ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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終章8.相性

 

 つくしのテストは俺たちが練習してる曲の一小節を、俺のギターと一緒に演奏し、それをチュチュとまりなさんが聞く形となった。

 

「ツクシ 二葉?もう一度言うけど、このテストで見るのはアナタが上手いかどうかじゃない。アナタがレンのギターに合うかどうかよ」

「はい」

「レンのギターの実力はまだ下の下。アナタが普段合わせてるMorfonicaのギターよりもずっと格下よ」

「それも、承知してます」

「OK.渡した譜面の練習は、もういいかしら?」

「はい。結構いい曲ですね。アップテンポな激しさの中に、どこか真剣さがあって・・・」

「Thank you.じゃあ、そろそろいきましょうか」

 

 合図と共に、俺はつくしと向かい合う。

 

 1・・・2・・・3・・・。

 

 ~~~♪

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 演奏を始めてすぐに直感した。チュチュが俺に言っていた『音を合わせる』とはこのことだったのかと。

 思わずドラムの方へ意識を向けると、一瞬つくしと目が合う。

 

 ~~~♪

 

「(なんだ?この感覚・・・。でも分かる。音を合わせるのは苦じゃない。それどころか、ドラムの音のお陰で更に弾きやすい)」

「(この人、最近まで初心者なんじゃなかったの?実力、全然下の下なんかじゃないじゃん!短期間で、練習時間も安定してない状態でコレって、どんな鍛え方したの!?)」

 

 ~~~♪

 

「(間違いねぇ。絶対にいつもより調子がいい)」

「(ギターのフォローをしようって思ってたのに、私自身も叩きやすさを覚えちゃってる)」

「(これは・・・)」

「(この感覚・・・)」

 

 ~~~♪

 

 

「「(気持ちいい・・・!!)」」

 

 

 つくしとの演奏は、最高の状態で終えることとなった。

 

 

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 チュチュとまりなさんの方を見ると大変満足そうな表情が見られた。

 

「なぁ、2人とも。どうだった?出来ることなら俺は―」

「言わなくてもいいわ。まさかレンがあのタイミングで音を合わせることを覚えるとはね」

「演奏も、格段に良くなったよね。粗さは目立つけど、最後まで勢いも止まらなかった」

「いや、つくしのドラムが良かったんだ。なんか、分かんないけど、初めての感覚だった」

「レンさん!実は私も感じてたんです!あの、見えない何かで繋がってるような・・・」

「なるほど。アナタたちは相性が良いのね。技術や理屈の問題じゃなくて、もっと根幹にある何かが共鳴してるのかも・・・?」

「チュチュちゃん、珍しくアバウトな表現だね」

 

 相性・・・。

 つくしの方を見ると、つくしもこちらを向いている。それが少しおかしくて、お互いに笑ってしまう。

 なるほど。確かに相性は良いのかもしれない。

 

「なぁ、つくし」

「はい」

 

 手を、差し出す。

 

「バンドやろう。俺たちで」

「・・・!よろしくお願いします!!」

 

 ドラム、加入。

 小さくも逞しい両手は、確かに俺の右手を握り返した。

 

 

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 つくしのドラムを聞けるようになってから、俺は演奏中に他のパートの音も聞けるようになっていった。

 他のパートの演奏は敵じゃない。俺を支えてくれる頼もしい味方だ。俺の脳は、そんな当たり前のことをようやく理解したのだ。これもつくしのお陰だ。

 しかし、当然そこまでのことが出来るようになると、当然練習も激化するのは当然で。

 

「はぁっ・・・!はぁ・・・」

「レン君。また体力切れしてる・・・」

「ってことはまた集中のし過ぎで呼吸忘れたわね」

「レンさん、お水どうぞ」

「はぁ・・・ありがと。頭がドクドクする・・・」

 

 またも通し練習が終わって倒れ込む俺に、それに駆け寄って俺の水筒を差し出してくるつくし。

 運動部のマネージャーみたいで可愛い。俺はそれどころじゃないけど。

 

「ぷはっ・・・。演奏終わりに高確率でこうなるのは、俺の課題だな」

「そうよ。まだ一曲フルで出来てる訳でもないんだから。ワタシが作詞を完了するまでにどうにかしてもらわないと困るわ」

「でも、1つの演奏にここまでの集中力を使えるなんて、やっぱり凄いです」

「でも、如何せんコントロールがな。みんなと音を合わせてると、更に曲の中に入り込んじまう」

「あとレン君、自分の痛みにも鈍感になるでしょ?」

「痛み・・・?」

「その左手・・・これ以上放っといたら皮剥けるよ」

「えっ?うわ、マジだ。また絆創膏買ってこないと。タコもできてるし。それに傷跡見たら痛くなってきた。くそっ・・・」

 

 でも、まだ足りない。まだ頑張らないといけない。この中で一番何も出来てなのは俺だ。

 この程度で音を上げてる訳にはいかない。センスも才能も何もない俺に出来ることなんて、頑張ることしか無いのだから。

 そう考えながら指の傷を握りしめ、気合を入れて上半身を起こし、俺を含めて円形に並んだメンバーを見てると、やっぱり表情に余裕さがある。

 精々、すこし汗が流れている程度だ。

 

「チッ、化け物どもが・・・」

「あっ、レン君ひっどーい!女の子相手に」

「他2人はともかく、まりなさんはもう『女の子』って年でもないでしょ」

「どうしたのレン君?君からケンカ売ってくるなんて珍しいねぇ?」

「いやっ、違いますからね?そういう意図じゃなくてですね?」

「でもあの言い方は良くなかったねぇ?」

「いや、だって社会人じゃないですか!明らかに大人ではあるでしょう!」

「それでも心は10代なの~~~っ!!」

 

