつもりですか?」

「そりゃあ、お前」

 

 俺は後輩の肩をガッと組んで、ウインクを決めて宣言する。

 

「夜は焼肉っしょ☆」

 

 

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 落ち込んだ後輩を連れていくなら、やはり焼肉に限る。

 当の後輩は金網の肉にも、目の前の白飯にも、一切手を付けちゃいないが。

 

「あの、さっきも言いましたけど、本当に食欲無いですよ?私」

「別に無理強いまではしないよ。長話になりそうって言われたから、場所変えたかっただけだし」

「そう、ですか・・・」

「まぁ、お前に何があったかも、無理に聞いたりはしないけどさ。傍から見てほっとける状態じゃなかったってことだけは言っとくぞ」

「はい」

 

 塩タンとカルビをひっくり返しながら、俺はロックの言葉を待つ。

 香ばしい煙に包まれながら、ひたすらに黙って。

 

「・・・最近、ホームシックなんです」

「そういえば、地元から上京してきたんだっけ?」

「はい。今までは大丈夫だったんですけど、いきなり地元が恋しくなって。油断すると、すぐに寂しい気分になって」

 

 ・・・

 

「それから、何をやっても上手くいかないんです。授業は集中できないし、1人で寝てるだけでも泣きそうになるし、バンドの練習も、全然身が入らなくて・・・」

「そりゃあ難儀だな。ガチギレだったろ?チュチュのやつ」

「はい。『やる気が無いなら帰りなさい』って、怒鳴られちゃいました。それで追い出されて、あの場所に・・・」

「そっか」

「それが情けなくてっ・・・!ちゃんと、前向きになりたいのにっ・・・!前を向けないから、どこにも進めない・・・」

 

 ロックの顔が、また涙に濡れる。

 そうか。こいつは辛いから泣いてたんじゃなくて、悔しかったから泣いてたのか。

 

「挫けそうな自分が・・・許せなくて・・・ぐすっ」

「・・・」

「私、ダメダメや・・・」

 

 ロックはダメダメじゃないし、挫けそうになってる訳でもない。こいつの心は折れちゃいないし、諦めてもいない。

 だってその涙は、その悔し涙は、前を向こうとするから流れるのだから。

 

「ロック」

 

 今のロックに、変に優しい言葉や気休めを言っても仕方がない。こいつに必要なのは、前に進むための『力』だ。

 何も、慰めるだけが優しさでもない。

 そう思った俺は、ロックの空き皿にカルビを乗せていた。

 

「先輩・・・?」

「食えるか?」

「でも・・・」

「食えなくても根性で食え。一口でいい」

「・・・」

「お姉さん!ホルモン追加で!」

「ハーイ!」

 

 注文を済ませてロックを見ると、ロックは切り分けたカルビを食べ終えていて、金網の塩タンに手を伸ばしていて、茶碗の白飯も減らしていた。

 

「何だよ。結構食えるじゃねえか」

「はむっ・・・!はむっ・・・!」

「いっぱい食え、ロック。食って、食って進め」

「はぐっ・・・!」

「人間ってのは、前を向いてから進むんじゃない。打ちのめされながら、それでも無理やり1歩ずつ進んで、だんだん前を向いていくんだ」

「ひぐっ!・・・はぐっ」

 

 ロックの食べっぷりは、お世辞にも行儀がいいとは言えない。

 女の子らしさも、お淑やかさも無い。安物の肉にがっついて、茶碗いっぱいの白飯をかき込んで。

 でも、不思議と悪い印象は無かった。

 泣き腫らしながら無我夢中で食べる彼女は、ひたすらに一生懸命で。

 

「・・・先輩」

「ホルモンだったらもうちょっと待ってろ。こいつは丸焦げになってからが本番―」

「私は、弱いです・・・」

「どうして?」

 

 少しは落ち着いた様子を見せたロックだが、肉と白飯にがっつく勢いはそのまま。箸の動きは緩まない。

 

「情けない女ですよ。私なんて・・・」

「それは違うぞ。ロック」

「えっ・・・」

「夢追っかけて、1人地元から離れて、1人で戦ってきたんだろ?それからずっと頑張ってんだろ?1本芯を通して、走り続けてんだろ?」

 

