ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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終章7.始動

 

 チュチュに渡された曲には、まだタイトルも歌詞も無かった訳だが、そのメロディは俺を一瞬で虜にした。

 難しい部分は多かったが、それでも形にはしようと奮闘した。

 しかし、難しいのはメロディをなぞることだけじゃなくて・・・。

 

「レン!もうちょっと周りの音を聞きなさい!」

「無茶言ってんじゃねえ!ただでさえ、こっちは自分のことで手一杯なのに、そんな余裕ある訳ねえだろ!」

「違う!アナタはそもそも自分の音に没頭し過ぎなのよ!その集中をちょっとは周りに合わせることに向けなさい!」

「仕方ないだろ!没頭しなきゃもっと弾けないんだよこっちは!」

「2人とも、一旦落ち着こ?ね?」

 

 まりなさんの声と共に、言い争いは終わり、ぶっ続けだった通しの練習も中断された。

 体力切れで倒れ込む俺をよそに、チュチュとまりなさんは余裕そうな表情で水分補給をしている。

 ・・・タフだなぁ。

 

「レン。さっきはキツく言ったけど、演奏自体は良くなってるわ。ちゃんと曲としての形にはなりつつある」

「はぁ・・・はぁ・・・。そうかよ」

「だからこそ、形になりつつあるソレを、周りに合わせてもらう必要がある。ワタシ達は当然アナタをフォローするけど、少しはアナタからも歩み寄ってもらわないと困る」

「さっきも言ったけど、そんな余裕無いんだって。自分が弾くので精一杯なんだ。それすらも100%上手くいってる訳じゃないのに・・・」

「さっきも言ったけど、原因はそれだけじゃなくて、アナタがギターに没頭し過ぎてることにもあるのよ?」

「没頭・・・そうか?」

「アナタ、1回でも1つのことに集中すると周りが見えなくなるタイプでしょう?ただでさえ時間の流れも忘れて、無許可のまま人の家でオールする程なんだから」

「その件は悪かったって・・・」

「あとレン君、演奏終わるとやけに息切れしてる時があるけどさ・・・」

「はい」

「多分、所々で呼吸するの忘れてるよね?」

「・・・そうなんですか?」

「レン君・・・」

 

 確かに、言われてみれば今の息切れも、体力切れだけが原因じゃないのかもしれない。

 

「でも、それはレン君が慣れていけば、余裕も生まれてどうにかできるんじゃないかな?」

「そういう・・・もんですかね?」

「うん。ライブが出来るようになるのも、あと少しだと思うよ」

「あぁ、ライブと言えば、レン。アナタ、ライブは結局どうするの?リーダーなんだから、そのぐらいは考えてあると思うけど」

「実は、それに関しては考えてることがある。練習終わりにでも言おうかと思ってたんだけど、タイミング良いから今言うか」

「・・・?」

 

 しばらく横になって呼吸は整ってきた。

 俺は上半身を起こし、2人に向き直った。

 

「1か月とか2か月後ぐらいにさ、CiRCLEで合同ライブがあるのは知ってるよな?」

「そりゃあ、私スタッフだし」

「その合同ライブならワタシたちRASも出演するつもりだから把握してるけど・・・まさか、それにエントリーするつもり?」

「一曲だけなら、前座の枠でいけると思ってる。それに、出演者がみんな俺と交流があるから、俺の演奏で驚くやつは全員そこに集まることになる。当然Roseliaも出るから、メインターゲットも絶対に居合わせることになる」

「そうなの?」

「えっと、今決まってるのは、ポピパに、Afterglow、パスパレ、Roselia、ハロハピ、モニカ、そしてRASの7バンド。確かに、サプライズにはもってこいだけど」

「でも、RASが出るとなると、チュチュの負担が・・・」

「いいわ。やりましょう。レンの目標に最も適しているのなら、やらない手は無い」

「即決はありがたいけどいいのか?負担、凄いぞ?」

「見くびらないで。たった一曲ぐらい負担でも何でもないわよ」

「よし、じゃあ後は、そもそもエントリー出来るかどうかだけど」

「まぁ、そこは私に任せてよ。前座に一曲入れるぐらいなら問題ないと思うし」

「じゃあ、ライブに関しては・・・」

「マリナが枠を確保できるか次第ではあるけど、決定で良さそうね」

「よし、出ようぜ。合同ライブ・・・!」

 

