ガールズバンドとシチュ別で関わっていく話   作:れのあ♪♪

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 方針として誕生日記念とかはやらないけど、この子だけはね。

 っていうことを言って既に去年、誕生日を祝うシチュは書いてしまってますから、今回は普通にただの軽めの何でもない日常回。


75.今井リサとソファでだらだらするシチュ

 

 俺たちは今、姉弟で仲良くリビングのソファに陣取っている。

 読書中の姉さんがソファの3分の2で寝そべり、残った3分の1のスペースに俺が足を縮めながらSNSで最近のトレンドをチェックするという、今井家では珍しくもない光景。

 『スペースは半々で使わないのか?』なんてことを聞かれたりもするが、半々で使う時は姉さんが気まぐれでその半分を明け渡してきた時だけだ。

 これは姉弟あるあるだが、姉と弟の組み合わせの場合、家の中じゃ姉の方が権力が強いのだ。

 

「レン~。お茶入れてきて」

 

 ほら、こういうこと言ってくる。

 外では世話焼きで優しいところもあるが、家の中だとこんな風に弟を顎で使う側面だって見せる。

 いや、もしかしたら弟を顎で使わない姉など、この世界には存在しないのかもしれない。

 そして逆も然り。姉に顎で使われない弟もまた、この世には存在しないのかもしれない。

 

「レン~。お茶」

 

 まぁ、こんな扱いにもすっかり慣れてはいるが、たまには反抗してもいいかもしれない。

 姉に逆らうことが許されない、全国の不遇な弟を代表して、たまにぐらい『弟は奴隷じゃねえぞ』ってことを知らしめるべく、反撃の狼煙を上げるのも悪くない。

 まずは手始めにこの女に知らしめてやるとしよう。

 

「はぁ?そんぐらい自分で入れてこいや。テメェの足は飾りなのか?」

「あ、あとキッチン寄るならアイスも取ってきて~」

「聞けよ」

「……」

「……仕方ねえな。ちょっと待ってろ」

 

 やっぱりやめとこう。この女と口喧嘩するぐらいなら大人しくお茶入れてアイス取ってきた方が楽だ。

 スマホを閉じ、命令通りに入れたお茶をテーブルに置き、アイスを手渡す。

 

「さんきゅー」

「おう」

「あれ?レンの分のアイスは??」

「気分じゃない」

「ふーん。そっか」

 

 そう言いながらアイスの袋を開ける姉さんを尻目に、俺はSNSのトレンドを再度チェックする。

 ただ、普段ほどしっかり見てるかと言われるとそうでもない。

 情報を扱う部活なせいで常にアンテナは張るようにしてるが、夏休みは記事も書かないので、今のSNSチェックはそこまでの意味を持たない。

 つまり、退屈になってきていた。

 

「レン、暇だね」

「確かに。いざやることなくなるとこのザマっていうか」

「多分『全世界、暇なやつグランプリ』みたいなのがあったら、アタシらの圧勝だよね」

「え、何?ダブルスで登録すんの?」

「そうそう。今のアタシらの瞬間最大風速ならワールドクラスのニートだって蹴散らせるよ」

「ワールドクラスのニートはダブルスで登録しないだろ」

「あ、じゃあアタシら優勝じゃん」

「ホントだ。やったじゃん」

 

 もう、我ながらアホな会話だと思う。

 姉弟ともに気を張るべき場所も相手も無いせいで頭を使おうとしてない。普段のスタンスの反動か。

 1%も頭使って会話してないと自分でも分かる。

 

「暇だね」

「うん」

「今から、『自分、思ってたより疲れてるな……』って感じたエピソード出して……なんか、ヤバかった方が優勝」

「『優勝』ってなんだよ」

「じゃあアタシからいきまーす」

 

 エントリーナンバー1 今井リサ

 

「あの、バイトでレジ立ってた時の話なんだけどさ」

「うん」

「そんで、お客さん来たのね?結構若い男の人でさ。それで雑誌だけ置いたから、会計したんだけど、その時に何を思ったか『こちらの商品、温めますか~?』って凄い笑顔で言っちゃってさ」

「雑誌なのに!?」

「そうだよ。1年もバイトしててこれやらかすってヤバくない?もう、お客さんめっちゃ困ってたしさぁ」

「もう姉さんが優勝だろ。なんだよ雑誌温めるって」

「いやいや、それはレンの話も聞いてからでしょ。そっちも働き者で定評があるんだしさ」

「働き者じゃねえよ別に。でも、疲れてるエピソードかぁ。じゃあ、バイト関係で続けて申し訳ないけど……」

 

 エントリーナンバー2 今井レン

 

「俺のはバイト中じゃなくてバイト帰りなんだけどさ。その日は割と遅くまで働いてたから外も暗くてさ。んで『今日の晩飯何かな~』とか考えてたら、前の方につくしが歩いててさ」

「お、愛しの彼女」

「そう。それでバイト終わりなのにちょっと元気出てきてさ。ちょっと話しかけようかとも思ったんだけど、せっかく偶然見つけた訳だし、何か彼氏っぽいことでもしようかと思って、それで、ちょっと不意打ちで後ろからハグでもしてやろうかってなってさ」

「彼氏っぽい」

「そんで『お疲れ~』って言いながら抱き締めたら案の定いいリアクションしてくれてさ。凄い慌てっぷりでめちゃくちゃビックリしてたんだよ。それで『この反応はサプライズ成功だな』って思ってたんだけどなんか違和感あってさ」

