今回はリクエストのつくしちゃん。
(上)は2人の雑談を短編形式で連ねていくだけです。では、どうぞ。
うちの姉が、最近になって週末に家を空けることが更に増えた。
最近は全国ツアーの話なんかも上がってきていたし、週末に家を空けることも増えてきた姉さんは、当然夏休みも忙しくなってきた。
それに伴って、今週の土日は泊まりの用事まで入ってきたらしい。
さらに、その2日間は俺の両親も仕事の都合で家を空けることになった。
つまり、この家は俺以外に誰も居なくなる。
そして……。
「ねぇレン。今週の土日はレン1人だけど、愛しの彼女とお泊り会とかするの?」
「しないよ。俺たちまだ付き合ってそこまで長くないし」
「ふーん……」
「なんだよ?」
「いや、2人の関係は2人のものだし、アタシはそこまで干渉もしないけどさ。レンもつくしも、夏休み前は忙しかったでしょ?」
「夏休みは夏休みでバイトが忙しいんだけどな。フェスとかで界隈も盛り上がるし。向こうもバンドとバイトの両立だし」
「だったら猶更さ。夏のひと時ぐらい、濃密な時間を過ごしてもいいとは思わない?それにつくしもレンからお泊りのお誘いなんて来たら嬉しいと思うよ」
「……確かに一理あるか。連絡は取ってたけど満足に会えてた訳でもないし」
なんて会話が姉弟間でも発生した。
導入終了。
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と、いう訳で、当日の朝。今井家の玄関。
「お邪魔します。。ここがレンさんの家……」
「あぁ。いらっしゃい」
「あと、これ。つまらないものですが」
「おぉ、これはご丁寧に」
幸い、つくしとの予定も噛み合ったので、つくしとのお泊り会はこうして実現した。
今は玄関先で、歓迎したつくしからいい感じの紙袋を受け取っている。
それにしてもこの紙袋の中身……。
「何だよ。このすっごい高価そうな茶葉の数々……。たかだかお泊り会でこんな豪華なの渡してくんじゃねえよ。気遣うだろうが……」
「そうかな?私の家ではいつも飲んでるよ?」
「えっ、コレを?」
「うん。コレを」
「…………」
「レンさん?」
キョトンとした表情で首を傾げる少女の顔を見ながら、俺はゆっくりと思い出した。
「(そういやコイツ、実家太いんだったな……)」
そんなカルチャーショックと共に、俺とつくしのお泊り会は幕を開けた。
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俺の部屋は、相も変わらず物が少なく、散らかってない代わりに簡素が過ぎる、という部屋ではあったが、最近になって変化も出てきた。
「あ、これってあの時のギターだよね?こんな風に置いてあるんだ」
「あぁ。見栄えがいいからインテリアとしても優秀なんだよ。そいつ」
「でもホコリも被ってないところを見ると、ちゃんと練習もしてるんだね」
「趣味レベルだけどな。また今度2人で音でも合わせるか?」
「確かに。またやってみたいよね」
バンド活動はしない方針ではあるが、時間が空いたら路上ライブでもやってみていいかもしれない。
ギター、思ってたより楽しいし。
「じゃあ、レンさん」
「そうだな。せっかくお泊りで、俺の部屋に遊びに来てくれてるんだし……」
「今しか出来ないこと、しよっか」
そんな会話を交わしながら、俺たちはテーブルと座布団を広げ、ペットボトルのジュースとコップを置き、プリント類をこれでもかと散りばめる。
後はテーブル越しに向こう側の相手とお互いに向かい合い──
「「さっ、宿題宿題っと」」
【2人のヒミツ】
こういうところは基本的に真面目。
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お泊り会の当日だと言うのに、朝っぱらから俺たちは2人で夏休みの宿題に取り組んでいる訳だが、何も黙々と静かにやっている訳じゃない。
俺が知り合いと課題を進める時は、基本的に雑談をしながらとなる。
「そういえば、お兄ちゃん」
「んー?」
部屋の雰囲気に慣れてきったからか、最初は緊張気味だったつくしもすっかり妹モードで『お兄ちゃん』呼びになっている。
視線をプリントからこちらに向けた勢いで、特徴的なツインテールが揺れている。
……可愛い。
「この部屋、妙に落ち着くんだけど、何か特別なこととかしてる?」
「いや、特には何も……」
「そうなんだ。でもやっぱり安心するんだよね。この部屋、初めて来る筈なのにさ」
「そっか。なんでだろ?」
・・・
「「……」」
・・・
「お兄ちゃんが居るからかな♡」
「こいつ~~っ♡」