 まりなさんに頭を揺らされながら、俺は考える。

 ギターも、この調子で練習すれば1曲をフルで詰まらずに弾ききることができると思う。曲に入り込んでも、周りの音はちゃんと聞こえるようになった。

 ただ、入り込み過ぎて息切れを起こすのは、まだ度々起こる。

 どうしたものか。

 

「ふんだ!レン君なんか知らない!もうチュチュちゃんに構ってもらう!」

「あぁ、それならどうぞ。行ってらっしゃい」

「ちょっ、せめて止めなさいよ!レン!このままだと―」

「チュチュちゃ~ん!イチャイチャしよ~!」

「暑いから!ちょっと!ギャアァァ!!」

 

 まりなさん抱きつかれて断末魔を上げるチュチュをよそに、考え事は続く。

 みんなは、どうしているんだろう?

 

「つくしって、演奏中に息切れとかはしないのか?」

「そうですね。単純にスタミナが尽きかけて息切れはありますけど、レンさんみたいに呼吸を忘れたり、入り込み過ぎて頭への負担が凄いってパターンは、そもそも一般的じゃないというか・・・」

「そもそも、なんでこんなに集中しちゃうんだろ。多分コレ、普通じゃないんだよな?」

「うーん。そもそも、どんな感覚なんですか?その普通じゃない集中って」

「何だろ。そもそも集中より、没頭に近いんだよな。あの感覚。なんか、意識とか、指先の感覚が研ぎ澄まされて、必要なもの以外のことが一切頭に入ってこなくて・・・」

「なるほど。それで?」

「あとは、時間の流れを忘れたり、長時間が一瞬に感じたり、頭の回転が速くなって、興奮してるような、落ち着いてるような、思考が鮮明なような、ふわふわしてるような、そんな感じ」

「ふーむ。その状態のレンさんは、どんな気持ちなんですか?」

「いや、感情が入り込む余地がないぐらい集中してて、気持ちとかは分からない。なんでも出来そうな感じはするけど」

「うーん・・・」

「言葉にすると訳わかんなくなるな。でも、本当にそんな感じなんだ」

「いや、似たような体験、ましろちゃんから聞いたことあります」

「え?」

「はい。ライブ中のことなんですけど、その時のましろちゃんの歌、凄く調子が良くて。話を聞いたら、似たようなことを言ってました」

「マジか・・・」

「その時のましろちゃん、お客さんの動きがスローモーションに見えたらしいんです」

「スロー・・・。確かに記事作成の時も、キーボード上で指の動きがゆっくりに見える時はあったかもしれない。思えば、練習中のギターの指の動きも・・・」

「その話、ちょっと興味深いわね」

 

 まりなさんに後ろからホールドされながら、そのままあぐらの上に収まったチュチュが俺たちの話に割って入る。

 マスコットみたいになってて可愛い。

 

「多分アナタ、何かに没頭する度に、普通よりも高確率で、アスリートの『ゾーン』みたいな状態になってるのよ」

「「ゾーン?」」

「チュチュちゃん。でもそれ、狙ってホイホイ出せるものじゃないやつだよね?余程の極限状態じゃないと」

「そうね。でも、レンはその極限状態を、今まで日常的に味わってきた。そうでしょ?」

「まぁ、締め切りに追われてる状態がそうなら、確かに極限状態ではあるけど」

「そう。決められた時間によって脳にプレッシャーを与え続けていた状況は、脳の回転数にも繋がる。そうやって極限状態になり慣れたアナタは後天的に、ゾーンに入りやすい体になっていたのよ」

「ゾーン・・・」

「まぁ、一流アスリートのゾーンは呼吸忘れて息切れなんてしないし、本物のゾーン自体はもっと高度なものだし、さっき言った通り、レンのはあくまで『ゾーンのようなもの』だけどね」

「まぁ、無呼吸で試合なんて出来ないからな」

「でも、それは演奏でも一緒よ。アナタの無呼吸、まだまだ頻繁に起こってる訳だし」

「でも、レン君の集中自体は悪いものではないよ。実際あの状態のレン君は格段にミスが減るし」

「そうですよ!始めたてであんなに弾けるなんて凄いです!」

「実際、音楽センスが特別強い訳でもないレンが短期間であそこまでギターが上達したのだって、並々ならぬ努力に、部活で培った能力のブーストの影響が合わさったからだと思えるし」

「みんな・・・」

 

 俺の体や頭の中がどうなってるのかは知らない。でも、俺の目標がより近い場所になっていることだけは分かった。

 

「ありがとう。課題は多いけど、頑張ってみるよ」

 

 いつの間にかまりなさんのホールドから抜け出したチュチュ、まりなさんに、つくし、円形に並んだメンバーを見ながら改めて意識を新たにする。

 このメンバーなら本当に、今まで俺が成し遂げられなかったことを、達成できるかもしれない。

 ・・・頑張らないと。

 

「みんな」

「「「・・・?」」」

「俺、絶対に上手くなるから。これから先の練習も、よろしく」

 

 この頼もしすぎるメンバー達に報いるためにも、俺は今一度、自分の誓いを宣言する。

 そんな誓いに、メンバーの3人は不敵に笑って応えてみせた。

 





 奇しくも、バンドリの新世代2バンドのリーダー2人と、メインキャラでこそないけどバンドリで重要なポジションのキャラがメンバーに。
 何の因果か。
 なかなかのドリームバンド。

 次の更新は、明日。

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