~~~♪
「~~♪」
最近になって、俺は通しの練習が好きになった。
まりなさんのベース、チュチュのDJ、つくしのドラム、その全てが俺のギターを支えてくれてるような気がする。
そして・・・
「~~~♪」
声を出して、生演奏をバックに声を張り上げて歌うのは、更に気持ちいい。
気持ちよすぎて、ちょっと演奏が雑になったり走ったりしそうにはなるが、俺はこの感覚が嫌いじゃない。
~~~~♪
全体的にも余裕が生まれて、メンタルの調子も良くなり、集中のコントロールも上手くいくようになった。
~~~~♪
~~~~♪
演奏は、明確に形となった。
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「いやー、いい汗かいたぜ・・・」
「そうだね。最近は調子もいいし」
「このままライブも上手くいきそうですね!」
「だからって油断しちゃダメよ」
ライブも、もうすぐ。
より一層、本番への意識を強めていく必要がある。
「そう言えば、ワタシたちのライブ演出の話も、そろそろ進めないとね」
「あぁ。一応、全ての出演者に内緒で俺たちが前座に出る。ってことは、CiRCLEの関係者だけに話は通したけど」
「具体的な演出は決めてないもんね」
「基本的にスタンダードなライトの当て方でやっていく感じで。ってことで一旦話はまとまりましたけど」
「ワタシも別に今のままで問題はないと思うけど、やっぱりライブに臨む以上、気になることは無い方が良い」
「気になることって?」
「例えば、リーダーにやってみたい演出の希望は無いか、とかね」
「俺?」
まぁ、確かに俺のために組んだバンドである以上、俺の希望は重要視されるのかもしれない。
俺も今のままで問題無いと思ってるが、せっかくなら、言うだけ言ってみるのもアリか?
「じゃあ、1個だけ、言ってみていい?」
「お、あるの?やってみたいこと」
「まぁ、言うだけ言ってみるだけですけど・・・」
3人の視線が集まる。
なんか緊張する。
「あの・・・サビに入るタイミングとかでさ、ステージの手前辺りから炎が噴き出てくる、あの演出あるじゃん?あのカッコいいやつ、アレとか、やってみたいな・・・なんて」
「「「・・・」」」
「えっ、変なこと言った?」
「いや、変ってことは無いんですけど」
「なんて言えばいいのかしら・・・」
「いかにも『中高生男子!』って感じの要望だね」
「いや、いいじゃないですか!!カッコいいでしょ!炎が吹き上がるの!」
「まぁ、気持ちは分かりますけど・・・」
「マリナ、当日のCiRCLEでその演出は出来るの?」
「・・・うーん」
「まりなさん?」
会議が盛り合った矢先、まりなさんの表情が険しくなった。
「いや、設備はあるし、話を通せばその演出自体は可能だけど・・・」
「可能ならいいじゃないですか。なんでそんな渋るんです?」
「合同ライブの当日、Roseliaもその演出使うらしいんだよね」
「「「・・・!」」」
つまり
「ただでさえ高レベルなRoseliaと同じことをすると、うちが見劣りしちゃう可能性が出てくる」
「・・・」
「みんなは、それでもやりたいって思う?」
普通に考えたら、おこがましい話だ。
「結成したばかりのバンドで、Roseliaと同じ土俵・・・」
「気軽には出来なくなってきたわね」
バンドは結成したばかり、それがプロレベルのバンドと同じ演出をやろうだなんて、喧嘩売る行為だ。
「あの、まりなさん。それと、みんな・・・」
でも生憎、俺はもう逃げないと決めている。
気づけば俺は、立ち上がってメンバーを見据えていた。
「この程度で逃げ腰になってちゃ、あの2人をあっと言わすなんて出来ないだろ!」
「「「・・・!」」」
「喧嘩上等、見劣り上等。寧ろやるなら、前座の初っ端からRoseliaを喰らってやるぐらいじゃなきゃいけないんじゃねぇのか!?そうだろ!?」
プロ級、歌姫、何するものぞ・・・!
「リーダーとして今一度聞くぞ」
「「「・・・」」」
「この中に、Roseliaが相手でビビってるやついる?」
「「「・・・!」」」
「Roseliaと演出被って日和ってるやついるか!?」
「「「!!」」」
「いねぇよなぁ!!」
レイヤから、1つだけ聞いた話がある。
チュチュがRoseliaに対して『あの言葉』を使う時は、本来の意味ではなく『全力でぶつかる』という意味で使うらしい。
ならば、俺もそれに倣うとしよう。
「Roselia潰すぞぉ!!!」
「「「ウオオオアアアァァ!!!」」」
「合同ライブが決戦だ!気合入れてくぞ!!」
ライブ演出の炎は、ド派手にぶち上げることが決定した。もう派手派手だ。
当然、この後の練習時間が身の入ったものになったのは言うまでもない。
気持ちの乗り方が、いつもより強くなった。
なんつーか、自信持てるようになったな。俺も。
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練習が終わる時間はいつも夜遅く。
いつもなら、終わればさっさと解散するという流れなのだが、今回は違った。
「あの、よかったらさ、このままベランダに出て、しばらく夜景でも見ないか?みんなが良ければ」
誰も反対はしなかった。意外なことに、チュチュも今回の案には快諾してくれた。
「相変わらずいい眺めだな」
「でも、この高さからの夜景も見慣れてきたね。それなりに通い詰めてる訳だし」
そうだ。見慣れるぐらいにこの場所へ通い詰めたから、今の俺はこうしてやっていけているのだ。
でも、このバンドはいつまでも続く訳じゃない。チュチュやつくしも、本来は別のバンドのメンバーだし、まりなさんや俺も、他にやるべきことがある。
・・・合同ライブが終われば、このバンドは解散だ。
「こうして集まって夜景を見るのも、あとちょっとで終わっちゃうんですよね」
「そうだな。今日みたいに、スタジオ内で4人揃って座り込むことも、もう多くない」
「アナタたち。まだ戦いは終わってないのよ?」
「そうだよ。感傷に浸るのは流石に早いんじゃない?」
違いない。寂しさが無いわけじゃないが、それを感じるのは今じゃない。
「絶対に成功させよう。合同ライブ・・・」
合同ライブまで、あと少し。
来るべき時に向けて、俺たち4人は静かに決意を固めたのだった。
今日は短め。
その分、次はかなり長めの話になる。
『前夜』ってサブタイトルからご察しの通り、この作品そろそろ終わるけど、日和ってるやついる?
おらんよな。
次の更新は、明日。
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