【2人のヒミツ】
人目さえ無ければそこそこのバカップル。(普段しっかりイチャつけない反動)
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宿題のプリントを進めながら、俺たちの話は続く。
「お兄ちゃんって、どこに行っても誰かしらと仲良く話してるイメージあるけど、月ノ森に居る時は大人しいよね」
「そうか?」
「うん。生徒の子が挨拶しても、居心地悪そうに『どうも……』みたな返事しかしないし。普段のお兄ちゃん、もっと愛想よくなかったっけ?」
「あー、それな……」
月ノ森でだけ挨拶の返事がぎこちない、か……。うん。心当たりはある。
「だってアイツら、挨拶の時に『ごきげんよう』って言ってくるじゃん。落ち着かねえんだよ。アレ」
「えっ、それだけ?」
「『それだけ?』じゃねえよ。あの場所、挨拶も空間もゴージャス過ぎて付いていけねえんだよ。俺がましろと何回この手の内容で愚痴会やったと思ってんだ」
「ましろちゃん、お兄ちゃんとそんなことしてたんだ……」
「まぁ、それも最近は変わってきたんだけどな。今は俺とましろで愚痴り合うって言うより、俺がましろに聞いて貰うのが殆どになっちまった」
「ふーん。お兄ちゃんが相談を聞く側じゃなくて話す側なのも意外だし、ましろちゃんが聞く側なのも意外だね」
「そうなんだよな。ましろのやつ、最初は分かってくれてたのに、最近になって環境に慣れちまったみたいなんだよ」
「そりゃあ、ましろちゃんだって何日も通ってるんだからいつまでも慣れないままじゃないよ」
「あーあ。変わっちまったな。ましろも」
「レンさんは最近のましろちゃん、変わったって思うの?」
「そりゃあな、ちょっとお嬢様に染められてるところを抜きにしても、最近のましろは立ち姿にも貫禄が出てきたし、ライブの歌声に迷いが無いのもスタッフ目線で感じられるようになったし。振れ幅で言えば、モニカの中じゃトップクラスで様変わりしてるってのが、俺の所感なんだけど」
「そっかぁ。そうなのかぁ……。ふふっ、そっかそっか」
そう言いながら、つくしは嬉しそうに笑う。
「なんだよ?」
「別に。その言葉、ましろちゃんに聞かせたらどうなるかな~って思っただけだよ」
「……?まぁ、それじゃあ今度、取材にでも足運んでみるかね。『ごきげんよう』は苦手だけど」
なんならお嬢様学校に男1人で乗り込むというシチュエーションも苦手だし、守衛さんにもいい顔されないのも苦手だが、こんなに話の聞きがいのある人間はそうそういない。
だから仕方ないのだ。あいつの成長は本当に見ていて飽きない。
まったく『倉田ましろ』。お前は本当におもしれー女だ。
前髪の一本からその血の一滴までネタにしてやるから覚悟しやがれ。
搾り取ってやるからよぉ……!
「……そそるぜコレは」
「(こんなに凶悪な顔で楽しそうに笑うくせにに、取材の時は優しいんだもんなぁ……)」
「つくし?どうかしたか?」
「いや、なんでもないよ」
「……?」
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「つくしってさ。夏休みに遊んだりとかした?」
「夏休みかぁ。最近はモニカのみんなでキャンプ行ったよ」
「うっわマジかよ。いいなぁ楽しそうで」
「写真とか、見る?」
「おうよ。どれどれ?」
そう言ってテーブルの向かいから渡されたつくしのスマホに表示されたのは、それはもう、楽しそうに夏の水辺を謳歌する美少女たちの姿だった。
……天国を、見た。そして極めつけは──
「おいつくし、なんだこの可愛らしい水着は?」
「ちょっ、お兄ちゃん。私の部分だけ拡大しないでよ。他の子の水着見なよ!恥ずかしいって」
「トレードマークのツインテールもさることながら、薄い紫のフリフリ、貝殻のヘアアクセ、胸の中心部の花のアクセサリーに浮き輪まで……なんというあざとさ。私の性癖には合っていますね」
「分析しなくていいから!ってコラ!おへそのところ拡大しないでよ!聞いてるの!?」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い…………」
「もう!見ないでって言ってるでしょ!お兄ちゃんのヘンタイ!」
つくしのスマホは没収された。
「なんだよ。つくしのいけず」
「まったく。ここばっかり見られたら他の写真も見せてあげられないでしょ。ほら、隣来ていいから一緒に見よ?」
「はーい」
怒られた。
おかしいなぁ。俺はつくしよりも年上な筈なのに、2人きりになると、つくしの方が年上っぽいというか、姉っぽくなるのは何故なんだろう?
