今回はリクエストで頂いたシチュ。キャラ指定は無し。
昼休みの教室、俺は奥沢美咲との議論に勤しんでいた。
「だから何回も言ってんじゃん。地上最強の生物はクマ一択でしょ。肉食だし、パワーもあるし、体重500以上あるくせに走ったら時速60とか出るんだよ?マツ〇デラックス以上の質量体がウサイ〇・ボルト以上の速度で突撃してくる時点で勝ちじゃん」
「結局そんなの数値だけの話じゃねえか。俺の最推しのヤマアラシさんのトゲなんて見てみろよ。ライオンやトラですら手出しできないどころか、襲ったやつから血だらけになってんだぞ。あと可愛いし」
「クマだって可愛いんですけどぉ?」
毎日のように雑談をしまくっている弊害として、とうとう話題が地上最強の生物は何かという、小学生の男子みたいな議題になってしまったが、これが結構楽しい。
ちなみに条件は陸上で、闘技場での1対1を想定するものとする。
「そもそもヤマアラシのトゲなんて相手からの攻撃が無かったら無力じゃん。自分から攻撃することも出来ないくせに最強なんて名乗れるの?たかが草食のげっ歯類の分際でさ」
「うるせーな。カッコいいだろカウンタースタイル。自分は何もせずに相手に背中向けてるだけで勝手に外敵が傷ついて撤退するとか強者の貫禄でしかないだろ」
今日もこんな感じでゆるい日常を過ごすのかと思っていたが、その日常はかなりあっけなく壊れた。
壊音の霹靂。
たった1人の金髪美少女の突入によって、穏やかな日常は騒がしい非日常に塗り替えられる。
「レー――――ン!!!」(窓の外からアクション映画みたいな勢いで入ってくる弦巻こころ)
「みーーさきーー!!!」(突入した勢いで側転とバク転でこちらに突撃してくる弦巻こころ)
「やっほー☆」(着地して可愛いポーズを決める弦巻こころ)
「あ、こころじゃん。やっほ~」(慣れたレン)
「元気だねぇ」(慣れた美咲)
まぁでも、俺と美咲にとって騒がしい非日常など、もはや日常茶飯事だ。
こころがヤバいからってツッコんでたらキリがない。
弦巻こころ、それは爆発するように現れ、そして消える時は嵐のように立ち去る。
こいつはそういう存在なのだ。
「それで、どうしたこころ?美咲とデートの約束か?」
「違うわ。今回の話はレンにも関係があるのよ」
「俺にも?」
「そうよ。あとは有咲にも聞いて欲しい話だったのだけど……居ないのかしら?」
「市ヶ谷さんならいつも通りポピパの子たちと中庭だよ」
「話、俺たちで先に聞こうか?」
こころは少し迷っていたが、どうやら話すことにしたらしい。
そして、こころが話し始めた内容がこちらだ。
「有咲を星にしたいの!」
「「えっ、殺すの?」」
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こころが有咲を星にしたいと言った理由は、どうやら俺の記事が原因だったらしい。
その時の記事は、有咲にインタビューした時の内容だったのだが……。
【インタビュー、一部抜粋】
『戸山香澄をどう思ってる?』
『どう思ってる、か。いきなり言われると難しいけど。でも凄いやつだなって思うよ。確かにあいつはバカだし考え無しなところもあるけど、なんか人を引き付ける人徳があるっていうか……なんて言えばいいんだろ、その……』
『カリスマ?』
『そう。それだ!ボーカルは星、なんて言うけど、香澄はまさにそれなんだよ。辛い時も、暗闇で迷った時も、あいつは私たちの道をいつも照らしてくれる。香澄はそういう存在なんだ』
『香澄は星……。正しい表現だとは思うけど、じゃあ香澄の輝きが曇ったら、お前らは終わりなのか?』
『どうだろうな。確かに香澄だっていかなる時も明るいかって言われるとそうじゃない。人間だから簡単に落ち込むし、壁にだってぶち当たる。今までもそんな瞬間は何度もあった。もしかしたら、そんな時はこれからも訪れるかもしれない。でもまぁ、もしもそうなったとしたら……その時は、私が香澄の星になってやりたい。私の星のシールに香澄が導かれてくれたように、私が香澄の闇を照らせるようになりたい』
『有咲が、香澄の星に?』
『自分でもガラじゃないとは思うけど、私はそのぐらいの覚悟でポピパやってんだよ。いや、覚悟なんて言葉を使うなら、『なりたい』じゃダメだよな……』
『私は、必ずあいつの星になる』
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「あたし、あの記事を見て感動しちゃったの!」
「へぇ、そいつはよかった。有咲に『カットしろ』って言われた部分までしっかり書き記してやった甲斐があるぜ」
「あんたホントいい性格してるよね……」
「それで、感動しちゃったから、あたしも有咲を星にしたくなっちゃったの!」
「悪いなこころ。それが意味わかんねぇんだわ」
「ねぇこころ。そもそも『星にする』って具体的に何するつもりなの?市ヶ谷さんに危ないこととかしないよね?」
「えぇ!そのあたりのことも授業中に考えてたの!」
相変わらずの屈託のない笑顔で、こころがスケッチブックを取り出す。
イラストは少し雑っぽいところもあるが、こころの口頭説明があればなんとかなるか……?