 ライブに使う曲も練習できるようになり、ライブをする会場も決まった。

 ふわっとしていたものが、どんどん形になっていく。

 

「ねぇ。この際だから、ワタシからも1つ、聞いて貰っていいかしら?」

「相談か?」

「と言うより、提案なんだけど」

 

 ふぅっとため息を吐いて、チュチュは続ける。

 

「今日まで練習してきて思ったけど、やっぱりドラムが欲しいわね」

「やっぱり、チュチュだけじゃ厳しかったのか?」

「そうね。打ち込みとDJでどうにか出来ると思ったけど、流石に無茶だったわ。やっぱりドラムは生の圧が欲しい」

「そうだね。やっぱり人が叩くものに合わせる方が、感覚掴みやすいし・・・」

「そうですかね?誰が叩いてるとか、あんまり関係なくないですか?」

「『関係ない』なんて戯言が出るのは、アナタが周りの音を聞いてないからよ」

「それは・・・申し訳ない」

「それに、レン君と相性のいいドラムの音があれば、レン君のギターのリズムも安定するかもだし・・・」

「レン。アナタ、ドラムやってる知り合いとかいないの?」

「いるっちゃいるけど、みんな合同ライブの出演者なんだよな・・・」

「じゃあ、力を貸してもらうとすれば、あの7バンドの中からってことになるね」

「・・・そうなりますね」

「誰の力を借りるか、ワタシ達で決めてしまわないといけないわね」

「でも、どうやって?」

「そうね。取り敢えず、合同ライブの出演者がどんな順番でステージに上がるのかをまとめましょう」

「まとめてどうするんだ?」

「いいからまとめなさいよ」

「そうだね。えっと、確か・・・」

 

 

1.Poppin’Party

2.ハロー、ハッピーワールド!

3.Afterglow

4.Pastel*Pallettes

5.Morfonica

6.Roselia

7.RAISE A SUILEN

 

 

「こんな感じだね」

「それで予定だと、これの更に最初に、俺たちが参戦しようとしてるんだよな?」

「となると、始めのポピパ、ハロハピの2バンドはダメね。ワタシ達と前座をやってすぐ後に準備をさせるんじゃ、自分達の出番が間に合わなくなる。」

「そうだね。衣装の関係もあるし」

「あと、他に無理そうなバンドは?」

「じゃあ、パスパレもダメだな。芸能人で忙しいし、いくら麻弥さんが優秀でも、ここまで集まれるタイミングが限られてるこのバンドだと、練習時間が足りなすぎる」

「となると、残りはこの4バンドだね」

「いや、もっと絞り込めるわ」

「「え?」」

「Afterglow、Roselia、RASのドラムは、恐らく組み込めない」

「なんでだよ?みんな凄いやつらなのに」

「答えは簡単。この3バンドのドラムはパワーが強すぎる。やっと初心者を脱却しようとしてるぐらいのギターボーカルなんて、すぐに食われて終わりよ」

「『食われる』って、そんな大げさな・・・」

「じゃあ、アナタは自分の技術と歌声で、あの3人と渡り合える?」

「それは・・・」

「あの3人のドラムの激しさは、アナタも知ってるでしょ?RASのドラムなんて、巷では『狂犬』って呼ばれてるのよ?練習中とか凄いんだから。アナタなんか一噛みで終わりよ」

「・・・確かに」

「あの3人の強みは、自分と同じぐらいの技術や強さを持った別パートとぶつかり合うことによって出てくるの。本来ならワタシ好みのドラムだけど、今回求めるのはそうじゃない。アナタに合わせて、支えるようにフォローが出来るドラムの方が望ましい」

 

 確かに、俺があの3人と組んでも、呑まれる未来しか見えない。

 

「となると、もう1人しか残ってないけど?」

「・・・どう転ぶかは分からないけど、このバンドの演奏は調和がよく取れてる。彼女なら、アナタの演奏に合わせられるかもしれない。交渉の価値はありそうね」

 