普段の俺は年下の前ではしっかりしてると思うし、つくしからの呼び方も『さん』付けか『お兄ちゃん』なのに。
そんなことを考えながらつくしと肩をくっつけて写真を覗く。
「それにしてもホント楽しんでるなお前ら。見てるこっちが自然で遊びたくなってくるよ」
「お兄ちゃん、遊んだりしてないの?」
「そうだな。夏のライブハウスってバカみてえに忙しいし、バイトの休みはその疲れの回復に回したいし、そこで夏休みの宿題に加えて、夏期講習の時に追加されたプリントもやらなきゃだし……。せっかく部活は休みなのになぁ」
「もしかしてお兄ちゃん、今もお疲れだったりする?」
「いやいや。つくしが居るからそれだけで癒されてるよ」
「そっか。じゃあお兄ちゃん……」
俺の言葉から何かを感じ取ったのか、つくしはそのまま自分のスマホを置いて、俺に向き直って両腕を広げた。
「もっと癒してあげよっか?」
「嬉しいけど、この流れでするのはいくらなんでも年上の威厳が──」
「お兄ちゃん」
俺が虚勢を張ろうとする前に、つくしの人差し指が俺の唇を塞いだ。
「言い方、変えるね」
・・・
「ぎゅーって、しよ♡」
この後めちゃくちゃ、ぎゅーってした。
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【今井レン、真夏の山の思い出】
「私たちは山で遊んだりしたけど、お兄ちゃんには真夏の山とか海の思い出は無いの?忙しいのは分かるけどさ」
「そりゃあ、これっぽっちも遊んでないって訳じゃないけど、山とか海に限定されると難しいな。去年だったらイヴの登山に付き添ったりしたけど」
「へぇ。登山かぁ」
「そうそう。剣道部で誰からも一本を取れなくなって、『ブシドーが足りません!』とか言い出して、そのまま白装束と木刀だけ担いで険しい山道まで突っ走ってったんだよ。で、流石に単独で突き進んでいい場所じゃなかったから俺が付き添うことになってな」
「それで、踏破はしたの?」
「いや、踏破はしたけど、そこからが大変でなぁ……」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
ただでさえ険しい山道を超えた先で待っていたのは、10mを超える高さを誇る滝壺。吹き上げる水しぶき。
そして、白装束で木刀を片手に、居合の構えを一切崩さずに、もう2時間近く不動を貫き、岩場でその滝に打たれ続けるアイドルの友人。
「おい若宮!いつまで打たれてるつもりだよ!風邪引いたらどうすんだ!?」
「はい。でも、もう少し……もう少しで何かを掴めそうなんです」
「何かってなんだよ!?」
「分かりません。でも、あと少しなんです……」
「やめとけって言ってんのが聞こえねえのか!?」
「わが心は不動。しかして自由にあらねばならぬ。即ち是、無念無想の──」
「死ぬぞ若宮ァ!!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「いやー、あの時は大変だった。山や海の思い出は他にもあるけど、脳裏に一番焼き付いてるのはアレだな」
「イヴ先輩、相変わらずブシドー絡んだら凄いな……」
「今度、一緒に行く?」
「いやぁ、滝行は、ちょっと……」
「そうかぁ?結構楽しかったぞ。あの後、普通に水遊びとかしたし」
「ブシドーは!?」
【今井レンのヒミツ】
レンの秘蔵データの1つには、ポニーテール白装束でずぶ濡れになった若宮イヴの笑顔の写真がある。
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「そう言えば、お兄ちゃんのアルバムとかって無いの?」
「アルバム?なんで?」
「そりゃあ、部屋まで遊びに来てるんだから見たいじゃん。小さい頃の写真とか、無いの?」
「無いことはないけど……まぁ、いいか。つくしのことは散々撮らせてもらってるし。ちょっと待ってな」
家のアルバム、幼稚園から中学までの卒アル、合わせると結構な量なので、テーブルのプリントを退けてそのまま置いた。
あー、重かった。
「この写真で、リサ先輩の背中にくっついてるのがお兄ちゃん?甘えんぼさんだね」
「そりゃあ小さい頃だからな。姉さんの髪も長くないし、相当昔の写真だな」
「ふぅむ。でも、この他の写真もリサ先輩と一緒の写真が多いっていうか、本当に仲良いね」
「一緒なのは仕方ねえだろ。姉さんがベタベタしてきたんだから」
「そう?でもこっちの写真はお兄ちゃんからベタベタしてるよね?」
「おい。見過ぎだぞ」
「あ、こっちの写真、姉弟揃って一緒に寝てる。可愛い」
「ちょっと、つくしさん?」