「違和感?」

「そんで、怪しみながら腕も離してよく見てみたらさ。そいつ……つくしじゃなくて、あこだったんだよ」

「あこ!?なんで!?」

「いや、俺も全然分かんないんだよ。高1で低身長のツインテドラマーなところ以外で何の接点も無いのにさ。いやもう、あの後めちゃくちゃ謝り倒したもん」

「待って。本当に大丈夫?許してもらえた?」

「普段から仲良くしてるし、なんとか『ビックリさせないでよ。もう!』とかで済んだけど。でも、あともう少し親密度が低かったらヤバかったな」

「あの2人を見間違えるのは疲れすぎだよ」

「しかもその後、抱き着いた理由聞かれてつい『人違いだった』って言っちゃってさ。誰と間違えたかまで考えないとだったから大変だったよ。つくしとの関係は隠してるからさ」

「えっ、じゃあ結局誰と間違えたことにしたの?」

「姉さんってことにした。というか姉さん以外の名前でマシな結末が見えなかった」

「シスコンだと思われなかった?」

「いや。『気持ち分かるよ!あこもおねーちゃんに抱き着きたい時あるもん!』って言われた」

「分かっちゃったよ……」

「そんで、『シスコンだと思われたら恥ずかしいから、このことは皆には内緒な』って口封じして、事なきを得ました」

「こりゃ優勝はレンだなぁ……」

 

 今井レン 優勝。

 

「まぁ、お互いここまで疲れる程に頑張ってるってことだけど、やっぱり優勝者にはご褒美が要るよね」

「はぁ?いいよ別に。こんなのただの疲労自慢じゃねえか」

「労いのハグとかしなくていいの?アタシ、自分が勝ったらレンにアタシのこと『お姉ちゃん』って呼ばせてやろうとすら思ってたのに」

「要らねえよ。この年で姉さんのハグとか。あとその呼び方は負けたってやらねえよ」

「えー。じゃあほっぺにチューは?」

「もっと要らねえよ」

「じゃあ、何がいいの?」

「だから別に何も──」

 

 そう言いかけたあたりで、姉さんの頬が膨らんだ。

 『むぅ~』とでも言いたげな態度でこちらを睨みつけてくる。

 分かる。絶対に引き下がらないやつだ。コレ。

 

「そうだな。じゃあ、姉さんが今食べてるアイスを一口でどうだ?」

「いいの?こんな食べかけアイスで」

「ちょうど欲しくなったんだよ。賞品としては妥当だろ」

「まぁ確かに。レンが疲れてるって分かっただけだし」

 

 そう言いながら、姉さんが身をこちらに寄せて、アイスを差し出してきた。

 それを見て俺も姉さんの方に身を寄せて、肩をくっつける。

 

「あむっ」

「美味しい?」

「悪くない」

「そりゃよかった」

 

 アイスを食べて満足していると。姉さんのもう片方の手が、俺の頭に乗せられた。

 

「なんだよ?」

「んー?いや、アタシの弟があんなに疲れちゃうぐらいに普段から頑張ってるんだなって思うと、労いたくもなるじゃん?」

「大げさ」

「んーん。大げさじゃないよ。頑張ってる人は『頑張ってるね』って言われる権利はあるべきでしょ?」

「それは姉さんも一緒だろ」

「……頑張ってるって言ってくれるの?」

「そうだよ。頭は撫でてやらねぇけど」

「それでも嬉しいよ。ありがと」

「だから姉さんもこれ以上撫でるな。俺は何も返さないぞ」

「ふふっ、残念だけどアタシは自分が撫でたくてやってるだけだから、レンに何かを施してる気は微塵も無いんだなぁ。あれ?もしかしてレンってば、『返すようなもの』だと思っちゃうぐらいに、アタシに撫でられて嬉しくなっちゃってたの?」

「減らず口を」

「アハハッ……☆」

 

 相変わらず掴みどころの分からない態度だが、もう考えるのも面倒になったのでこのまま撫でさせ続けることにした。決して撫でられて嬉しいからではない。本当に。決して。

 ……それにしても姉さん、やっぱり撫でるの上手いな。

 

「レン」

「ん?」

「お疲れ様です」

「互いにな」

 

 ・・・

 

「姉さん」

「どした?」

「撫でるのに飽きたらさ、今度は俺が膝枕してやるよ。リクエストがあれば肩も揉んでやる」

「返さないんじゃなかったの?」

「勘違いすんな。やりたいからやるだけだ」

「ふふっ、アタシはそんな優しい弟がいて嬉しいぞ。ほーれ、よしよし」

「むぅ……」

「レン、アタシの弟でいてくれてありがとね☆」

「知らねえ」

「好きだよ」

「うっせぇ。ばーか」

 

 この後も、結局はいつもと変わらず、俺たち姉弟は、ただひたすらに語り続けた。

 忙しい日常に戻ってしまわない内に、時が許すまで。

 

 ずっと。

 

 

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 ちなみに俺の頭を撫で飽きて、俺に膝枕を要求した姉さんはいつもの減らず口を見せることなく爆速で睡眠に突入した。

 今は俺の太ももで、無防備な寝顔を晒している。

 そして寝顔は写真に撮って、さっき友希那さんに送り付けた。

 

「ったく。やっぱり俺よりも疲れ溜め込んでやがったか。無理し過ぎなんだよ毎度毎度……」

 

 まったく……。

 

『レン、アタシの弟でいてくれてありがとね☆』

 

 まったく。本当に……。

 

「俺もあんたが姉さんで良かったよ。1人っ子なら人生のどっかで詰んでたと思うし」

 

 

 ・・・

 

 

「好きだぞ。………………お姉ちゃん」

 




 
 リサ姉、お誕生日おめでとう。
 キミが居たから、私はこんなに色々書けてる。

 1万字級の文字数の話ばっか書いてたから4000字を切った話はボリューム的に不安に感じますが、前まではこんなもんでしたよね。

 って訳で、何でもない日常の話でした。感想待ってます。


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