 

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 という訳で俺たちは、誰にも勘付かれないようにと本人に念を押して、二葉つくしをチュチュのマンションに呼び出した。

 今は、いつも3人で円を描くように座ってるところに、つくしを加えたような形になっている。

 

「あの、チュチュさんに、まりなさんに・・・それにレンさんも。なんで誰にも勘付かれずに来なきゃいけなかったのかとか、なんでここに来るにあたってドラムスティックの持参を推奨されたのかとか、色々聞きたいことはあるんですけど、取り敢えずこれが何の集まりなのかだけ、教えてもらっていいですか?」

「分からないかしら?このメンバーが防音のスタジオに居るのだから、答えは1つでしょう?」

「えっと・・・」

「簡単に言うと、バンド組んでるんだよ。私たち」

「あぁ、なるほど。バンドを・・・。えっ!?待ってください!レンさんって音楽やらないんじゃなかったんですか?」

「そうだよな。まずはそこから説明しないとだよな」

 

 つくしを俺たちの活動拠点に招いた俺たちは、バンドを組むことになった経緯を説明した。

 音楽を受け付けなかった俺の体が、音楽に順応したこと、それを機に、逃げていた音楽にもう一度向き合おうと決めたこと、その過程で友希那さんをあっと言わせるという目標が出来たこと、その目標を達成するため、合同ライブに向けてバンドを組んだこと、そして・・・。

 

「それで、やっぱりドラムが要るよなってなって、出演者の中でお前が1番求める人材だよなってなって・・・」

「だから、私を呼んだんですね」

「レン君の目標の問題で、このことは極秘で進めてるから、なるべく誰にもバレたくなかったの。だから理由も伝えずに連れてくることになっちゃって」

「事情は分かりました。つまり・・・」

「つくしをスカウトしたい。でも、その話の前に言わなきゃいけないことがある」

「言わなきゃいけないこと?」

「まず、このバンドのことは誰にも言わないで欲しい。そして、このバンドは練習時間が上手く確保できる訳でもない上に、練習開始は基本的に夕方から夜。自分のバンドの練習をしながらやるのは負担も大きい。それでいて、このバンドは俺の目標を達成するためだけに組まれて、メンバーも、そのためだけに集まってくれてる。だから、つくしに特別なメリットがある訳でもない」

「それでも、私に入って欲しいんですよね?」

「あぁ。俺たちに、力を貸して欲しい」

 

 床に座りながら、俺はつくしに頭を下げる。

 目視は出来なかったが、まりなさんやチュチュまで頭を下げていた。

 

「時間とか、負担の問題はありません。そこは私が頑張ればいいだけだし、メリットが無いとかも、関係ないです。レンさんにはお世話になってますし、役に立てるなら喜んで力を貸します。ただ・・・」

 

 返事は快いものだが、話はまだ終わらない。

 

「私の実力って、まだ詳しく見せたりはしてないですよね?」

「でも、つくしが上手いのはみんな知って―」

「レンさん。それじゃダメなんですよ。加入してからイメージとズレが出ちゃいけないですし、正確な実力も見せずに『このバンドに入れろ』なんて、そんな無責任なことは出来ません」

「つくし・・・」

「バンドのリズムを預かるのって、そのぐらいに重いことなんです」

 

 そう言うとつくしは立ち上がって、バッグからドラムスティックを取り出す。

 

「だからまず、私がその『責任』を果たします」

 

 慣れた手つきでスティックをいじり、2本指でスティックをクルクルと回し、自分の手にスティックを馴染ませる。

 その後に確認が終わったのか、つくしは俺たちに向き直る。

 

 

 

「テストしましょう。私のドラムが、皆さんのリズムを預かるに相応しいかどうかを」

 

 スティックを携えながら俺たちを見据えるつくしは、もう既に頼もしく見えたし、何なら今世紀で一番カッコよかった。

 





 ハーメルンのバンドリ部門。今週だけは、多分この作品が一番UA稼いでると思います。

 次の更新は、明日。

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