 何が情けないんだよ。

 

「カッコいいじゃねえか」

「ううぅ・・・。なんで、そんなこと言うんですかっ・・・!」

「お前は、尊敬に値する人間だ」

「弱い人間ですよ・・・」

「大丈夫だ。お前は強い。そして、これからお前はもっと強くなる。俺が保証する」

「・・・!」

「『強くなりたくば喰らえ』ってな。ほら、ホルモン焼けたぞ」

 

 俺の言葉に、ロックは黙り込んで、しばらくハンカチで目元を拭った。

 ロックの目に、涙は無かった。

 

「先輩」

「ん?」

「豚バラ、2人前ください。あと、カルビとハラミ」

「・・・!」

 

 さっきまでの気弱な少女は、もう居ない。

 そこに居たのは、貪欲に強さを求める、1匹の獣だった。

 

「いいねぇ!そうこなくっちゃ!お姉さーん!豚バラとカルビとハラミ!あ、あと白飯も追加で!!」

「よし・・・!さっきまで食欲なんて無かった気もするけど、そんなの知りません!吐くまで食べます!」

「いや、吐くまではやめろよ?」

 

 ロックは、これからも成長するだろう。

 俺の皿に置かれたホルモンのように、焼かれて焼かれて、真っ黒になるまで焦げて、脂を落として、自分の味を磨くだろう。

 

 気づけばロックは、俺よりも金網の肉を平らげていた。

 

 

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「いやー、食った食った」

「はい。そうですね。うぷっ・・・」

「大丈夫か?外で吐いたりするなよ?」

「それは、大丈夫ですけど・・・」

「どうだかなぁ。なんであんな無茶したんだよ」

「だって、『強くなりたくば喰らえ』って先輩が・・・!」

「詰め込めばいいって訳でもないだろ」

 

 ロックの食べっぷりは、清々しい程に豪快で、見ていて気持ちよかった。

 そりゃあ、食べ盛りの俺よりも食ったらそうなるだろうに。

 

「あと、本当に奢ってもらって良かったんですか?高かったですよね?」

「焼肉だからな。流石に今回だけだぞ?」

「そんな。お世話になったのは私の方なのに・・・」

「別に、俺もいいものを見せてもらったからな」

 

 俺は自分のカメラを起動し、データの1つをロックに見せる。

 

「はい。『ボロ泣きしながら焼肉を頬張るRASのギタリスト』の写真だぞ」

「ちょっ、いつの間に撮ったんですか!」

「上京して頑張ってる人間のリアルな裏側も貴重だと思って・・・」

「どこでジャーナリスト根性出してるんですか!消してくださいよ!」

「嫌だよ。RASの記事書く時に使えるかもしれないし、焼肉も奢ってやったんだからいいだろ?」

「ううぅ・・・。絶対に誰にも見せないでくださいよ!?特に香澄先輩には!!」

「分かってるよ。・・・可愛いのに」

「可愛くないです!!」

 

 でも、この写真には何か、心に訴えかけるものがあるのは確かだ。

 ロックは俺に対して感謝していたが、得るものが大きかったのは、俺の方なのかもしれない。

 最後にそんなことを考えながら、俺はロックを下宿先まで送り届けたのだった。

 

 

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『なぁ、チュチュ』

『何よ?』

『ロックのことだけどさ』

『ロックの?』

『あぁ。・・・あいつは、強いな』

『当たり前でしょ。なんてったってRASのギタリストなんだから』

『だよな』

『いきなり何?ワタシ、忙しいんだけど・・・もしかして、ロックに会ったりした?』

『会ったよ。食欲無いとか抜かしてやがったから焼肉連れてった』

『アナタ、鬼か何かなの?』

『失礼な』

『それで、ロックの様子、どうだった?』

『問題ないと思うぞ。あいつは本当に強いやつだ』

『・・・そう』

『まぁでも、また練習で会うことがあったら、話し合ってみることを勧める』

『話を?』

『この手の話や相談事がしやすい空気を作るのも、集団を率いる人間の務めだと思うぞ』

『・・・考えておくわ』

『おう。要件はそれだけ。じゃあな』

『えぇ。それじゃあ。ありがとね』

『構わんよ』

 

 





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