「こっちは友希那先輩もいる!こんな感じだったんだ」
他にも幼少期の写真は色々と見られたが、つくしは楽しそうだった。そして小学校の卒アルも、同じく大変満足してくれたのだが、中学の卒アルはそうもいかなかった。
「お兄ちゃんの写真、少なくない?」
「中学かぁ。確かにその時は行事とか全然行ってなかったからな。準備期間も不登校決め込んでたし」
「いや、行事関係を差し引いたとしても友達との写真ぐらい──」
「俺に中学時代の友人は居ないぞ。小学校時代に話してたやつも中学で縁が切れた」
「お兄ちゃん…………」
「どうした。不良な男は嫌いだったか?優等生」
「いや、そう言えばお兄ちゃんの過去の話とか、じっくり聞いたことなかったなって。音楽関係の話はともかく、人間関係とか、そのあたりのことはさ。だから、無神経なこと言って──」
「なーに。過去への決着なんざとっくの昔につけてんだよ。どっかの誰かさん達のお陰でな」
そう言いながらつくしの頬を人差し指でつつくと、なんとも困ったような表情が見えた。
可愛い。
「まぁ、中学の知り合いには今でも会いたくないけどな。会ってもお互いに覚えてるか分からない程度には関わりも薄かったけど、もし覚えてやがるようなら速攻で人違いのフリして逃げながら塩撒いてやる」
「そんなに嫌なの?」
「イヤ☆」
【今井レンのヒミツ】
自分の過去に決着はつけたけど、それはそれとして嫌なものはイヤ。
なんなら母校の近所を通るのもなんとなくイヤ。
具体的な理屈とかは言語化できないけど、なんか、取り敢えずイヤ。
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【『レンさん』という呼び方】
アルバムを片付けてプリントを広げながら、今度は俺から話を振った。
「なんでモニカの連中って、誰一人として俺のこと『先輩』って呼ばねえの?」
「『レンさん』って呼び方はダメなの?」
「いや、ダメとかじゃないけどさぁ」
やっぱり年下の女の子から『先輩』と呼ばれるのは男の憧れみたいなところは少なからずある。
でも、実際に俺をそう呼んでくれる年下の女子なんてロックぐらいしかいない。
「まぁ、単純に接点が無いからじゃない?だって同じ学校でもないし、出会った頃のお兄ちゃん、音楽もやってなかったでしょ?」
「言われてみれば……」
「同年代で話しやすくて親しみやすかったし、今でこそ仲良くなってるけど、出会ったばかりぐらいの距離感の、ただの年上の知り合いに『先輩』なんて呼び方すると思う?」
「えっ、じゃあそもそもお前らの中で俺って、どんな扱いだったんだ?」
「う~ん。『CiRCLE行ったらいる人』?」
「そんな。『玄関開けたらいる人』みたいな……」
「ほら、みんな、まりなさんのことは『まりなさん』って言うでしょ?あれと同じ感じで『レンさん』って呼んでたよ」
「初めて知った。みんなの中で俺の扱いって、まりなさんと同じカテゴライズだったのか……」
【今井レンのヒミツ】
ちなみに『今井さん』と呼ばれない理由は9割ぐらいリサの影響。
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【レンの交友関係】
「そう言えばお兄ちゃんって、男の人の友達は居ないの?女の子としか話してるところ見ないけど」
「んー。男友達か。別に居ないってことはないぞ。用事があれば男連中とも話すことはあるし、今はなんだかんだ上手くやってるし、関係も悪い訳じゃないけど、男社会って気を遣うから疲れるんだよ。別にそれが嫌とまでは言わないけど、正直言って女友達とバカやってる方が楽でいい」
「えっ、普通逆じゃないの?女友達とバカやってる方が楽しいってある?そもそもバカやるの?」
「全然やるよ。帰り道で美咲と缶蹴りしたり、休み時間に何の前触れも無く美咲と腕相撲したり、休日に目的地も決めずに自転車乗って方位磁石だけ持ってひたすら北の方へ突っ走るだけの訳わかんない企画を美咲と一緒に敢行したり」
「本当にバカやってる……。というか仲良いなぁ」
「最近の美咲はこころに毒されまくってるから多少アホなことでもちょっと押せばやってくれるんだよな」
「うん。まぁ美咲先輩との仲の良さは知ってるからいいけど、男社会では気を遣うっていうのは、なんで?」
「それはアレだよ。なまじ女子連中との関りが多いから、ちょくちょく変な目で見られたりしてな。まぁ、それだけならいいんだけど、礼儀のなってない奴は『誰か女の子紹介してくれ~』みたいなこと言ってくるし」
「あぁ……」