「まず、こんな感じのミッシェルの等身大ロケットを用意するでしょ?」
「おい美咲、この女『ロケット』とか言い出したぞ。いけんの?」
「まぁ弦巻家だしね。実際ミッシェルも飛んでるし」
「やっばコイツ……」
「何を今さら……」
「それでこのロケットに有咲を乗せて、ギューーン!って飛んでいけば、有咲をいい感じの流れ星にできると思うの」
「なんだよ『いい感じの流れ星』って……」
「しかもこれ、この子の中では100%の善意で言ってるからねぇ……」
「流れ星は流れ星よ!もしこれが成功したらすっごく面白いと思わない?」
面白いって、そんな有咲のことを流れ星になんて……。
流れ星に、なんて……。
「でも、『星になる』って最初に言い出したのは有咲だもんな……?」
「ちょっと?レンさん?」
「こころは善意で言ってくれてるんだもんな……?」
「少なくとも今のあんたの顔から善意は見えないんだけど?寧ろ碌なこと考えてないようにしか見えないんだけど?」
「知ってるか美咲?有咲ってめちゃくちゃリアクション面白ぇんだぜ?」
「うーわダメだこれ。最悪の展開だ」
「じゃあレン!この作戦、後で有咲にも伝えて──」
「いや、待てこころ。この作戦、もっと有咲をハッピーにできる方法を思いついた」
「有咲をもっとハッピーに!?」
と言っても、やることは単純だ。
こころは有咲にもやることを伝えて、合意を得ることを考えていたようだが……。
「なぁ、こころ。サプライズって知ってっか?」
「レン、それって……!」
「そうだ。有咲には何も伝えずに誘導して、そのまま前触れも無くあいつをロケットに閉じ込めるんだよ。そして訳も分からないままあいつは大空へ打ち上げられるんだ」
「いや、やめなって。市ヶ谷さんビックリしちゃうから」
「違うぜ美咲。ビックリするのがサプライズの醍醐味じゃないか。友達の誕生日を祝う時とか、何も言わずにいきなりパーティーにしたら楽しい反応してくれるだろ?」
「そうよ!そう考えたら凄くいいわ!サプライズ大作戦ね!」
どうやらこの案はこころのお気にも召したようだ。
「じゃあ、帰ったら早速準備に取り掛かるわ!今から有咲の反応が楽しみね!」
「そうだな。俺と美咲に協力できることがあったら、何でも言ってくれよ」
「えぇ!頼りにしてるわ!それじゃあね!」
昼休みの時間も残りが短くなり、こころは有咲が帰ってくるより先に退散した。
「……いや、ちょっと待って?なんであたしまで協力?」
「はぁ?ここまで聞いといて逃げるとか許される訳ないだろ。有咲の味方にならせないためにもな」
「とは言ってもあたしにできることなんてそれこそ限られて……」
「いや、お前は存在そのものが切り札みたいなもんだ。俺とこころが用件を隠してミッシェルロケットに入れようとしたら警戒されるだろ。でもお前はその辺の信用が高いから怪しまれずに済む」
「人が築き上げてきた信用をそんな風に使って恥ずかしいとは思わないの?」
「思わない」
「言い切ったよコイツ……」
俺の道連れに呆れながらも、なんだかんだ最後には乗ってくれる。
美咲のこういう所が、俺は結構好きだ。
「それにしても『サプライズ』ねぇ。ものは言いようって?」
「楽しみだよなぁ。『ドッキリ大作戦』」
「うん。全部終わったら取り敢えずあたしが一回シバこう。市ヶ谷さんの名誉のためだ」
「んだよ。こっちは善意で有咲の願いを叶えてやろうって思ってるだけじゃねえかよ!なんでそこまで言われなきゃいけねえんだよ!」
「善意ィ?」
「善意だよ」
「本音は?」
「『市ヶ谷有咲、星になる☆』って見出し、最高にロックだと思わねぇ?そそるぜこれはよぉ……!クハハハハハハハハッ!!!!」
「ホント地獄にでも落ちればいいのに。この男」
更新は明日。
夏休みも終わり、学校から始まるシチュです。
こころちゃん、サブタイトルに名前が使われるのは94話ぶりになります。
【ガルシチュこそこそ裏話】
リクエストには応えたいけど、リクエストボックスの開設当初はシチュだけの指定やキャラの指定だけを予想していたため、キャラとシチュの両方を指定したダブルバインド系のリクエストが多くなって難易度が高くなって結局なんも書けないパターンが多い。
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