「姉さんや友希那さんを紹介するように言われたこともあったな。それでなんというか、俺自身じゃなくて『そういうこと』が目当てで話しかける感じの連中が増えてな。全員がそうって訳じゃないんだけど……あ、このこと他のやつには言うなよ?特に姉さんとかにバレたら絶対余計に話ややこしくなるから」
「なんか、お兄ちゃんも大変だね……」
「いや、ほんとマジそうなんだよ。愚痴っていい?」
しばらく愚痴った。
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夏休みの宿題も今日の分に終わりが見えてきて、ラストスパートをかけ始める。
つくしと話しながらなので進みは遅いが、たまにはこんなのもいい。
「お兄ちゃんはさ、私に不満とかって、無いの?」
「不満?なんで?」
「ほら、私たち、付き合ってる訳じゃん?」
「そうだな」
「でも、会ったりデートしたりした回数って少ないでしょ?お兄ちゃんの数少ない休日に、私は練習の予定入れてたりするし、でも、そこに何も言わずにいてくれて」
「確かにな」
「だから、私がお兄ちゃんより自分の都合を優先してたりするの、寂しい思いしてたり、不満に思ってたり──」
「思わないよ」
「へっ?」
つくしの方を見向きもせず、問題を進めながらつくしの問いを返す。
「俺の手は、お前らみたいに頑張ってるやつの背中を押して応援するためのものだからな。少なくとも、お前が目標に向かって走ってることに対して尊敬こそすれ、不満なんてものは無いよ」
「お兄ちゃん……」
「そりゃあ、会えない時間が寂しくないって訳ではないけど、俺はお前のそんな頑張り屋なところが大好きだからさ。俺の都合でその大好きなところが発揮される機会を奪うのは、違うだろ」
問題を解き終えてつくしの方を見ると、随分驚いた表情をしていた。
どうやらつくしは、俺との時間の少なさを、思ってたより真剣に考えていたらしい。
俺の気持ちのことにまで目を向けて、本当に優しい彼女だ。
「つくし、そっちの宿題は片付いたか?」
「えっと、今日の分なら」
「よし。じゃあこっち来な」
そう言うと、つくしは素直にこちら側に寄ってきた。寄ってきたので──
「よっと」
「わっ」
後ろから抱き寄せて、そのまま俺のあぐらの上にすっぽりと収めた。
「どうしたの?いきなり」
「俺のこと気遣ってくれたお礼」
「ハグがお礼なの?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど……」
これ以上、つくしは何も言わなかった。
「つくし。しばらく、こうしてようか」
「そうだね。せっかく遊びに来たのに、あんまりイチャイチャしてなかったし」
「朝に1回ぎゅーってしたろ?」
「足りない」
「……確かに、今思えば雑談しながらとは言え、あのハグ以外はずっと課題やってたんだよな。俺たち」
「お昼を食べるのも忘れてね。朝からずっとやって、もう昼過ぎだよ」
「じゃあ、一旦ハグはやめて、お昼にするか?」
「ヤダ。もうちょっとぎゅってして欲しい」
「満足する頃には夕飯の時間になってたりして」
「そうならないためにも、その前までに私をいっぱい甘やかさないとね」
「甘えたかったのか?」
「うーん。『お兄ちゃん』って呼び方してたら、自ずとね」
「そうかよ」
その後も、これと言って大した会話はしなかった。
ただ同じ部屋でじゃれ合う兄妹のように、意味のない会話のキャッチボールを繰り返し、意味のない時間を2人でダラダラしながら過ごしたのだった。
『いっぱい甘やかせ』なんて言っていた割に、つくしは俺に背中を預けているだけで、これ以上のことは求めなかった。
ただ何もせずに適当なことを話すだけの時間。
生産的とは言えないが、その暇すら無かった俺たち2人にとっては、そんな時間がたまらなく愛おしかった。
面白さも可愛さも出し切れない。
なんか、何かが振り切れないこの感覚。
本編に引導を渡してからというもの、執筆の感覚はいつもこんな感じ。
所詮おまけの話ではあれど、文章に誠実さを出せないのは、やはり落ち着かないものがあるものですね。
それでも自己満足なので投稿はしますが。
(下)は短編じゃないスタンダード形式でいけたらなと。
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1年生の頃のレン君の話とか興味ある?例えば仲良くなる前の美咲ちゃんとの話とか。
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1.ある
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2.ない